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3148.報道比較2017.10.15

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各紙の社説は、選挙への政策論にすでに息切れ。党首討論でそれなりに盛り上がった先週に比べて話題の質が下がっている。メディアの劣化は政治の劣化よりペースが早い。自らで考えるには、雑音が減って都合がいい。

読売新聞・社説
高等教育無償化 奨学金制度の効果的な活用を

衆院選で各党は、高等教育の負担軽減を公約に盛り込んでいる。安倍首相が今年1月の施政方針演説で、高等教育の無償化を提唱したのが発端だ。憲法への教育無償化の明記を掲げる日本維新の会に歩み寄る狙いもあった。無償化が学生の負担軽減につながることは確かだろう。問題は、大学・大学院、短大、専門学校の完全無償化に年3兆7000億円を要する点だ。財政事情を考えれば、与党内でも疑問の声が相次いだのは理解できる。自民党の公約は、今年度創設された返済不要の給付型奨学金の拡充にとどめている。公明党も現行で月2万~4万円の給付額の拡充を主張する。両党は、2019年10月に予定する消費増税分の使途変更で財源を確保する方針だ。その結果、財政健全化が遅れる弊害を忘れてはならない。国際競争力の低下が懸念される大学教育の改革や、定員割れが深刻な私立大の再編なども併せて論議を深めてもらいたい、としている。

今週末、選挙向けの政策を真面目に捉えているのは読売だけ。自民党に偏りの目立つ読売だが、教育無償化には警戒している。教育の無償化…誰が、これを求めただろうか?安いに越した事はないが、借金まみれといわれる財政でやって欲しいと国民から声が上がった記憶はない。制度の改悪でサラ金のような取り立てを平然とやるようになった奨学金を制度改正したり、潰れそうな大学の統廃合を進めて経営を改善する方が、ずっと効率的で効果的だろう。バラマキと呼ばれるような無意味な厚遇に何の意味があるだろう?私は否定的だ。潰れそうな学校にしてみれば御の字だろうが、潰れるような経営をしていることと、こどもが減っているのに学校が増えているおかしな状況を見れば、業界として未来が暗いのはこどもでも判る論理だ。まさか政治に泣きついて救済を願ったとは思いたくないが、意味不明な制度改革しかしない文部科学省を見ても、日本の教育の未来は、政治の問題以上に深刻だ。政治が腐っても強く立っていて欲しいはずの教育が、保身ばかりで教育者としての本質を忘れている。政治とともに滅びるつもりだろうか?

朝日新聞・社説
衆院選 沖縄の負担 悲鳴と怒り、耳澄ませ

沖縄の悲鳴と怒りに、衆院選にのぞんでいる政党・候補者は改めて耳を傾け、それをわがこととしなければならない。米軍の大型輸送ヘリコプターが東村高江の民家近くに不時着して炎上した。13年前に沖縄国際大に墜落した同系機だ。翁長雄志知事や地元の住民は強く反発している。政府が米軍に対し、原因の究明や飛行停止を求めたのは当然である。徹底解明を米軍に働きかけ、納得できる回答を引き出し、住民の不安や疑問にこたえる。日本の当局による検証や捜査を阻む原因になっている、日米地位協定の見直しに全力をあげる。それが政府の使命だ。しかし政権が米国に本気で迫ることはなく、衆院選の自民党公約にも「地位協定はあるべき姿を目指します」という中身のない一文があるだけだ。「したい放題の米軍」「もの言えぬ日本政府」が続けば、民心はさらに離れ、沖縄に多くを依存する安保政策は根底からゆらぐ。沖縄が背負う荷をいかにして、真に軽くするかは、まさに選挙で問うべき重い課題だ、としている。

産経新聞・社説
衆院選と国際情勢 米大統領来日に備えよ 危機下の外交力が問われる

トランプ米大統領の来日が衆院選後に控えている。解散前から予定されていたものである。政権選択選挙である以上、外交についてもそのビジョンや具体策を論じ合うことが欠かせない。トランプ氏の歴訪は11月3~14日にわたる。各国での首脳会談に加えて10、11日にはベトナムでアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議があり、北朝鮮に急接近するロシアのプーチン大統領も参加する予定だ。続いてフィリピンでは東アジア首脳会議が開かれる。北朝鮮の核・ミサイル開発を支える資金や資源の流れを制裁履行で封じ込み、北を核武装放棄に追い詰めるかが、最大のテーマだ。日米首脳会談で共通の意思を確認し、その後の首脳外交や国際会議の基調を整えてほしい。日本にとり、核・ミサイル問題が膠着する中、拉致問題をどう解決していくかも焦点である。米朝開戦を望む者はいないが、極限まで圧力を高める覚悟がいる。首相は討論会で、北朝鮮がかたくなに翻意を拒むなら圧力を一層強める考えを語った。野党各党の明確な見解を聞きたい、としている。

