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2868.報道比較2017.1.26

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有言実行のトランプ大統領。暴君に権力を与えてしまったことの意味を、世界は認識しはじめている。彼に戦略とゴールがあるならいいのだが…未だに誰もその存在を見たことはない。

Wall Street Journal
トランプ氏、メキシコ国境に「バリア」 大統領令に署名 (2017.1.26)

ドナルド・トランプ米大統領は25日、メキシコ国境沿いの「大型の物理的障壁」建設へ向けた大統領令を含む2つの大統領令に署名した。ショーン・スパイサー大統領報道官はもう1つの大統領令について、国境付近の警察が不法移民を連邦当局に引き渡すよう強く要請することなどにより、米国内の移民規制執行を厳格化するものだと述べた。トランプ政権はその実行に際し、引き渡しの協力を促す「コミュニティーの安全確保」プログラムを再導入する。このプログラムは過去に論争を巻き起こし、バラク・オバマ前政権が廃止していた。スパイサー報道官はまた、「不法移民をかくまう」いわゆる保護都市への連邦政府の助成金支給を廃止する計画だと述べた。スパイサー報道官は「障壁の建設は単なる公約実行以上のものだ。たやすく侵入できる米国境を真に防備するための(中略)常識的な第一歩だ」とした。メキシコが費用を負担するとも改めて強調したが、メキシコの指導者らは繰り返しこれを拒否している。スパイサー報道官は「大統領が以前に述べたとおり、何らかの形でメキシコが支払うだろう」と断言した、としている。

このコメントを書いている29日、すでにトランプ氏は入国制限の大統領令に署名。拘束、入国関係の混乱が起きている。有言実行を進めるトランプ氏の手法は、プーチン氏に似てきた。相手の準備が整う前に動く。だが、決定的に違うのは、その先のゴールのためのプランが、ほぼすべて準備されていること、忠実なチームが編成されていることだ。このふたつがなければ、奇襲は成立しない。
トランプ氏の移民政策には、国内外ともに批判は多く、人権に関わる神経質な問題。これを実行することで決定的な利益が出る問題ではない。優先順位が高いとは言えない。初期に迅速にやる意味、この先、どこにゴールさせたいのかも不明だ。この混乱を好機と捉えられるものは、ひとつも見つからない。トランプ氏に、一気に敵が増える気がする。

日本経済新聞・社説
経済の次の一手につながる国会論戦に

衆参両院で各党が3日間の代表質問を終えた。野党はアベノミクスの行き詰まりを指摘したが、安倍晋三首相は民主党政権より経済指標は改善したと反論して議論がかみ合わなかった。非難の応酬ではなく、成長力の底上げやデフレ脱却に向けてこれから何をするかに絞った論戦が聞きたい。蓮舫氏は対案路線の一環として中低所得者に焦点をあてた「日本型ベーシックインカム構想」を提唱した。所得税の税額控除と給付を組み合わせ基本的な生活費を保障するという。現行の福祉制度との優劣を議論するためにも財源を含む全体像を示してほしい。野党は安倍内閣が進める働き方改革の中身もただした。首相は同一労働同一賃金の実現に意欲を示し、「罰則付きの時間外労働の限度を定める法改正に向けて作業を加速する」と強調した。景気は明るさも見えるが、個人消費や設備投資が力強さを欠いているのは事実だ。成長戦略の柱とした環太平洋経済連携協定(TPP)は早期発効が難しくなった。野党批判と自画自賛はそろそろやめて、政権の次の一手をもっと雄弁に語ってほしい、としている。

新聞の国会への提言としては、極めて理性的でバランスが取れている。国会の答弁は、〆切を設けた回答にできないのだろうか?安倍氏はいつになったら構造改革を行うのか、4年経っても答えもしなければ実行もしていない。問い詰めるのは野党とともに、メディアだ。日経には、この冷静な姿勢のまま追求をつづけて欲しい。

