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2917.報道比較2017.3.14

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経済の話題が社説に多い。スキャンダルに時間を使う政治より、ずっと興味深い。視点を変えるだけで、冬が春になった印象。

毎日新聞・社説
民泊法案 地域共生型の宿泊所に

住宅やマンションに旅行者を有料で泊める「民泊」が、全国規模の解禁に大きく近づいた。年180泊を上限に民泊を認める住宅宿泊事業法案(民泊法案)が閣議決定された。民泊法案は、都道府県知事への届け出だけで民泊を行えるようにするものだ。合法な事業者が増え、外国人旅行者の急増により深刻化しているホテル不足の緩和につながることを、政府は期待しているようだ。法案は民泊の提供者に対し、外国人旅行者に設備の説明や騒音防止への協力を外国語で行うよう求めているが、顔の見える民泊にまで一律に義務付けるのはどうだろう。一方、マンションの部屋を大々的に確保して「民泊業」を営む事業者については、どこまで違反者を摘発できるかという不安がある。周辺住民とのトラブルも心配だ。家主不在型の民泊は、国土交通省に登録した管理業者が管理することになっている。利用者が外国人であれ日本人であれ、ふれあいや相互理解を促し、地域と共生する民泊を目指すべきだ、としている。

毎日に魅力的な社説が乗ったのは久しぶりだ。素直にうれしい。
民泊は、私はずっと価値が見出せないのだが、規制緩和と受け止めるべきなのだろうか?今まであり過ぎた規制を撤廃するなら賛成。だが、住宅に宿泊して対価を得るのが違法となるのを、条件が整えば良しとするくらいの緩和なら、納得感はあるが、やはり魅力が見出せない。毎日が社説で指摘しているとおりの論点が気になる。この法案を審議している意味は、雇用を増やしたいのか、インバウンドで逼迫している宿泊需要のために規制を撤廃したいのか、全国にある空き家を何とかしたいのか…何だろう?そのすべて?すべてというなら、そんなにうまい法案はできないだろう。
推進したいAirBnBのような企業の意図は判るが、それで…何か経済メリットがあるだろうか?AirBnBのビジネスがしやすくなるだけなら、意義が小さ過ぎる。雇用なら、今の議論はおかしい。民泊を許可する代わりに、就業者を常駐させなければ雇用は増えない。そうなれば、クリーニングから管理、防犯など、数々の雇用は創出されるだろうが、AirBnBが想定している民泊スタイルとはかなり差がある。私は、それでも安全を重視する方が日本流だと思うが。
インバウンドも、少し議論に違和感がある。もし、外国人に宿泊してもらうなら、民泊を利用すべきは、あふれてしまった日本人旅行者だ。言葉も判らず、ケアが必要な外国人こそ既存の宿泊施設を利用すべきだし、コストダウンのために住宅を使う目論見なら、確実に破滅的な損害が住宅に残されるだろう。マナーという意味ではなく、文化も違う人たちが、安さ優先で使う宿泊施設をどう使うかは、想像は容易だ。すでに爆買いは止まった。流入は維持しているが、流入者が日本の宿泊施設に民泊を切望しているとは聞かない。宿泊施設が足りない、不便だという意見は良く聞くが、住宅を使ってその問題が解決されるだろうか?
空き家の利用を模索しているなら、そんなに虫のいい話はない。部屋が空いている時点で、供給過剰、利便性が悪い、経済合理性が合致しないのいずれかだ。住宅として価値のないものが、宿泊所としてなら価値を持つ…私は、それが日本の住宅に存在するとは思えない。リゾートに景観重視でつくって売れ残っているマンションのことだろうか?日本人が毎日使う住居費より、外国人が毎日泊まりに来る民泊の方が儲かる場所が、日本にどれくらいあるだろう?この規制緩和から、民泊REITなどが生まれはじめたら「またはじまった」と嗤うことにする。
素直に外国人渡航者のための宿泊施設をつくるなら、税制で優遇する。その方がシンプルで、民泊より安全で、都市は活性化し、金融機関も、既存の事業者も納得する。そうしなかった思惑が、財界にも政治にも行政にもある。きっと、その思惑が叶うことはないだろう。消費者は、常に合理主義だ。

