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2976.報道比較2017.5.2

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大型連休中の予定された原稿は、平穏の象徴。朝日と産経が、朝日の過去に向き合う姿勢を見ると、日本はまだギリギリの一線で健全な領域に踏みとどまっていると安心する。

朝日新聞・社説
阪神支局襲撃30年 覚悟をもって喋る、明日も

兵庫県西宮市の朝日新聞阪神支局に散弾銃をもった男が押し入り、小尻知博記者(当時29)を殺害した事件から、3日で30年になる。支局3階の資料室には、小尻記者らが座っていたソファも展示されている。名古屋本社寮襲撃、静岡支局爆破未遂などと続いた一連の朝日新聞襲撃事件は、「赤報隊」を名乗る犯人が不明のまま、2003年に時効となった。計8通の犯行声明から浮かぶのは、身勝手な決めつけと、戦前への回帰志向である。「日本で日本が否定されつづけてきた」とし、「日本人が日本の文化伝統を破壊するという悪しき風潮がいきわたっている」。そして「反日分子には極刑あるのみ」と結論づける。異論を排除する、すさんだ言葉の横行は、安倍政権の姿勢と無縁ではなかろう。「国益を損ねるな」「政権の足を引っ張ってはいけない」。そんな「同調圧力」が、社会全体を覆い始めている。自由にものをいい、聞くこと。その普遍的な価値を、社会と共有していきたい、としている。

産経新聞・社説
朝日支局襲撃30年 暴力には言論で対決する

昭和62年5月3日、朝日新聞阪神支局に目出し帽の男が侵入し、散弾銃を発砲した。当時29歳の小尻知博記者が死亡し、もう一人の記者も重傷を負った。あれから、30年になる。「赤報隊」を名乗る犯行声明には「反日分子には極刑あるのみ」などとあった。事件は、朝日新聞の言論に対して暴力と恐怖で屈服させることを企図したテロである。それが白色テロであれ、赤色テロであれ、主張の如何に関係なく、許されざる蛮行である。言論に対峙すべきは、言論である。卑劣な銃弾によって、ペンを曲げることはできない。社が掲げる「産経信条」は、以下の一文で始まる。
「われわれは民主主義と自由が国民の幸福の基盤であり、それを維持し発展させることが言論機関の最大の使命であると確信する。したがってこれを否定するいっさいの暴力と破壊に、言論の力で対決してゆく」決意は、揺るぎない、としている。

朝日と産経が、朝日の過去に向き合う姿勢を見ると、日本はまだギリギリの一線で健全な領域に踏みとどまっていると安心する。
産経の価値観には相当の違和感があるが、ジャーナリズムの精神は誠実に維持されている。読売も2本目の社説に産経に似た姿勢を取っている。政府に同調する姿勢ばかりが目立つが、精神は揺らいでいないと信じたい。むしろ、朝日が過去を振り返りながら現政権を攻撃する姿勢に、多少の違和感を覚える。相手が権力者ということと、政府の言論統制姿勢への反応としては適切だが。
過信はできない。メディアは言論の自由と、暴力は絶対悪との姿勢を堅持できているが、ヘイト・スピーチのような過激な言論が、平然と存在できる時代になった。言論行動がエスカレートすれば、次は暴徒になる。権力者は森友学園のように、風向きで動き、本心を見せない。衝動で動くのは権力者ではなく、社会の方だ。憂慮すべきは政治ではない。社会の変容を、平然と放置していることだ。アメリカやヨーロッパの分断に似た荒廃が、日本にも確かに存在する。

日本経済新聞・社説
北の脅威を見据えた米艦防護

北朝鮮情勢の緊迫を受けて、稲田朋美防衛相が安全保障関連法に基づく初めての「米艦防護」を自衛隊に命じた。日米の緊密な連携によって、北朝鮮の無謀な行動を抑止する狙いがある。政府は不測の事態に備え、米韓両国などと協力して日本周辺の安全確保に万全を期していく必要がある。政府は安保法に基づく新任務として昨年11月、南スーダン国際平和維持活動(PKO)に携わる陸上自衛隊の部隊に、民間人らを危機から救う「駆けつけ警護」と「宿営地の共同防護」を付与した。ただ適用の機会はなく、新任務は今回が初実施となる。平時から有事までの切れ目のない自衛隊の対応は、安保関連法が目指した法体系の中心的な考え方だ。日米同盟の強化は日本の安全保障にとどまらず、東アジアの安定に向けた屋台骨である。一方で米艦防護などは自衛隊と米軍の一体化を招き、日本が戦争に巻き込まれる可能性が増すとの懸念もある。どういう地域や状況で実施するかは、政府が慎重に見極めていく必要がある、としている。

