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3053.報道比較2017.7.12

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大幅に後退して現実路線に大学入試改革を転向した文部科学省。方法論も考えずに理想だけ語った結末は「民間に丸投げ」と「大学に選ばせるという責任転嫁」だった。

朝日新聞・社説
大学入試改革 各校独自の選考に力を

センター試験の後を継ぐ「大学入学共通テスト」の実施方針を文部科学省がまとめた。今の中3生から対象になる。知識偏重から抜けだし、もっと思考力や表現力を問う試験にする。ABCなどの段階評価に切りかえて、1点刻みで優劣を競う入試はもうやめる。それが議論の出発点だった。これを受け、実施方針は国語などに記述式問題を導入した。しかし膨大な数の答案の採点が必要なため、長文を書かせる本格的なものにはならなかった。採点は段階評価を検討するというが、それ以外の設問は、選択肢から正解を選び、点数が決まるマークシート方式だ。英語については、話す力や書く力も測れるように、英検など民間試験の結果を用いる。制度変更への不安に配慮して、23年度までは現行試験も残し、大学が選べる方式にした。入試は本来、各大学がそれぞれの教育内容や方針に沿ったやり方で行うべきものだ。共通テストはあくまで受験生の基礎学力を確かめる手段にすぎない。各校の個別入試で独自性を発揮してこそ、個性ある学生と大学が育まれよう。めざす入試改革を実現しようとするなら、スタッフの増強・充実は不可欠だ。国は細かな制度いじりに精力を注ぐよりも、資金やノウハウの面で各大学を後押ししてもらいたい、としている。

毎日新聞・社説
新大学テストでの英語 受験生の負担増が心配だ

大学入試センター試験に代わって2020年度に実施する「大学入学共通テスト」の実施方針を文部科学省がまとめた。英語は23年度までの4年間、現在のマークシート式と、英検やTOEFLなど、民間の試験を併存させることになった。大学がどちらか一方を、または両方を利用できるようにする。24年度からは民間試験に完全移行する。まず心配なのは、受験生の負担増だ。両方の試験をどう使うかは、大学が選択する。志望する複数の大学が民間試験とマーク式の異なる試験を課せば、受験生は両方の準備が必要になってしまう。試験結果の公平な評価を、どう確保するかも課題となる。大学で両方の試験の選択型を採用した場合、もともと性質の異なる2種類の結果を比較しなければならないからだ。文科省は11月に5万人規模のプレテストを実施して、問題点を洗い出していくという。大学側には、新制度が円滑に始動できるか、なお不安が根強い。見切り発車にならぬよう、しっかりとした検証と計画の策定が欠かせない、としている。

昨年末の学習主導要項年明け早々に提示された大学入試改革の骨子から考えると、大幅に後退して現実路線に転向した文部科学省。方法論も考えずに理想だけ語った結末は「民間に丸投げ」と「大学に選ばせるという責任転嫁」だった。毎日が指摘するとおり、そのしわ寄せは受験する生徒、教える教師の負担になり、おそらく塾や学校外の教材には「おいしい改正」になる。ただでさえ、大学のテストの傾向と対策を探るのに労力を割くため、志望校が増えるほど負荷がかかり、狭義の学習に専念することになる。そのスタイルの学習を高校から始めるから、大学から就職の際も「傾向と対策」型の就職活動になり、世に出た時も想定外には耐えられない大人が量産される。文部科学省だけの責任ではないだろうが、教育から改革するとの理想を掲げた割には、やり方を決めていく時に目的を見失い、さらに事態を悪化させる典型だ。
残念なのは、世界最高だったアメリカの大学も教育劣化、費用対効果が合わないと言われはじめていること。他の留学先の選択肢が期待ほど多くないことだ。ドイツに可能性を感じるが、ドイツ語の利用価値は限られる。中国の大学の成長に期待できるのは、10年以上先だろう。ただ、いまの日本の衰退スピードと、文部科学省のような行政なら、私なら留学を優先する。日本の受験制度に合わせて学ぶという発想自体が、すでにガラパゴスであり、世界の競争から置いていかれる原因になっている。

