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2867.報道比較2017.1.25

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トランプ氏はドル高を許さないと言っている。彼はTPPは降りると言っていた。ならば…

産経新聞・社説
米のTPP離脱 冷静に戦略を再構築せよ

トランプ米大統領が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から「永久に離脱する」とした大統領令に署名した。就任時に唱えた米国第一主義を直ちに行動に移し、保護主義に突き進もうとする姿勢には、大いに問題がある。トランプ氏が、日本の自動車市場について、一方的に閉鎖的だと批判したことも見過ごせない。安倍晋三首相は国会答弁で「TPPが持つ戦略的、経済的意義について腰を据えて理解を求めていきたい」と語った。トランプ政権下での政治の動きはまだ見通せない。日本がTPPの旗を降ろす必要はない。粘り強く翻意を促すのは当然である。日本と欧州連合(EU)の経済連携協定や、中国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が進めば、米国は世界の潮流から取り残されよう。日本は反保護主義を米国に促すべきだ。日本車の対米輸出をやり玉に挙げたトランプ氏の言動には、明確に反論しておく必要がある。このような認識で米国がTPPに代わる2国間協定にシフトするというなら、相当困難な交渉を覚悟しておかなければなるまい、としている。

日本経済新聞・社説
米離脱でもTPPの果実いかす道を探れ

トランプ米大統領が環太平洋経済連携協定(TPP)から「永久に離脱する」とした大統領令に署名した。アジア太平洋地域に世界最大の自由貿易圏をつくるTPPの発効は当面、絶望的になった。TPPは関税撤廃に加え、知的財産権や電子商取引などの新たなルールを盛り込んだ。こうした果実をいかすため、11カ国で経済連携を進めるのは一考に値する。再交渉や国内手続きのやり直しといった課題はあるが、TPPが実現しようとしていた貿易・投資の自由化の利点は大きい。11カ国の首脳・閣僚らで早急に議論を始めるべきだ。日本が米国との2国間FTAを最初から拒む必要はない。ただ交渉に入れば、米国は農産品を対象にTPPの水準を上回る関税撤廃を求める公算が大きい。日本の農産品の関税撤廃率はTPP参加国で最も低い。異次元の改革で農業自由化を進めることが、日米FTAの条件になる点を日本政府は理解しておくべきだ、としている。

読売新聞・社説
トランプ氏始動 時代錯誤の通商政策見直しだ

トランプ氏は、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を言明したのに続いて、環太平洋経済連携協定(TPP)から「永久に離脱する」ことをうたった大統領令に署名した。安倍首相が米国に対し、TPPの戦略的、経済的意義について「腰を据えて理解を求めていきたい」と述べたのは妥当だ。TPPは発効前の離脱規定がないため、枠組み自体は残る。豪州は、米国抜きの協定実現を目指す考えだという。日本は早々とTPP批准の国内手続きを完了した。米離脱への対応に関する参加国の協議を主導したい。トランプ氏は「我々が日本で車を売る場合、彼らは販売を難しくしている」などとも主張した。しかし、日本は米国車に関税を全くかけていない。世耕経済産業相が「関税以外も日本車と何ら差別的な取り扱いはしていない」と反論したのは当然である。あくまで持論に固執し、誤った思い込みを正そうともしない。事実の重みも理解しない。これでは大国の指導者としての資質に疑問を抱かざるを得ない、としている。

判っていたアメリカのTPP離脱。不思議と3紙は政府が経済政策、構造改革の中心にTPPを据えていたこと、一本足で代替案さえ持っていないことには何の批判もない。批判だけすれば済む話ではないが、これで政府の経済政策はノー・プランに近いなら、作為があったのかと思うほどの無能な政治だ。アメリカの決断を批判する前に、自国の政治のあり方を質すべきだ。
アメリカが総括的な協定ではなく、二国間の協議にしたい理由は、トランプ氏のディールのコンセプトだろうが、悪いアイディアではない。中国を含め、TPPに参加していない国を疎外している、まとめて交渉されることで不利な条件をアメリカが受け入れることになる、自国の都合でルールを変えたい時の手間が膨大…大きな経済圏を作ろうという壮大な案のデメリットは、今のアメリカ政権にとっては受け入れ難いのは理解できる。ならば、日本もTPPはアメリカを外して推進しながら、アメリカとの二国間の貿易協定とともに、できれば中国との貿易を活性化させるべきだ。アメリカはこれから中国と貿易戦争をはじめる。中国にとって、日本は大きな利害関係者になれるチャンスだ。政治が偏った価値観を持っていなければ、もっとも有益なはずだが…?

