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3176.報道比較2017.11.12

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カナダがギリギリで大筋合意を認めないなど、まだ不安は残るが、TPP11は大きな前進。日本は想定外のデメリットを被ることがないか配慮して欲しい。最初の勢いで走っていたら、いつの間にか計算が狂って赤字が続き、迷走するのは最近の日本の負けパターンだ。

産経新聞・社説
TPP11大筋合意 保護主義を阻む礎とせよ

米国の離脱により、一時は崩壊の危機にひんした環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が再始動する。参加11カ国の閣僚が米国抜きの新協定を発効させることで大筋合意を果たした。TPPは、自由貿易や市場経済に基盤を置く国々が、アジア太平洋地域の経済秩序として構築した自由で公正な枠組みである。中国の台頭をにらめば、域内の経済的な結びつきを強める巨大協定を日本主導で進める意義は大きい。日本は交渉を牽引する役割を担った。TPP11に慎重だったベトナムなどに働きかけて合意を促した。国際交渉の場で、経済大国にふさわしい責務を果たせたのは特筆すべきことと評価したい。この際念頭に置かなければならないのが中国である。習近平国家主席はベトナムでの演説で、自由貿易を牽引する意向を改めて示した。中国は、米国のTPP離脱で生じた空白を埋めるように存在感を高めつつある。メキシコやペルーなどTPP参加国を含む中南米の太平洋同盟が、将来的な中国の参加を視野に入れているとされるのも、このためだろう。とくに、習近平政権の「一帯一路」構想が、経済のみならず、軍事的な覇権主義とも密接に結びついた、勢力圏の拡大戦略であることは疑いようがあるまい。TPPにはそんな動きを牽制する戦略性がある。国有企業や電子商取引など、中国が受け入れにくい先進的な項目も少なくない、としている。

毎日新聞・社説
米国抜きTPPで大筋合意 自由貿易立て直す土台に

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に参加する日本など11カ国の閣僚会合は、米国抜きの新協定発効に大筋で合意した。関税を撤廃・削減する約束は変えない。企業の生産や販売活動などをしやすくする共通ルールは凍結対象を絞り込んだ。米国抜きでも、貿易や投資を活発化させ、域内の成長に資する内容になった。新協定は自国優先を振りかざすトランプ米政権への防波堤にもなる。11カ国が合意しても、米国は自国に有利な2国間交渉を個別に迫り、一方的な市場開放を求める可能性がある。だが、新協定は参加国相互の市場開放を取り決めており、米国の要求を拒む役割を担える。今回の合意は米国に復帰を促すてこになる。TPP参加国が農産物の対日輸出を増やすと米国の輸出に不利に働く。米農業界で復帰を求める声が高まることも予想される。米国には粘り強く再考を求める必要がある。安倍晋三首相はトランプ氏と「深い絆で結ばれた」と語る。その関係は説得に生かすべきだ、としている。

読売新聞・社説
米国抜きTPP 保護主義圧力に先手を打った

米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)参加11か国が、新たな協定に大筋合意した。年明けにも署名を果たし、2019年をめどに発効を目指す。TPPは関税の削減・撤廃のほか、知的財産権など広範な分野に及ぶ。次代の世界標準と目される高水準の貿易ルールだ。成長著しいアジア太平洋地域で、協定が再始動する意義は極めて大きい。日中韓印など16か国が交渉中の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)をはじめ、他の貿易枠組みにも有力な指針となろう。TPPは日本にとって、米国の圧力をかわす安全弁となり得る。米国市場以外への進出も視野に入れて交渉したTPP以上には、対米のみの交渉で譲歩できない、という主張が成り立つからだ。11か国は今後、新協定の国内手続きに進む。日本は昨年、元の協定について国会の承認を得た。新協定の関連法案について再び国会審議が必要になる見通しだ。政府には、米国抜きの協定内容と意義を丁寧に説明し、国民の理解を広げる努力が欠かせない、としている。

