ORIZUME - オリズメ

3223.報道比較2017.12.29

3223.報道比較2017.12.29 はコメントを受け付けていません。

Make Sense. この1年、納得できる仕事が減った気がする。しっかり辻褄の合った報道を復活させて欲しい。

amazon コラムニスト

読売新聞・社説
スパコン詐欺 先端技術への不信を招かぬか

東京地検特捜部が、スーパーコンピューター開発会社「ペジーコンピューティング」代表取締役の斉藤元章容疑者らを詐欺罪で起訴した。経済産業省所管の国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」からの助成金約4億3000万円を詐取した疑いが持たれている。スパコンは、研究開発や産業に不可欠の存在である。日本は、産官学を挙げて世界の最先端を追い続けてきた。政府は、厳しい財政下でも予算を投じてきた。水増しを見抜けなかった経産省も責任を免れない。先端技術を適切に評価できる高度な審査体制を構築すべきだ。助成に至る過程を可能な限り情報公開し、再発防止につなげることが求められる。文科省も、不信を払拭するために、予算運用が適切かどうか、調査を尽くさねばならない。斉藤容疑者は、代表を辞任する意向だ。事件の代償は大きい。将来のスパコンにも生かし得る技術をどう継承していくか。それも忘れてはならない課題だ、としている。

年末のゆるい時間を忘れて報じたくなるトピックだったようだが、読売の社説の切れ味は鈍い。最近の日本を象徴するような不祥事がまた増えたのに、視点は問題の核心を突いていない。徐々に危機感も薄れているなら、さらに危うい。日本社会全体に猛省が必要なほど、モラルが壊れている。このままでは、景気が回復しても悪癖は直らない。成長に大きな障害になるだろう。

朝日新聞・社説
北海道沖地震 「想定外」を減らそう

北海道沖の千島海溝沿いで、東日本大震災に匹敵する規模の地震が「切迫している可能性が高い」との見解を、政府の地震調査研究推進本部がまとめた。地震学者らが検討し直した結果、マグニチュード(M)8・8以上の超巨大地震が、今後30年以内に7~40%の確率で発生する、というのだ。同本部の「確率の数値を受け止める上での参考情報」によれば、7%であっても、同じ30年間で「火災にあう」「空き巣狙いにあう」確率よりも高い。北海道から東北にかけてこの地域近くに住む人や企業は、家具の固定や建物の耐震化、津波への備えを急ぐ必要がある。自治体も、住民への周知や防災関連施設の整備に、いっそう力を注がなければならない。隣国ロシアとも、過去の地震や津波についての情報交換や共同調査をさらに進めてはどうか。行うべきは、「地震はいつでも、どこでも起こりうる」という意識をもち、全国でまず最低限の備えをすることだ。そのうえで、地形や地盤の特性、予想される発生確率を知り、土地に見合った対策を積み上げる。そうやって「想定外」を一つずつ消していくことが、地震被害を最小限に抑える道である、としている。

昨日の毎日からさらに遅れること1日。ただ、他紙に比べればちょっと考察が深い。まず日経が異議を唱えた「切迫している可能性」を、火災や空き巣と比較して適切に認識させてくれている。ロシアと共同で…という話は現実味は薄いが、ロシアとの関係を深めるには、良いアイディアだ。遅れただけの価値は、私はあると思う。

日本経済新聞・社説
欧州は改革で結束し安定の礎を

2017年のはじめ、欧州は世界の波乱要因になるとの予測が出ていた。域内に流入する中東・アフリカからの難民や移民が急増し、テロも頻発し、欧州連合(EU)加盟国で移民排斥を唱える極右政権が相次ぎ生まれる――。そうした懸念はひとまず杞憂に終わった。3月のオランダ下院選挙で中道政党が第1党を死守し、4~5月のフランス大統領選では中道のマクロン氏が勝利した。世界の金融市場や実体経済に悪影響を与える事態を回避できた点は評価したい。欧州にとって18年の課題のひとつは17年に続き英国のEU離脱である。英EUの交渉は18年から通商協議を含めた第2段階に入る。19年3月の英EU離脱からは一定の移行期間を置き、英国はEUの単一市場や関税同盟にとどまる。焦点はその後の自由貿易協定(FTA)などによる英EUの経済関係のあり方だ。まず英国が早く説得力のある将来像をEUに示す責任がある。いま欧州に求められているのは壮大なビジョンではない。域内に成長と安定をもたらす具体的な改革の基礎を固め、着実に実行に移すことだ。その点を欧州各国の指導者は忘れず、果敢に行動する18年としなければならない、としている。

