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2852.報道比較2017.1.10

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感情をコントロールする能力を養いたい。政治が、メディアが、テクノロジーが、感情を乱そうとドアをノックする。逃げずに笑って首を振る能力を。

Wall Street Journal
トランプ氏の自動車企業たたき、その裏を読む (2017.1.6)

ドナルド・トランプ次期大統領は米通商代表(USTR)にロバート・ライトハイザー氏を選んだ。ライトハイザー氏は通商弁護士で、ロナルド・レーガン大統領による自由貿易への攻撃を仕切った人物だ。レーガン氏の自由貿易政策を支持する人は大抵、この事実を覚えていない。レーガン氏は1980年の大統領選でミシガン州の自動車工場労働者に、日本車の輸入を抑えるとはっきりと約束した。トランプ氏の頭の中でも同じような計算が働いているようだ。通商政策の最前線で戦うことになる経済チームの顔ぶれを見てほしい。ライトハイザー氏だけではない。ビジネスマンのウィルバー・ロス氏や、対中強硬派の経済学者ピーター・ナバロ氏もいる。トランプ次期大統領と米国の自動車業界の衝突は、見かけほど激しくないかもしれない。自動車業界は、雇用に関してトランプ氏の政策に従っておけば、燃費基準が緩和されて報われるとの強力なメッセージを受け取っている。あらゆる政治がそうであるように、規制をめぐる政治も全ての人にとって何かしらの利点があることもわれわれは理解している。もしかするとわれわれは、トランプ氏のツイートが今後、見た目以上に平凡な政治の交渉プロセスにどのように組み込まれていくのかを学んでいるところなのかもしれない、としている。

こういう冷静で示唆に富んだ意見を言える社説が日本に登場するのはいつだろう?まあ落ち着け。コラムニストの声が聞こえる。先日の日本の社説は嗤いの対象だ。
アメリカは鉄道のカバー範囲が少ないこともあり、自動車産業はインフラに近い側面を持っている。政治との利害は日本やヨーロッパの感覚以上に強く、インパクトも大きい。雇用、税、輸出入…トレード・オフになる領域が多く、パブリシティ効果も強い。トランプ氏が事前にトヨタにコンタクトしている可能性はないだろうが、数日遅れでアメリカに投資計画を明らかにしたトヨタからは「税制優遇でもしてくれれば」とのメッセージが聞き取れる。騒いだメディアだけが恥をかく結末。日本の新聞にも冷静さと知性が欲しい。

日本経済新聞・社説
AIで日本を強く(2)変化に対応できる俊敏な組織に

人工知能(AI)の普及は新しいビジネスモデルやサービスを生みだすチャンスを広げる。半面、技術力を武器にした新たなライバルが急速に台頭する可能性も高まる。激しさを増す競争を戦えるよう、企業は組織をつくりかえなくてはならない。自動車の次世代技術の中心である自動運転の開発競争は、AI時代の企業の競争を象徴する。既存の自動車メーカー以上に動向が注目されているのは米グーグルやアップルなどのIT(情報技術)企業だ。異業種から強力な競争相手が現れる。しかも彼らの経営のスピードは格段に速い。企業に求められるのは、こうした激しい環境の変化やスピード競争に対応できる組織をつくることである。「人とAIが補完し合うことが大事になる。人がAIの力を借りながら、日本の強みである現場力をさらに発揮すべきだ」と柳川範之・東大教授は提言する。AIに人が仕事を奪われる懸念はある。代替可能な仕事は代替されざるを得ない。人に求められるのは創造性やコミュニケーション力を高め、より付加価値のある仕事をすることだ。AIの普及をピンチでなくチャンスとしたい、としている。

