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2880.報道比較2017.2.7

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勝敗を分けるのは、やはり戦略。翁長氏には信念はあったが、戦略は期待どおりには機能していないようだ。安倍氏は?トランプ氏は?彼らのプランはどこに?

朝日新聞・社説
辺野古着工 沖縄より米国優先か

沖縄県民の民意を置き去りにし、米国との関係を優先する。安倍政権の強引な手法が、いっそうあらわになった。米軍普天間飛行場の移設先、沖縄県名護市辺野古で、政府が海上工事に着手した。近く1個11~14トンのコンクリートブロック計228個を、海に投下する作業を始める。3日に来日したマティス米国防長官に、安倍首相が「辺野古が唯一の解決策。着実に工事を進める」と約束し、同意をとりつけた。10日の日米首脳会談を前に、その言葉を実行に移しておきたい――。工事は海底の地形を変化させ、水産資源に影響を与える恐れがある。このため県漁業調整規則にもとづき知事の「岩礁破砕許可」が必要だが、前知事が出した許可は3月末に切れる。政府は「地元漁協が漁業権を放棄した」として、許可の更新は必要ないとする。これに対し県は「漁業権の一部変更であって、消失していない」と更新が必要だと主張する。政府がなすべきは、沖縄の声をトランプ米新政権に伝え、辺野古以外の選択肢を真剣に検討することだ。工事を強行することではない、としている。

毎日新聞・社説
辺野古工事 民意軽視では続かない

政府が、沖縄県・米軍普天間飛行場の移設のため、名護市辺野古沖の海上での本体工事に着手した。「あらゆる手段で移設を阻止する」との姿勢を示してきた県は反発している。今後、埋め立て承認後に状況変化があった時に適用できる、承認の「撤回」などに踏み切る可能性がある。その場合、政府は対抗措置として訴訟を起こすことも検討しているという。そうなれば国と県の対立は、再び法廷を舞台に泥沼化しかねない。安全保障上の必要性から辺野古移設を推進しようとする国と、沖縄の歴史や地方自治の観点から反対を訴える地元の民意が食い違った状況で、これをどう解決するかという政治の知恵が問われている。辺野古移設は、沖縄県民から見れば、県内で危険をたらい回ししているようにしか感じられない。県民の理解がなければ、たとえ代替基地ができても、日米安保体制を安定的に維持するのは難しい。硬直した思考に陥らず、トランプ政権の発足を仕切り直しの契機ととらえ、日米で辺野古以外の選択肢を柔軟に話し合うべきだ、としている。

私は個人的に沖縄には思い入れがある。沖縄で過ごした時間の中で、アメリカ軍の存在がどういうものか、様々な体験を通して知った上で思うのは、結論は簡単ではないだろう思う。それでも沖縄県民が望まないのなら、撤退に向けての応援はしたいと思っていた。
その意味で、今の沖縄の立場は、せっかく手にしたチャンスをすべて無駄にしてしまったほど悪くなっている。現状を認識しなければ夢は実現しないし、最高が必要なところまで追い込まれたと見るべきだろう。朝日や毎日のような感情論、正論は無益だ。
過去の報道比較から、沖縄の状況を振り返ってみる。

2014.11.17
翁長氏が圧勝で沖縄県知事に。安倍政権にとっては安保法制に取り組もうとしている中、かなりの逆風だった。

2015.3.24
沖縄県が抵抗を行動として開始。選挙と首相のアメリカ訪問前という絶妙のタイミングでの行動には戦略があるように見えた。

2015.4.18
安倍氏と翁長氏が会談。翁長氏には戦略がないことを私は憂慮している。正攻法でいくつもりだったのだろうか?