日本経済新聞・社説
百貨店は生き残りに向けて構造改革を

百貨店大手、三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長が、業績不振の責任を取って退くことになった。ネット通販の台頭などで、百貨店業界の売上高は最盛期の9兆円台から5兆円台まで縮んだ。生き残りのためには各社とも抜本的な構造改革が必須といえる。大西社長は改めて百貨店の原点に戻り、都心の基幹店で最先端の流行情報を発信したほか、他店との同質化を避けるため独自商品を開発するなどの策を打ったが、実を結ばなかった。従来型の百貨店の理想像を追う難しさを示したともいえる。消費不振の中でも、JRグループの駅ビルは比較的、売り上げが好調だ。通勤途中などに立ち寄れる便利さだけでなく、売り上げ不振のテナントはすぐ入れ替えるなど、消費者本位の運営が支持された。百貨店にはこれまで、客より納入業者に目を向けがちな空気はなかったか。厳しく反省したい。小売業界は、最後は消費者に支持される店だけが生き残る。自社が提供すべき価値は何か。厳しく問い直してほしい、としている。

テーマは良かったが、内容はかなり大雑把。流通を知っている人が書いた雰囲気ではない。大西氏の退任は、セブン&アイの鈴木氏の退任同様に業界には衝撃だったが、経済系のメディアからはスタンドプレー、四面楚歌と一様に求心力低下が原因との記事が多数。事業環境や業績よりも内部要因の問題のようだ。
鈴木氏の時と状況が似ている。功績を残した人が、次の難局を内部要因で越えられない。カリスマと呼ばれる経営手法は、結果が出なくなった時、苦しい。残った人たちが成果を出せるかも未知数。内部が分裂しているなら、立ち直らせるためのリーダーシップが必要になり、カリスマ依存からの脱却はマイナスからの出発に等しい。結果が伴わないのを前任者の責任にできる時間は、せいぜい半年から1年。その間にリスタートできなければ、社長を何度も入れ替える迷走がはじまるだろう。政治でもよく見られる風景だが。
流通は、日経の指摘どおり、環境はサイアクだ。アメリカの百貨店不振は、この春、一気に進んだ。ウォーレン・バフェットがウォルマートの株を手放しているのが、時代の終わりを示している。アメリカの撤退判断は早いし、退くからには次の攻めをイメージできているか、そのための資金を温存している。日本のような消耗戦はしない。アマゾンによるEコマースはショッピングモールを駆逐しているが、ショッピングモールにアマゾンが投資する可能性も、モールの業態進化への期待も議論されている。苦難の捉え方が、まるで違う。
ショッピングが、どこまでなくなるかはまだ判らない。世界からすべてのショップが消えるはずはないが、もっと通信販売でいいと思っている人は多いだろう。ヤマト運輸が抱えるような問題が解決されれば、さらにショップは消えるかもしれない。確実なのは、時代に合わない店舗から淘汰されることだ。内部抗争している場合なのかは、現場が最も知っているだろう。

Financial Times
米国市場を狙うアジアのハイテクトップの「連合」 (2017.3.9)

米国のドナルド・トランプ大統領とシリコンバレーの関係は、これまでのところギスギスしたものになっているが、東洋の3人のハイテクリーダーは大統領がまさに望んでいた贈り物を持ってきてくれた。投資と雇用、そして工場だ。その3人とは、アジア最大級のハイテク企業グループの代表者である。日本のソフトバンクの創業者・孫正義氏、中国の阿里巴巴(アリババ)を立ち上げた馬雲氏、そしてアップルのために推計750億ドル相当のハードウエアを昨年製造した台湾企業フォックスコンの郭台銘氏だ。郭氏はトランプ氏に面会していないが、米国に工場を作る構想があることを示唆している。孫氏は、フォックスコンが日本の老舗企業シャープを35億ドルで昨年買収した取引でも舞台裏で支援した。シャープの取引銀行と引き合わせるのを手伝ったり、郭氏を「親友」と呼んだりした。これはなかなか良い話だ。孫氏には、電子辞書の特許をシャープに売ることによって初めて好機を手にしたという過去があるからだ。ソフトバンクを率いる孫氏は今や、共同出資者であると同時に仲介者としても活動している。ソフトバンクなどの説明によれば、米国への投資と雇用創出の約束は互いに独立したものであり、同じタイミングで発表したのは全くの偶然だという。しかし、トランプ氏の隣で満面の笑みを浮かべた孫氏が掲げる書類には、フォックスコンのロゴの隣に70億ドルという数字が暗号風に書かれていた。これは郭氏が後に、米国での液晶ディスプレー工場建設に使うつもりの金額だと明かした数字そのものだった。ソフトバンクとフォックスコンの約束につながりがあったことは明らかだ、としている。