人民網日本語版
中米の協力・ウィンウィンが正しい道 (2017.1.24)

先週金曜日、ドナルド・トランプ氏が米国の第45代大統領に就任した。トランプ大統領は同日の就任演説と「米国第一」の政策声明で、米国第一、米国振興を再三強調し、長い願望のリストを示した。今や米新政権の国家統治方策は中米関係に影響を与える最大の変数となっている。中米関係はどの道を選ぶのか、その確定性と不確定性はどこにあるのか?トランプ大統領が「米国第一」によって「再び米国を偉大に」しようとしていることは明らかだ。その後発表した政策声明で、トランプ大統領は外交、経済、貿易、国防、エネルギー問題に関する政策と立場を明らかにした。トランプ大統領は「力による平和を目指す」外交政策を遂行し、イスラム国など過激なテロ組織を打ち破ることを強調。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱し、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉をし、貿易協定に違反する国には「ノー」を突きつけるとした。軍を立て直し、海空軍事力を拡充し、軍事的優勢を維持し、サイバー司令部の防御・進攻能力を優先的に強化し、先進的ミサイル防衛システムを開発するとした。エネルギー開発を強化するとした。不法移民を取締り、国境での取締りを強化するとした。だが世界は大きく、米国が世界を離れて単独で生きるのは不可能だ。対外関係をどう処理するかは、トランプ大統領にとって避けられない関門だ。中米は傷つけ合うことを避けるべきだ。中国は中米関係がソフトランディングを果たし、新たな出発点において新たな発展を得ることを望んでいる、としている。

米中の関係を正論で語る人民網。これと同じことを習氏がオバマ氏に語り、その約束の大半は破られた。その結果をアメリカはトランプ氏でなくとも記憶している。いまのアメリカは、中国とウィン・ウィンというゴールは想定していない。完全にゼロ・サムだ。オバマ政権はロシアよりは中国に経済のパワーで価値を見ていたが、トランプ政権はロシアとの関係改善とともに中国を敵視している。中国が正論を通したいなら、コミットメントを求められるだろう。そして、おそらくそれは不可能だ。

毎日新聞・社説
トランプ時代/1 米露の接近 世界の流動化招くのか

米国のトランプ新大統領が、就任演説で「すべての国が自国の利益を第一に考える権利がある。我々は自分たちの生活様式を他人に押しつけない」と宣言した。これはロシアのプーチン大統領が米国に求めてきたことだ。米国は冷戦終結後、「自由と民主主義」という価値観で結びついた欧州や日本との同盟関係を軸に世界を主導してきた。その「価値観外交」に対し、ロシアや中国は異議を唱えてきた。トランプ氏が、理念ではなく損得を優先する「取引外交」への転換を宣言したことで、この構図は変わるかもしれない。トランプ氏は就任演説で、イスラム過激派のテロに対抗するための「新しい同盟」に言及した。ロシアを念頭に置いたとは考えにくいが、一昨年9月にプーチン氏が国連総会で行った演説と符合するのが気になる。対ISのように共通の利害があれば、米露は手を組むかもしれない。だがそれは、価値観を共有する「同盟」とは違う不安定な関係だ。米露間の取引外交が、世界をさらに流動化させることを懸念する、としている。

