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3214.報道比較2017.12.20

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減税法案、素直にトランプ氏とアメリカ議会を称賛する。今までの混乱とはまるで違う。短期間でうまく合意した。年内成立、来年早々に実行されるのが減税なのだから、ポジティブだ。集めた資金でアメリカ国内に雇用を生むのなら、共感する。くれぐれも戦争などしないで欲しい。

Wall Street Journal
米税制改革法案、下院通過 立法化へ前進 (2017.12.20)

米下院は19日、1兆5000億ドル(約170兆円)規模の減税を盛り込んだ税制改革法案を227対203で可決した。1986年以来の抜本改革の実現まであと一歩にこぎ着けた。法案は法人減税を現行の35%から21%に引き下げることなどが柱。トランプ氏にとっては、就任一年目の大きな勝利となる。また大型減税は共和党の7年越しの悲願で、議員の多くにとって地元選挙区に誇れる実績を残すことができる。ポール・ライアン下院議長にとっても、自身のキャリアを決定づける瞬間だ。企業や多くの個人が減税の対象となる。減税措置の大半は来年1月から実施され、多くの労働者は2月までに、源泉徴収の減少により手取り給与が増える。企業は海外の留保利益に一回限りの最大15.5%の税が課されるが、その後多くの企業は、海外収入に対する米国の課税はなくなる。一方で、税率の低い国に利益を移す企業の節税を抑制する措置も盛り込まれた。税制改革の成功は、経済が今後どう反応するかによって決まるだろう、としている。

この法案については、素直にトランプ氏とアメリカ議会を称賛する。今までの混乱とはまるで違う。短期間でうまく合意した。年内成立、来年早々に実行されるのが減税なのだから、ポジティブだ。アメリカ経済の成長が過去最長と言われ、株価も史上最高値を更新しつづけている中、セオリーどおりならすべきは減税ではなく増税だろう。しかも減税対象が法人と富裕層とは、恩恵を受けるのはトランプ氏自身では?と勘ぐりたくなる。おそらく、もっとも狙っているのは海外にキャッシュを貯め込んでいる企業の資金をアメリカに戻させ、アメリカ国内に投資させることと、中国に集まる投資をアメリカに振り向けることだろう。

米税制改革、IT大手の海外利益を直撃 by Wall Street Journal

中国、トランプ氏税制改革に緊急対策 by Wall Street Journal

後は共和党の支持率を上げるのが主目的だろうが、テーマが見えているから合意形成も早く、法案の要点もブレなかった。巧妙に本国投資法に似た動機が見え、中国に緊張を強いるような策が組み込まれている。日本の税制にもこういう巧みさがあるといいのだが。
集めた資金でアメリカ国内に雇用を生むのなら、共感する。くれぐれも戦争などしないで欲しい。

産経新聞・社説
米の国家安保戦略 超大国の責任実行に移せ

トランプ米大統領が、政権初の包括的な安全保障政策となる国家安全保障戦略を公表した。「力による平和の維持」を柱として打ち出した点に注目したい。世界最強の軍事力により、現行の国際秩序と価値を守る姿勢を明確に示した。「米国第一」の基本姿勢は変わらないものの、世界の平和に目を向けようとする姿勢は評価できる。前政権は「アジア回帰」を掲げながら、それを裏付ける軍事的行動をとらなかった。そのことが、東・南シナ海における中国の軍事的拡張を助長し、北朝鮮に核開発の時間を与えた。日本にとっての直接の脅威が高まり、安保環境は悪化した。新戦略に基づいて、米国は海軍力増強やミサイル防衛の重層化を図り、こうした状況の改善を進めてもらいたい。まもなく発足1年を迎えるトランプ政権は、米本土を射程にした北の弾道ミサイルの完成や、国際テロ組織の拡散という危機にも直面する。「内向き」ではなく指導力を発揮し、同盟国と協同して脅威に対処していくべきである、としている。