2015.6.8
翁長氏が訪米。アメリカは「国と国の話」と形式的な対応。これが安倍氏と逢う前であれば、効果は違った。また交渉先を事前に作っておくべきだったはず。

2015.10.14
辺野古埋め立て承認を翁長氏が取り消し。国と翁側法廷闘争へ。この手を打つ前に、アメリカか中国の応援があり、沖縄意外の世論が沖縄に味方していなければ、この戦略は失敗に陥る。この時期、まだ安倍政権は安保法制に入れ込んでいた。民意を得るチャンスはあったが。

2015.12.3
法廷で翁長氏が弁論。沖縄のメディアやアメリカへのアプローチが弱いと嘆いている。

2016.5.21
沖縄でアメリカ軍属による殺人。オバマ氏が広島訪問する前という最悪のタイミングでの事件。2017年2月現在では、ここが沖縄が日本政府に一矢報いるための挽回のラスト・チャンスだった。

2016.6.6
沖縄県議会選挙。翁長氏に同調する与党に過半数の議席を獲得。

この間、法廷は国と県に対話を促したが、安倍政権に前向きな姿勢は見えないまま、国の勝訴が確定。今度は国が行動を開始しているのが、2017年2月現在の状況だ。
冷静に見れば、トランプ政権になったアメリカは、沖縄にとってさらにやりにくくなった。対話の時間を得ることさえ難しくなっただろうし、仮に時間を得られても、求められるディールは以前よりさらに強行なものになるに違いない。信念はもっとも重要だし、正論は交渉にとって大いなる武器だが、正攻法で挑むだけでは失うだけだ。沖縄は、すべての追い風を無駄に使ってしまったように見える。あざとくやろうと言うのではない。もっとも得たい答えの、本当の意思決定ができる人間に近づくべきだ、ということだ。沖縄の運命を握っているのは日本政府ではない。アメリカ軍だ。翁長氏は戦略の再考が必要だ。
では、日本政府は笑えるかといえば、まるでそんな余裕はない。トランプ政権に対して、翁長氏の事例よりも無策に動いているのが安倍氏だ。Wall Street Journalの、このコラムは政府関係者は読んだだろうか?

トランプ氏、揺らぐ同盟国との信頼関係 日本も矛先か by Wall Street Journal

なぜ外国人に、アメリカの新聞に「トランプ詣で」と言われるほど無様な外交をしているのか。日本に有利な条件を得るために必死になっているつもりかもしれないが、残念なほど裏目だ。翁長氏以上に。ゴルフや交渉の場では友好的でも、帰りの飛行機が日本に着く前には、見たくないツイートが世界に発されている。そんな外交になるのではないだろうか。

読売新聞・社説
日米経済協力 相互に国益を満たす連携探れ

安倍首相はトランプ米大統領との日米首脳会談で、新たな日米経済協力の施策を提案する。米国にインフラ(社会資本)投資などで51兆円規模の市場をつくり、70万人規模の雇用を生み出す案を軸に検討している。米国内で計画される高速鉄道事業や、3000両の鉄道車両刷新などに向け、日本のメガバンクや政府系金融機関が10年間で約17兆円の資金を供給するという。今回の提案は、米国の雇用創出のみならず、政府が掲げる第4次産業革命などの成長戦略に合致している。日本企業のビジネスチャンスの拡大も期待できる。日米双方に恩恵を与える経済協力が、両国の信頼関係を前提とするのは言うまでもない。トランプ氏は、日米自動車貿易を「不公平だ」とやり玉に挙げ、為替政策についても「円安誘導を続けた」と攻撃している。首相はトランプ氏に対し、事実誤認の見解にはしっかりと反論し、筋違いの「日本叩き」を改めさせる必要がある。首相が言うべきことを言わないようなら、米国に配慮した経済協力も「米国が強く出れば、日本は応じる」といった誤ったメッセージを与えかねない、としている。

求められてもいない土産を手にアメリカに向かうのは日本くらいだ。この資金を日本国債で渡すくらいの知恵はあるだろうか?期待するだけ無駄だろうが。なぜ大統領の任期より長い資金供給を約束するのか意味不明。自分の国の経済さえ立て直せない人が、他国の雇用のためにカネを出すという。自分の国の財政を立て直してからでは?政府応援団の読売も、誉め殺しに頭を痛めている。これで日本円が売られて円安が走れば笑い話になるのだが。

