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2864.報道比較2017.1.22

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否定しても、デモが起きても、トランプ氏は国民から選ばれた代表者だ。彼は大衆迎合ではあるが、言ってきたことを今のところ一貫して変えていない。ポピュリズムではあるが、風見鶏ではない。悲観と批判よりは、アイディアがいる。

Wall Street Journal
トランプ大統領の「大衆迎合」宣言 (2017.1.21)

ドナルド・J・トランプ氏が20日、米大統領に就任した。大統領になっても1年半の選挙期間中とは何も変わらないと約束しながら。トランプ氏の就任演説は政治の「エスタブリッシュメント」(既成勢力)を声高に批判する大衆迎合宣言だった。支持者は喜ぶだろう。演説をどう統治につなげるかは不明だが、トランプ氏が論争に頭から飛び込みつつあることは間違いない。トランプ氏は、自らの利益のために政府を利用していたとする支配階級と戦う変化の担い手となることを約束した。これで演説は大衆迎合的なものとなった。「議論するだけで行動を伴わない」政治家を攻撃し、経済、そして社会や文化までも含めて米国を生まれ変わらせる包括的なビジョンを提示した。もう1つ気になる点は、トランプ氏の大衆迎合主義的な愛国主義がときに攻撃性を帯びるところだ。トランプ氏が訴える「米国第一主義」は1930年代の歴史的な文脈とは関わりなく、ほとんどの国民がそのままの意味で、当たり前のものとして受け止めている。もちろん、政府は米国の国益に配慮するべきだが、トランプ氏は米国が、価値のない、敵意に満ちた世界の犠牲者であるかのような発言をすることがある。就任演説とはそもそも、個々の政策以上に理念や決意を表明するもので、トランプ氏が今後重視すべきは何を達成するかだ。トランプ氏の演説で皮肉な点が1つある。統治に当たってトランプ氏は国民の支援が必要になる。それはその通りだ。しかし就任式のステージで彼の後ろに立っていた人達の支援もまた必要なのだ。第45代大統領にそれに気づくだけの賢明さがあることを期待しよう、としている。

人民網日本語版
外交部 中米関係が新たな出発点で一層の発展を得ることを期待 (2017.1.20)

米国のトランプ次期大統領が20日に就任宣誓を行う。外交部(外務省)の華春瑩報道官は19日の定例記者会見で「中国側は米国の新政権と共に努力し、新たな出発点において一層の発展を得るよう中米関係を推し進めることを期待する」と表明した。華報道官は「中国側は米国の新大統領就任式を注視している。最大の発展途上国と最大の先進国、そして第2の経済大国と最大の経済大国である中米の関係が健全で安定した発展を保つことは、両国民の共通利益に合致する。双方間に存在するいくつかの具体的問題や相違点に対しては、双方は建設的方法で対話と意志疎通を行い、互いの意図を深く理解し、誤解や誤った判断を回避し、相違点を建設的にうまく管理・コントロールし、中米関係の健全で安定した発展の大局を確保するべきだ。われわれは米国の新政権と共に努力して、引き続き非衝突・非対立、相互尊重、協力・ウィンウィンの原則を堅持し、二国間、地域、世界レベル及び各分野の協力を開拓し発展させ、新たな出発点において一層の発展を得るよう中米関係を推し進めることを期待する」と述べた、としている。

産経新聞・社説
トランプ新大統領 世界にどう向き合うのか

「今日から米国第一になる」という言葉が象徴するように、トランプ米大統領は就任演説を通じて、国益最優先に徹する姿勢を強調した。好むと好まざるとにかかわらず、超大国として世界にどう関わっていくのか。その明確な指針が演説から抜け落ちていたのは、とりわけ残念である。首都ワシントンの一部のグループの手による政治を、米国民に返すとも語った。既成政治を打破するというトランプ氏の主張には強い意思を感じるが、国民に返すだけで国家は運営できない。基本政策で北朝鮮の名を挙げミサイル防衛に言及した点には注目したいが、アジア太平洋地域にどれだけ重点を置くのか。安倍晋三首相は首脳会談を通じ、日米同盟の重要性や世界戦略について早急に意思疎通を図るべきである、としている。

日本経済新聞・社説
「米国第一」を世界に拡散させるな

トランプ政権はさっそく「環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱」を発表した。知的財産などを含む新時代の貿易・投資ルールの漂流は憂慮すべき事態だ。北米自由貿易協定(NAFTA)でもメキシコなどとの再交渉を表明した。2国間交渉で不均衡の改善を個別に要求する可能性もある。管理貿易的な手法が横行すれば、貿易の流れが滞り、世界経済の成長を損ねかねない。日本は欧州連合(EU)などと手を携え、米国の保護主義への傾斜に歯止めをかける必要がある。粘り強く自由貿易体制の大切さを説くとともに、日・EUの経済連携協定(EPA)やアジア圏での質の高い経済連携を実現させる。そうした具体的な行動が重要だ。トランプ氏が安保政策への関心が薄いのは、就任演説で「イスラム主義テロリズムの撲滅」以外にほとんど言及がなかったことからも明らかだ。日本ができる最大の貢献は、トランプ政権に同盟の価値を再確認させ、それをより大きな枠組みに広げることだ。安倍首相の役割は極めて重大である、としている。

