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3220.報道比較2017.12.26

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景気はいいようだが、恩恵は偏っている。格差の問題を忘れていると、マグマが溜まりつづける。

読売新聞・社説
東電再建計画 他電力と共同事業を急ぎたい

東京電力ホールディングス(HD)は、策定から半年が経過した新しい再建計画の進捗状況を国に報告した。問題なのは、収益確保策の柱として盛り込まれた他電力との共同事業で、目立った成果が上がっていないことである。約22兆円に上る福島第一原発事故の処理費用のうち、東電は約16兆円を負担する。そのために、30年間にわたって毎年約5000億円の確保が求められている。共同事業化は、原発を安全に活用し続けるために有効だろう。原発を基幹電源と位置付ける政府の役割も重要である。柏崎刈羽原発は、原子力規制委員会の安全審査に事実上、合格した。政府が前面に出て、地元の理解促進に努めねばなるまい。電力自由化の時代をどう生き残るか。安定供給を維持していくため、組織の枠を超えた柔軟な発想で取り組んでほしい、としている。

原発を含めたエネルギー政策は、安定政権の政治に方針を明示して欲しい課題だ。日本が失われた20年がバブルの清算だったとすれば、さらに10年延ばした理由は3.11だろう。特に原発事故とその後の政治の迷走は5年以上の時間を経ても進展が見えない。未だに議論さえ進まない。政治がせめて選択肢を提示すべきだ。

朝日新聞・社説
安倍政権5年 創生、活躍、革命の次は

安倍首相が政権に復帰して、きょうで5年になる。来秋の自民党総裁選で3選すれば、通算の首相在任日数が歴代最長になる可能性がある。最初はアベノミクスの「3本の矢」だ。次に「女性活躍」をうたい、人口減少が話題になると「地方創生」を唱えた。さらに「1億総活躍社会」を訴えて「新3本の矢」を繰り出し、「働き方改革」や「人づくり革命」へと続く。政府は「デフレ脱却」をいまだに宣言できていない。日銀は「物価上昇率2%」の達成を6度も先送りし続けている。一つひとつの政策に着実に手を打ち、結果を虚心に検証しつつ、工夫を重ねていく。本来あるべきそうした手順を十分に踏むことなく、次の看板に乗り換える。それが安倍政権の「経済優先」の実像ともいえる。そうやって政権を維持してきた首相が次にめざすのは改憲である。5年の節目に、安倍政権のあり方を改めて見つめ直す必要がある、としている。

毎日新聞・社説
丸5年迎えた安倍内閣 懐深く合意の政治目指せ

今年は「森友」「加計」問題をはじめ、長期化する「安倍1強」のひずみが明らかになってきた1年だった。安倍内閣の支持率は最近、持ち直してきているが、不支持の理由に政策よりも首相本人が評価できないという点を挙げる人が増えている傾向は変わらない。第2次内閣発足直後、日銀の「異次元の金融緩和」により円安が進み、恩恵を受けた輸出産業を中心に株価は上昇した。首相が再三、例示する有効求人倍率などいくつもの経済指標は好転した。それでも肝心の個人消費は狙い通りに伸びない。当初2年で達成することを目指していた物価上昇率2%の目標は実現に程遠く、今も「デフレ脱却」宣言に至っていない。大きな理由は国民の間にある「将来への不安」が解消されないからだろう。これまで官邸主導だった政策決定に対し、衆院選後、自民党内から異論が出始めているのは、国民の間に「安倍離れ」が起きていると感じているからに違いない。首相の最大目標である憲法改正も来年の課題となる。だがこれも進め方によっては日本社会の分断を招く恐れがある。そもそも社会保障などに比べて改憲に対する国民の優先順位は今も高いとはいえない。「10年政権」を目指すのなら、まず「合意の政治」に転じるよう強く求める、としている。

年末の総括の印象が強い社説で、安倍氏に批判的な朝日と毎日が政権発足5年を振り返り、同調姿勢に変化が見られる産経と読売が無視。批判のために社説が使われているのだろう。前向きではない。政治は振り返るほどの成果があった1年ではなかったが、意味不明な選挙で安定した政治基盤を得ながら、気持ちは産経や読売のように安倍政権からは離れはじめている。経済が好転すれば、政治への無関心はさらに進むだろう。それでも憲法改正を進めるのかは安倍氏次第だ。今まで応援していた人たちのモチベーションは下がっているが、憲法改正ならまた結束する可能性はある。批判は減り、賃上げも進めばぬるま湯のような経済は持続するだろう。やりたいなら、過去で最もやりやすい環境は整いはじめている。阻止したいなら、朝日や毎日は戦略の変更が必要だ。ただの批判ではまるで抵抗にはならない。