毎日新聞・社説
トランプ政権の安保戦略 平和は力だけで築けない

米トランプ政権が公表した「国家安全保障戦略」は、北朝鮮とイランを「ならず者国家」と厳しく指弾し、中国とロシアは米国主導の秩序に挑戦する「修正主義勢力」だと位置づけて対抗意識をむき出しにした。確かにオバマ政権下では米国の影響力の衰えが指摘され、その分、中露の台頭が目立った。「米国を再び偉大に」をスローガンに掲げて当選したトランプ大統領が、「力による平和」を安全保障の基本とする事情は分からないではない。欠けているのは国際社会と協調する姿勢である。同じ共和党のブッシュ(子)政権が単独行動主義と呼ばれたように「米国第一」のトランプ政権も他国の意見に耳を貸さずに突き進む、危うい傾向がある。北朝鮮問題で国際社会の結束を訴えながら、他方ではエルサレムをイスラエルの首都と宣言して過去の安保理決議に背を向け、これを無効とする安保理決議案には拒否権を行使した。そんなトランプ政権が北朝鮮問題などの解決に国際的な支援が得られるか不安である。無謀なイラク戦争によって米国が国際信用を失い、財政難に陥ったことを思い出したい。最強の国・米国に欠かせないのは謙虚さである、としている。

読売新聞・社説
米国家安保戦略 「力の重視」で中露を牽制した

トランプ米政権が、「国家安全保障戦略」を発表した。外交・安保政策の基本指針となる。歴代政権で、発足1年目の策定は初めてだという。トランプ大統領の予測不能の言動への懸念を一定程度、払拭する効果が期待できよう。戦略は、日米が共有するインド太平洋地域の利益を重視し、北朝鮮への対処などで日本を「不可欠な同盟国」と位置付けた。日韓とのミサイル防衛協力や、日米印豪の4か国連携、米軍前方展開の継続を明記したのは評価できる。目を引くのは、中露を「米国の力に挑戦する現状変更勢力」として、強く牽制していることだ。戦略は、「力による平和」をうたい、米軍増強の方針を示した。国防費の増額に伴い、同盟国にも「公正な責任分担」を求めた。通商問題は、安全保障とは別の枠組みで国際ルールが定められている。両者を絡めることは、同盟国の不信を招き、混乱につながりかねない。安保戦略の実現の妨げにもなるのではないか、としている。

事前に、アメリカの経済紙の反応を見てみよう。

【社説】安全保障戦略、理論と矛盾するトランプ氏 by Wall Street Journal

トランプ氏の安保戦略、「張り子の虎」か「能ある鷹」か by Wall Street Journal

社説は文書を評価しているが、大統領の矛盾する行動を懸念している。そして、上海にいるコラムニストは「アメリカは中国とのアジアの争いで負ける」と論理的に結論づけている。真面目に思考しているように見えて、思考が止まっている日本の新聞は、戦前と何ら変わらない。
日本を「不可欠な同盟国」に仕立て「公正な責任分担」を求めている意味を考えているだろうか?まずは中国の防波堤は日本が担わされる。中国もアメリカ本土に比べれば、日本の方が衝突するには好都合だ。衝突して日本が痛んだら、アメリカは「争いはやめよう」と言うだろう。それくらい、すでに文書は中国のパワーの拡大を認識している。このままアメリカに巻き込まれていいのか?という検証はない。北朝鮮の課題を共に解決するところまでは認めよう。だが、中国との対立に不可欠な同盟国にされるのは、かなりアメリカには愛着を感じ、友人も仕事も、価値観も共有できると思える私でも、違和感がある。このあたりの損得勘定、冷静さ、同盟の費用対効果、リスクとバリューのバランス感覚が欠落している。約束したから守る?友人?アメリカの大統領は、そういいながら平然とTPPを捨て、日本を出るなりハワイで「Remember Pearl Harbor」とツイートする人だ。友人はアメリカ大陸に多くいるように、中国にもロシアにもいる。防衛費を求める人たちが書いた作文に反応するには、冷静さが足りない。

