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2863.報道比較2017.1.21

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敵対している大統領に「こうやればあなたは評価される」と、国民視点でアイディアを提供するWSJ。アメリカには、まだまだ素晴らしい才能と、それを表現できる場がいくらでもある。

Wall Street Journal
トランプ氏、第45代米大統領に就任 (2017.1.21)

ドナルド・トランプ氏は20日、米国の第45代大統領に就任した。変化を痛切に欲する米国に経済と安全保障の大変革をもたらすことを公約に掲げている。就任演説でトランプ新大統領は選挙期間中訴えてきたテーマに早速触れ「我々は権力をワシントンから国民の皆さんに戻す」と語った。この日から新たなビジョンによってこの国を治める。これからはアメリカ・ファースト(第一)だ。貿易、税制、移民政策、外交問題に関わる全ての判断は、米国の労働者と家族の利益になるために行われる。我々はこの国で使われる製品を作り、この国の企業を乗っ取り、職を奪う外国の略奪から国を守らなくてはいけない。保護主義は繁栄と強さに結びつく。我々は二つの方針をとる。バイ・アメリカン(米国製品を買え)、ハイヤー・アメリカン(米国で雇え)だ、としている。

朝日新聞・社説
トランプ氏と世界 自由社会の秩序を守れ

「自由な選挙、言論や信教の自由、政治的抑圧からの自由」戦争の惨禍の記憶も鮮明な1947年3月、トルーマン米大統領は議会演説で、米国が守るべき価値観を挙げ、宣言した。「自由な人々の抵抗を支援する。それこそ米国の政策だ」東西対立という時代状況にあったとはいえ、いらい米国は自由や民主主義の「守護者」としての求心力を強めていく。同盟関係が結ばれ、米国を軸とした国際秩序が築かれた。それから70年。新大統領のドナルド・トランプ氏は「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げている。深刻なのは、批判に真摯(しんし)に耳を傾けず、異論を排除する姿勢が、多様な意見の共存で成り立ってきた民主主義の土台を崩しかねないことだ。トランプ氏は、米国の外に工場を移す企業を攻撃した。一部が移転を見直したことを「雇用を増やした」と自賛した。トランプ氏の米国が孤立主義の殻に閉じこもらないよう、同盟国や友好国は今こそ関与を強める必要がある。民主主義と自由の価値観の担い手として、日本が果たせる役割も大きい。自由社会の秩序をどう守り育てていくか。米国に任せきりにせず、国際社会が能動的にかかわる覚悟が問われている、としている。

いつでもアメリカ大統領の交代は注目を集めるのだろうが、今回の雰囲気は、誰もが感じるとおり異様だ。そんな雰囲気の中、トランプ氏は「私は変わらない」を表現した。過去の政治を敵視し、支持者にしてきた話を繰り返した。トランプ氏はメディアを敵視しているようだが、Wall Street Journalの冷静な社説と姿勢は、私にとって大統領の演説以上に価値を感じる。

トランプ氏の船出、国民の反発と途方もない機会
就任控えたトランプ氏、支持者は複雑な思い
(どちらもWall Street Journal)

Wall Street Journalの態度は、ジャーナリズムとして最良の姿勢だ。敵対している大統領に「こうやればあなたは評価される」と、適切なアイディアを提供している。その中身は、ジャーナリズムが生き残るための提案ではなく、完璧な国民視点の意見だ。そして一方で、トランプ氏の支持者のコメントを掲載し、これからも彼らをインタビューすると宣言した。
日本の報道が、こんな姿勢を取れる日は来るだろうか?自国の総理大臣の演説を無視してまで取り上げた社説には、そこまでの信念は感じられない。対してアメリカの世界で最も自由を重んじる人たちが、自由を弄ばずに、より良い未来のためにアイディアを出しつづける姿勢を羨望する。この生産的な議論からもっとも遠いのが大統領になりそうな不安はあるが、アメリカには、まだまだ素晴らしい才能と、それを表現できる場がいくらでもある。
この混乱から、アメリカ国民でないことのメリットを最大に活かして、自身の成長に活かしていきたい。呑み込まれず、依存せず、適度に距離を取りながら共存する。利益を分割しながら新しいものを創出できる環境をつくる。どちらかを選んでもらうのではなく、協力したもので成長し、成長を配分する。そこに、新しいグローバリゼーションの形がある気がする。

産経新聞・社説
施政方針演説 変わる世界への覚悟語れ

政権復帰後、5年目に入った安倍晋三首相が施政方針演説で「新しい国創り」を表明した。国際情勢が不透明さを強める中、演説序盤から対外関係に焦点をあてたのは妥当な判断だ。首相は日米同盟に関し「外交・安保政策の基軸」「不変の原則」と語り、トランプ氏との早期会談に意欲を示した。アジア太平洋地域における抑止力の向上へ、具体的にどう取り組むか。海洋進出を続ける中国の脅威に対処する方策をめぐり、突っ込んだ協議が行われなければならない。アベノミクスについては「経済の好循環が生まれている」と改めて自賛した。ただ、経済は力強さに欠け、消費税再増税の環境は整わない。眼前の「壁」を越えるには、規制緩和などの構造改革の着実な実施が欠かせない、としている。

