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2984.報道比較2017.5.9

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世界のリーダーは、プレゼンテーションと言い訳ばかりが上手な人が多くなってしまった。注目を集める言葉より、着実な数字で見える成果の方が価値があることを忘れている。

Wall Street Journal
マクロン氏勝利で一息ついた欧州 (2017.5.8)

7日に行われた仏大統領選はエマニュエル・マクロン候補(39)が勝利した。マクロン氏が新風を巻き起こしたことは称賛に値する。投資銀行出身の同氏は現社会党政権の経済産業デジタル相を辞め、中道系の政治運動「前進」を立ち上げた。このアウトサイダー的な立場と楽観的なビジョンが、既成政党による政治にうんざりしていた有権者の心をつかんだ。マクロン氏は堅実ながらも明確な改革の選択肢を提示した。官僚主義を抑制し、法人税を引き下げ、雇用創出の妨げになる週35時間労働制を改めることを提案している。マクロン氏が改革を推進する力は、国民議会(下院)で同氏がどの政党と組むかにかかっている。6月の議会選で「前進」が過半数議席を獲得できないのであれば、同氏は共和党にそれを期待するはずだ。6月に向けた下地作りの一つは、共和党の重鎮をマクロン政権の閣僚に迎えることだろう。また、新大統領にとっては国家安全保障に関する支援が必要になる。選挙戦中、マクロン氏の説得力が最も欠けていた点だ。同氏が治安機関の人員を増やすと約束したのに対し、ルペン候補がイスラム過激派組織と戦い、国境管理を厳格化すると明言したことは、各地のテロ事件で大勢の犠牲者を出した同国の有権者への訴求力が大きかった。フランスの中道政治はかろうじて守られた。しかし、マクロン氏が経済を勢いづかせる公約を果たさなければ、次回、フランスはこれほどの幸運に恵まれないかもしれない、としている。

産経新聞・社説
仏大統領選 EU危機を越える契機に

フランス大統領選は、中道・独立系のマクロン前経済相が、極右「国民戦線」を率いるルペン氏を大差で破った。欧州連合(EU)からの離脱を問う国民投票実施の公約を掲げたルペン氏に対し、マクロン氏はEU重視の姿勢を示していた。英国民投票やトランプ米大統領の誕生で「自国第一」や排他的主張を掲げる大衆迎合主義(ポピュリズム)の台頭が際立っていた。反イスラムや反移民の主張を色濃く打ち出すルペン氏が決選投票に残る展開も軌を一にしている。マクロン氏の圧勝は、こうした流れに歯止めをかけた。一方で、共和、社会の仏二大政党の候補が第1回選挙で敗れ去り、「国民戦線」が主要野党として存在感を増した側面も見逃せない。国民議会(下院)に支持基盤のないマクロン氏にとり、6月の総選挙でどれだけ支持勢力を形成できるかが当面の焦点となる。フランスは国連安全保障理事会の常任理事国で、先進7カ国(G7)のメンバーでもある。ドイツと並ぶ欧州統合の牽引役として、EU内で強い指導力を発揮し、移民・難民問題などに対処してもらいたい、としている。

日本経済新聞・社説
マクロン氏は仏経済再生と欧州の安定を

フランスの次期大統領に、欧州連合(EU)の統合維持や経済改革の推進を掲げる中道系独立候補のマクロン元経済産業デジタル相が選ばれた。極右政党、国民戦線(FN)のルペン氏を決選投票で大差で退けての勝利だ。厳しい移民制限やEUからの離脱を問う国民投票など、排外的で過激な政策を掲げるルペン氏が大統領になれば、欧州の不安定化は避けられなかった。欧米で目立つポピュリズム(大衆迎合主義)的な政治の広がりが、欧州の中核国フランスで歯止めがかかったことを歓迎したい。優先的に取り組むべき課題は停滞が長引く経済の再生だ。フランスは経済成長が勢いを欠き、失業率は10%前後で高止まりしている。労働市場などの改革が遅れ、欧州随一の経済力を誇るドイツとの差は大きい。企業の活力強化をめざす姿勢のマクロン氏は、規制緩和や法人税減税を説いている。改革を着実にやり遂げて成長力を回復させることが、分断の目立つ仏社会を安定させるうえでも欠かせない。最初の関門は6月の議会選挙だ。マクロン氏の政治運動団体「前進」が十分な議席を獲得し、安定した政権基盤を築けるかどうかが焦点となる。フランス史上最年少の大統領の、改革に向けた決意と実行力に注目したい、としている。