毎日新聞・社説
歴史の転機 人工知能 人類の将来を見据えて

AIの能力が向上し続ければ、人間を支配するようになるのではないか。AIを使いこなせる人とそうでない人との間で新たな格差問題が生じるのではないか。そんな懸念も語られるようになった。AIを活用した技術で普及段階に入りつつあるのが車の自動運転だ。アクセル、ブレーキ、ハンドルの三つの操作のうち、二つを自動化した車は既に市販されている。ドライバーを必要としない完全自動運転車も開発競争が続く。目立つのはホンダとグーグルなど国境を超えたメーカーとIT関連企業との連携だ。研究開発や利用時の倫理面、法制度の課題などを検討してきた内閣府の有識者懇談会は昨秋の論点整理で、AIとの協働を「人間能力の拡張」と位置づけ、新しい価値観の基盤となる可能性を指摘した。AIの問題を考えることは人間とは何かを考えることにつながっている。人類の将来を見据え、真剣に向き合うべき時が来ている、としている。

日経は昨日につづいて2回目。同じことを語っているのに、日経の建設的な視点に比べ、毎日はまるで議論になっていない。危機感を遠くから見て尻込みしている。こういう思考が増えると、日本は乗り遅れる。余計なノイズを出さないで欲しい。
企業が独自路線から提携・連携に動いている理由は、もう現実の課題が見えている証だ。そして、各社の知識レベルが一致しているから、パートナーシップに至れる。組むことを公表したということは、目標の期日は決まっている。現実になる日は近い。
Googleがなぜハードウェアに傾注しはじめたか?ハードウェアに利益の源泉を見つけたのもあるだろうが、センサーを適切に配置し、CPUが判断した後のアクションを適切に実現するには、ハードウェアまで研究しないと実現が困難な未来が見えたからだろう。センサーからのデータ、他のインターフェイスからのデータを集約して、優先順位をつけて、計算して、次のアクションに指示を出す。IT企業ができる領域は確実に多いが、連携しなければ理想は遠い。自動車会社も、自力でできるつもりだったが、このプログラミングは自社開発は困難と悟ったのだろう。半分は外的データと連携し、競合と共通化しなければならない。標準化の議論になる。戦うくらいなら、その領域はIT企業にやらせた方がいい。クルマを安全に走らせるだけでも、膨大で気が遠くなるテストがいる。
自動運転だけ考えても、実証実験と呼ばれるものがはじまるのは遠くはないだろう。だが実生活へのデビューにはまだ相当な時間がかかる。その時には、経済的な合理性とマーケティングという課題も生まれる。普及にはさらに時間を使うことになる。
恐れて傍観者になれば、すべての機会を失う。それは、原発でも、インターネットでも、バイオテクノロジーや宇宙開発でも、火を恐れずに使い、制御に挑戦したのと同じだ。使いこなし、過信しない意識を持てるかは、知ったものにだけ生まれる。

朝日新聞・社説
外国人との共生 生活者として受け入れを

いわゆる移民政策は考えない。これが政府の方針だ。「いわゆる移民」とは何か、政府は語らない。ただ、欧州を中心に移民・難民がさまざまな摩擦を生んでいる現状を見て、「移民」に神経をとがらせる。その一方で、外国人の受け入れは広げている。代表例が技能実習制度だ。期間を3年から5年に延ばし、対象職種は70を超える。約20万人が実習として各地の企業や農漁村で働く。「外国人労働者の受け入れや外国人住民との共生は、いまや国全体で共有すべき課題だ」。外国人が多く住み、不可欠の存在になっている浜松市など約30の自治体でつくる「外国人集住都市会議」は繰り返し訴える。「未来への投資として、定住外国人を積極的に受け入れていくことが求められている」政策提言をする財団法人「未来を創る財団」は、自治体や企業関係者を交えたシンポジウムを重ね、昨年末に提言をまとめた。財団のメンバーで日本国際交流センターの毛受敏浩執行理事は「外国人の受け入れは、地域社会を活性化させるテコになる」と指摘する。まずは現実を直視し、議論を始めたい。政府と国民がともに考えるべき課題である、としている。