欧米から見ると、3人のアジア人は、興味深い経営者像だろう。日本人としても誇らしい。
この3人に共通するのは、自国以上に海外で評価されていることだ。日本国内の孫子に対する嫉妬も含めた嫌悪は、世界では皆無。私はテクノロジーで何も生んでいない孫氏に感動を覚えたことはないが、彼のITの未来展望には、いつも同意見だ。彼が今、IoTに入れ込む理由も、中東に近づきたい理由にも納得する。
アジアから世界へ、経済で足跡を残すには、この3人のようなアプローチを真似るのがもっとも早い。彼らのやり方は、欧米の経営とも遜色ない。モノづくりにこだわるなら、トヨタやソニーを語るより、フォックスコンを学ぶ方が、よほど時代に即している。日本人の価値観が、この3人に追いつくのはいつだろうか?

朝日新聞・社説
大震災から6年 「共有」を復興の突破口に

東日本大震災の後、すでに二十数兆円の復興費が投じられた。津波被災地では宅地造成や公営住宅の建設が進み、まちの姿が少しずつ見えつつある。一方で、公共事業のピークが過ぎるにつれて、震災前からの過疎化に拍車がかかっている厳しい現実が浮き上がる。避難先で新たな生活を始め、故郷に戻らない被災者が少なくない。企業誘致や起業の呼びかけも、人口減を埋めるにはほど遠い。定住者を増やすことだけにこだわるのはやめよう。さまざまな体験や知恵、技術の「共有」を通じて、全国各地の人たちの力を借りながら、復興への突破口を開けないか。そんな民間人発の試みが、静かに広がりつつある。震災での死者・行方不明者が1千人を超え、市内の住宅の3割近く、事業所の5割強が被災した岩手県釜石市。ラグビーのまちとして知られるだけに、東北唯一の会場となる2019年のラグビーW杯を復興の起爆剤にと期待する。W杯後をどうするか。地元NPOが提案したのは、まち全体をパビリオンに見立てる取り組みだった。市外の人たちが漁場や鉄工所、レストランを訪れ、仕事を手伝う。民泊と合わせて市民の等身大の暮らしを共にしてもらい、ラグビー以外にも釜石ファンを増やすのが狙いだ、としている。

産経新聞・社説
陸自PKO撤収 国際貢献へ不毛議論排せ

政府が、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣している陸上自衛隊の施設部隊を撤収させる方針を決めた。国連当局や南スーダン政府は、日本に理解と謝意を表明した。およそ5年間の11次にわたる派遣で延べ4千人の陸自隊員が、アフリカの新生国家の建設に貢献したことを評価し、誇りに思う。南スーダンPKOは、積極的平和主義を掲げる日本の国際貢献として一定の成果をあげた。安全保障関連法の施行により、駆けつけ警護と宿営地の共同防護の新任務を付与する前進もあった。自衛隊を国際標準の軍隊とみなさない憲法解釈が招いた「神学論争」が、安保関連法施行後も国会で横行した点も極めて残念だった。現地政府軍と反政府勢力の「戦闘」の記述が派遣部隊の日報にあり、政治問題化した。派遣が許されない「法的な意味での戦闘」ではなかったのに、混同する不毛な議論が続いた。国際社会の安定に資する自衛隊の海外派遣は今後も求められる。それを全うする態勢を整える改革がなお必要だ、としている。