日経だけが年末を感じさせる総括をはじめた。が、なぜかヨーロッパから。日本のことも、トランプ大統領の1年を経たアメリカでも、もっとも成長を感じさせた中国でもなくヨーロッパ。日経のセンスは2017年後半から意味不明なことが増えてきたが、年末もその状態だ。
社説の内容も、新たな発見は少ない。私にはヨーロッパは問題を先送りしただけにしか見えない。移民問題も、格差も、経済成長も、ユーロやEU内のアンバランスも…すべて。マクロン氏の勝利は今年の転換点だったとは思うが、その後の仕事ぶりは、むしろトラブル・メーカーのトランプ氏の方がずっといい仕事をしている。行動を促す日経には、やはり共感できない。行動しなかったのは日本も同様な点が多い。ヨーロッパに言える権利を日本が持っているとは、とても思えない。

産経新聞・社説
文氏の「合意」批判 国家関係を損ねたいのか

韓国側の日韓合意検証を受けて、文在寅大統領が「この合意では慰安婦問題は解決できない」などと表明した。断じて容認できない。文氏は「当事者(元慰安婦の女性)を排除した政治的な合意」であり、「気が重い」と述べたという。北朝鮮の新たなミサイル発射などが懸念される中、緊密な連携を取るべき隣国の指導者がこれでは日本こそ気が重い。繰り返すまでもないが、日韓合意は両国関係を損なってきた慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的な解決」を表明したものだ。見直す余地などない。国同士の約束を守らなければ、国家関係そのものが成り立たなくなる。国際的な信用を失うリスクを考えているのだろうか。政府は、合意の着実な履行を求める立場は「不変」だとしている。それは当然だが、大統領の妄言は日韓関係を壊しかねないことを直接、伝えるべきだ、としている。

昨日だけでは怒りが収まらなかった様子の産経。感情的な主張は読むに値しない。同じ論理の繰り返しは日本政府にも見える。日韓関係を改善したい意識は、どちらの国にもないようだ。

毎日新聞・社説
日本の中東和平政策 「中庸の理念」貫いてこそ

河野太郎外相が中東のイスラエルとパレスチナ自治区を訪れ、ネタニヤフ首相、アッバス議長に中東和平に向けた対話を呼びかけた。河野氏は双方が共存する「2国家解決」を支持し、「エルサレムの最終的地位は当事者間の交渉により解決されるべきだ」と訴えた。両首脳も対話の重要性を確認したという。中東和平はイスラエルとパレスチナだけでなく、アラブ諸国やイランにも波及する広範な問題だ。石油の約9割を中東に依存する日本にとって地域の安定は死活的な重みを持つ。だからこそ米国とは違う独自の中東外交を展開してきた。「中庸の理念」を貫き、米国に直言してこそ、中東での日本への信頼が高まるはずだ、としている。

昨日につづき、毎日は後追いの社説。12.27に読売が書いているのとそっくりの主張。中東問題に独自の視点は持ちにくいだろうが、ならばタイムリーな読売の社説には勝てない。毎日の凋落は、この1年を通して目立った。

Wall Street Journal
中国テク大手に広がる不満、「自己反省」必要か (2017.12.29)

中国のハイテク企業は長らく、米シリコンバレーからヒントを得てきた。その結果、中国版のグーグルやユーチューブ、ツイッター、ウーバーが誕生した。 中国のハイテク企業は米シリコンバレーの企業と同様、革新的な商品やサービスを生み出してきた。米国でもそうであるように、創業者はロックスター並みの人気を誇る。汚職や縁故主義が蔓延する不動産王などとは違い、彼れは頭がきれ、かつ勤勉だと思われている。これにより、中国ハイテク企業は大量の顧客データを手に入れる一方で、米国勢ほど厳しい制限には直面していない。また、中国の独裁政権と協力する以外の選択肢はほぼないに等しい。中国政府は新たな技術を活用した国家監視や社会統制を構築することに注力している。だが中国ネット大手は、市民の友好的な姿勢が揺らいでいる兆しとして、ソーシャルメディア上の会話や投資家の不平に配慮した方がいい。強制排除のニュースが全国的な注目を集めると、アリババやテンセントの首脳は会議やネット上で、他社の事業モデルは社会に一段と有害だと主張し、論争を始めた。あるベンチャー投資家は「中国企業はバリュエーションが下がっても、少しばかりの謙虚さしか見せない」と語る。そしてこう続けた。「勝つことがすべてなのだ」、としている。

中国で起きていることには、残念ながら日本からはアメリカのITカルチャーのように参加することが難しい。結果、遠い国の出来事に思え、このライターが書いているほどの危機感を持ったことはない。規模の巨大さと、閉じた中国マーケットでの特異なガラパゴスのような進化は、日本が今まで見せてきた発展に似ている。モバイルで何でも済ますライフスタイルや、テキスト中心のチャットでのコミュニケーションが世界中に浸透するかは未知数だ。中国人が大きな会社に危機感を抱くのは、日本国内でNTTドコモやソフトバンクに苛立ちを感じているのに似ている。ならば、もっと国を開けば、世界のトレンドとともに歩めるとも思うが、中国は国家としてそれを望まない。大きなガラパゴスの世界が、どこまで発展するのか。私は、少し距離を取って眺めていようと思う。そこから得られるメリットが小さくなるとしても。

Comments are closed.