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2872.報道比較2017.1.30

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次のトランプ氏の首脳会談相手は日本ということで、ノイズが高まってきた。日本には「ならば、結構」と首を振れるカードが、ほとんどない。

Wall Street Journal
日本の米国車事情:正しく伝わっていないこと (2017.1.30)

ドナルド・トランプ米大統領が通商問題で日本批判を開始したとき、1980年代から変わっていないことが一つあった。それは、日本の消費者が依然として米国の自動車をほとんど購入しないことだ。日本の自動車市場に占める輸入車の割合は僅か6%。その約7割がドイツ車。日本で最も人気のある外国車ブランドは、独ダイムラーの「メルセデス・ベンツ」だ。米自動車大手 フォード・モーター は2016年1月、「持続的な収益性に向けた道筋」が立たないことを理由に日本市場からの撤退を表明した。同社は15年に5000台を販売。日本市場でのシェアは約0.1%だった。日本政府は、米国メーカーが抱える困難の責任は政府にないと述べ、市場が開放されている証としてドイツ高級車ブランドの成功を挙げた。日本は輸入車に関税をかけていない。欧州の自動車メーカーも国内市場の需要を反映し、燃費の良い小型車に強みを持っているが、米国のメーカーが小型車に強いとは知られていない。また、米国車は信頼できないとのイメージを日本で持たれている。米国メーカーは、日本の官僚主義が輸入を阻止していると指摘する。これはTPPで米政府が対処を試みた問題だ。TPPでは、米国車の輸入と販売をしやすくするために日本が米国の安全基準を採用する見返りに、米国側が輸入車への関税を段階的に撤廃するとされていた、としている。

産経新聞・社説
日米首脳来月会談 アジア太平洋重視へ導け

安倍晋三首相とトランプ大統領が電話協議し、来月10日にワシントンで首脳会談を行うことで合意した。日米同盟は安全保障の基軸であり、世界の平和と安定に貢献するものだ。米政権が代わっても強固な同盟に揺るぎがないことを世界に示す機会としてもらいたい。同時に、米国が引き続きアジア太平洋地域の安全保障に積極的に関与していく姿勢を引き出すことが重要である。トランプ氏は選挙期間中、在日米軍駐留経費の見直しなどに言及した。「米国第一」を繰り返す内向き姿勢も気がかりだ。安倍首相は電話協議で、日本企業の雇用面などでの米国への貢献を説明した。通商問題は首脳会談の重要テーマとなる。自動車貿易で日本を「不公正」とするトランプ氏の思い込みは早期に解消させなくてはならない。日米が一致して世界の平和と安定に貢献するのであれば、自由や民主主義、法の支配といった普遍的価値観や、自由貿易の重要性についてトランプ氏に理解を求めることも安倍首相の役割である、としている。

日本経済新聞・社説
日米自動車摩擦の再燃を回避したい

トランプ大統領が「(日本は)米国車を売れないようにしている」と日本市場の閉鎖性を批判したのに続き、米フォード・モーターの首脳はホワイトハウスでの大統領との会談後に「貿易を妨げるのは為替操作だ」と発言した。今の為替水準では外国車と公正な競争ができないとして、米政府にドル高の是正を訴えたのだ。トランプ大統領がかねて執着する米国内の生産について。みずほ銀行の調べによると、1999年から2015年にかけて日本車の米国現地生産は年150万台増加した。これに連動して雇用も増え、現時点で日本メーカーの直接雇用は9万人弱に達し、関連部品会社や販売店を含めた雇用創出は150万人に及ぶという。日本市場の閉鎖性についてはドイツ車の成功が反証になる。メルセデス・ベンツの販売台数はトヨタの高級車「レクサス」を上回り、BMWなどの人気も高い。米国車が日本に浸透しなかったのは事実だが、それは車の魅力や投資の不足に起因するのではないか。為替による目先の利益の増減にこだわるより、製品開発力など、より根源的な競争力に磨きをかけるのがメーカーの基本だ。日本の官民はこうした認識を米新政権にぶつけるとともに、米国社会に根づくための現地化の努力を加速し、米国の消費者の負担増にもつながりかねない不毛な摩擦を回避してほしい、としている。

