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3228.報道比較2018.1.3

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元日は良かったが、昨年にタイムスリップしたように旧体質に戻った国内紙の社説。世代交代を進めて欲しい。言論の自由のない中国の方が、ずっと良いコンテンツを出している。反省が必要だ。

産経新聞・社説
明治150年 「独立自尊」を想起したい 国難乗り越えた先人に学ぼう

明治の改元から今年は150年となる。日本が進むべき道を、先人の足跡に見いだしたい。「今の日本国人を文明に進るは、この国の独立を保たんがためのみ」この時代の教育や言論の分野で指導的役割を果たした福沢諭吉が、明治8年の「文明論之概略」で記した。西洋文明も完全ではないが、遅れている日本は西洋に制されてしまう、という危機感をあらわにしている。追いつこう。がんばろう。小さい体で、額に汗を浮かべながら、明治人は刻苦勉励したのだろう。あらゆる分野で「西洋」をひたむきに学んだ。日本人は平和を誠実に希求しており、およそ戦争を求める日本人はいまい。だが、権利を制限される形で制定された憲法をいつまでも頂くことが、独立国といえるだろうか。国の守りについて、手足をしばっているのは専守防衛という考え方だ。抑止力の一環である敵基地攻撃能力の保有について、正面から継続的に語り合う姿を見ることはない。拉致被害者を自力で救出する手段はないのに、ならばどうするという議論は起きない。とうに改正されてしかるべき憲法だが、現政権の下でようやく議論は緒に就いた。これを加速させたい。国難に毅然として立ち向かった明治人の血潮は、現在の日本人にも流れている。現代の国難を乗り越えるため、明治人が見せた気概こそ必要ではないか、としている。

正月に社説を載せない産経は、これが2018年最初の社説。憲法改正に明治のルーツをつなげるのは、納得させられるようにも、まるで筋が通っていないようにも思える。今の憲法と明治は関係は薄く、どちらかと言えば敗戦の方がずっと関係が濃い。アメリカから押し付けられたと産経は言いたいのかもしれないが、たしか明治の憲法も当時のドイツを相当参考にしたのであって、この世の法にオリジナルと言い切るユニークさなど必要ない。世界を見渡してもっとも合理的なものをつくるのが理想であって、産経の言うとおり、時代に合わせて変化していくのが適切だと思う。つまり、日本の立法と行政が終わっているのは、憲法改正を70年の時代の中でまるで進められない、議論やコミュニケーションの能力が欠落しているのであって、先人が優れていたのでも、いまの日本人が劣っているのでもない。産経のように自身のみが正しいと我を通そうとする人たちが国会に集まって持論だけをぶつけ合うから、70年経っても事が進まないだけだ。是非や優劣を競い合っているうちは、議論は前に進まない。すべての意見の価値を認め合って最適解を得るのが、未だに日本人はできないようだ。正月早々、情けない話だ。

毎日新聞・社説
論始め2018 新技術と人間社会 使いこなすのは私たちだ

人工知能(AI)ソフト「アルファ碁」が世界のトップ棋士を次々破った衝撃が遠い昔のように思える。AIは機能も応用範囲も予想を超えて進化を続け、昨年1年、AIという言葉を見かけない日はなかった。 昨秋、日本の3メガバンクが大幅な業務削減を打ち出した。AIを活用した情報技術で数万人分の業務を肩代わりする計画だ。業務の効率化、低コスト化は歓迎したいが、こうした流れがさまざまな分野で大量リストラを招く恐れは否定できない。医学の世界では、乳がんの転移を病理組織で見分ける競争でAIが人間の病理医11人を負かしたという海外の論文が公表された。日本でも胃がんの前段階の画像診断でAIが熟練した専門家並みの成績を示した。しかもAIの方が診断が圧倒的に速い。正確で速い診断は患者にとってメリットが大きい。ただ、その時に医師の役割も変わらざるをえない。私たちの想像を超えて進む技術はAIだけではない。ロボット工学や遺伝子技術もまた、社会を大きく変えていくだろう。それぞれの利益とリスクを見据えた上で、技術を使いこなす人間の知恵を磨きたい、としている。

「ということで、社説はAIが担当します」と言えば、かなり毎日は期待できる新聞社に格上げなのだが、表題に「使いこなすのは私たち」とストライキでも起こしそうな文字があるだけに、椅子にしがみついている様相だ。AIで医師や政治家の仕事がなくなるなら、その対価は、プログラマが得る。プログラミングする時に、どう設計するかのエンジニアリングに診断以上の知見がいる。結果、対価は上がり、医療の形は変わっても、ITと力を合わせて、健康を維持する仕事は、減るよりは増えるだろう。メディアもそうだ。フェイクニュースと世が騒いだ時に、声を荒げて抵抗するのではなく、何が嘘で、何が本当かを、人間ではなくITが判定するアルゴリズムを開発すれば、メディアはきっと取材にかかるバイアスを排除できた。そのサービスは?IT企業が手がけている。またやられた?違う。メディアの発想が古いか、遅いだけだ。「論始め2018」には、あまりに発想が貧弱だ。これではAIではなく、高校生にも勝てないだろう。

