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2836.報道比較2016.12.27

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クリスマスをもっとも楽しめなかったのは、ドイツ人ではないだろうか。ヨーロッパは、イギリスよりもドイツの方が火種を内包した。今回のテロは、ブレグジットやトランプ大統領より大きな不安の始まりかもしれない。

日本経済新聞・社説
欧州は結束固め危機の連鎖を防げ

クリスマス前、もっとも世界の危うさを感じたのは、このドイツの事件だ。メルケル氏は、これで思考を変えるかもしれない。それは、日経が書いている以上の事態だ。極端と見られていたポピュリズムの勢力ではなく、王道の与党が、排斥や禁止とは言わないまでも、難民・移民の入国に厳格さを示すのだから。ドイツ全体に、寛容なだけでいられない空気が生まれている。このまま進めば、ヨーロッパは難民対策をさらに厳格化する。中東やアフリカとの対立は、ますます強まる。繰り返すが、ポピュリズムや一過性の感情ではなく、受け入れ、忍耐を経た上で、中道の与党が拒絶感を見せる。これは大きな変化だ。本質的に中東やアフリカへの戦略を変えなければ、ヨーロッパはEUの境界に強固な障壁をつくることになる。結束や危機の連鎖どころか、ヨーロッパが条件付きの孤立化に傾く可能性を秘めている。アメリカが感情で選んだような変化を、ドイツのリーダーが論理的に考えた上で提案し、国民が支持したら…ヨーロッパはロジカルに、今いる国民の安全保障のために、別の地で生まれた不幸な人たちの受け入れへの大らかさを捨てようとしている。
この逆流が、これからの本流になるなら、日本は相当に気をつけなければならない。アメリカやヨーロッパは、暴走を慎重に止めながら自由を擬製にしない範囲で制限を課すだろうが、日本は確実に暴走する。保護のための規制が大好きな国だ。この内向的な流れは、憂慮すべき危険な兆候だ。歴史で世界の誰もが習ったとおりの1930年代をなぞっている。興味があれば、Wikipediaだけでも読んだ方がいい。

世界恐慌 by Wikipedia

朝日新聞・社説
南スーダン 流血回避の努力こそ

毎日新聞・社説
国連の軍縮協議 「核なき世界」の推進を

いつものことだが、朝日・毎日の主張が感情的過ぎる。実効性に疑問がある点を幾人もの人が関わって危険で決断した事実を「だとしても」と簡単に覆せるだけの論理は、朝日の社説の中にまるでない。どれも精神論、感情論で済ませている。これなら、南スーダンに自衛隊を送る人命優先を考えれば適切な判断をしたと考えるのが適切だろう。南スーダンに派遣する際にも感情的に政府の決定を批判していたが、朝日には信念も一貫性もまるでない。
毎日も同様だ。オバマ氏でさえ理想論と言われた核軍縮を、日本が反対に回ったのは残念だとしても、発言するだけなら空論になるだけだ。理想は誰にでも語れる。オバマ氏というアメリカの大統領が語ったことで、世界は可能性を感じたが、中国やロシアと信頼関係を築けなければ実現にはほど遠かった。あれだけの素晴らしい人物が最高権力を握っても、世界は平和にはならなかったし、核兵器が減ることもなかった。ドライに言えば、トランプ氏のような性格なら、むしろ理想を語って核兵器を減らすと言い出す方が恐ろしい。約束が守られなくなれば、すぐに発射スイッチを押しそうだ。
メディアも含めて、凡人が理想を語る時は、最低でも論理的な根拠と整合性がいる。妥当性を示すだけのデータがあればさらに望ましい。メディアにはそれをできる能力が今まではあったが、最近はまるで力不足だ。ネットであらゆる情報が得られる時代に、その努力さえしていない。社内の編集記事との整合性さえ確認しているように見えない。平和を語るためには、安全保障が崩れないことが大前提だ。その根拠も考えずに感情的な主張をつづけるのは、無能を晒しているに過ぎない。

