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2978.報道比較2017.5.3

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国内5紙が憲法記念日に揃って憲法論を語れる平和。したたかに平和を維持すること、政治の暴走を止めること、世界の役に立てば外圧が機能することを知るだけで十分だ。

朝日新聞・社説
憲法70年 先人刻んだ立憲を次代へ

「すべて国民は、個人として尊重される」。日本国憲法第13条は、そう定めている。根底に流れるのは、憲法は一人ひとりの人権を守るために国家権力を縛るものである、という近代立憲主義の考えだ。個人の尊厳をふまえ、幸福を追い求める権利をうたいあげた13条の文言には、洋の東西を超えた先人たちの思いと労苦が息づいている。ところが自民党は、5年前に公表した憲法改正草案で「個人」を「人」にしてしまった。安倍首相は昨年、言い換えに「さしたる意味はない」と国会で答弁した。人は生まれながらにして権利を持つという天賦人権説を西欧由来のものとして排除し、憲法を、国家と国民がともに守るべき共通ルールという位置づけに変えようとする。これは憲法観の転覆にほかならない。経験知を尊重する保守の立場とは相いれない、急進・破壊の考えと言っていい。70年前の日本国憲法の施行で改めて命が吹き込まれたこれらの概念と、立憲主義の思想をより豊かなものにして、次の世代に受け渡す。いまを生きる私たちが背負う重大な使命である、としている。

産経新聞・社説
憲法施行70年 戦後最大の危機に備えよ 9条改正で国民を守り抜け

憲法改正の「一丁目一番地」は9条を改め、日本が世界の他の民主主義国と同様に、国民を守る「軍」を整えることである。同時に、他者を信頼、依存して自国の防衛という責務を回避する前文も見直す必要がある。さもなければ、厳しさを増す安全保障環境の下、自衛隊と日米同盟に基づく米軍の抑止力を維持、充実させることはできない。民主党(現民進党)や共産党、一部の市民団体は、現憲法は集団的自衛権を認めていないとして安保関連法制定に強く反対した。政府がそれに屈していれば日本は今頃、立ち往生していただろう。9条や前文は、日本が現実的な観点から安全保障を議論することを妨げてきた。それは、国民を守る努力の足を引っ張ってきたのと同じ意味だ。憲法に由来する「専守防衛」の重視ではもはや日本を守れない。わずか10分たらずで北朝鮮から弾道ミサイルが飛来する時代になった今でも、限定的な敵基地攻撃能力さえ保有せずにいる。日本学術会議にとって、自衛隊の装備充実など眼中になく、軍事科学研究を拒む声明を出した。北朝鮮危機を眼前にして、この状況である。国民を守る視点を欠く憲法は一日も早く正すべきだ、としている。

日本経済新聞・社説
身近なところから憲法を考えよう

憲法も世論調査で「大事か」と聞かれれば「そう思う」と答える人が大半だろう。だが、日ごろ憲法の存在をさほど意識せずにいる国民の方が多いはずだ。憲法が日々気がかりな社会と、あまり気にならない社会のどちらが暮らしやすいかはいうまでもない。1年半ほど前、最高裁がこんな判決を出した。女性は離婚後、半年は再婚できないとしていた民法の規定は「過剰な制約」であり、100日を超える部分は違憲と判断した。離婚後に出産した子の父が誰かを科学的に調べることが容易になったことが背景にある。同じ頃、渋谷区が同性カップルに結婚に相当する証明の発行を始めた。憲法は「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」と規定し、政府は同性婚を認めていない。同性婚は合憲か違憲か。70年前には議論にもならなかった。立憲君主制の元祖である英国には憲法がない。こう説明すると、多くの人に驚かれる。英国は王の権力を少しずつ制限してきた。国民は基本的人権や立法権を獲得し、行政権と司法権の分離がなされた。ひとつにまとめた憲法典はないが、過去の勅令や法律を総称して憲法と呼ぶ。英国民は自国が最古の立憲国家であることを誇りに思っている。要するに、形式よりも中身だ。国民が憲法を軽んじれば何が起きるか。明治憲法は大正デモクラシーを育んだが、政党が政争の具にしたことで軍部独裁を生んだ。憲法の書きぶりは大切だが、それを日々の暮らしにどう生かしていくのかは、より大切である。護憲か改憲かだけが憲法論議ではない。まずは身近なところから憲法が果たす役割を考えたい、としている。

毎日新聞・社説
施行から70年の日本国憲法 前を向いて理念を生かす

現行憲法の源流は、敗戦直前に日本が受諾したポツダム宣言にある。「基本的人権の尊重」「平和的傾向の責任ある政府の樹立」などの要求がそれだ。明治憲法は抜本的な改革が避けられなくなっていた。言論の自由や生存権は、永久に侵せない基本的人権として保障された。法の下の平等原則によって男女同権が社会規範になった。憲法施行に先立ち、46年4月の衆院選からは婦人参政権が実現している。時々の国際情勢に応じて日本の安全保障政策はさまざまな圧力にさらされたが、憲法9条は一線を越えないよう引き戻す力になってきた。憲法は国家の根本原則を定めたものだ。どこまでが憲法領域で、どこまでが法律領域かは、国によって異なる。ただ、統治の基本ルールを憲法に明示していなければ政府の恣意的な行動を招く可能性がある。海洋国家・日本の生命線は、世界との平和的なつながりである。現行憲法の役割を、グローバルに発展させることで、後ろ向きの「押しつけ論」から脱却できるはずだ、としている。