読売新聞・社説
民進党大会 憲法改正論議から逃避するな

民進党が定期党大会を開いた。蓮舫代表はあいさつで、「私の政治人生すべてをかけて、共生社会を政権交代で実現したい」と訴えた。民進党の支持率は1けたにとどまる。40%前後の自民党との格差は大きい。「豊かな社会を育み、暮らしに寄り添う政治をつくる」などと抽象論を唱えるだけでは、支持拡大には結びつくまい。現実的で説得力を持つ政策を練り上げ、地方組織を地道に拡大する取り組みこそが大切である。採択した2017年活動方針は憲法改正に関して、「時代や民意の変化を踏まえた議論を積極的に行う」と言及している。民進党は、国会の憲法審査会の審議に消極姿勢を続けている。党内の護憲派や共産党などへの配慮もあろうが、国家の基本に関わる議論を回避すべきではない。党内外の様々な声に真剣に耳を傾けたうえで、いかに意見集約を図り、安倍政権と対決するのか。蓮舫氏の指導力が問われる、としている。

政治オタクの思考が強い3紙は、昨日の他紙のトピックをなぞるような内容。政治動向に偏向し、大きなニュースが一気に渦巻いた後の凪いだ時に、息継ぎのようなレベルの低い社説が並ぶ。体力不足、能力衰退の印象だ。社説を形式的につづけるより、大きなトピックに対して社としての意見をまとめるWall Street Journalのスタイルに移行した方がいいのではないだろうか?

人民網日本語版
人民銀総裁「中国の外貨準備世界一に平常心を維持」 (2017.3.13)

全国両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)の開催期間中には、中国の国境を越えた資金の流動が注目を集める話題の一つになった。7日には国家外貨管理局が2月の外貨準備残高は3兆51億2400万ドル(約344兆9581億8400万円)に上り、前月比69億ドル(約7920億5100万円)増加して、7カ月続いた低下局面が転換したことを明らかにした。中国の外貨準備残高が世界一で、2位を大きく引き離していることについて、中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は10日に北京で、「政策の制定において、私たちは平常心でいる。解決が必要な問題があったとしても、このことを深刻に考えすぎる必要はないし、過剰な反応をするべきでもない」と述べた、としている。

論理的に納得感のある主張。中国の中央銀行は、今のところワークしている。人民元は、新興国通貨からユーロや日本円のような主要通貨へと拡大する過渡期だ。やがて変動相場にどこかで移行する責務を負うだろうし、その心の準備はできているようだ。
主要通貨になることと、中国が外貨準備を蓄えていることと、中国国内から人民元が流出していることは、すべて別の課題だ。為替レートはすべての要因でシンプルに決まるから、上下動にどんな言い訳も通用する。問題は、政府が願うことに、中央銀行が寄り添い過ぎるのは、世界では良しとはされていない。独立性を担い、時には政府の意より通貨を持つ人たち、マーケットの意志を優先するのが中央銀行だ。今回の主張は論理的だが、中国政府からの独立性が保証されたわけではない。やはり資本流出を防ぎたい意志は見えるし、マーケットという意識は薄い。中央銀行と政府が結託している日本が言える話ではないが、パニックが起きた時に中国の中央銀行がどう動くかは、まだ見えない。

Wall Street Journal
トランプ米大統領、中国の習主席と4月に会談予定 (2017.3.14)

ドナルド・トランプ米大統領は、中国の習近平国家主席と近く会談する方向での暫定的な計画を立てている。米中両政府の関係者が明らかにした。中国政府の関係者2人によると、両首脳はトランプ氏が保有するフロリダ州の会員制リゾート施設「マール・ア・ラーゴ」で4月に初の首脳会談に臨む見通し。ショーン・スパイサー大統領報道官は13日、北朝鮮を巡る緊張を和らげ、韓国での米ミサイル防衛システム配備を促すため、米中首脳の訪問を「計画中」だと述べたが、日程や場所については明らかにしなかった。習氏がマール・ア・ラーゴを訪問すれば、トランプ氏が現地で国家首脳を迎えるのは2月に訪米した安倍首相に続いて2人目となる、としている。

トランプ政権がアジアのパワー・バランスを取りはじめている。日本に荷重を置く印象から、日中に優先順位は存在しないとアピールするような行動に変わりつつある。日米首脳会談は、口約束だけで本質的な成果はなかった。当時は、それでも十分に評価された。それから2か月。習氏がトランプ氏と実りある決定を結実させたら、世界は日本より中国を評価するのは確実だ。外交は、先手を打つ価値は十分にあるが、早さだけが評価のすべてではない。日本の優位性の賞味期限が2か月足らずで途切れようとしている。次の手が必要だ。

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