毎日新聞・社説
トランプ時代/2 「ポスト真実」 虚が実を動かす怖さ

時の権力者が不都合な事実から目を背け、虚偽を正当化すればどうなるか。見えてくるのは「虚構の世界」だ。トランプ米政権からはその怖さを感じる。トランプ氏は自伝で「真実の誇張」の効用を語っている。一連の発言は「罪のないはったり」のつもりかもしれない。しかし、いまは、言動が国内外に多大な影響を与える米大統領である。高い信用性がなければ政権の信頼も失い、米国の混乱は世界に波及する。トランプ氏は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)離脱を決定した際に日本が米国車の輸入を阻害していると言った。無関税の米国車が日本で売れない大きな要因は燃費性能やサイズなどが消費者のニーズに合わないことだ。国益を左右する重大政策の決定が偽りの理由で正当化されていいわけはない。トランプ流の虚構と、事実のどちらが力を持つのか。メディアの役割は大きい、としている。

問題提起の視点は理解する。たしかにトランプ氏の言動は乱暴で、大統領としての信頼性が相当低下する原因になっている。だが…いまのメディアの劣化を考えると、ひどいと感じるのはメディアの方だ。事実のどちらが力を持つと権力に敵対できるだけのパフォーマンスを、ジャーナリズムは失っている。トランプ氏がここまで乱暴になれる原因を作ったのもメディアであり、未だに決定的なダメージをトランプ氏に与えられていないのも、またメディアだ。権力に対峙する時の民衆の大きなパワーのひとつだったメディアが、まるで期待どおりの活動をしていない。それは、アメリカだけの話ではない。むしろ、日本の新聞を含めたメディアの劣化はアメリカ以上だ。

朝日新聞・社説
日米貿易 「多国間」の理を説け

トランプ米大統領が、日本との自動車貿易が有言実行のトランプ大統領。暴君に権力を与えてしまったことの意味を、世界は認識しはじめている。彼に戦略とゴールがあるならいいのだが…未だに誰もその存在を見たことはない。不公平だと批判し、貿易赤字を解消するために二国間の協議に乗り出すことを示唆した。日米など12カ国が合意した環太平洋経済連携協定(TPP)から永久に離脱するとの大統領令を発し、二国間主義を鮮明にする中での牽制である。安倍首相は「TPPの意義を腰を据えて(トランプ氏に)理解を求めていきたい」と繰り返している。同盟国である米国を含まない協定は避けたいとの考えがうかがえるが、米国が加わっての発効が全く見えなくなったのは厳然たる事実である。米国に対して直接、間接に多国間交渉の大切さを訴える。日本が率先して取り組んでほしい、としている。

また1日遅れで他紙の社説を話題を追っている。1.21に国内政治よりトランプ氏就任を選んだ判断が裏目に出ている。後追いの社説に、せめて遅れただけの価値を提供して欲しい。

産経新聞・社説
朴教授に無罪 「情治」に歯止めをかけた

慰安婦問題を扱った著書『帝国の慰安婦』で名誉毀損罪に問われた朴裕河・世宗大学教授に、ソウル東部地裁は無罪を言い渡した。民主社会に欠かせない言論を重くみる判断は妥当なものだ。法よりも国民感情が優先する韓国の「情治」に歯止めをかけたことには大きな意義がある。司法の独立性と矜持をみせたといえよう。韓国では、行政や司法が世論に迎合する問題が指摘されてきた。それを止めるには、法と証拠に基づく司法の冷静かつ厳正な判断が欠かせない。学術書の内容に異論があれば、学問的に反論や議論を重ねればよい。学術研究を支える自由な議論なしに学問の発展は望めまい。事実を述べると不当な指弾を受ける社会は、まともではない。今回の判決が、それを変える契機になるだろうか、としている。

読売新聞・社説
韓国朴教授無罪 「学問の自由」の尊重は当然だ

韓国のソウル東部地裁は、名誉毀損罪に問われた朴裕河・世宗大教授に対し、無罪を言い渡した。著書「帝国の慰安婦」で、元慰安婦の名誉を傷つけたとし、懲役3年を求刑されていた。判決は、「学問の自由」は憲法で保障されていると強調した。名誉毀損罪に問うには「故意」であることを厳密に証明せねばならない、との認識を示した。そのうえで、「執筆の動機は、相互信頼の構築を通じた韓日の和解だった」とし、元慰安婦を中傷する意図はなかったとして、無罪の結論を導き出した。だが、釜山の日本総領事館前に慰安婦を象徴する少女像が設置された問題は、いまだに解決の見通しが立っていない。日本は、駐韓大使と釜山総領事を9日に一時帰国させた。安倍首相は国会で、日韓合意について、「日本側の義務はすべて果たしてきている」と述べ、韓国側に誠実な履行を求めた。当面、その出方を見守るしかあるまい、としている。