日本人で、移民について議論できる人がどれくらいいるだろう?原発でさえまともに議論できず、タブー化させていく社会。それでこどもが学校でいじめを受ける現実まである。問題を提起してから活発な意見交換ができる環境を、誰がつくるのが適切なのだろう?
今回の朝日のアプローチは、前向きな気持ちになれるエッセンスが含まれている。自治体からポジティブな意見を聞き出しているからだろう。やはり、注目すべき話題を第三者の立場で発信するのに、メディアは欠かせない。これをインターネットにやらせるのも可能だろうが、それをホストできる企業体は、日本にあるだろうか?人材会社?自治体?どちらがやっても偏りか利害が出る。外資系に頼るのも異論が出るだろう。政治に思惑がなければ、中立の立場でメディアに要請できるのかもしれないが、政治には結論が先に存在している気がする。何か危機感がなければ議論ははじまりそうもない。できる範囲で、動きたい人は動く。待つ必要などない。その事例を、メディアが前向きに伝えていけばインバウンドのような流れができるかもしれない。

産経新聞・社説
「老い」の定義 実情に即して見直したい 多様な選択肢を社会の活力に

現在の高齢者は医学的に若返っているとして、日本老年学会などが、一般的に65歳以上とされている「高齢者」の定義を75歳以上へ引き上げることを求めた。医師や学者らでつくる日本老年学会などが、高齢者の定義を引き上げる根拠として挙げたのは、肉体面での若返りだ。学会などで脳卒中や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などの病気や運動の各種データを解析したところ、65歳以上の慢性疾患の受診率が低下していた。労働力人口の激減や社会保障費の膨張が大きな課題となるなか、定義の見直しを人口減少に耐え得る社会への変革に向けた第一歩と位置付け、政府は具体的な検討を進めてもらいたい。「高齢者」と呼ばれなくなるだけで、気分的に活力が出る人もいよう。勤労だけではなく、ボランティア活動などへの参加者が増えるのもよいことだ。いつまでも元気でいたい-というのは多くの人の願望である。むろん、制度や社会の仕組みの見直しには困難がつきものだ。そのハードルを乗り越えたとき、少子高齢社会に希望が見えてくる、としている。

もし、年金や財政に問題が少なければ、産経の提案はスムーズに受け入れられただろう。残念だが、年金がワークしていないせいで、この提案に政治に心暗鬼になってしまう。正しい議論を進めるためにも、先にすべきは年金問題を、可能な限り公平にして、健康な人たちが社会参加する方が、さらに豊かな生活を送れるシステムを整えること、今までどおりのライフスタイルにも安心を提供できるのが理想だろう。論理的で、リスクが少なければ、高齢者にハードルを乗り越える挑戦をしてくれる人は多いと思う。どちらかといえば、努力が必要なのは行政だ。

読売新聞・社説
安倍外交と安保 米露中としたたかに渡り合え

安倍首相は今年春、先進7か国(G7)ではメルケル独首相に次ぐ古参となる。再登板後4年間の様々な経験をいかに具体的な成果につなげるか。安倍外交の真価が問われよう。首相は下旬にも訪米し、トランプ氏と会談する方向で調整中だ。トランプ氏は選挙中、在日米軍撤退に言及した。南・東シナ海で力による現状変更を図る中国への重要な抑止力としての日米同盟の意義をきちんと説く必要がある。トランプ氏が離脱表明した環太平洋経済連携協定(TPP)についても、自由貿易の効用に加えて、中長期的な対中戦略の一環であることを説明し、理解を深めたい。日中両国は今年9月、国交正常化45年を迎える。来年8月の平和友好条約締結40年を控え、双方が「戦略的互恵関係」の原点に立ち、歩み寄る意志と努力が肝要だ。日本政府は、年内の首相訪中と来年中の習氏の初来日を目指す。中国側も、経済分野を中心に関係改善に前向きとされる。首脳往来が重なれば、閣僚や官僚、経済人らの信頼醸成や協議の活発化にもつながろう、としている。

