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朝日新聞・社説
核ごみ説明会 議論深める場へ見直せ
原発の使用済み燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を、どこでどう最終処分するか。この難題について国民全体で議論を深めていくために、国の説明会のあり方を根本から見直す必要がある。資源エネルギー庁と原子力発電環境整備機構(NUMO)が10月から都道府県ごとに順次開いている説明会で、学生ら参加者の一部に金品の提供が持ちかけられていた。東京や埼玉など計5会場で39人にのぼる。半年間で福島県を除く全都道府県をカバーするというが、スケジュールありきで開催自体が目的になっていないか。業者が学生を動員したのも、主催者の意向を忖度し、出席者が少ないうえに年長者ばかりではよくないと考えたからではないか。廃炉が決まった高速増殖炉「もんじゅ」が象徴する通り、核燃料サイクルの破綻は明らかだ。海外では最終処分地を決めたフィンランドをはじめ、使用済み燃料を再処理せずに埋める「直接処分」が主流である。 国とNUMOは、自らに都合の悪い情報も伝え、幅広い意見に耳を傾けるべきだ。いまの原子力政策の継続を前提とする議論しか認めないような姿勢では、国民の不信感を強めるだけで、最終処分地選びへの理解は広がらない、としている。
読売新聞・社説
自民合区解消案 参院の役割も同時に議論せよ
自民党が、3年の改選ごとに各都道府県から最低1人の議員を選出する規定などを憲法に追加する案をまとめた。これを根拠に公職選挙法を改正し、2016年参院選で導入された「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区を解消するという。だが、自民党案は、選挙に関する憲法47条と、地方自治に関する92条の小手先の改正にすぎない。自民党の選挙基盤の強い地域で定数を増やす身勝手な案である。15年7月に成立した改正公選法は付則で、19年参院選に向けた抜本的な制度改革について「必ず結論を得る」と明記している。周知期間を考えれば、来年夏までの制度改正が必要である。参院各会派だけの議論では、参院の権限縮小も含めた抜本的な改革案は望めまい。テーマを絞って有識者会議を設置し、提言を受けるのも一案ではないか。このまま何も手を打たなければ、合区のさらなる拡大は避けられまい、としている。
批判の内容も、極めて正しい。合区は裁判所からも一票の格差是正にようやく議員が始めた手段。自民党が集票のために憲法改正に盛り込もうとするのは横暴だ。批判が拡大するのを期待する。
産経新聞・社説
日欧EPA対策 競争力高める改革を促せ
欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)や、米国を除く11カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の発効に備え、政府が国内対策大綱を決めた。関税の撤廃や削減に伴う輸入増で影響を受ける酪農や畜産などの経営を支援し、併せて日本企業の輸出を後押しすることなどが柱である。具体化に向け、まずは補正予算で3千億円規模の対策費を検討している。欧州産チーズの輸入増を視野に入れ、国産チーズや原料乳の生産コストを下げて高品質化やブランド化を支援する。牛・豚肉生産者への赤字補填も拡充する。木材製品の競争力を高める林道整備や加工施設の効率化も目指す。これらの予算化に当たり、その優先度を政府は明確にすることを求めたい。かつてウルグアイ・ラウンドでコメの部分開放が決まった際の農業対策では、6兆円もの巨費を投じたにもかかわらず、農業は強化できなかった。その轍を踏まないよう、施策の見極めが肝要だ、としている。
過去のコメのバラマキが効果ゼロだったとの指摘は有益だ。第一次産業は、バラマキでどんどん衰退している。競争を理解して挑戦している人たちがいるのに、制度が彼らを先駆者とせずに異端と扱う姿勢も変わらない。どちらが勝利するかは明らかだ。
人民網日本語版
一部消費財の輸入関税引き下げへ 平均17.3%から7.7%に (2017.11.25)
財政部関税司によると、国務院関税税則委員会の審議を通過し、国務院の承認を受けて、12月1日より、一部の消費財に対する輸入関税が調整されることになった。国務院の要求に基づき、2015年以降、国民の消費高度化のニーズに応え、国民生活と密接な関わりのある一般消費財の輸入を合理的に増やすため、国は衣類、カバン類、靴類、特色ある食品、医薬品などの消費財の一部について輸入関税を順次引き下げてきた。これまでの引き下げを土台に、今回はさらに引き下げ調整を行い、対象は食品、保健用品、薬品、日用化学製品、衣類・靴類、家庭用設備、文化・娯楽製品、日用雑貨など各種消費財に広がり、8けたの税番号の製品187種類に上る。平均税率は17.3%から7.7%に下がる、としている。
日本経済新聞・社説
「アンドロイド」の成功に学ぶ
米グーグルがスマートフォンの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を開発し、通信機器をつくる企業に無料で提供する計画を発表して10年を迎えた。アンドロイドが広く受け入れられた理由のひとつは、誰でも改良できるようにしたことだ。世界中の技術者の協力を得て開発を加速したといえる。米アップルと同様に、アプリと呼ぶソフトの開発に外部の企業や個人を引き込んだのも大きい。日本にはこうした「仲間づくり」が苦手な企業が多い。だが技術が難しくなり、世界的な競争も激しさを増す中、企業が単独でできることは限られている。外部と協力しやすい体制を築くべきだ。あらゆるモノがネットにつながるIoTや人工知能(AI)の普及が近づき、製造業から金融、小売りまで、幅広い分野の企業が新たな対応を迫られている。生き残りに向けて多くの企業が外部との協力やM&Aの活用を真剣に考えるときだ、としている。
毎日新聞・社説
危機の社会保障 迫る超高齢化 長期展望を欠く政治の罪
突然のけがや病気。収入が断たれる失業。定年後の長い生活。人生には数多くのリスクが存在する。年金や医療、介護といった社会保障は、こうした事態に備えるために国家が整備する安全網だ。国民がその国で生きていくためになくてはならない、とりでである。その大事な社会保障が危機にひんしている。25年時点の介護費用は現在の2倍になり、介護職員は37万人も不足するとされている。人口が集中している大都市部は「介護難民」であふれるとまで言われている。危機は、高齢者人口が増えるということだけにとどまらない。平均寿命が延びることは認知症になる人が増えることでもある。高齢者人口がピークを迎えるころには認知症の人が800万人を超える。認知症対策を中心にした介護の質の転換を急がねばならない。社会の変化に合わせて長期的な社会保障のビジョンを示し、国民の暮らしを支えるのが政治の役割だ。これ以上の時間の浪費は許されない、としている。