他国の裁判を取り上げてまで韓国を批判する姿勢の方が、読者にはまともとは思えない。こんなことをしているから、カネを返しても日本との約束を反故にしたいと言われるのだろう。韓国、中国への感情的な言動は、いまだに違和感が多い。これを報道が社説から主張するのは、さらにひどい。日本の方がずっと保護主義、原理主義に向かっているように見えてしまう。

人民網日本語版
外交部、米国は南中国海の当事国ではない 言動を慎むべき (2017.1.25)

外交部(外務省)の華春瑩報道官は24日の定例記者会見で「南中国海問題における中国の立場は明確で一貫したものであり、変更はない。米国は南中国海に関する争いの当事国ではない。われわれは米側に対して、客観的事実を尊重し、言動を慎み、南中国海地域の平和と安定が損なわれないよう促す」と表明した。南中国海問題における中国の立場は明確で一貫したものであり、変更はない。南沙(英語名スプラトリー)諸島と周辺海域に対して中国は争う余地のない主権を有する。中国は南中国海における自らの領土主権と海洋権益を断固として守ると同時に、南中国海に関する争いについて直接の当事国との交渉を通じた平和的解決を堅持する。中国は各国が国際法に基づき享受する航行の自由を揺るぎなく維持し、南中国海の平和と安定を揺るぎなく守る。米国は南中国海に関する争いの当事国ではない。われわれは米側に対して、客観的事実を尊重し、言動を慎み、南中国海地域の平和と安定が損なわれないよう促す、としている。

中国政府の一貫性はあるが、習氏がアメリカ大統領を欺いたのも事実。オバマ氏との約束は守られず、人工島は軍事基地になり、太平洋に中国の空母は進出した。トランプ氏の言動は、想像以上に実行に移されている。南シナ海が相当な緊張を生む可能性は高い。日本は少なくとも準備できている気がしないが、中国の備えは十分だろうか?

Financial Times
南極圏でプレゼンスを強化するアルゼンチン (2017.1.23)

今のところ、南極圏における商業活動は、主に漁業と観光業に限られている。条約の執行措置はおおむね、豊かな漁業資源の密漁を抑制するための衛星の利用と海軍のパトロールから成っている。だが、ロシアや中国といった国が南極圏の鉱物資源の利用を目指しているという懸念もある。海氷が融け、欧州とアジアを結ぶ北極海航路と石油探査の可能性が開けるに伴い北極圏をめぐって生じている不安とよく似たものだ。多くの人は、今のままの状態が続き、地域の資源が確実に守られるようにしたいと思っている。例えば昨年は、南極海域のロス海が世界最大の海洋保護区に指定された。「我々は南極の資源を保護し、生態系に影響を与えない形で資源が管理されるようにしなければならない」。マルコーラ氏はこう言いながら、「富はすべての人のものだが、その重要な部分は我々のものだ」と付け加えた、としている。

政治は難しい。同時に、表現や主張も難しい。このコラムが英国の経済紙という背景を意識せずに、ニュートラルに読みつづけることはできなかった。何の利益も考えずに南極をアルゼンチンが守りつづけるとは思えない。管理するからには、何らかの利益を意識している。地球上の法律では、それを既得権と呼び、世界の国々は既得権を主張するために無人島に意味不明な観測地を作り、およそ人の住めない場所に軍を置く。日本もご多分に漏れず、だ。こういう努力のおかげで手にできているものと引き換えに、無駄に思える膨大なコストを税金で穴埋めしながら、人間は欲望を宇宙にまで拡げようとしている。経済学は通常、ここに損得勘定を持ち込んで、収益が出ない活動には無益のレッテルを貼れるのだが…国家の営みは、途方もない未来のために無謀な取り組みを継続する。本当の目的は、一時の政権の支持率を上げるためだけだったとしても。

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