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3204.報道比較2017.12.10

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印象の薄かった国会が終わり、話題が乏しい週末。ここから各紙の特色が出はじめる。もっとも色濃く見えるのが、アメリカの衰退と中国の安定だ。

読売新聞・社説
特別国会閉幕 党首討論の再活性化が必要だ

特別国会が閉幕した。野党は、森友・加計学園問題で安倍首相を追及したが、決め手を欠いた。森友学園問題では、財務省が、会計検査院の検査報告を受けて、学園側とのやり取りを録音した音声データの内容を認めた。国有地売却価格の事前交渉は引き続き否定している。「金額のやり取りはあったが、予定価格ではない」などと強弁したが、あまりにお粗末な言い訳である。野党が「疑惑」追及に集中するあまり、北朝鮮の核・ミサイル問題やアベノミクスに関する議論が不十分だったのは物足りない。野党は、首相を長時間追及できる予算委員会の質疑を優先しがちだ。10月の衆院選を機に民進党勢力が4分裂し、「自民1強対多弱」の構図が強まった結果、2大政党トップによる論戦という姿が遠のいたことも影響したのだろう。だが、党首が、国家観を含め、大局的な議論を行う貴重な場だ。「月1回開催」「45分間」といった原則を見直し、頻度は少なくても、討論時間を増やして確実に実施するなど、党首討論のあり方を真剣に見直してはどうか。来月の通常国会に向けて、与野党は協議を急いでもらいたい、としている。

自民党と近い読売による、野党への提案。素直に受け止めてもいい理性的な内容だ。野党は選挙後の敗北感を払拭できないまま、立て直しの方向性も見えない。真摯に読売の進言を聞いた方がいい立場だ。最近の読売のバランス感覚は理想的だ。支持率の高い政党応援団の余裕だろうか?

産経新聞・社説
もんじゅ廃炉申請 規制委との「二人三脚」だ

高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃炉計画を日本原子力研究開発機構が策定し、原子力規制委員会に認可を申請した。計画は4段階で構成され、完了までに30年を見込んでいるが、楽観は許されない。内部に液体状の金属ナトリウムを大量に抱える高速増殖炉の解体について、日本は経験を持たないからだ。金属ナトリウムは空気に触れると発火し、水に接触すると爆発的に燃えるので漏出は禁物だ。原子力機構に必要なのは、トラブルがあれば、ありのままを迅速に公表する心構えだ。計画から実施段階まで全過程においてだ。1兆円の国費を投入したにもかかわらず、日本の核燃料サイクル政策上、重要な高速増殖炉技術の完成を先送りさせることになった。原子力機構には、革新的な廃炉技術の開発などを通しての名誉挽回を期待する。他方、規制委には、強引とも評された手法でもんじゅを廃炉に追い込んだ経緯がある。これから始まる廃炉計画の審査では、建設的な意見を聞かせてもらいたい、としている。

原発推進派の産経さえ、あきらめたもんじゅ。ここからフクシマに似た永遠のように長い廃炉作業が始まる。誰が何を過信したのか、作業をしながら検証を継続した方がいいだろう。使ったカネより、これから先の後片づけのカネの方がきっと多くなるに違いない。原発事故同様、重い十字架になる。

朝日新聞・社説
幼保無償化 待機の解消を優先せよ

安倍政権が子育て世代への支援拡充案をまとめた。幼稚園や保育所の利用が多い3~5歳では、高所得世帯を含めて「無償化を一気に加速する」と改めて示した。すべての世帯を対象とする無償化は、10月の衆院選の直前、首相が唐突に打ち出した。議論はいまだに生煮えだ。認可外の施設をどこまで含めるかや助成額の上限など積み残した課題は多く、有識者会議を設けて来年夏まで議論を続けるという。無償化は、認可施設では全員を費用ゼロとする一方、認可外の施設や利用料が高額な幼稚園では助成に限度を設け、一定の負担を残す方向だ。そうなれば、認可施設の希望者は今の想定以上に増える可能性がある。政府は5年前に決めた税・社会保障一体改革で、保育士の配置を手厚くして「保育の質」を高めると約束したが、置き去りのままだ。それどころか、手厚い保育を実施している自治体に基準の引き下げを迫り、目先の待機児童減らしに走ろうとしている。本末転倒である。無償化以外にもやるべきことがある。優先順位を考え、財源を有効に使わねばならない、としている。