TPPを外して地政学的なパワー・バランスの話をしはじめた毎日。いつまでもアメリカの理想に依存するつもりなら、現実を見た方がいい。その宣言はすでにオバマ氏の時代になされている。トランプ氏の宣言は、むしろ間違っていない。今まで、アメリカが価値観を押し付けたことで世界が混乱してきた。それは、豊かになった日本からでさえ、聞こえる懸念だ。
アメリカのパワー・シフトが日米同盟の破滅や、自国防衛の義務とすぐ短絡的に考える発想が間違っている。ロシアと連携したら、世界の自由主義が崩壊すると不安になるのも同じだ。ソビエト連邦が崩壊した。ベルリンの壁がなくなった。世界は何が起きたのか?短期には何も起きなかった。世界の終わりも、自由民主主義が世界のすべての理想として席巻することもなかった。考えることをやめ、過信し、問題意識を捨てた人や国が、足下をすくわれ、新しい問題に対応が遅れ、次の時代に適応できなくなっている。毎日の社説は、日増しに質を下げている。不安を煽るだけで問題の原因を突き止めることからさえ目を反らしている。

朝日新聞・社説
退位の論点 結論への誘導が過ぎる

天皇陛下の退位をめぐり政府が設けた有識者会議が、論点と考え方を整理して公表した。事実上、退位を認める前提に立ち、「将来の天皇も対象とする法制度とするか、今の陛下に限るか」について、それぞれの積極論と課題を並べている。実際は、将来の天皇も対象とする場合の課題をことさら多く挙げる一方、「一代限り」の利点を詳述しており、後者を推しているのは明らかだ。ルールがあると権力の勝手を許すという主張で、理解に苦しむ。この論法に従えば、世の中に法律や規則はないほうがいいという話にもなりかねない。衆参両院の正副議長、首相、最高裁長官らで構成される皇室会議の位置づけも不明だ。論点整理がもつ欠陥や思惑を見抜き、多くの国民が納得できる結論に向けて議論を深めることが、国会には求められる、としている。

この主張は揚げ足取りに過ぎない。1日遅れて社説に載せるにはレベルが低い。自社の主張と合わない時の朝日の姿勢はいつも見苦しい。

Wall Street Journal
トランプ政権の通貨戦争、アジアの新たな不安材料に (2017.1.24)

ドナルド・トランプ大統領率いる米国との貿易戦争を警戒しているアジア諸国に、予期せぬ不安材料が浮上した。ドル安政策だ。現在はドル高抑制に動きやすい環境にある。世界最大の経済大国である米国の需要喚起を狙ったトランプ大統領の戦略が成功すれば世界中にとってプラスとなる上、ドル安をきっかけに、経済発展を妨げる非生産的な「通貨安信仰」をアジア諸国が捨てる可能性もある。しかも、アジアからの投資流出はそれほど大きくないと見込まれる。その典型例が日本だ。日本政府は12年以降、経済構造や金融に関して大規模な改革を進めると豪語しているが、安倍晋三首相は日本銀行の円安誘導に頼っている。中国では、習近平国家主席が壮大な改革計画を打ち出したが、結局は信用拡大政策に戻っただけで、今では元安誘導も再開している。こうした政治的な視野の狭さは、韓国やシンガポール、ベトナムの指導者にも言える。国内の技術革新を促し、サービス産業を育成することで、製造業中心のオールドエコノミー産業から移行していく必要性が彼らには分からないのだ。その典型例が日本だ。日本政府は12年以降、経済構造や金融に関して大規模な改革を進めると豪語しているが、安倍晋三首相は日本銀行の円安誘導に頼っている。中国では、習近平国家主席が壮大な改革計画を打ち出したが、結局は信用拡大政策に戻っただけで、今では元安誘導も再開している。こうした政治的な視野の狭さは、韓国やシンガポール、ベトナムの指導者にも言える。国内の技術革新を促し、サービス産業を育成することで、製造業中心のオールドエコノミー産業から移行していく必要性が彼らには分からないのだ、としている。

経済を総括して通貨のリスクを語るWall Street Journal。経済学的には不可能という主張だが、過去にプラザ合意のような政治的な為替誘導の事例はある。それをできる権力はアメリカ大統領にはある。Wall Street Journalが意識しているのは、トランプ氏のそんな発想だろう。
ふたりの大統領候補がいずれも批判していたTPPに賭けるという無能な政治運営をしている日本政府には、ぜひWall Street Journalの進言を認識して欲しい。トランプ氏はドル高を許さないと言っている。彼はTPPは降りると言っていた。ならば…対策を先に考えておくのが、政治というものだ。

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