Wall Street Journal
2018年の市場、注目すべき8つのポイント (2018.1.2)

賃金
賃金は2018年についに停滞を抜け出すだろうか。昨年11月時点の米労働者の平均時給は前年同期比でわずか2.5%の増加だった。失業率が4.1%という低水準にあることを踏まえると、これは驚くほどの微増である。米連邦準備制度理事会(FRB)は失業率がさらに下がれば政策金利を引き上げ続けるだろうが、賃金の伸びが加速すれば利上げの実施はさらに緊急性を帯びるだろう。――ジャスティン・ラハート記者
ハイテク
米大手ハイテク企業の株価は2018年も2017年のパフォーマンスを再現できるだろうか? アップル、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックの時価総額の合計は昨年、43%増大して3兆3000億ドルに膨れ上がった。したがって、昨年のパフォーマンスが繰り返される可能性は低い。リスクとしては、大手ハイテク企業が支配的立場を強めていることに懸念を抱く規制当局が、それを抑制する措置を模索していることがある。金融機関とは異なり、大手ハイテク企業に関して「大きすぎてつぶせない」というのことはないのだ。――ダン・ギャラガー記者
中国経済
中国経済の成長にとって重要な住宅市場は2017年、国からの支援で驚くほどの堅調ぶりを示した。地方自治体がスラム街の再開発のため空き家となっている住棟を買い上げたことで、住宅在庫は2013年以来の低水準となった。2018年に住宅在庫が急激に回復したら、保有している中国の鉱工業株の売却を検討すべきだろう。――ナサニエル・タプリン記者、としている。

欧米の新年らしいコンテンツ。スタートからエンジンが全開だ。マーケット参加者は安定を読んでいる人が多いようだ。そういう時は、不安定になるのが常。賃金が上がりはじめて止まらなくなった時、インフレの悪夢が想像以上に早く走ると…最悪のシナリオだ。特に、中央銀行には。日銀は血の気が引くだろう。その一歩手前で、適度にコントロールできるはずというのが、中央銀行の偉い方々の言い分だが、根拠はなく、マーケットは疑念を持っている。今までは、見ないふりをしていれば良かった。もし、見なければいけない状況に陥ったら…今回の注目ポイントのすべてのシナリオが狂うだろう。

人民網日本語版
中日の相互信頼の「ジェネレーションの崖」をいかに越えるか (2018.1.2)

中日国交正常化の前には、友好団体が中日両国を結びつけた。日中友好運動は、党派を超え、イデオロギーを超えた国民運動となった。だからこそこの運動は、日本社会に長期にわたって根付くことができた。あの時代には、日本の多くの民衆が素朴に、「日中は再び戦ってはならない」という信念を抱いていた。それこそがこの運動を推進した最小限綱領であり、両国と国際社会にとっては神聖と言える綱領となった。今日、中国と日本はいずれも、1950年代のようなカリスマ的な民間運動のリーダーを欠いている。あの時代には、東京と北京を往復するにも数日を要した。だが彼ら民間のリーダーらは、幾多の苦労も顧みず、両国の友好の橋渡しをした。その時代を経て、中日間には1972年以降、4つの政治文書が調印された。だがこれらの制度をもってしても両国関係の悪化を止めることができないのはなぜなのか。「人能弘道、非道弘人」(人が道をひろめるのであり、道が人をひろめるのではない)という昔の言葉がある。我々は、紙の上のものにだけ頼っていてはならず、生き生きとした内容をそれに注ぎ込まなければならない。だが現在、日本の若い世代は、中国に対する関心を欠いている。冷戦後の教育は、日本の若い世代の中国観に深刻な影響を与えた。日本の知識界は新たなパラダイムに基づいて中国を解釈している。両国のメディア業界人の多くは1990年代に教育を受けており、それまでの世代とは大きく異なる。我々は、お互いのこうした認識の溝を軽視してはならない、としている。

非常に長いが、読むに値する。後述の古い価値観の日本のメディアや政治の発想を持つ人たちに、ぜひ読んで改心して欲しいと思えるほど、すばらしい。このようなコンテンツを、人民網はすでに発信できるレベルに成熟してきたようだ。言論の自由がなく、表現に政治の意図があったとしても、求めるゴールは協調・共同であり、自由を持ちながら対抗と疑念ばかりの日本のメディアとどちらが有益かと言えば、答えは明らかだ。いよいよ表現でも日本が中国に抜かれる時期が来たようだ。2018年、いよいよ中国に私たちは本気で憧れを抱く瞬間が来るだろう。

