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2873.報道比較2017.1.31

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今回の騒動で判ったこと。トランプ政権は、ド素人だ。日本の民主党時代を思い出す。

Wall Street Journal
難民入国禁止令への抗議、トランプ政権に大打撃も (2017.1.30)

ドナルド・トランプ米大統領はできるだけ早く公約を果たすため、とりあえず「衝撃と畏怖」作戦に出た。その結果への対処は後回しにすることを決めたようだ。トランプ氏はテロに関与した過去を持つ国からの難民を「徹底的に審査する」と公約したほか、米国民を守るという同氏の訴えは有権者から広く支持された。だが、難民の入国禁止措置はあまりに不手際かつ広範で、説明に乏しいばかりか準備も万端ではなかった。そのため空港には混乱と恐怖が生まれ、裁判所は直ちに措置の一部を無効にする判断を下し、国内外で政治的な怒りが噴出した。統治は選挙集会よりもはるかに複雑なのだ。行政府は変化を必要としているというトランプ氏の考えは正しい。しかし入念な準備や優れた実践方法を伴わずにことを急いてしまえば、政界に相当な規模の反対勢力を作り出す危険が生じる。超党派による反対によって一つの変革が一掃されてしまうというより、成功のために必要な国内外の友人や仲間から孤立することが危険なのだ。政治的な分断が奏功する場合もある。だが、それによって大統領職を失うことになっては元も子もない、としている。

産経新聞・社説
米入国拒否 「偉大な国」のすることか

トランプ米大統領が、シリアなど中東・アフリカ7カ国の国民の一定期間の入国停止や難民受け入れを凍結する大統領令を出した。米国各地の空港で入国拒否が相次ぎ、多数の人が長時間拘束され、不快な身体検査を受けるなどの扱いを受けた。極めて憂慮すべき事態だ。メキシコ国境に壁を造る問題と同様、さすがに実行には移さないだろう、と思われることに手を付ける。「トランプ流」を印象づけているつもりなのだろうか。欧州主要国は日本と同様、自由や平等という普遍的価値観で米国と結ばれてきた。だからこそ、中国やロシアなど、ルールを無視する国々を前に結束し、対抗する枠組みが維持されてきた。大統領令に対し、米議会や州政府などにも反対の声は強い。司法により、強制送還を認めない仮処分が出されたが、根本的な問題解決ではない。やはり、暴走の元凶を見直すしかない、としている。

日本経済新聞・社説
「偉大な米国」にほど遠い入国制限

自由や平等の旗の下に、様々な出自を持つ人々が結束する。これが米国の強さと魅力のはずだ。この理念を自ら破壊するのか。そんな不安がぬぐえない。テロ対策を名目に、トランプ米大統領が打ち出した難民や一部の国を対象とする入国制限措置のことだ。標的になった国々は反発している。反米感情の高まりはテロリストの予備軍を増やし、結果的にテロ組織を利するだけだ。米国が一方的に扉を閉じることは、テロや難民の問題の解決にはならない。中東やアフリカの国々の安定を後押しし、そこの人々の生活を向上させる和平の努力や経済開発を進めることが重要だ。米国が世界中から受け入れる多様な才能は、変革と飛躍の土台になってきた。IT(情報技術)分野は代表例だ。今回の措置により制限の対象となる国籍を持つ社員が移動できなくなる恐れが生じるなど、支障が出始めている。アップルやグーグルなどの経営者が懸念を表明するのも当然だろう。入国制限を続ければ、米国への世界の信頼は崩れ、トランプ大統領が目指す「偉大な米国」の復活どころではなくなる。宗教や民族の分断が広がり、世界がさらに危険になってしまう、としている。

毎日新聞・社説
入国禁止令 米国の良心汚す暴挙だ

全ての国の難民受け入れを120日間凍結しシリア難民受け入れは無期限停止。中東・アフリカ7カ国の一般市民は入国を90日間停止--。独裁国家のお触れのようだ。そんな米大統領令が突然出たため、米入国を認められずに拘束または航空機搭乗を拒否される例が相次いだ。今も世界に混乱が広がっている。抗議の動きこそ米国の良心の反映だろう。大統領令は撤回すべきだ。米国は移民の国であり、住民の多様性が独創性やソフトパワー(文化的な魅力)を生み出してきた。多様性を損なう大統領令には米企業のトップたちも懸念を表明している。世界16億人のイスラム教徒の中で過激派は「大海の一滴」であり、イスラム教徒一般を敵視するのは誤りだ。トランプ氏は排除と分断によって、自ら「文明の衝突」のわだちにはまり込もうとしているようにも見える。それでは米国だけでなく国際社会が不利益を被ることになる、としている。

読売新聞・社説
トランプ外交 「力」偏重の米露連携は問題だ

トランプ米大統領が、プーチン露大統領と電話会談を行った。シリア内戦の収拾や過激派組織「イスラム国」掃討に向け、協力することで合意した。トランプ氏は、イスラム過激派によるテロの阻止を最重要課題に掲げ、ロシアとの共闘を模索する。プーチン氏は、対米関係の改善を通じて国際社会での孤立脱却や、中東での影響力拡大を図る。両氏の「蜜月」は、こうした思惑が一致した結果だろう。問題なのは、関係悪化を招いたロシアの振る舞いを、トランプ氏が軽視していることである。「イスラム教徒の入国禁止」という過激な公約をほぼ実行に移したと言える。「移民に職を奪われ、治安が悪化した」と主張する白人労働者らの支持層にアピールする狙いなのだろう。トランプ氏は「国境管理強化のためだ」と説明したが、中東で反米ムードが高まれば、テロ誘発などの逆効果になりかねない。トランプ氏は、さまざまな措置をとる前に、その影響を慎重に考慮する姿勢が求められる、としている。