読売新聞・社説
核兵器禁止条約 保有国抜きでは実効性を欠く

核兵器の生産や保有、使用などを広範に禁じる「核兵器禁止条約」が、国連本部での交渉を経て、賛成多数で採択された。9月から署名を受け付け、50か国が批准した後に発効する。100か国を超える参加が見込まれており、発効は確実だ。核保有国は、「現実にそぐわない議論は無意味だ」として、制定交渉に加わらなかった。条約への署名や加盟はあり得ないとしている。日本、韓国、ドイツなど米国の同盟国も同じ立場をとった。問題なのは、核兵器や「核の傘」を必要とする国の安保環境を、条約が考慮していない点である。禁止事項には、核兵器使用の「威嚇」も入る。他国の核兵器の脅威に晒されている国が、核による反撃の意思を通じ、先制攻撃を封じる核抑止力の否定を意味する。北朝鮮の核武装への対処を迫られる日本は受け入れられない。別所浩郎国連大使も、「核兵器国の協力なくして、核兵器がない世界は作れない」と強調した。日本は唯一の被爆国として、保有国と非保有国の間の亀裂の修復に向けて、尽力すべきだ、としている。

読売の論理は正しいが、日本の政治がリーダーシップを担う意志は感じられない。自民党に近い読売がもっとも知っていることではないだろうか?こういう世界的な課題にも、やがて中国が主導権を握った提案をする時代になるだろう。あと数年後だと思う。もし、その発想がアメリカがやってきた自己中心的、我田引水的なものでなければ、世界は中国のリーダーシップを歓迎するに違いない。アメリカの終わりは、もうはじまっている。

産経新聞・社説
「ハーグ裁定」1年 南シナ海に世界の関心を

ハーグの仲裁裁判所が、南シナ海で人工島を造成し、軍事拠点化を進める中国の行動が国際法に反するとの裁定を示してから1年がたった。だが、中国はこれを無視し、状況の改善は見られない。中国は裁定を紙くずなどと呼び、既成事実を重ねながら国際社会が諦めるのを待っているかのようだ。それは、世界の秩序を支える国際法が無視され、「力による現状変更」がまかり通ることだ。放置すれば、米国や日本など自由と民主主義の価値観を共有する国々が作り上げた国際ルールが、恣意的な「中国のルール」に置き換えられてしまう。米国のトランプ政権は7月2日、南シナ海で「航行の自由」作戦を実施した。6日には米空軍の戦略爆撃機が中国が領有を主張する南シナ海の上空を飛行した。仲裁裁判所へ提訴したフィリピンは軍事的、経済的に巨大な中国を前に裁定を「棚上げ」した。フィリピンが中国に取り込まれないよう働きかけを重ねてほしい、としている。

昨年の南シナ海の緊張は激しかった。1年経ち、ドゥテルテ氏は麻薬撲滅を完結できないまま、ISに手を焼いている。アメリカは中国との関係をディールに持ち込んでいる。日本は、政治が南シナ海の危機を利用しただけに見えてくる政治不信がはじまった。産経の中国、韓国、北朝鮮と聞けば脅威と形容していたやり方も変化が必要だと気づいているだろうか?

日本経済新聞・社説
ISとの戦いはモスル解放で終わらない

イラク軍と米軍主導の有志連合が、過激派組織「イスラム国」(IS)が最大の拠点としてきたイラク北部の都市モスルを解放した。ISが首都と位置付けるシリア北部のラッカでも、米軍の支援を受けたクルド人主体の部隊が攻勢をかけている。ISの非人道的な支配は終わりに近づいている。だが、支配地を取り戻すことでイスラム過激派との戦いが終わるわけではない。ISを生んだ中東の混乱を収拾し、世界各地に広がるテロに粘り強く対処していく必要がある。ISは恐怖と暴力で住民を支配した。非イスラム教徒や女性らに残虐な仕打ちを重ねた。市民生活の安定にはまず、民族や宗派間の和解が必要だ。都市インフラの復旧も急がねばならない。イラクではISの台頭により中断を余儀なくされた日本の経済協力事業もある。この再開を準備したい。IS支持者や情報、資金の移動を封じる国際協力がこれまで以上に重要になる。若者が過激思想へ傾倒する原因となる社会格差や、失業など経済不満を解消する地道な取り組みも欠かせない、としている。