毎日新聞・社説
自衛隊が初めて米艦防護 実績作りを急いでないか

安全保障関連法で自衛隊の新たな任務となった「米艦防護」が初めて実施された。米軍の要請に応じ海上自衛隊の艦船が米軍の艦船を守る。今回の米艦防護は、米国が北朝鮮に対する軍事的圧力を強めるため、朝鮮半島沖に艦船などを結集させる動きの中で実施された。具体的には房総半島沖から西に向かう米軍の補給艦に海自最大のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」が並走する。日米の一体化を北朝鮮に対してアピールする狙いがある。米艦防護は稲田朋美防衛相の命令に基づくが、「特異な事象」が発生しない限り公表しない方針だ。しかし、こうしたリスクを負う実力部隊の自衛隊の運用が国民の目から遠ざけられ、その承認に国会が関与しなくていいのか、という疑問は残る。米艦防護は米軍のニーズが高い任務とされる。それが日常化する恐れはないのか。慎重な運用が必要だ、としている。

読売新聞・社説
海自「米艦防護」 双方向の協力で同盟を強固に

政府は、昨年3月施行の安全保障関連法に基づき、海上自衛隊艦船が平時に米軍艦船を守る「米艦防護」を初めて実施した。ヘリコプター搭載型の海自護衛艦「いずも」が、房総半島沖で米海軍補給艦と合流し、四国沖まで共に航行する数日間、警護する。補給艦はその後、日本海で米原子力空母「カール・ビンソン」などに給油する可能性がある。日米安保条約上、米国は日本防衛の義務を有する。日本は米軍基地を提供し、米国防衛は行わない。片務的ではないにせよ、この非対称の関係が、日本は何もしないという米側の不満の要因だった。今後、防御が手薄な空母や、ミサイル迎撃態勢にあるイージス艦などの防護要請も想定される。実績を着実に重ね、双方向の協力を充実させるべきだ。米艦防護を通常の任務として円滑に実施できる同盟関係を構築することが肝要である、としている。

慎重派の日経、毎日の懸念は国民の半数が持っている感覚だろう。政治に求めたいのは、基準の公開だ。どの線を越えたら動くのか。臨機応変ができるほど、日本の政治や防衛は成熟していない。アメリカの大統領でさえ、レッド・ラインの定義は明示する。示さなければ不安になるのは当然で、リーダーシップの義務だ。日本の政治が義務を果たしているのを見たことがない。

Wall Street Journal
THAAD配備費用、米負担も再交渉あり=米大統領補佐官 (2017.5.1)

トランプ米政権のH・R・マクマスター大統領補佐官(安全保障担当)は4 月30日、北朝鮮の攻撃から韓国を守るための米ミサイル防衛システム「THAAD(サード)」の配備について、米国が費用を負担すると韓国側に伝えた。しかしその数時間後には約10億ドル(1110億円)とされる費用の支払いについて、米国が今後、再交渉を求める可能性があるとした。THAAD配備費用の負担を巡っては、トランプ氏がロイター通信と米紙ワシントン・タイムズとのインタビューで言及した内容が韓国で波紋を呼んでいた。FOXニュースに出演したマクマスター氏は、THAAD配備の費用負担について、米国がこれまでの合意内容を守るとしつつも、トランプ氏の発言を否定する意図はなかったと強調した。「米国大統領の発言と矛盾するようなことは決してしない」とマクマスター氏は述べ、「THAADの状況についても、今後の防衛協力関係についても、他の同盟国と同じように再交渉することになるということだ」と続けた、としている。

当然だろう。安全の値段はゼロではない。相手はアメリカ、世界一の資本主義国だ。アメリカからずっと請求書が届かない方が、むしろ恐ろしい。

Financial Times
習近平主席の壮大な都市建設計画に立ちはだかる壁 (2017.4.27)