哀しいほど、昨日の産経や読売に似ている。昨日述べたとおり、産経と読売は政権応援団から冷静な政府への要請にスタンスを変えはじめている。もともと政権批判の先方だった朝日が後手に回り、主張が産経や読売を越えられない。完全に敗北だ。何かが間違っている。

毎日新聞・社説
出国税による観光促進 なぜ必要なのか見えない

日本からの出国者に課す新税が、今週決定の与党税制改正大綱に盛り込まれる模様だ。政府は2019年の導入を目指している。日本人、外国人に関係なく、航空券代などに最大1000円が上乗せされる可能性がある。渡航費と一緒に徴収すれば目立たないし、1000円程度なら、旅行者も気に留めるまい。そんな読みがあるのだろう。昨年の渡航者数をもとに、1人1000円で計算すると約400億円の収入になる。観光庁の当初予算の倍にあたる額だ。有識者会議の報告書には、「あらかじめ使途を限定しすぎることは適切ではなく、ある程度幅広く対応できるようにすべきだ」とある。こういう施策にいくらかかるから新税しかない、という論理ではない。観光産業はもちろん重要だ。海外にも出国税に類似した税や手数料の例がある。しかし、だからといって、使い道や金額が具体的に見えない新たな財源を、すんなり受け入れるわけにはいかない。外国人旅行者の堅調な増加が示すように、観光は金融業並みの主力産業に成長した。世界経済フォーラムの「旅行・観光競争力ランキング」(17年)では136カ国中4位だ。今や、民間のアイデアや資金に託す方が賢明ではないか、としている。

バラマキと増税。バランスが取れていればいいのだが、出国税は国内全紙が批判的で、理由も「必要性と使途が不明」と一貫している。安倍氏は長期政権の間、ほとんど説明責任をいつもすり抜けてきた。増税もはぐらかして進めるつもりだろうか?すべてのメディアが結束して説明を求めるべきだ。

日本経済新聞・社説
外国人の日本語学習下支えを

日本に住む外国人が社会に溶けこみ、活躍するうえで重要な鍵となるのが日本語の能力向上だ。日本語がよく理解できないため生活に苦労している人も少なくない。日本に住む外国人数は2016年末で238万人に達した。日本語の指導が必要な外国籍の小中高校生などの数は同年度に3万人を超え、4年間で27%増えている。だが、これまで外国人住民への日本語学習支援は自治体任せで、現実には地域のボランティアに頼ってきた。人手は足りておらず、ボランティアの高齢化も目立つ。学校で外国人生徒の日本語学習を支える仕組みもでき始めたが、やはり人手不足で体制は不十分だ。政府の対応が遅れがちな裏には総合的な外国人受け入れ政策の不在がある。語学支援は本来、総合政策の一環となるべきものだ。ドイツは、移民が社会から疎外された反省から、長期滞在などを望む外国人に一定時間のドイツ語講習を義務付ける仕組みを持つ。 人材や予算を考えれば同じことはできない。だが、言葉の問題を軽視したまま場当たり的に外国人を受け入れれば、社会の分断を招く心配もある。中長期的な社会の活力や安定という視点から日本語学習支援を考えるべきである、としている。

行政か政治は、きっとこの話題を取り上げてカネを使いはじめるだろう。取り組みとしては必要だ。安全保障にも、国際化にも、人権問題にも関連する。注視しないと、変なカネの使い方をはじめる。カネばかりかかって、まるで評価されない活動をさせないよう、注意が必要だ。

人民網日本語版
中共中央政治局による2018年度経済政策の分析・研究会議 (2017.12.9)