毎日新聞・社説
仏新大統領にマクロン氏 欧州結束に引き戻せるか

フランス大統領選は決選投票で、欧州連合(EU)の統合推進を掲げた中道・独立系のマクロン前経済相が勝利した。仏史上最も若い39歳の大統領となる。マクロン氏の勝因は保革2大既成政党が低迷する中、「右でも左でもない」道を掲げ、若さと新しさを前面に押し出したことだろう。草の根の市民運動「前進」を率い、有権者からの聞き取り調査をもとに支持層を広げた。経済立て直しのため規制緩和を説く一方、弱者に配慮した政策も掲げ、既成の左右にとらわれない道を示した。またグローバリズムを支持し、開かれたフランスを主張した。英国の離脱で動揺するEUは、ひとまず欧州分裂の危機を回避したといえる。マクロン氏は議会での基盤がほとんどない。6月に実施される国民議会(下院)選で、与党勢力をどれだけ集められるかが焦点となる。既成政党と組むことになれば、新しい政治を求める国民の反感を買うことになりかねない。国民の融和と欧州の結束を実現できるか、政治手腕が問われる、としている。

読売新聞・社説
仏大統領選 EU崩壊を防いだマクロン氏

仏大統領選の決選投票で、EU統合推進を唱える中道で無所属のマクロン前経済相が、EU離脱を主張した極右・国民戦線のルペン氏を大差で破り、当選した。史上最も若い39歳の大統領になる。マクロン氏は、新政権の閣僚人事を固めた後、6月の国民議会選で、自ら率いる新政党の議席獲得を目指す。議会は内閣不信任の権限を持つが、これを避けるだけの議席を得るのは容易ではない。規制緩和による経済再生や雇用創出の公約を断行しようとするなら、既成政党との連携や協力など柔軟な対応も求められよう。フランスはユーロ圏第2の経済規模を有し、欧州統合の原動力の役割を果たしてきた。英国離脱という困難なプロセスにあるEUが結束を強めるためには、マクロン氏の努力が欠かせない。だが、EUには安心している余裕はない。実効性のある難民政策の策定や、南北間の経済格差の緩和といった難問が山積する。改革に本腰を入れ、各地におけるポピュリズム政党の勢力伸長を食い止めねばなるまい、としている。

世界中、フランス大統領選挙へのコメントは変わらない。問題は山積。無党派で若いリーダーへの期待値は、しがらみが少ない分、とても高い。フランス国民は、自分の国の大統領を選んだのだろうが、世界はヨーロッパの未来さえマクロン氏に求めている。マクロン氏には、期待にプレゼンテーションではなく、結果で応えてくれる人であって欲しい。世界のリーダーは、プレゼンテーションと言い訳ばかりが上手な人が多くなってしまった。注目を集める言葉より、着実な数字で見える成果の方が価値があることを忘れている。オバマ氏の失望のはじまりは、期待値のがあまりに高かったことだ。アベノミクスもホラを吹き過ぎた。トランプ氏も自らでハードルを上げるのはなぜだろう?黙って仕事をするリーダーが欲しい。