日本経済新聞・社説
米金融規制の改革は日欧とも足並みを

米国のトランプ大統領が金融規制を見直す大統領令に署名した。オバマ前政権が金融危機の再発を防ぐ目的で導入した「金融規制改革法」(ドッド・フランク法)が主な対象だ。厳格化の方向だった米国の金融規制が、成長の促進に比重を置いたものへと変質していく可能性がある。基本原則はおおむね常識的な内容を確認するものが多いが、懸念すべき部分も含まれている。たとえば「国際的な交渉や会合で米国の利益を追求する」といった部分だ。貿易交渉などと同様、金融規制づくりにおいても国際協調に消極的な大統領の姿勢を反映していると解釈できる。グローバル化した金融市場の規制は国際的に調和をはかっていくことが欠かせない。協調を欠けば投資資金の流れがゆがみ、新たな金融不安定化の芽が生じかねない。一国主義にもとづく規制づくりは危険をはらむ。これまでのトランプ氏の発言からすると、大統領の狙いは中小企業に対する銀行の貸し渋りを解消することにあるようだ。貸し出しを増やすにはどんなルールが必要か。巨大銀行は再び投機的な取引に傾斜しないか。そうした観点から日欧の当局や金融機関は米規制改革の行方を注視し、意見を伝えていく必要がある、としている。

トランプ氏が推進する話で、少しはまともに聞ける部類に入るのがこの金融規制見直し。アメリカの金融機関が反省したとは思えないが、いまの膨張したマーケットで指をくわえて見ている状態を維持するのは、アメリカの金融ビジネスには無理な話だとも思う。次の破綻では、自分の失敗は自分でケリをつけてくれ、とだけ援助された銀行には言って欲しい。次のクラッシュには、もうカウントダウンがはじまっている。それを知りながら規制を撤廃するのだから、プロなら儲けよりはリスク回避に動くはずだ。

産経新聞・社説
区長選で自民惨敗 「反改革」姿勢あらためよ

東京都千代田区長選で小池百合子知事が支援する現職が自民党都連の推す新人を圧倒した。問題は自民党の惨敗ぶりだ。有権者数約4万7千人規模とはいえ、国会がある首都のおひざ元での選挙だ。東京都議会の第一党、政権与党として、なすすべもなかった印象である。ひと言でいえば、「改革路線」の足を引っ張る勢力とみなされているからではないか。豊洲市場(東京都江東区)への移転をめぐり、自民党は推進役を果たしてきた。だが、土壌汚染の問題で移転が延期される事態となってから、何らかの建設的な解決策を提示できただろうか。都議選など今後を展望し、小池氏と真っ向から争う構図を避けたかった面もあろうが、改革を唱える小池氏を超える政策的主張を用意できないのは問題である。小池氏は地域政党を率い、都議会過半数を目指す。風速は強いが、改革後の東京の姿を描き切れていないことを忘れては困る、としている。

国政の自民党が都議会の自民党と距離を取っているのが見苦しい。今の東京の挑戦が国政に影響を与えるのを期待して待っている。安倍氏も、そろそろ構造改革に本気にならなければ、安定した基盤が揺らぎはじめるだろう。

人民網日本語版
協力が中米両国の唯一の正しい選択 (2017.2.6)

「2017年は中米両国にとって非常に重要な一年だ」。中国の駐米大使による先日のこの姿勢表明が、各方面の共通認識になることを信じる。米新政権の船出に伴い、中米関係がどう前進するのかに、人々は注目している。中米関係を見極めるには、事実に対する全面的な観察が不可欠だ。2015年に中米の貿易総額は6593億ドルに達した。2016年に中国企業の対米投資は過去最多の456億ドルに達した。中米間では1日平均延べ1万4000人が往来し、17分ごとにフライトがある。数字は争えない事実だ。様々な「過去最多」の記録は、二国間、地域、世界レベルの各分野での両国協力の成果を反映している。「事実が証明するように、協力が中米両国の唯一の正しい選択だ」。習近平国家主席の鋭い論断は、中米協力の持つ重要なチャンスと大きな潜在力に対する精確な把握に基づき、新たな段階において両国関係が摩擦を減らし、穏やかに発展するための鍵を示している、としている。