毎日新聞・社説
総選挙 「○○ノミクス」 核心を突く議論がない

安倍政権の継続か交代か、を問う総選挙である。ならば、政権が最優先課題とする経済再生がどうなったか、アベノミクスは何をもたらしたか、が正面から問われる選挙であるべきだ。希望の党は小池百合子代表の名にちなんだ「ユリノミクス」なるものを掲げた。「マクロ経済にもっと人々の気持ちを盛り込んだ」ものだそうだ。「実感なき景気回復」という言葉をよく耳にする。そこで、「気持ち」重視なのかもしれないが、対抗軸となっていない。ユリノミクスは、企業の利益の蓄積である内部留保への課税の検討を公約に盛り込んだ。大企業優先・家計軽視とのアベノミクス批判を意識したものかもしれないが、そもそも「民間の活力を引き出す」というユリノミクスの主張と相いれない。仮に実現したとしても、現在20兆円もの穴がある社会保障財源を埋めるのは到底、無理だ。「○○ノミクス」のタイトルや、おいしそうだが値段が書かれていないメニューで票を引き寄せる競争は、もうたくさんだ、としている。

政策を語る気もない政治家同様、新聞も真面目に政策を論じてはいない。事件に政党批判をつなげ、無関係なアメリカ大統領来日を語り、言葉遊びを批判するだけで政策を真面目に論じようともしない。私たちは政治家の不誠実とともに、メディアの無力さにも目を向け、批判すべきだ。

日本経済新聞・社説
中国のネット安全法に日米連携で対処を

中国が施行したインターネット安全法への懸念が日米欧で強まっている。「サイバー空間の主権の維持」を目的として、中国で集めた顧客データの中国国内での保存や、海外に持ち出す際の当局の審査を義務づける内容だ。個別の国や企業が発言しても、中国は聞く耳を持つまい。大事なのは国際協調だ。第一歩として日米両政府は16日の日米経済対話の場で懸念を共有し、結束して対応する基本方針を確認してほしい。中国の法律が外国企業を狙い撃ちにしているならば、内外企業の無差別を求めるWTO協定に違反している可能性がある。中国当局が各国に何ら通報せず、中国独自の基準の採用を義務づける場合もWTO協定違反となり得る。米国がTPPから離脱したとしても、中国に「ルールに基づく自由で公正な貿易」を求めていくことは米国の国益のはずだ。日本は引き続きWTOの活用を米国に促しつつ、欧州を含めた共同戦線の足場を固めていってほしい、としている。

衆議院選挙から距離を置き、興味深いトピックを選びながら、考察がいつもどおり浅い。中国がやっていることだけを問題視しているが、EUがプライバシーへの配慮を義務づけた法は中国以上に厳しいし、すでにGoogleに大きな請求を行った。中国だけを批判するのでは筋が通らない。以前から中国はデータを中国国内に置く事を義務づけていたし、6月の話をいま警告する理由も不明だ。TPPやWTOを持ち出す意味もまったく不明。中国でなくても、海外進出には各国のリスクが存在する。それを認識しても大きなマーケットに取り組むかは経営判断だ。日経の危機意識のポイントが判らない。

Wall Street Journal
トランプ氏のイラン核合意「否定」、多国籍企業に警戒感 (2017.10.14)

国連の安保理常任理事国(米、英、フランス、ロシア、中国)にドイツを加えた6カ国が、イランの核開発抑制の引き換えに同国への制裁解除に合意してから2年。以来、多くの欧米企業がイランに進出した。トランプ米大統領がこの核合意を認めないと表明した現在、これら企業の経営幹部は、現行方針を維持するか決めなければならない。トランプ大統領は13日、ホワイトハウスでの演説で、イランが2015年の核合意を順守しているとは認めないと述べた。トランプ氏はまた、核合意に対する自身の懸念に米議会や同盟国が対処しない場合、自ら合意を破棄する構えも示した。このため、イランで事業展開する企業が新たな制裁に巻き込まれるリスクが高まった。ボーイングは昨年、旅客機数十機の売却でイラン政府と合意した後、そうした特別認可を受けた。トランプ政権は、議会や欧州の同盟国との交渉を必要とする複雑な道を歩むことを決めたようだ。米政府がどこへ向かっているのか、新たな制裁を加えることが本当に可能かどうかに関して明確な合図を見極めたい企業にとって、今回のトランプ氏の発言は不透明要因を増やす結果となった、としている。

以前から予兆があっただけに、トランプ氏が起こすトラブルの中では、インパクトは大きくなかったように感じる。イランへの不信は、ロシアと同様、常にアメリカが抱えているトラウマのような感情だ。中東の火種がまた増える。

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