日本ではほとんど話題になっていないモスルの奪還。トランプ政権も大々的に言わないのは、オバマ氏の成果に見えるからだろうか?地上軍も大々的な介入もせず、「主導」と表現されるレベルに留めてきたIS掃討が、完結に近づいている。日経の社説から見ても判るとおり、日本のメディアの事態把握レベルは極めて低い。戦闘に参加しているアメリカでさえ、情報は統制されている。それだけ、情報からISに感情移入する可能性がまだ残っているのだろうし、世界的に頻発するテロへの波及を警戒しているのだろう。
日経が言うような復興は、気の遠くなるような話だ。シリアは未だに政府と国民が対立しているし、中東の利害がISと復興に絡む。アメリカはこの先の統治に興味があるようには見えない。中東に委ねるつもりだろうか?誰もリーダーシップを取らない状況が、IS後の混乱をまた悲惨な状態にしてしまいそうだ。

人民網日本語版
中国が日本製ロボットを「爆買い」する理由 (2017.7.11)

中国人が日本で「爆買い」する商品は、かつての便座や炊飯器から今やロボットに変わった。これはどういうことなのだろうか。日本メディアの報道によると、最近、日本の機械メーカーは相次いで工業用ロボットの生産能力向上に努めるようになり、これは主に中国の「爆買い」ニーズをにらんでのことだという。日本ロボット工業会のまとめた統計によると、2017年1~3月の日本ロボット産業の対中輸出額は前年同期比48.3%増加した。現在、中国は世界最大の工業用ロボット市場だ。ここ数年、製造業企業のモデル転換やバージョンアップが加速するのにともない、中国の工業用ロボット産業も発展の「春」を迎え、使用量が大幅に増加している。実際、ロボット技術がもたらすとみられる新しい科学技術産業革命に直面して、世界各国が国際産業競争における発言権を奪い合っている。中国が「メード・イン・チャイナ」から「スマート・マニュファクチャリング・イン・チャイナ」へとモデル転換・バージョンアップを実現させ、ロボット産業の健全な発展を推進したいなら、目下の急務は独自開発への投資を拡大し、革新による駆動の方向性を堅持し、ロボットのコア技術・重要部品での重大なブレークスルーを達成し、ロボット産業の革新システムを構築し、1日も早くロボットの「スマート・マニュファクチャリング」の高みに駆け上がることだ、としている。

中国の爆買いの本質は明白に「ビジネス」だ。自分が使うために大量に買うのではなく、国内で売るために買っている。だから、中国が税のルールを変えただけで一気に爆買いは止まった。さらに、中国はコピー大国だ。同じものが中国でつくられ、売られるのは時間の問題だ。炊飯器や便座は、もうコピーが終わったということだろう。工業用ロボットがコピーされれば、世界のマーケットを失う。
日本人の発想は「脅威だ。売るな。」だろう。違う。世界の発想は「組む相手を探して、コピーよりもいっしょに栄える方法を考える」だ。日本にそんな発想を持った経営者がいることを願う。

Wall Street Journal
米追加利上げに「ためらい」、まず資産縮小開始を=連銀総裁 (2017.7.12)

米フィラデルフィア地区連銀のパトリック・ハーカー総裁は11日、連邦準備制度理事会(FRB)による年内3度目の利上げの是非に関し、最近のインフレの低下傾向で再考を促されていると明らかにした。ハーカー総裁はインタビューで、FRBは年内にバランスシート縮小を開始すべきだと主張。利上げを決める前に、資産縮小に対する市場の反応を見極めるべきとの見解を示した。こうした発言には、金利見通しを巡る認識の変化が見受けられる。先月27日のロンドンでの講演では、今年は既に利上げが2回実施されたものの、年内に「あと1回の利上げが引き続き適切だと思う」と述べていた。ハーカー総裁はこの日、最近のインフレ減速について一部は「一時的なものの可能性」があるとし、「現在は様子見姿勢に入った。(中略)現実的に構えよう」と続けた、としている。

観測気球がはじまった。9月のFRBが判断のための材料を集めている。さらに数々の人たちが、似たような発言をしてくる。その度にマーケットの反応を見ている。プロはFRBのバランスシート縮小を危機のはじまりと受け止めているが、一般の投資家には響かないだろう。マーケットが陶酔していれば、FRBは引き締めのペースを強めるだろう。

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