今回の騒動で判ったこと。トランプ政権は、ド素人だ。権力の使い方を理解していない。準備もせずに危うい決断を実行した時に、何が起きるかさえ見えていない。その後の事態収拾能力もない。強弁と自己正当化するほど、さらに事態が悪化することも認識していない。日本の民主党時代のように、怒りの後は失笑され、信頼を失い、権力を手放す前に相当のものを破壊するだろう。アメリカがその意味を知らないなら、近日中に思い知ることになる。ロシアや中国は、それほど甘くはない。守りが弱い場所には、容赦なく踏み込んでくる。日本が、素人に政権を渡した時に、何を失ったかを理解して欲しい。韓国が竹島に踏み込み、尖閣諸島が危うくなり、沖縄基地の計画はアメリカにも沖縄にも不信を招き、震災後の処理は未だに終わらない。埋蔵金と言っていた財政はどこにもなく、赤字国債体質に逆戻りした。景気は良くなるはずもなく、マーケットから世界のマネーが退いた。国債の格付けも下がり、虚偽や捏造の風潮が普通になった。その後の安倍政権が良くしてくれたのは、この中の半分程度。それほど痛みは大きく、壊れたものの価値は大きい。
まだ10日。予算教書演説さえ済ませていないうちから、この混乱。今年の後半からのアメリカを注視せよと言う人は多いが、彼のペースでは、春まで持つか怪しくなってきた。何を急ぎたいのか、なぜこの公約の実行を急いだのか判らない。おそらく、理由はないのではないか。

Financial Times
真実と嘘とトランプ政権 (2017.1.24)

ドナルド・トランプ大統領の就任式に集まった群衆の数についてホワイトハウスが虚偽の発表を行ったと報じたとき、英国放送協会(BBC)の記者は笑っていた。だが、ここは泣くべきだった。我々が目撃しているのは、米国政府の信用が音を立てて崩れていく事態にほかならないからだ。みえみえの嘘をホワイトハウスがばらまいているこの光景は、米国の民主主義にとって悲劇に他ならない。国際的な危機が将来発生し、そこで起こった出来事の正しい説明はどれなのかという争いが起きても、世界のほかの国々は、プーチン氏のロシアよりもトランプ氏の米国の方を信じようという気にはもうならないかもしれない。報道機関は今後、強固な意志を持って勇敢に行動しなければならない。最終的には司法制度がこの政権の運命を決めることになるかもしれない。メディアから連邦議会、裁判所に至る米国の機関は、以前、ホワイトハウスからの独立を世間に示したことがある。それらの機関は今、かつてないほど真価を問われようとしている、としている。

いま読むには、もっとも適切な提言だ。アメリカを信じられるかは、アメリカ政府ではなく、アメリカ国民にかかっている。特に、大統領選挙で敗北感を味わったメディアは、本質的で冷静にトランプ氏の問題を指摘し、是正にむけて動いて欲しい。嘘つきになったアメリカに、魅力などない。
もう、世界は壊れはじめているという悲観的な認識を、少しだけ意識しようと思う。Financial Timesの言う信用に基づいた世界が、ソビエト連邦が崩壊した時のように、失われているのかもしれない。ヨーロッパの不安定さが、その予感をさらに強くする。
「自由を守る国」に、当然のように日本は名前さえ挙がらなかった。力不足な一国にさえ。私たちの意識も能力も、極めて低いことを痛感した。アメリカに呑まれるのだけはまずい。信念は、どこに?

朝日新聞・社説
日米安保 「前のめり」では危うい

安倍首相とトランプ米大統領が電話で協議し、日米同盟の重要性を確認した。2月3日にマティス国防長官が来日するほか、首相が訪米し、10日に首脳会談を開くことで合意した。日米関係は、アジア太平洋地域の平和と安定に資する「公共財」でもある。両国が矢継ぎ早の意見交換でそれを確かめあうことは、日米のみならず地域にとっても重要なことだ。一方で心配なのは、日本の防衛力強化に対する、首相の前のめりの姿勢が目立つことだ。中国とどう向き合うか。韓国や豪州、東南アジア諸国などとどう協調していくか。軍事にとどまらず、幅広い外交・安全保障の青写真を描くなかで、米軍と自衛隊の役割と能力を再検討する。日本として何をどこまで負担するかの議論はそこから始める必要がある。米国に過ちがあれば指摘し、責任ある行動を促す。そうした姿勢を世界に示すことも同盟国としての重要な使命である、としている。

他紙の感情的なだけの批判よりは有益だが、もう一歩、Financial Timesのクオリティの社説にはならないだろうか?いま起きていること、日本の置かれている立場、政治の戦略のなさを考えると、朝日の危機感は弱い。

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