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2865.報道比較2017.1.23

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GDPを中国が発表した程度で、Wall Street Journal、人民網、朝日新聞が中国経済を話題に。不確実性の高まるアメリカと、柔軟性を失った中国。どちらもハイ・リスク。

Wall Street Journal
刺激策頼みの中国経済、今年は内外に波乱要因 (2017.1.20)

中国経済は昔ながらの刺激策を大量投入したおかげで、かなり力強い足取りで2017年に突入した。20日発表された16年10-12月期の国内総生産(GDP)成長率は6.8%と、7-9月期の6.7%からやや加速した。16年通年の成長率も6.7%だった。中国の輸出が保護主義を強める米国からの強力な逆風に直面するとともに、中国経済に大きな役割を果たしている不動産部門が減速するとみられる今年は、力強い消費という緩衝剤が極めて重要であることがはっきりするだろう。不動産部門に関しては、20日発表の統計はまちまちな内容だった。12月の不動産投資は前年同月比11%増となり、11月の6%増を大幅に上回る伸びを見せたが、伸び率は16年のピークである13%には届かなかった。一方、不動産に関連する工業統計の大半が悪化した。12月の鉱工業生産は前年同月比6.0%増となり、3カ月ぶりの高い伸びだった11月の6.2%増から減速。鉄鋼、セメント、電力生産も全て減少し、夏場以来の大幅な増加傾向に水を差した。先月は住宅価格がピークをつけ、住宅ローン融資が減速しており、16年の経済を下支えしてきた不動産部門は17年に破綻こそしないにせよ、低迷は避けられそうにない。政府の言葉を信じるなら、今年の中国は刺激策を原動力とする経済から脱却し、金融リスクを重視しようとしている。だが、太平洋をまたぐ緊張がエスカレートするようなら、この話はすぐに変わると思った方がいい、としている。

人民網日本語版
中米関係の新たな出発点に期待 (2017.1.22)

1月20日、トランプ新大統領が首都ワシントンで大統領就任を宣言した。就任式におけるその簡潔な演説は米国の国内問題にウェイトを置いた内容で、対外政策については軽く触れるにとどめた。このことから、トランプ新政権が中米関係を含めた世界の大国との外交関係をどのように処理していくのかという点について世界各国で懸念が生じている。トランプ大統領は当選から就任までの期間中に、米国は対中貿易の赤字で損失を被っていると発言し、中国が意図的に人民元為替レートを過小評価していることが対米輸出の拡大につながっていると非難した。さらには「1つの中国」原則を切り札に中国の貿易や為替レートについて見直しを行うというマイナス的な発言をしたことがあった。しかしながらこうした選択は好ましくない結果をもたらすだろう。まず中国の発展がもたらす重要なチャンスを見逃してしまう点が挙げられる。また中米関係に対する正しい認識の欠如は両国関係の政治的基盤を損なうことになりかねない。さらに中米関係は協力すれば互いにメリットがあり、争えばお互いが傷つくことになる点も挙げられる。そして最後に中国と米国という大国が国際事務において担うべき役割とその発揮すべき作用を考慮していないからだ。これらの問題は中米関係を悪化させ、世界平和や発展に悪い影響を及ぼす可能性もある。中国はトランプ新政権が中米関係の重要な原則をしっかりと心に留め、中国と向き合っていくことを希望している、としている。

朝日新聞・社説
中国の経済 雄弁と裏腹の実態

スイスの保養地、ダボスで開かれる世界経済フォーラム年次総会は、各国の政財界の要人が集う場として毎年注目される。今年は、中国の最高指導者として初めて出席した習近平国家主席に関心が集まった。トランプ政権を念頭に経済の保護主義を批判し、グローバル化を受け入れるべきだと訴えた。しかし、習氏の言葉は説得力に欠ける。世界第2の経済規模ながら、今なお市場化改革と対外開放が不十分だからだ。昨年は中国産鉄鋼製品の輸出攻勢が各国で問題視された。過剰生産力を抱えた国有企業が地方政府と国有銀行の支持のもとで淘汰されなかったことがそもそもの原因だ。中国の昨年の経済成長率は6・7%で、26年ぶりの低さだった。貿易の不振が目立つ。人件費の上昇で労働集約型産業が優位性を失い、世界経済での中国の位置づけは変わりつつある。いっぽう、個人消費が力を増しているのは明るい材料だ。習氏はダボスで「中国の貢献」をアピールしようとした。だが、真の主役は党や国家ではない。転換期の中国を担うのは民間企業と市民である、としている。