カナダがギリギリで大筋合意を認めないなど、まだ不安は残るが、大きな前進だろう。Wall Street Journalや人民網は、今のところ静観。どちらもTPPがどれだけ化けるか、形骸化するだけなのかを傍観して、成功すれば飲み込むつもりだろう。特に、当初は対中国包囲網の意識もあったTPPが、中国によって形骸化したのは確実。カナダやオーストラリアを巻き込めば、中国はTPPに参加できる可能性はある。その時、日本は計算外のデメリットを被ることがないか配慮して欲しい。最初の勢いで走っていたら、いつの間にか計算が狂って赤字が続き、迷走するのは最近の日本の負けパターンだ。

人民網日本語版
習近平国家主席がAPEC首脳会議で基調演説 (2017.11.11)

中国の習近平国家主席は10日、ベトナム・ダナンで開催された第25回アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席し、「経済のモデル転換というチャンスをつかみ、 アジア太平洋のさらなる発展を追求する」と題する基調演説を行い、「世界は現在、急速に変化している歴史プロセスにあり、世界経済は深いレベルで変化が起きている。我々はその流れに順応し、勇気を持って責任を担い、共にアジア太平洋の発展と繁栄という明るい未来を開かなければならない」と強調した。開放型経済の構築を堅持し、ウィンウィン実現のために取り組む。平等に話し合い、多くが参加し、多くが益を得られる地域協力の枠組み構築に取り組み、開放型アジア太平洋経済を共に構築し、貿易や投資の自由化、円滑化を促進し、経済のグローバル化がさらに開放的、包摂的で、あまねく恩恵のある、均衡ある、ウィンウィンという方向に向かって発展するよう導く。また、世界のバリュー・チェーンの再構築を積極的に導き、多国間貿易体制を支持し、開放的なローカリズムを堅持する。そして、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築のための「FTAAPの実現に向けたAPECの貢献のための北京ロードマップ」を全面的、かつ確実に実施し、アジア太平洋自由貿易区を構築するという目標に向かって引き続き努力する、としている。

Wall Street Journal
トランプ大統領と習主席、貿易巡る見解対立鮮明に (2017.11.11)

ドナルド・トランプ大統領は10日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)主催の会合で米国の経済ナショナリズムを全面的に擁護し、多国間貿易協定には参加しないと明言した。同`じ会合で中国の習近平国家主席が行った演説と対極的な主張を打ち出した格好だ。米中首脳がそれぞれ示した世界貿易を巡る展望では、習氏が多国間協調とグローバリゼーションを重視する一方、トランプ氏は既存の通商協定を不公平と批判した。トランプ氏の演説後ほどなく登壇した習氏は、技術的進歩を受け入れる一段と包括的な世界経済を提唱し、中国政府は自由貿易の守護者としての役割を担うと強調した。習氏は「われわれは経済グローバリゼーションの大きな変化を目にしている」とし、「多国間協調を維持しつつ、話し合いによる互いの成長を追求し、より緊密な相互関係を築くべき」だと訴えた。米中首脳の主張の相違は、わずか1日前に演出した友好的なムードも台無しにした。トランプ氏は前日まで2日間の中国訪問の中で、習氏と親しげに振る舞い、習氏を「とても特別な人物」と称賛。中国政府の貿易慣行や米国の対中貿易赤字について率直に話し合ったと述べていた。だがこの日の演説では、米国はこれまで市場を開放してきたが、他国が互恵関係の構築を怠り、知的財産を盗み不公正に国有企業を支援したと批判。さらに、諸外国が「製品のダンピングや、補助金提供、為替操作、略奪的な産業政策を行った」と指摘した、としている。