日本経済新聞・社説
「未来への責任」の具体策が知りたい

第193通常国会が召集され、安倍晋三首相が施政方針演説をした。政権発足後の4年間の実績を踏まえ「今こそ、未来への責任を果たすべき時だ」と訴えた。まさにその通りである。しかし将来のために実際に何をするのかという具体策は、演説を最後まで聞いてもよく分からなかった。首相は足元の景気を優先し、消費税率の10%への引き上げを2度にわたり延期した。社会保障と税の一体改革をめぐる与野党合意を撤回したに等しく、危機的な財政状況を立て直していく道筋を国民に説明する責任がある。首相が「最大のチャレンジ」と位置づける働き方改革をはじめ、規制改革、就学支援、女性活躍などの肉付けはこれからだ。どの政策も従来の延長線上の発想では大きな効果は期待できない。首相は演説の中で「抽象的なスローガンを叫ぶだけでは世の中は変わらない」と繰り返した。痛みを恐れて改革をためらっている余裕はいまの日本にはない。与野党はこれから始まる今国会の論戦を通じて、未来のための処方箋を競い合ってもらいたい、としている。

毎日新聞・社説
国会開幕 変化に耐えうる議論を

通常国会が召集された。2017年度当初予算案審議のほか、天皇陛下の退位のご意向を踏まえた法整備や、テロ対策に伴う「共謀罪」の法制化の議論などが焦点となる。同時に、米トランプ政権の誕生や英国の欧州連合(EU)離脱方針など、国際環境が大きく変わる中での国会だ。変化に機敏に対応した政策論争を与野党に求めたい。首相は「名目GDP(国内総生産)は(4年で)44兆円増加」したと強調したが、実質成長率は公約した水準には遠い。今国会に提出された16年度第3次補正予算案の財源は赤字国債による借金でまかなわれた。2度にわたる消費増税の先送りで税と社会保障の一体改革は揺らいでいる。年金、医療制度などの再構築に向けた協議こそ野党に提起すべきだった。首相が野党の意見に耳を貸さず、野党は批判に終始する。変化に対応していくためにも、国会はこんな悪弊から今度こそ脱却すべきだ、としている。

読売新聞・社説
施政方針演説 成長阻む「壁」を打破できるか

安倍首相は衆参両院における施政方針演説で、内政全般に関して「言葉ではなく、結果で国民の負託に応えていく」との決意を繰り返し表明した。経済再生を最優先し、「働き方改革」を具体化することが20日召集の通常国会の焦点である。首相の問題意識は理解できる。首相は、働き方改革を「最大のチャレンジ」と位置づける。「同一労働同一賃金」の導入や長時間労働是正について、法改正を図る方針も打ち出した。現実的な手法で改善することが大切である。社会保障制度改革や財政再建に関する言及は少なかった。国民の将来不安は根強い。首相には、困難な改革に正面から取り組み、具体的な道筋を示す責任がある。海外情勢は、トランプ米大統領の就任など指導者交代が相次ぎ、激変する恐れがある。首相が外交について「最も大切なことは、しっかりと軸を打ち立ててぶれないことだ」と語ったのは妥当だ。憲法問題では、「(改正案を)国民に提示するため、衆参憲法審査会で具体的な議論を深めよう」と呼びかけた。憲法は5月に施行70年を迎える。改正に向けて建設的な論議を進めてもらいたい、としている。

朝日だけ、日本の国会よりトランプ氏の就任に社説すべてを割いた。日本の新聞として、通常国会が開いたら首相の方針を優先しなければならない哀しさ。その期待に応えるだけの演説内容は、安倍氏の方針に含まれていたとは言えない。支持率でも、政策でも、まだ追いつめられた感はない。私の感覚では2020年近辺が財政の本当の正念場。そこまでに手を打たなければ、世界の信任を失うような選択肢しか選べなくなると見ている。そのためには、今年と来年が政治に残されたわずかな時間だが、今の国会にその危機感はない。
賃上げや同一労働同一賃金を目論むのは間違っていないと思うが、時間に余裕があると見ているなら、財政と出生率の課題を徹底的に考えるべきだと思うが、政府は目の前の課題を選んだ。論理的には、経済成長を越える賃金上昇は考えにくく、インフレ率が上がらないなら賃金上昇は企業にとって相当な負荷だ。内部留保を賃上げの原資に使っても、今の人口比率と産業構造では、資本は海外に流出するのではないだろうか。
開会の雰囲気のまま、今年の国会はアメリカの政治よりも注目度が低いかもしれない。マスコミには弛緩しないよう、監視だけしっかりしてもらおう。

人民網日本語版
無形文化財の保護、「中国の経験」 (2017.1.20)

中国の「二十四節気」が「ユネスコ無形文化遺産代表リスト」に登録されたことをうけて、中国はこれで39件の世界クラス無形文化財を持つことになり、その遺産リストで10分の1を占めることとなった。中国が2004年に「無形文化遺産保護条約」に加入してから、わずか十数年で中国の無形文化財の保護が一気に成熟したと言える。国際ルールと目標を掲げることで、特色ある「中国の経験」を形成し、名実共に「無形文化財大国」になった。中国は2005年より、第1回無形文化財国勢調査を開始し、無形文化財を系統的かつ分類別に登録・保存した。5年間に渡る国勢調査は古い村やコミュニティに及び、民間に分散する無形文化遺産のすべてを明らかにした。統計データによると、この国勢調査に参加した職員は延べ50万人に達し、民俗芸能に関わる人々を延べ115万人取材し、写真を477万枚撮影し、貴重な文物・資料を29万件以上収集した。また国勢調査を行った無形文化財の総数は87万件弱にのぼる。この全面的かつ迅速な調査を通じて、絶滅の危機に瀕した多くの無形文化財が保護された、としている。

もともと、中国には世界最古の文明が生まれ、成長してきた歴史がある。それらを保護する感覚まで価値観が世界と一致してきたのはうれしい知らせだ。イデオロギー的な感情を抑えても成立する国に中国がもっと成長すれば、にはさらに多くの文化的価値が世界から認められるだろう。

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