GDPを中国が発表した程度なのに、Wall Street Journal、人民網そして朝日新聞が似た話題を取り上げている。共産主義の中国にとっては経済は政治の一端だからか、人民網の主張にだけ、多少の違和感がある。経済問題が徐々に政治の問題、そして国家間の価値観や主権の問題に話が進む。たしかに経済は今や政治のもっとも重要なテーマではあるが、混同しすぎると行き場を失い、関係の悪化につながる。カネ儲けや仕事の話ばかりしていたら、友情や家族の関係もおかしくなるのと同様、国家には互いの価値観があるから国境があり、交渉によって両者の関係を最良にするように努力する。考え方に優劣も、是非もない。
トランプ氏の主張はムチャクチャで短絡的なのだが、アメリカの国益最優先で、今までしてきた譲歩を取りやめたいと言っている点は、無視していい発想ではない。それだけアメリカは疲弊しているし、今まで分け与えてきたと言いたいのだろう。喜んで買われていたものが、突如売る権利さえ失う危機は感じるが、売り手としての提案は、中国や日本は準備する必要がある。経済活動とはそういうものだ。
経済から、衝突や対立という中国が言うような話題に発展させると、事態は1930年代に似てくる。経済をきっかけに食、エネルギー、主要産業の安全保障が揺らぐなら、人は生存を賭けて争うほど追い込まれる。中国が冷静さを失わずに対話できるかは非常に気になる。今の時点でも神経質な反応が目立つ。まだトランプ氏の時代ははじまったばかり。中国は大丈夫だろうか?

毎日新聞・社説
米政権と世界経済 繁栄の基盤を壊すのか

企業は自らの判断で世界中の場所から最適と思う拠点を決める。消費者は多様な選択肢の中から好みの品やサービスを購入する。国はそれぞれの強みを生かした産業で経済発展を遂げ、得意な製品を貿易でやりとりし合う。それが結果的に、全体の繁栄をもたらす。少なくともそう信じて、妨げとなる関税や規制を減らし、市場がより効率的に機能するよう、第二次世界大戦後の世界は取り組んできた。先導したのは米国だ。トランプ新政権が推進しようとしている米国第一主義は、そうした戦後、米国主導で構築された秩序や枠組みを破壊する力になりはしないか。懸念せずにはいられない。保護主義貿易の他にも懸念すべきことがある。金融危機の再来だ。リーマン・ショック後に登場したオバマ政権は、再びマネーの暴走が世界経済を深刻な不況に陥れる失敗を犯さないよう、金融業界に対する規制を抜本的に強化した。トランプ氏はその規制を骨抜きにする考えのようだ。世界経済の大混乱につながる危機を再び起こしてもらっては困る。最も辛酸をなめさせられるのはトランプ氏を支持した低所得者層、そして大国の資本に翻弄される新興国や途上国なのだ、としている。

毎日の柔軟性のなさは老害に近い。前述のとおり、すでに是非の話は終わっている。アメリカで雇用が求められ、格差が広がる中で選ばれた大統領が、どんな批判をされてもアメリカ第一と唱えた。正論を述べても話は進まない。そして、この格差はヨーロッパには確実に、そして日本国内にも似た空気は感じられる。いま考えるべきは、過去の成功体験をなぞる方法論ではない。格差ができてしまうグローバリゼーションや競争型の経済と、成長、イノベーション、国民のスキルと雇用のバランスを取るかだ。