キッシンジャー氏まで担ぎ出し、中国は防戦に必死だ。この様は、安倍氏のアメリカへの姿勢と共通する結果をもたらす。交渉はトランプ氏が有利になり、決定権がアメリカの意志が前提になる。中国は商売の交渉は上手だと言われているし、いまのトランプ氏の交渉手法は中国が得意とするスタイルだ。なぜ中国政府はここまでアメリカの機嫌を伺うのか判らない。アメリカからの貿易黒字は、日本にとっての日米同盟くらい重要なもののようだ。

Wall Street Journal
アップルやグーグル、入国禁止令巡る法廷助言書提出 (2017.2.7)

イスラム圏7カ国からの入国を禁止する米大統領令に対し、アップルやグーグルの親会社アルファベットなど米IT企業約100社が法廷助言書を提出した。これらの企業は、連邦第9巡回区控訴裁判所に共同で出した法廷助言書の中で、入国禁止令に異議を申し立てた。政権側は同禁止令について、テロリストの入国を防ぐためとしている。フェイスブック や マイクロソフト 、イーベイ、インテル、ウーバー・テクノロジーズといった企業もこの中に名を連ねた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した助言書は「入国禁止令は米国のビジネス、イノベーションおよび成長に重大な害を引き起こす」としたうえで、「大統領令によって米国への入国規則が唐突に変更され、米企業に多大な悪影響が生じている」と主張している、としている。

リベラルな西側の思想が、少しずつトランプ政権と衝突しはじめた。ビジネス・ライクでミーティングの席についたまでは許容できたが、思い付きで動くトランプ氏に、シリコン・バレーが黙秘しているのは無様だった。先にトランプ氏に楯突いたのはハリウッドだったのを横目で見ながら、ビザの件で実害を被るまで腰を上げなかったのを見ると、ITから新時代が生まれることはもうないのだと残念になる。どう動くのがスマートだったのか、残念だがイメージはない。だが、ツイートにツイートで争う著名人や、デモを煽るだけのセレブリティ、手の平を返すように称賛し、利害が一致しないと批判する経営者たちには、トランプ氏に抱くのと同様の不信が芽生えつつある。今のところ、トランプ氏をへこますほどスマートに振る舞った人は、アメリカ人でひとりもいない。世界に衝撃を与えるほど知性に満ちた提案もない。法で?ずいぶんシリコン・バレーも利口になった。今のままでは、アメリカはトランプ氏の暴走を止められない気がする。

Financial Times
フランスがポピュリストの流れを変える (2017.2.3)

間近に迫っているフランスの大統領選挙も、これらに負けないくらい重要な結果をもたらす。イスラム嫌いの極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首がもし勝利すれば、欧州の自由民主主義は終わりを迎えることになるだろう。EUは英国の離脱には耐えられるが、フランスの離脱には耐えられないからだ。ポピュリスト(大衆迎合主義者)の反乱を特徴とするこの時代、選挙の結果を予測するのは向こう見ずだ。フランスは10年近く、経済の低迷に見舞われている。イスラム過激派のテロリストによる、残虐きわまりない攻撃の犠牲にもなっている。フランソワ・オランド大統領の支持率は1ケタ台に落ち込んだ。選挙運動の活気はこれまで、エマニュエル・マクロン氏がもたらしてきた。投資銀行家から政治家に転じた人物で、現在は中道路線の新しい運動体を率いている。39歳にしてオランド政権の経済相を務め、その後辞任して「アン・マルシュ(前進)!」を立ち上げた。フランス国立行政学院(ENA)という一流校を卒業したエリートでもある。だが、今回はポピュリストにヒントを得て、アウトサイダーとして選挙に打って出た。ここ1年は、ポピュリストが触れ回っている経済ナショナリズムやアイデンティティー政治の負けに賭けても、賭け金を失うばかりだった。しかし、今後の政治は怒りの感情に支配されるなどという不変の法則があるわけではない。フランスは世界を、そして自らを驚かせることになるかもしれない、としている。

今年はヨーロッパに緊張する選挙がつづくとは言われていた。世界の自由主義の発祥になったフランスが、イギリスとアメリカを見て意気込むのは判る。期待もしたい。日本の選挙よりは十分にインパクトがあるだろう。あまりにも暗いと思っていたヨーロッパに、少しだけ希望が見えてきた。この光は魅力的だ。注視したい。

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