毎日新聞・社説
トランプ新大統領 分断を世界に広げるな

ドナルド・トランプ氏が第45代米大統領に就任した。首都ワシントンでは厳かな式典が行われる一方、就任に反対するデモも盛り上がった。「トランプは我々の大統領じゃない」と叫ぶ人々は暴徒化し、警官隊と衝突して多くの逮捕者が出た。米国は深いところで分裂している。国の在り方をめぐる対立だ。自由と民主主義を象徴する国の未曽有ともいえる混迷。それは、とりも直さず国際秩序の混迷でもある。日本としては米国の動きが読みにくい分、主体的な外交が重要になった。米中の取引で思わぬ不利益をこうむる恐れもあるし、日米同盟に基づく米軍の役割の再確認も必要だろう。日本は、米国の政策形成に関与するつもりで積極的な意見交換を重ねてもいいはずだ。トランプ氏は英国以外のEU離脱も推奨しているが、世界の分断は米国の利益にならないし、分断機運をあおる発言もやめてほしい。それをトランプ氏に理解させるために私たちは知恵を絞るべきである、としている。

読売新聞・社説
トランプ新政権 価値観と現実を無視した演説

ドナルド・トランプ氏が第45代米大統領に就任した。演説で「今日から米国第一だ」と宣言し、外交と経済の両面で国益を最優先する立場を鮮明にした。自由、民主主義、法の支配への言及は皆無に近かった。米国の価値観の揺らぎは避けられまい。トランプ氏は演説で、貧困や犯罪など米国の暗い面をことさら強調した。既存の支配層の失政により、雇用と安全が損なわれたという一方的な見方を示し、「ワシントンの権力を国民に返す」と訴えた。賛否が二分する医療保険制度「オバマケア」の見直しも、大統領令を就任初日に出した。議会が厳しい対決局面に入るのは間違いない。「力を合わせ、米国を再び偉大にする」という宣言も空々しく響くだけだ。これでは国民融和の実現は難しい。日本政府は、新政権に対し、日本の投資が米国の雇用増を生んでいることやTPPの意義、日米同盟強化の重要性を粘り強く説明せねばならない、としている。

昨日と入れ替わるように国内紙もトランプ大統領就任を取り上げた。全体に悲観論が多い。Wall Street Journalは昨日につづいて冷静。社説の中に注文はあるが、トランプ氏の行く手を邪魔するような内容ではない。推進するためにはどうすべきかの提案になっている。一方で国内の社説は悲観と批判に終始しているだけ。もしこの発想が行政と一致するなら、ここから先のトランプ氏のアメリカとの関係は、交渉にさえならず、険悪さか忍耐だけの関係になってしまうだろう。
どれだけ否定しても、どれだけデモが起きても、残念ながら国民から選ばれた代表者だ。そして、彼は大衆迎合ではあるが、言ってきたことを今のところ一貫して変えていない。ポピュリズムではあるが、風見鶏ではない。変化する国民の意見にブレてでも支持を取り付けようとする姿は、良くも悪くも皆無。彼が選挙中に主張してきたことは、少なくとも挑戦するだろうし、議会や国民が反対してでも主張するくらいの努力はするだろう。私にとっても真逆の価値観のアメリカ大統領だが、これが時代の選択。失業率が完全雇用に近づきながらも、雇用を作るという。株価が史上最高値を更新しつづけるのに、あくまで成長を追うらしい。それだけアメリカ国内の格差は大きく、中間層のストレスは爆発に近い。そう理解して、これらが是正するアイディアを出さないと、アメリカは関係を弱めていく。トランプ氏のやり方では失敗すると言う前に、アメリカが考える中間層の豊かさを創出する方法を提案する方が、建設的で、本当のパートナーになれる。その発想を中国の外交部は持っているようだ。人民網の方が、日本の社説より建設的だ。もし、これが国家全体の感覚なら、アメリカは日本よりも中国を選ぶだろう。少なくとも経済活動は。それは悪夢だ。

朝日新聞・社説
施政方針演説 未来を拓くと言うなら

「未来を拓く。これは、すべての国会議員の責任です」通常国会が開幕し、安倍首相が施政方針演説でそう訴えた。一人ひとりの議員が「未来」を思い、議論し、合意形成をはかる。それはあるべき姿だ。だが演説を聞く限り、首相の本気度には大きな疑問符がつく。たとえば沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題である。「最高裁判決に従い、名護市辺野古沖への移設工事を進める」「必要なことは、実行だ。結果を出すことだ」と言い切った。一方で、たび重なる選挙で示された沖縄県民の「辺野古移設反対」の民意や、県との対話をどう進めるかについてはまったく語らなかった。沖縄の未来をつくる主人公は沖縄に住む人々だ。その当たり前のことが、首相の演説からは抜け落ちている。トランプ米大統領の就任で、国際社会が揺れる中での国会である。天皇陛下の退位に関する法整備や、「テロ等準備罪」を新設する法案など、丁寧な合意形成が求められる法案が焦点となる国会でもある。演説を言葉だけに終わらせず、未来に向けた「建設的な議論」を実現する。その大きな責任は首相自身にある、としている。

他の国内紙が国内の国会を先に選んだ中、1紙だけアメリカの変化を優先した朝日。日本国民はみんな同じ感覚だろうし、国会議員さえ、安定して動きの鈍い国内政治よりは、変化を目の前にしたアメリカに目が向いている。適切な感覚だ。
全体に安倍氏が置き去りにしていること、批判される点にだけ着目しているのはポジティブになれない。安倍政権との対立が原因なら、やり方が陰湿だ。優先順位の最適化とともに、主張のバランスはニュートラルであって欲しい。

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