読売新聞・社説
憲法施行70年 自公維で3年後の改正目指せ

憲法はきょう、施行から70周年を迎える。国民主権、平和主義、基本的人権を3原則とする憲法は、国民に広く支持され、定着した。一方で、一度も改正されていないため、内外の情勢が大きく変化する中で、様々な歪みや乖離が生じているのは確かである。自衛隊は軍隊や戦力でないため憲法に反しない。今の政府解釈は確かに、極めて分かりづらい。多くの憲法学者が自衛隊を「違憲」と決めつける異常な状況を早期に解消すべきだ、という首相の問題意識は理解できる。国民投票で過半数の賛成が必要という改正のハードルの高さを踏まえれば、幅広い合意形成を優先するのは当然だ。仮に最初の国民投票で改正が失敗すれば、その後、改正は何年も遠のくだろう。9条は憲法改正の本丸だ。国論を二分しかねない、重いテーマでもある。自民党は、衆参両院の憲法審査会の議論を踏まえ、民進党とも丁寧に意見交換し、戦略的に取り組まねばならない、としている。

国内5紙が憲法記念日に揃って憲法論を語れる平和。日経の冷静な視点がもっとも国民意識に近く、感覚として受け入れやすいだろうが、リサーチや他社の事例を調べても、最良のアイディアには至れず、最後には決断の責任は自身にあるのは、どんな世界でもいっしょ。その調査さえ恣意的にやる政府やメディアになっているのが、もっとも残念だが、まだ言論の自由が適切に存在していることと、道を外した時に外圧が機能するだけの国としての魅力は維持しているのは安堵できる。過去3年の憲法記念日の報道比較を見ても、議論は進んでいない。安倍政権の信任は下がり、3年で改憲の機運は後退したように見える。

報道比較2016.5.3
報道比較2015.5.3
報道比較2014.5.3

私たちは、議論ができない。問題点を明らかにし、計画を立て、論点を整理して案を出し、合意を形成して採決する。その後に検証期間を定めて改善を促すシステムまで組み込むのが今では定番だが、日本は基盤となる論点整理や討論が成立しない。国でも、会社でも、学校や家族でも。外国語やプログラミングよりずっと大切な能力だが、教育しないから改善しない。新聞の主張も、国会も、論点は未だにバラバラ。安倍氏がリーダーとして2020年と言うのは自由だが、自民党の憲法草案は論点整理には不適切のまま。指摘されても直す意志がなく、批判する側も草案は準備しない。計画をリーダーが立てたら強行して守ることが優先されるから、議論が本質から逸脱する。やはり、私たちは議論ができない。
いまの自民党の憲法草案での改憲が動きはじめたら、天皇陛下は役割を拒絶するだろう。欧米諸国、日本と対立する中国や韓国、侵略を受けたアジア圏の国々も、揃って時代逆行の懸念を表明するだろう。だから大丈夫と安心してはならないが、今の憲法を守るための近道は、無関心に距離を取らず、日本が危うさを増した時に、適切に海外に危機を理解してもらい、外圧を駆使することだと思う。うまくやらなければ、改憲を望む人が言う「外国に利用され、自分の意志で動けない国」になるが、今の自民党の案に従うくらいなら、海外に押し付けられた平和憲法の方が、世界の中で行きていくには適切だ。70年前の日本は、いまの北朝鮮に似ている。日経が言う「英国に憲法がない」以上に、日本国民の戦後世代は驚くのではないか。その北朝鮮時代に戻ろうとする憲法改正を、自民党草案は提示している。その理由に北朝鮮の脅威を使う今の政府は、当時、欧米列強と他国を敵視していたのに似ている。
安倍氏もまた、議論が下手なリーダーだ。今のままなら、2020年と目標設定した憲法改正は、自民党草案のレベルで成立させるのは難しいだろう。経済も立て直せず、増税もできず、拡げた風呂敷の半分にも満たない実績で成果を強調する人だ。監視と発信をつづければ、世界は日本の変容に確実に圧力を与えてくれる。戦後70年。私たちは自ら変われる能力はまだ持っていないようだ。憲法などと大それた話をできる議論の能力を、私たちは持っていない。それでも、したたかに平和を維持すること、政治の暴走を止めること、世界の役に立てば外圧が機能することを知るだけで十分だ。

Wall Street Journal
トランプ氏、米政府機関の閉鎖「混乱解決」に必要と指摘 (2017.5.3)

ドナルド・トランプ米大統領は2日、優先課題について議会の承認を得るためには政府機関の閉鎖や上院規則の変更が必要になる可能性があるとの見解を示した。ホワイトハウスは先日の議会でのつなぎ予算案承認について、民主党の勝利だったとの見方を打ち消そうと務めている。トランプ氏はこの日の朝、ツイッターへの2つの投稿で「共和党と民主党の間で法案が交渉中である理由は、上院で60人の賛成票が必要だがそれに達していないためだ」とし、「2018年は上院に共和党議員をもっと選出するか、51%(の賛成で可決)に規則を変更するかだ。米国は混乱状態を解決するために9月に十分な『閉鎖』が必要だ」と述べた。議会は政府機関の一部閉鎖を回避するつなぎ予算の期限である5日中に、向こう5カ月の予算案を採決する見通しだ、としている。

トランプ氏はディール手法を変えていないようだ。交渉にはいくつものスタイルがあるが、トランプ氏は相変わらず脅しからはじめて妥協で終わらせる型で議会を進めている。側近の入れ替えで変わったのは政策。やり方は大きく変わっていない。信念で大統領になった人ではない分、公約は平然と軌道修正されている。過激で時代に逆行するような政策が軌道修正されたのはありがたいが、トランプ氏は大統領をこなすだけの存在になりつつあるようにも見える。安心できない。

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