読売新聞・社説
テロ準備罪法案 極論排して冷静に検討したい

政府は今国会に、組織犯罪処罰法改正案を提出する。組織的な重大犯罪の計画・準備段階で処罰する「テロ等準備罪」の新設が柱だ。菅官房長官は「一般の方々が対象となることはあり得ない」と強調する。政府は、この点を繰り返し丁寧に説明し、国民の懸念の払拭に努めねばならない。改正案は、テロ対策などでの国際協力を定めた国際組織犯罪防止条約の加入に必要なものだ。条約は187か国・地域が締結している。先進7か国(G7)で批准していないのは日本だけである。政府は、懲役・禁錮4年以上の刑が科される676の「重大な犯罪」から、組織犯罪との関連性が薄い罪などを除外し、300程度に減らすことを検討している。「対象犯罪が多すぎる」との公明党の主張に配慮したものだ。政府内には、過度の絞り込みは条約締結に支障を招くとの指摘も出ている。捜査や他国との協力の実効性を維持する観点からも、慎重に検討することが大切だ、としている。

これは、共謀罪と呼ばれていた法案だろう。自民党に近い読売は推進したいようだ。推進派の論理は、いつも国際社会の中で日本だけは…と強調する。それでも相変わらず「等」の文字をつけて、拡大解釈の余地を残す理由は何だろう?反対派が気にしているのはテロ防止ではない。国家権力の暴走だ。まだ議論が噛み合っていない。何年同じ議論をしているのだろう?

産経新聞・社説
経団連の春闘方針 消費底上げにベア実施を

春闘に向けた経団連の交渉方針で、4年連続で賃金の引き上げに前向きな姿勢が示された。着実な賃上げを通じて個人消費の活性化を図り、デフレ脱却につなげることが重要である。渉指針は、労使で働き方改革に取り組むことも求めた。長時間労働を是正し、生産性を向上しなければ、継続的に賃上げの原資を生み出すのは難しい。社員の待遇を改善し、収益増も促す建設的な交渉を進めてほしい。個人消費の回復を促すうえでも、賃上げを実感しやすい月給の増額が有効である。着実な定期昇給とベアを実施することによって、冷え込んだ消費者心理の改善につなげたい、としている。

日本経済新聞・社説
企業の労使は生産性向上の議論を深めよ

保護主義的な政策を掲げる米トランプ政権が発足し、世界経済の先行きに不透明感が強まるなか、春の労使交渉が始まる。労働組合には経営側が賃上げに慎重になることを警戒する声もある。経団連は昨年と同様、企業に一時金を含めた「年収ベースでの賃上げ」を呼びかけている。毎月の基本給を上げるベースアップ(ベア)は選択肢のひとつとした。物価変動の影響を除く実質の消費支出は、昨年がうるう年だったことを考慮すると11月まで15カ月連続で前年同月を下回る。消費を喚起しデフレ脱却へつなげるには今春も賃上げが期待されるのは確かだ。業績が好調な企業はベアも前向きに考えてはどうか。重要なのはこの先も継続的に賃金を上げ、消費を力強く伸ばしていくことだ。今春の労使交渉では労働時間の短縮も議論の柱のひとつになる。労働時間ではなく成果に対して賃金を払う「脱時間給」制度は社員の生産性向上を後押しする。その創設を盛り込んだ労働基準法改正案を、20日召集の通常国会でぜひ成立させるべきだ、としている。

労働組合と呼ぶ組織のあり方が正しいかは不明だが、個人の技能が期待され、同一労働同一賃金が叫ばれるなら、労使で交渉する際に雇用者側を援助する組織は、今後も必要になると思う。問題は、労働組合が時代に即していないことだろう。企業に準じて作られる労働者の組織は、転職や技能によって賃金にも差異が出る時代には、少なくとも賃金交渉には団結力は持てない。企業をまたいだ組織は現実的ではないかもしれないが、交渉できる関係が成立していないと思う。また、経営層に危機感を持たせる仕組みも足りないと思う。異常なほど貯まった内部留保は、経営層の安全志向よりは無能さを象徴している。これらを賃金に提供できないなら、何に投資して事業を成長させるのかは説明責任があるだろう。政治や経団連は、違うアプローチを考える時期に来ていると思う。

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