朝日新聞・社説
岐路に立つ世界 「自国第一」からの脱却を

半年先の世界がどうなっているのかさえ思い描くのが難しい。混迷の年明けである。米国第一」をかかげるトランプ政権の外交に、世界は揺れている。貿易や環境問題など、長年積み重ねられた国際枠組みからの米国の離反が続く。習近平国家主席は昨年の共産党大会で国内の足場を固め、東南アジアや欧州、アフリカ、中南米までほぼ全方位で関係強化を進めている。プーチン大統領は、3月の大統領選で4選確実だ。中東ではシリアの和平交渉を主導するのを手始めに、米国を上回る存在感を得ようとしている。その中で、日本の進路をどう見いだすか。周辺国をはじめ地球規模で意思疎通を深め、世界の潮流の中で日本の安定と発展を探る外交力が必須条件だ。眼前には北朝鮮問題がある。「完全な破壊」のかまえも示すトランプ氏に、安倍首相は歩調を合わせるが、北朝鮮の脅威の質は日米では異なる。決して武力行使は選択肢たりえない。中国、ロシア、韓国をまじえた交渉による長期的な軟着陸がめざすべき道だ。日本は、大戦後に築かれた安定秩序の恩恵を受けて発展を遂げた国である。多国間協調が危ぶまれる今、国際結束の価値を支える責務はとりわけ重い、としている。

日本経済新聞・社説
国際政治の液状化に向き合うには

国際情勢は今年も混迷が続きそうだ。超大国の米国は自国第一主義を一段と鮮明にしており、盟主なき世界は求心力を失ったままだ。人々の不安につけ込むポピュリズムの波が勢いを増し、政治の機能不全を加速する。朝鮮半島の有事がいよいよ現実味を帯びるなかで、日本も相当の覚悟で世界と向き合わざるを得ない。欧州以上に混迷を深めるのが、米国のトランプ政権だ。昨年1月に発足すると、環太平洋経済連携協定(TPP)や地球温暖化に関するパリ協定から離脱表明した。せっかくISが弱体化したのに、イスラエルの首都はエルサレムとわざわざ宣言し、イスラム世界の怒りの火に油を注いだ。テロを呼び込むような行為ともいえる。昨年末に発表した安全保障戦略で「力による平和」を打ち出したが、いまの米国に世界をねじ伏せる国力があるとは思えない。軍事的に台頭する中国の勢いをそぐには、中国とロシアの間にくさびを打ち込むなどして、新興国が日米欧に一枚岩で立ち向かってこないようにする必要がある。ロシアを味方に引き寄せようとする日米の戦略は的外れではない。中国の海洋進出の封じ込めが必要な半面、北朝鮮の核・ミサイル開発に待ったをかけるには、中国の協力が欠かせないというジレンマも抱える。液状化し、基軸を失った世界をどうひとつにまとめていくのか。複雑化する国際政治の方程式を解くのは容易ではない、としている。

読売新聞・社説
世界経済 安定成長に影落とす保護主義

世界経済は「100年に1度の金融危機」とされるリーマン・ショックの影響から、ようやく完全に脱しつつある。懸念材料の一つは、「米国第一」を掲げるトランプ大統領の保護主義への傾斜である。就任早々に環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱した。米国と自由貿易協定(FTA)を結ぶカナダ・メキシコや韓国に対しては強引に再交渉を認めさせた。米国に次ぐ規模の中国経済は、依然として、内実の不透明さが世界の主要リスクに挙げられる。欧州では、英国のEU離脱交渉が通商分野を扱う新たな段階に入る。ヒト・モノ・カネの移動の自由がどう変化するのか。英国進出企業が1000社を超える日本にとっても人ごとではない。経済のグローバル化は各国に恩恵をもたらす一方、一つの国・地域で起きたショックが波及する速度と大きさをも高めている。とりわけ北朝鮮や中東の地政学リスクが顕在化すれば、その影響は計り知れない。多くの国は景気拡大が本格化する大事な局面にある。避けられるはずのショックに事前に手を打たなければ将来に禍根を残そう。各国政府には、様々なリスクに注意を凝らし、その防止に全力を注いでもらいたい、としている。

せっかく元日に、過去とは違う垢抜けた印象を感じさせたのに、旧体質の社説の思考に戻ってしまった。社説の原稿はおそらく担当で持ち回りなのだろうが、古い世代の人たちの思考は停止しているようだ。朝日、日経、読売の感覚は、すべて一致している。トランプ氏の政治スタイルを嫌い、中国を必要以上に敵視する。欧米化こそがすべて正しく、その理想系は欧米が高度成長をつづけていた時代を懐かしんでいるに過ぎない。先進国の成長は止まり、3%の成長さえ達成できない。だからトランプ氏が登場したのであり、ポピュリズムが台頭するのだ。ポピュリズムを否定しながら、行き詰まったメルケル氏の敗因の分析も、なぜ成果のない安倍政権が安定しているかの検証もしない。7%に近い成長をつづけ、すでに日本の倍、やがて3倍、5倍と拡大する中国を未だにライバルどころか、封じ込めるべき敵と捉えている。そんな発想だから日本は衰退し、中国の成長の恩恵をインバウンド程度でしか享受できていないのだ。さっさと引退して、新しい世代に席を譲って欲しい。老害そのものだ。政治も、報道も、古さを排除すればきっと日本は前進する。

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