産経新聞・社説
拉致問題 北朝鮮の非道を忘れるな

北朝鮮による拉致問題は国家による理不尽な誘拐・監禁であり、いまだ被害者の奪還を実現できない進行中の残虐な事件である。到底許し難く、その怒りをすべての国民で共有したい。今年4月、北朝鮮の宋日昊国交正常化担当大使は拉致問題について「誰も関心がない」と言い放った。こうした理不尽な発言を許さないためにも無辜の同胞をさらわれた怒りを忘れてはならない。政府は30年度から、拉致問題への理解を促進するため、小中学校などの教員を対象に研修を始める方針という。教育現場の一部にみられる消極姿勢を正すためだ。14年に北朝鮮が拉致を認めて5人の被害者が帰国したが、なお横田さんら多くの被害者は一方的に「死亡」を通告されたまま解放されていない。北朝鮮から送りつけられた「遺骨」が別人のものと判明した際の怒りは、忘れることができない。被害者の全員帰国へ向けて、今年も何ら進展がなく越年しようとしている。これが再会を一日千秋の思いで待つ家族にとって、どれだけ残酷なことか。国民の決して許せないとの思いを背景とする政府の強い外交姿勢以外に、問題解決への道は開けない、としている。

産経のライフワークでもある拉致問題。私は、真剣に産経にずっと継続した主張をつづけて欲しいと思う。核の問題とのバランスに神経を使うが、明らかな人権問題であり、武力を使ってでも奪取する国もあるだろう国難だ。問題提起から国際的な注目を集めるに至ったトピックだ。最後まで追いつづけて欲しい。

日本経済新聞・社説
等身大の中国捉え真の互恵関係を

残念ながらいずれも今の中国の実情を捉えることはできない。中国全土に伸びる高速鉄道網や地方都市に広がる地下鉄網は10年前にはなかった。誰もがスマートフォンを持ちキャッシュレスで生活する「スマホ経済」は5年前には影も形もなかった。成長の速さ故に中国認識はすぐ時代遅れになる。半面、中国共産党の根本思想は変わらない。むしろ独裁維持へ組織を強化し、言論も締め付けている。1986年、最高指導者の鄧小平氏は普通選挙を巡り「20年、30年後には実施可能かもしれない。反対しない」と語ったが、実現の兆しもない。習氏は共産党大会で2035年に現代化建設を基本的に終え、建国100年の21世紀半ばには強国を実現すると公約した。これは遅くても35年までに、先頭を走る米国を経済面で抜き去り、50年には戦争でも勝てる総合的な国力をつける目標を示したと解釈できる。5年に1度の共産党大会で18年先、33年先まで見据えた超長期の「強国路線」が始動した事実は重い。世界はその中身にもっと注意を払うべきだろう。なお成長し変化する中国をありのまま捉えるのは難しい。だが、戦略的に分析できる冷静な目を養わなければ未来は開けない。来年は日中平和友好条約の締結から40年になる。両首脳が再び頻繁な相互訪問に踏み出す好機だ。今こそ互恵の名に恥じぬパートナーシップ関係を再構築すべき時である、としている。

新聞の社説とは思えないほど、散文でまとまりがない。いまの日本人が中国を語る時の典型的なパターンだ。心情の中心は脅威論で、もはや手遅れになりつつある日中の対等での協力を後悔している。完全に置いていかれ、すでに非協力的ならそれで構わないと中国に突き放される現状をようやく認識したが、今度は強大さに恐れをなしている。これでは今までの闘争心と何も変わらない。最初に「現状を捉えることが大事」との考察を掲げながら、内容は憶測に基づいた不安を煽るものばかり。これではいつまでも中国は遠い国のままだ。

Wall Street Journal
中国の韓国大統領いじめ (2017.12.25)

韓国の文在寅大統領は融和政策が危険な駆け引きであることを思い知らされつつある。文氏が10月末に中国の強硬な態度に屈し、在韓米軍の「地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)」の追加配備をしないと表明した後、両国の関係は改善に向かうかに見えた。しかし中国は今、圧力外交を再開している。文氏は5月の大統領就任後、環境調査を口実にTHAADの配備を停止した。システムのコストを負担した米国政府はこれに憤慨。最終的に文氏は既に輸入していた発射台4基を配備することに同意した。しかし、配備の遅れを受けて中国政府は文氏を脅せるとみなし、さらに強い圧力をかけた。10月31日、文氏は再び中国に屈し、THAADを追加配備しないこと、より大規模な米ミサイル防衛網に参加しないこと、日本と防衛同盟を結ばないことを約束した。これは韓国の安全保障を損なうことになった。それまでに配備されたTHAADでは国の一部しか防衛できず、北朝鮮の短距離ミサイルに圧倒される可能性がある。中国政府はTHAAD配備を巡り米韓を仲たがいさせたいと考えており、この問題をしつこく追及している。文氏の対中融和策は新たな要求を招くだけとなった。文氏は、韓国にとって何としても必要なTHAADのレーダーと発射台を追加配備することで信用を回復できる。中国はTHAADを気に入らないのであれば、北朝鮮の脅威を取り除く手助けをすればいい、としている。