朝日新聞・社説
のぞみ亀裂 安全優先の徹底を

博多発東京行き「のぞみ34号」が11日、車体と車軸を固定する台車に亀裂が入っていることが判明したため、名古屋駅で運行を取りやめた。きのう会見したJR西日本によると、亀裂は最長16センチあった。運行を続けていれば破断して脱線したおそれもあった。半世紀前に新幹線が開業して以来、初の事態だ。国の運輸安全委員会は新幹線で初めて「重大インシデント」と認定し、調査にのり出した。JRは亀裂の原因究明はもちろん、毎日の点検や異常時の即応体制について徹底した見直しが必要だ。問題は、異常に気付いてから列車を止めるまでに、3時間あまりもかかったことだ。新幹線は東京―新大阪間で1日に350本以上運行し、時間帯によっては数分おきに発着する。定時の運行を優先させようとした面はなかったのか。社をまたいで安全情報を引き継ぐのに、十分な時間は確保されているのかも気がかりだ。運行中止に至る経緯をふくめ、問題点の洗い出しを求めたい。JR西日本は12年前の宝塚線脱線事故後、「安全性向上計画」をつくり、安全が何よりも優先すべきだと誓った。その精神を忘れてはならない、としている。

記事の方が説得力がある。

のぞみ台車、破断寸前 異常覚知後も走行 JR西が謝罪 by 朝日新聞

ポイントは、飛行機なら管制に当たる新幹線総合指令所がそのまま走ることを判断したこと、JR東海への引き継ぎで「異常なし」と引き継いでいることだが、その指摘が社説より記事の方がずっとまとまっている。これが、きっとJR西日本でも起きたことだろう。現場は要点を把握している。だが、上層部で論点がぼけ、あるべき結論に至らない。重要インシデントという言葉をもてあそび、検証の手法など、どうでもいい話だ。必要な情報をぼかさないで欲しい。これがJR西日本の体質だと推測するのも早過ぎる。

日本経済新聞・社説
北海道沖大地震にどう備える

北海道東部沖の太平洋でマグニチュード(M)9級の超巨大地震が切迫している可能性が高いとの予測を、国の地震調査委員会がまとめた。今後30年以内に起きる確率を7~40%と試算した。この海域では歴史的に十勝沖や根室沖、択捉島沖でM7~8級の地震が繰り返し起きてきた。それらが連動して同時発生するとM9級になる恐れがあるという。内閣府などは被害想定や対策づくりを急いでほしい。調査委が今回の予測を出したのは、2011年の東日本大震災の苦い教訓からだ。この震災は三陸沖や宮城県沖などの複数の震源域が同時にずれ、M9になった。その直後から「北海道沖でも同様の連動地震が起こりうる」との警告が研究者から出ていた。それを受け13年前の予測を大幅に見直したのが、今回の予測だ。予測に慌てるのではなく、大地震がいつ起きてもおかしくないと考えて備える姿勢が肝要だ、としている。

地震調査委員会の意図は、言葉どおり、危険があるから周知したいという素直な気持ちなのだろう。「切迫性が高い」の一言に日経は噛みついているが、表現の問題だ。適切な危機感をどう定義するかは、初回なら多少のズレがあるのは許容できる。問題は、ここからだ。私はスイスの民間防衛という書籍を何度も見ている。危機とは冷静に認識し、たまに緊張を感じて対策を思い出すのは重要だと感じる。アラートを出すだけで終わっては無意味だ。対策を提案し、何度も思い出させる繰り返しの取り組みが求められる。それも地震調査委員会の任務なのかは判らないが、誰かがやるべきだ。こういう仕事の仕方を適切に提案できる行政の仕組みがあるといいのだが。

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