中共中央政治局は8日、2018年度の経済政策を分析・研究する会議を開き、習近平総書記が議長を務めた。同会議では安定を維持しながら前進する政策を基調とした国家統治の重要原則を強調し、長期にわたり堅持していくとした。また、高い品質の発展を推し進める現在と将来の一定期間における発展のアプローチを決め、経済政策を制定し、マクロコントロールの根本的な要求を実施し、しっかりとした認識と、全面的な理解、真の意味での徹底を図らなければならないとした。ターゲットを絞った貧困脱却は特殊な貧困層にターゲットを絞り、支援を行う必要があり、深度貧困地区への集中的な支援をさらに進めなければならない。貧困支援を志気向上支援や教育支援と結び付け、貧困層の内からの貧困脱却へのエネルギーを刺激することで、貧困支援の成果を強固にし、貧困脱却の質を向上させる。汚染の予防と抑制は主に汚染物質の排出総量を引き続きしっかりと減少させていくことで、生態環境の質を全体的に改善していく。さらに、それぞれの活動を協力して推進していくのと同時に、重要な活動をしっかりととらえて進め、はっきりとした成果を得なければならないとした。供給側構造改革を深化させ、各市場の主体的な活力を刺激し、農村振興戦略を実施する。また地域の協調ある発展を推し進め、全面的な開放という新たな局面の形成を推し進めていく。民生レベルの保障向上と改善を進め、住宅制度改革と長期メカニズム建設を加速させ、さらに多くの優れた生態製品を提供していく、としている。

これが今の中国の大いなる課題ということだろうか?金融リスク、貧困格差、環境問題。どれも今の中国なら解決できそうなテーマだ。息苦しいが、安定している中国。それがこれからの中国の姿のようだ。分裂が際立つアメリカとは違う、新しい大国像ができあがる気がする。

Wall Street Journal
北朝鮮問題、中国が当てにならない訳 (2017.12.7)

北朝鮮を使って米国の力や影響力の限界を鮮明にすることは、アジア・太平洋地域における米国の重要性を損ねようとする中国のより広い戦略に合致しそうだ。米国とその同盟国による一貫した抗議にもかかわらず、中国は東シナ海と南シナ海で人工島群を拡大し、軍事拠点化を進めている。中国は、領有権を巡るフィリピンとの係争で国際裁判所が下した法的拘束力のある判断を無視することができる。このことは、米国主導の国際システムが有効でも重要でもないとのメッセージを増幅することになる。中国に仲介を求めるトランプ氏の手法はこのメッセージを強めることになるだけでなく、中国が自国への認識に影響を及ぼすことにとどまらず、アジアで米国の存在を後退させようと試みる機会にもなる。中国は米韓合同軍事演習と北朝鮮の核開発を同時に凍結する計画を提案した。実現すれば、米政府は韓国との軍事同盟の重要な柱を奪われ、数十年にわたるアジアでの取り組みが色あせる。一方の北朝鮮が現在持つ核能力は無傷のままだ。中国が北朝鮮の好戦的な態度を許しているのは、アジアにおける米国の影響力を弱め、最後にはそれを消し去って、自国の覇権を確立する戦略の一環だ。これに対処するため、米政府は不安定化をあおる中国政府に報いることを避け、中国の動機を覆さなくてはならない。北朝鮮を抑えることに失敗すれば、アジアでの米国の役割は縮小どころか拡大するであろうことを極めて明確に示すことだ、としている。

この著者の意見には同意するが、既視感のある古臭い主張というのも事実。いまのアメリカ政府が、筆者の言う予算をアジアに充てる可能性は低い。前政権がピボットと言って振り向けたアジアへの姿勢が、期待した成果も出せなかったのに、なぜ似た手段をとるのか?政権はそんな感覚を持っている気がする。韓国やフィリピンを見るまでもなく、アジアは中国との連携を強く意識している。すでにパワーバランスは変わりはじめている。しかも、今は中国の方がアメリカよりずっと行動が早く、意思が明確だ。日本がいつ韓国と同じような姿勢に変わるか、私は興味深く見ている。

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