人民網日本語版
世界が注目する中国の政治経済学 (2017.12.25)

国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行(ADB)、世界銀行など国際機関は、今年の中国経済の成長率予想を次々に上方修正した。国連の「世界経済の情勢とビジョン2018」は、2017年の世界経済成長の3分の1が中国によるものだと強調した。こうした国際機関の最新報告は中国経済に起きつつある積極的な構造変化への評価で期せずして一致している。例えば、内需の潜在力が解き放たれ続け、今年第1~3四半期の中国経済成長への最終消費の寄与率は64.5%にも達し、資本による寄与率を31.7ポイント上回った。また、産業構造面で中国の製造業は産業バリューチェーンの中・上層へと邁進し、現代的サービス業も成長を加速している。中国経済が歴史的成果を挙げ続け、歴史的変革を生じるに伴い、国際社会は中国経済の波及効果を技術レベルで分析する以外に、思想レベルに一層目を向け、中国の政治経済学に焦点を合わせてもいる。中でも注目の高まっているのが、中国の政策決定が国民のニーズに効果的に応え続けていることだ。中国の経済政策決定は、客観的法則に自ら従うのみならず、社会主義の政治の地色を反映し、現代の突出した試練に対応する思想価値を示してもいる、としている。

Wall Street Journalも人民網も、主張に偏りが見える。アメリカが韓国の中国への執着を苦々しく思っているのは判るが、中国が韓国に攻撃的な外交をしてもなお韓国をアメリカに引き戻せない現状を冷静に考えた方がいい。アメリカの政策にも明らかな失態があるのだろう。冷遇されても同盟関係のあるアメリカより中国を意識する理由を先に考察して欲しい。
人民網は、中国経済の規模拡大と安定を評価するまでは許せる。それを道徳と政権称賛に使うのはやり過ぎだ。自由主義の国でさえ、それをやれば嗤われる。言論の自由さえない中国なら、なおさら控えた方が賢く見えるはずだが。

Financial Times
民主主義国を脅かす不平等 (2017.12.20)

1980年から2016年にかけて米国、カナダおよび西欧で実現した実質所得増加分の合計額のうち、28%は最も所得が多い上位1%の人々の懐に収まり、最も所得が少ない下位50%の人々の取り分は全体の9%にすぎなかった。西欧では、最上位1%の取り分と最下位の「わずか」51%の取り分が同じだ。だが、北米では、最上位1%の取り分と最下位88%の取り分が同じなのだ。この衝撃的なデータは、世界不平等研究所(WIL)が先日公表した「世界不平等報告2018」から引いた。大局的に見れば、国家間の不平等が縮小する一方で、各国内の不平等は拡大している。下手をすれば、今日の米国の――前世紀の混乱期に自由な民主主義の存続を確実にした、あの米国の――目立った特徴になってしまっている「金権ポピュリズム」が拡大する恐れがある。そうなれば未来は、大半の人々がばらばらに分裂した御しやすい状況を何とか維持する、安定的な金権政治のものになってしまうかもしれない。我々は、この予想が間違いであることを証明しなければならない。もしそれができなければ、格差がさらに拡大し、最終的には民主主義そのものを破壊してしまいかねないからだ、としている。

主張したい要点が見えない。民主主義の危機を叫んでいるのか、格差が気に入らないのか、アメリカを批判したいのか…いずれにしても論点は定まらず、現状を詳しく分析したというよりは、都合よく解釈しているだけに見える。
次に格差の問題が再燃するのは、世界経済の高揚に陰りが見えた時だろう。また痛みは貧困層に先に訪れる。アメリカはトランプ氏の貧困層にとって無意味な減税を選び、ヨーロッパは格差問題を忘れたように見過ごしたまま放置している。日本は賃上げができて、フリーランスの減税とともに教育ができれば、一番安定しているように見えるが、産業全体が収縮している。人口減では拡大は難しい。規模を追わずに、成長をつづける経済をつくれれば成功だが…

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