朝日新聞・社説
憲法70年 9条改憲論の危うさ

安倍首相が「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と述べ、9条に自衛隊の存在を明記した条文を追加するなどの改憲構想を示した。安倍政権のもとで、自衛隊の任務は「変質」させられた。その自衛隊を9条に明記することでこれを追認し、正当化する狙いがあるのではないか。自民党は12年にまとめた改憲草案で2項を削除し、集団的自衛権も含む「自衛権」の明記などを提言した。その底流には、自衛隊を他国並みの軍隊にしたいという意図がある。首相はきのうの国会審議でも、草案を撤回する考えはないとした。そもそも憲法改正の発議に向けた議論を担うのは、衆参の憲法審査会だ。その頭越しに行政府の長が改憲項目を指定するのは、与野党協調を重視してきた憲法審の議論を混乱させる。東京五輪の開かれる20年と改憲の期限を首相が関連づけたのも、おかしな話だ。自民党総裁3選を視野に、自らの首相在任中に改憲を実現したいと言っているようにしか聞こえない、としている。

フランス大統領よりは、安倍氏批判を先に置いた朝日は適切だ。政府の緩みが、安倍氏の発言や行動に現れはじめた。次に足下が危なくなるのは安倍氏自身の確率は十分にある。朝日は適切にペンを武器に使うべきタイミングだ。

Financial Times
あらわになる米国の「金権ポピュリズム」 (2017.5.3)

米国のインフラを再建する構想は色あせた。貿易保護主義も中途半端に見える。しかし、規制緩和はまだ目標の1つに掲げられている。税制改革も同様で、財源の裏付けのないバラマキと財政赤字における呪術思考というおなじみの組み合わせが残っている。トランプ氏の政策はますますロナルド・レーガンのそれに似てきているが、その出発点はレーガンのときより好ましくない。トランプ政権提案の減税が加われば、2020年代の初めにはGDP比8%を優に超える一般政府部門の構造的赤字が生じるかもしれない。すると、債務残高は爆発的に増加するだろう。そんなことは容認できない。何しろ、米国の一般政府部門はすでに、GDP比80%超に相当する純債務を抱えている。この値は2008年の世界金融危機の前には45%で、レーガンが大統領に就任したときにはもっと小さかった。ポスト・レーガンの共和党員たちは、選挙運動で文化の問題を取り上げることにより支持基盤に手を差し伸べ、その一方で所得分布の最上位1%のために法律を作ってきた。これは「金権ポピュリズム」だ。トランプ氏はインフラへの支出、貿易保護主義、メディケア(高齢者や障害者を対象とする公的医療保障制度)と社会保障制度への支援を公約に追加したが、やはり最上位1%に利益をもたらすことを計画している。金権ポピュリズムは、政治的には非常に効果的だ。しかし、これは支持基盤をさらに立腹させ、さらに自暴自棄にすることで機能する。いわば政治的な火遊びだ。米国という共和国はトランプ時代を乗り切るかもしれない。だが、その後には果たしてどんなことが起こるのだろうか、としている。

トランプ政権の経済政策に、かなり否定的なコラム。たしかに何の戦略も解決策もなく、辻褄さえ合わせずに提出された減税策は、信憑性もインパクトもなかった。法人税減税がアメリカ国内の雇用や設備投資を前提にしたものなら、まだトランプ氏らしさはあったのだが、たしかに何の根拠もない、共和党流のカネ持ち優遇減税だった。アメリカ経済が量的緩和の恩恵を受けて、FRBが利上げし、失業率が下がって完全雇用に近い好景気の末期に、なぜか減税。普通なら増税して、格差是正や、問題視されている教育への投資が有益なのだろうが…もともと論理破綻が売りのようなリーダーだ。今さら論理を求めても無理だろう。
5月ははじまったばかりだが、アノマリーで下げるSell in Mayの雰囲気はない。むしろ楽観がはじまった。「7の年のサイクル」と著名投資家が形容する波形にそっくりの動きをマーケットがしはじめている。過去に倣うなら、夏に相場が走る。トランプ氏は、そのサイクルを助長するような政策を進めている。

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