Wall Street Journalの社説は、APECのトランプ氏の演説にはさらに痛烈だ。台無しと言い切っている。

トランプ氏のアジア歴訪、APEC演説で台無し by Wall Street Journal

数日前に中国で行われた形式的な良好な関係は、トランプ氏に言わせれば二国間のディールで、他国とは個別に協議するものなのだろう。それで北朝鮮問題が解決されたり、よりフェアな貿易が推進されるのなら、世界はトランプ氏の聡明さを評価するだろう。だが、今のところTPPの合意をキャンセルしたカナダはNAFTAでもアメリカに譲歩する気はない。日本も日米同盟を貿易のディール対象に使われたら、ずっと笑いつづけるとは思えない。より複雑になるアメリカの商取引は、関税の差異を狙った他国経由の貿易が増えるだけになる気がする。ヨーロッパでルクセンブルグやアイスランドの貿易や租税が利用されるように。
中国が代わりにリーダーシップを担う環境は整いつつある。それを推進しているのは、アメリカだ。

日本経済新聞・社説
「加計」乗り越え特区の再起動を

学校法人加計学園獣医学部(愛媛県今治市)の来春の開学が決まった。文部科学相の諮問機関、大学設置・学校法人審議会が設置を認める答申を出し、林芳正文科相は近く認可する。獣医学部の新設はじつに52年ぶりだ。文科省当局はこれまで、加計学園の計画は4条件を満たしていないと主張し、新設に後ろ向きだった。また早期開学を認めるよう官邸幹部から圧力をかけられたと前文科次官が明らかにし、国会で野党を巻きこんだ論争に発展した。国会審議をみる限り、理事長が開学に便宜を図るよう首相に求めた事実は確認できない。だが首相側の説明もまだ十分ではない。元秘書官は今治市の担当者と官邸で会ったか否か記憶にないと繰り返した。首相と関係官僚には特別国会で説明を尽くす責務がある。この問題があぶり出した行政文書の管理・保存ルールでは、役所の恣意が入る余地をなくすよう行政府にあまねく求めたい。教育分野に限らず保育、介護、法曹、雇用、医療などの官製市場には既得権者が守りたい岩盤規制がある。消費者主権を貫くために戦略特区が果たす役割は大きい、としている。

誤解を招きそうなタイトルには驚いたが、リセットして忘れようという意味ではなく、特区の原則を思い出し、疑念を早く正せと言いたいようだ。国民の意見に近い。政府が誠実に取り組めば、特区でイメージするマイナスの印象は払拭できるのだが。期待できるだろうか?

朝日新聞・社説
子育て支援 「すべて無償化」の前に

安倍首相が衆院選で掲げた「子育て世代への投資の拡充」の具体策を巡る議論が始まった。注目を集めているのが、幼児教育・保育の無償化だ。だが、待機児童は2万人を超え、受け入れ施設が足りない状況が続く。保育士不足も深刻だ。財源が限られるなかで、施設利用者の負担を軽くする無償化が最優先の課題なのか。立ち止まって考えたい。その不公平感の原因を突き詰めると、希望しても認可施設に入れないという現状に行き着く。無償化を認可外に広げても、認可外施設にも入れない人たちがいる。根本的な解決にはならない。いま優先すべきなのは、認可施設を希望する人がそろって利用できるように、受け皿を用意することだ。一人ひとりの子どもに保育士の目が行き届くよう配置基準を引き上げるなど、保育の質を高める。そのために政府は年3千億円を確保すると「社会保障と税の一体改革」を決めた時に約束したが、いまだに実現していない。貧困率の高いひとり親世帯向けの支援でも、積み残しになっている検討課題がある。子育てを社会全体で支え、若い世代への支援を強化する。そのために急ぐべき対策を、広い視野で検討していきたい、としている。

昨日の産経のような真面目な主張。強引に進めれば、安倍氏は自ら墓穴を掘りそうな出口の見えない子育て支援。朝日の真面目な疑問に反論できるだろうか?バラマキと言われず、不公平感も生じない案として。あればさっさと出している。ということは、あの公約はまだ空手形。支持率が上がっていると浮かれている場合ではない。

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