最初の皇帝が自分の墓を永遠に警護させるために陶器製の兵士で大軍を作って以来ずっと、中国の指導者たちは壮大な計画の表明や巨大な建造物にとりつかれている。人里離れた湿地帯を「緑豊かで革新的な、世界クラスの」大都市に、それも香港の2倍、ニューヨーク市の3倍近くの規模の大都市に変えようという習近平国家主席の計画は、まだ控えめに思える。「雄安新区」という新都市を作るこの計画が4月1日に発表されると、厳しくコントロールされている中国の国営メディアは「千年の大計、国家の大事」と持ち上げた。雄安新区は、北京市街地から100キロ以上離れた河北省の田舎にある。港も、自然による優位性もなく、商業や企業の中心になったことは1度もない。習氏がぶち上げた雄安新区の計画に対する最初の反応は、滑稽であるのと同じくらい予測できるものだった。この地区の不動産価格が一夜のうちに3倍に高騰したのだ。これを見た政府は、不動産の売買を禁止して不動産仲介業者71社を閉鎖したうえに、詳細が明かされていない「不動産違反」の疑いで7人を逮捕した。これを受けて中国共産党は、支配下にあるインターネット検閲部隊に、雄安新区に対する否定的なコメントや批判をすべて即刻削除せよと命じた。兵馬俑や万里の長城の時代なら、そんなことをする必要はなかっただろう、としている。

習氏の「雄安新区」構想を、中国と思想では対立し、経済では競争しているアメリカのWall Street Journalは冷静に分析し、AIIBにも名を連ね、良好な関係があるはずの英国のFinancial Timesは冷笑めいた批判をしている。
カネだけつぎ込めばうまくいくなら、ビジネスにリスクはない。蒔けば必ず実るわけではない、釣り糸には必ず魚がかかるはずがないのと同様、ビジネスに失敗は付き物だ。勝因は通常、知識と、リーダーシップと、戦略。資金力や精神論ではない。
Financial Timesの主張が正しいなら、中国の勝率は低いようだ。習氏のリーダーシップが卓越しているとは聞いた事がない。成功事例も目立たない。外国の参入も抑制するなら、知識は中国内に頼ることになる。最後は戦略に頼ることになる。まずは、様子を見よう。次のリーダーが、計画を引き継ぐかを見届けてからでも十分間に合いそうだ。習氏にとっては、能力を象徴するプロジェクトになりそうだ。失敗しそうになった時、無駄につぎ込むに違いない。なるほど。アメリカの思惑が見えてきた。

人民網日本語版
中国の決済清算業務量の伸びが世界一に (2017.5.1)

中国人民銀行(中央銀行)の管轄下にある中国決済清算協会はこのほど、報告書「中国決済清算産業運営報告(2017年)」を発表した。それによると、2016年に全国で処理された非現金決済業務は1251億1100万件、金額にして3687兆2400億元(1元は約16.2円)に上り、件数は前年比32.64%、金額は同6.91%、それぞれ増加したという。世界の比較可能なデータと比べると、昨年の中国の非現金決済業務量は世界全体の22.12%を占め、増加率は世界平均の4倍以上だったことがわかる。同報告書は、「中国の決済清算産業の発展は急速で、業務量の伸びは世界一」と記す。また、「中国のインターネット決済やモバイル決済を含む新興決済業務が急速な伸びを維持している。人民銀の范一飛副総裁はこのほど2017年の決済清算業務をめぐるテレビ電話会議に出席した際、「決済産業の局面は改革革新の中で調整を加速させ、政府の監督管理業務に対しより高い要求をつきつけるようになった。決済分野でのルールに合致しているかどうかのリスク、操作をめぐるリスク、経営をめぐるリスク、業務の連続性に関連したリスクといった各種リスク要因は軽視できないもので、以前からあるリスクをはっきり認識すると同時に新しいリスクも把握する必要がある」と述べた、としている。

モバイル決済の先進国が中国なのは、誰もが認める。インドも急速に追い上げている。

インドでモバイル決済急増、ATMなくなる? by Wall Street Journal

クレジットカードや、PayPalのような決済サービスは、強力なライバルの登場だが、サービスを時代に合わせてシフトれば、時代には追随できる。アップルやフェイスブックが先に椅子に座っているが。
やがて、各国政府がキャッシュをやめるという話題も、現実味が増してきた。インドがモバイルで徴税をうまくやれたら、アメリカは見逃さないだろう。
日本のマイナンバーも、インドのような発想で進んでいるなら興味深い。

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