産経新聞・社説
「遼寧」が太平洋に 傍観せず空母導入考えよ

読売新聞・社説
遼寧太平洋進出 中国空母の展開に警戒怠れぬ

こちらもまた、朝日・毎日の逆に好戦的に感情が走っている。日本が空母?なんのために?日本と中国の距離を考えるべきだ。西太平洋に空母が向かったことでも判るとおりだ。中国の標的はアメリカだ。安倍氏が真珠湾に行くのに合わせた意図はあるだろうが、日本など今回の計画では微塵も見ていない。この主張を見て、一番喜ぶのはトランプ氏だろう。いくらでも売ってくれるはずだ。アメリカ人にしか使いこなせない、後で儲かる仕組みもセットになった兵器が。
冷静に戦略を探るべきだ。必要なのは武器ではなく、知性だ。私たちは、すっかり軍事知識を欠落させてしまった。国家予算を防衛費として、アメリカに対価を払って得るべきものは教育だ。

人民網日本語版
中国海軍空母艦隊が第一列島線突破 専門家「すでに戦力を形成」 (2016.12.26)

今回は人民網の方が冷静だ。彼らは計画の着実製を最も誇っている。「日本が持つべきは知性、欠けているのは教育」と言いたい理由は、ここにある。NHKや日本の新聞の反応を窺う理由は不明だが、目的の半分は各国への威嚇、そして残りが訓練。どちらの目的も適切に達成されているようだ。
アメリカには、当然のように計画的なアプローチが存在する。どれだけトランプ氏が吠えても、彼の予算が動きはじめるのは2017年10月。それまではオバマ氏の遺産を引き継ぐのであり、ある意味、そこで学習する。さらに軍や省庁には長期のプランがある。中国も同様に10年単位でものを考えている。日本も、いくら政治が短命だったとはいえ、ある程度の長期視点はあるだろう。問題は、それが見えないこと、継続していないこと、そして、その計画が本質的な日本のパワーになっていないことだ。予算を得て、カネを使い、消えていく。ノウハウや教育は消えていかないはずなのだが、日本はどこにカネを使っているのだろう?

Wall Street Journal
インドのとっぴな現金撲滅作戦 (2016.12.26)

この話題を読みながら、私の頭の中にあるのは、インド政府ではなく日本政府だった。モディ氏の大胆さが手に負えない失敗に変わりそうな予感もするが、支持率は下がっても辞めるまでには至らないだろう。インドとのビジネスの関係は、今のところほとんどない。
それよりは、電子化を模索する日本政府の動きがきな臭い。遅々として進まないように見えるマイナンバーも、徐々に金融機関に提出義務を強制しはじめた。1年遅れの猶予はあっても、カネの流れを包囲する準備は着々と進んでいる。
これで財務省は税収の確実性と不正撲滅を見込んでいると思うが、私の感覚では、民主党時代の「財政の埋蔵金」と同じ空騒ぎで終わると思う。しっかり取れれば、あるはずの税収。探してみたら…法を変える方が早かった。すべきは規制緩和だった。描いていた副業も、蓄財も、幽霊会社の内部留保も、見えたところで喜ぶほどの税収アップはないだろう。それよりは、銀行に預けたマイナンバーが盗まれて平謝りする醜態の方が早いのは確実だ。
そこまで無能になった行政に、日本円をデジタル化、キャッシュレス化する提案はできるだろうか?

Financial Times
トランプ政権を牛耳る通商タカ派 (2016.12.26)

トランプ氏が選挙で勝利して以降、中国株、人民元ともに下げ基調。この人選決定後、さらに下げた。中国自身の問題もあるが、中国は資本流出防止と外貨準備、そしてアメリカに牽制する意味でアメリカ国債を手放しはじめた。米国債保有率で日本を抜いたと騒いでいたのはリーマンショック後。それから6年半。オバマ氏の就任期間だけ、中国はアメリカの感情を無視して絶頂を味わう時間を享受したようだ。
日本の80年代から90年代へのシフトを思い出す。同じ悪夢を中国も味わうことになる。日本は同盟国という立場で、経済のみで叩きのめされたが、中国は軍事、経済、政治、文化思想…あらゆる面で対立している。トランプ氏は、遠慮なく中国を叩く準備を整えつつある。中国がアメリカにコミットして理解を得るには、相当なバリューがいる。

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