毎日新聞・社説
トランプ時代/5 北朝鮮の核 米国は当事者の自覚を

北朝鮮は冷戦終結直後の1990年、韓国との国交樹立を通告したソ連に独自核武装の考えを通告したとされる。核の傘を提供していた同盟国から見捨てられ、反発した北朝鮮なりの対応策だった。北朝鮮が安全保障上の脅威とみなすのは、朝鮮戦争で戦火を交え、現在も日韓に強力な軍事力を展開する米国である。だから、米政治の中枢であるワシントンを攻撃できる核ミサイルの開発を目指している。北朝鮮の「瀬戸際戦術」は生き残りをかけた戦いである。冷戦終結で国際的孤立を深めてから四半世紀の間、北朝鮮はこの戦術で米国との交渉を進めようとしてきた。それなりに効果を上げたこともある。トランプ氏は、北朝鮮に大きな影響力を持つ中国に任せればいいという趣旨の発言もしている。だが、米国が何もしない間にも北朝鮮の技術開発は着実に進んでいく。米国が当事者であることは否定しようのない現実である、としている。

読売新聞・社説
日米電話会談 肝心なのは同盟強化の各論だ

安倍首相がトランプ氏と電話会談し、2月10日にワシントンで首脳会談を行うことで一致した。首相はその後、「経済や安全保障全般にわたり、率直で有意義な意見交換をしたい」と語った。電話会談で両首脳は、「日米同盟の重要性」を確認した。単なる社交辞令にしてはなるまい。肝心なのは、長年、アジア太平洋地域の平和と繁栄に貢献し、国際公共財と評価されてきた日米同盟をさらに発展させることだ。それを通じて、世界と地域を安定させ、日米両国がともに利益を享受することが可能となる。中国は独善的な海洋進出を加速させ、北朝鮮は核・ミサイル開発に突き進んでいる。日米同盟の足並みが乱れれば、中朝の危険な挑発行為を招きかねない。首脳会談でも、トランプ氏の事実誤認には適切に反論しつつ、生産的な経済関係の構築に向けて論議を深めることが重要である、としている。

次のトランプ氏の首脳会談相手は日本ということで、ノイズが高まってきた。メキシコ、入国制限を経て、雰囲気は悪い。後述の国内紙は安保を気にしている。日経とWall Street Journalは自動車貿易。仮想的に位置づけていたはずの中国の話は、北朝鮮より後に追いやられている。日本にとって利害が共通して、軍事、経済、国際関係から考えても、もっともインパクトが大きいのは中国対策のはずだが?
もうひとつ、両方の話題に関連するのが、為替だろう。だから麻生氏が呼ばれたのだろうが、今の貿易規模を維持して、関税などの議論を避けたいなら、ドル円のレートの目標値は示されると思う。誰が予想してもドル高に進む可能性が高いトランプ氏の政策で、日本円だけでも有利なレートを維持したいはずだ。ユーロは多数の国家がいて不可能、人民元とは争う前提なら。
安全保障は、毎日の論法で進むと、とばっちりは確実に日本に来る。日本はアメリカに何の貢献もしていない、自分で守るから日本から米軍は戻すと言われるだろう。正論のつもりだろうが、蛇だらけの薮を毎日の主張は突いている。産経、読売の論理もトランプ氏にとっては都合が良い。じゃあカネを出せと言いやすいアメリカ依存の姿勢が見える。何よりも、日本国内に「これ以上、アメリカにカネを払うのは無駄」という意見は少ない。吹っかけられないかが心配だ。
日本には「ならば、結構」と首を振れるカードが、ほとんどない。経済規模が大きく、太平洋の中国への盾として最適な、言うことを聞くイヌ。せめて経済で、羨望されるようなカードを手にしていたかった。反省して構造改革する可能性は?安倍氏にはないのが、さらに残念だ。

朝日新聞・社説
核燃料サイクル 再処理工場を動かすな

高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉が昨年末に決まった。計画から半世紀、1兆円超の資金を投じてもフル稼働のメドが立たなかっただけに、当然の帰結である。しかし政府は成算もないまま、再び高速炉開発を進める方針を決めた。原子力工学者らからなる国の原子力委員会は今月、新たな高速炉開発ではコスト面の課題を重視するべきで、急ぐ必要はないという趣旨の見解をまとめた。もんじゅの二の舞いを恐れての警告である。余剰なプルトニウムは持たないという核不拡散の国際規範に照らし、とりわけ唯一の戦争被爆国として、早急に保有量を減らすことが求められている。原子力委は今月の見解の中で、サイクル政策に「戦略的柔軟性の確保」を求め、使用済み核燃料を再処理せず長期保管する中間貯蔵の強化を推した。再処理・サイクル路線への慎重姿勢が強くにじむ。今、立ち止まらなければ、国民全体が大きなつけを背負うことになりかねない。もんじゅ廃炉という、部分的な手直しですませてはならない、としている。

これが内閣府が組織した委員会というのは、日本にはガバナンスが機能していることを示している。トランプ政権の混乱で大事なことを忘れている雰囲気の中、朝日が適切な主張をしてくれたことを感謝する。

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