安倍政権が安定しているのは認める。政治も民主党時代のドタバタとした素人政治よりはいい。だが、公約の達成率は低い。期待値を上回ったことはなく、経済最優先と言いながら、昨年までは安全保障ばかりだった。外交が機能しているかといえば、1年目の靖国参拝を思えば、まともになったとは思うが、うまくやれているのはアメリカとだけ。中国や韓国とはさらに溝が深まっている。安倍政権の安定の要因は、他に理想的な候補がいないことに尽きる。努力が必要なのは、安倍氏以外の方々だろう。

人民網日本語版
実体経済に興味を示さず、自宅で働くことを選ぶ若者増加 (2017.1.9)

中国国内家電大手の格力電器の董明珠董事長はあるインタビュー番組で、「90後(1990年代生まれ)は実体経済における仕事よりも自宅でネットショップを開くことの方を望んでいる。この世代の人たちは国家経済の発展に不安を抱いており、ネットショップモデルが実体経済に刺激を与えることで、社会全体にも刺激を与えられると考えている」と語った。SNS上では、多くの若者たちが、「ネットショップを開くことでより良い形で社会に接し、経験を積めるだけでなく、製品の流通過程の支えとなる。これこそ実体経済にとっての効果的なサポートだ」とコメントしている。一方で、董氏の意見を力強く賛同する人もいる。飲料水大手「娃哈哈」の宗慶後董事長は、「実体経済こそが富を創出する経済の形であり、インターネットはバーチャル経済として実体経済をサポートする存在でなければならない。バーチャル経済が主要産業になったとしたら、実体経済を押し出し、最終的には実体経済が全体的な経済の発展を支えきれなくなってしまい、バーチャル経済も泡と消えてしまうだろう」と語っている。専門家は、「インターネットが生活に浸透したことによって、一部の若者たちは引きこもりがちになり、自宅で仕事ができる職業を選ぶ傾向が大きくなってきている。実際のところ、若者たちはもっと開拓精神を持ち、外の世界に触れて、視野を広げるべきだ」と指摘している、としている。

中国でも日本と似た現象と議論が起きている。議論が論理的なのかもまた、疑問だ。
今回の記事の中での実体経済からネットショップが隔離され、対立軸で語られるのが、まず判らない。通信販売と実店舗販売という切り分けなら判るが。もしその分類なら、金融のような実体のない商材の通販率は極めて高くなる。生鮮食品、一物一価のもの、サイズや個体差のあるものは実物を確認したいニーズに駆られる。これはインターネットの問題ではなく、商材の問題だ。
ここに若年層の価値観、労働観を含めると、問題はもはや判断できるのか疑わしい。実店舗には接客のノウハウがあるのと同様、通信販売にもコミュニケーションのノウハウは存在する。どちらかに価値があるのではなく、どちらも異なる能力だ。さらに踏み込んでいけば、実店舗には不動産、近隣の競合、天候、交通といった側面があるだろう。同様に、インターネットにもプログラミング、デバイス特性、通信スピード、プレゼンテーションの差別化、画像の魅力といった側面がある。ビジネスとしてはどちらかを伸ばすのか、両方を融合させるかは経営判断であり、これが世代によって価値観が変わるかもまた違う議論だと思う。
ひとつだけたしかなのは、価値があるものは、オンラインでもショップでも売れる。価値のないものは、どこに置いても売れない。それは、いつの時代でも、どんなビジネスでも同じだ。ならば、パワーを注ぐ場所は決まっている。中国も気づいているはずだ。

Financial Times
懐古趣味ナショナリズムの台頭 (2017.1.10)

米国は地球規模のトレンドを仕掛けることに慣れている。しかし、ドナルド・トランプ氏が「米国を再び偉大にする」と公約する数年も前に、中国、ロシア、トルコの3カ国が「懐古趣味ナショナリズム」の流行を確立していた。中国では習近平国家主席が「中華民族の偉大なる復興」を主導するという表現で、トランプ氏の有名な公約の中国版を2012年に打ち出していた。同じ年に、ウラジーミル・プーチン氏が大統領としてクレムリンに返り咲き、「ロシアを再び偉大な国にする」と簡単に要約できる国家プロジェクトに着手した。一方、トルコではレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が、オスマン帝国時代の栄光から国全体が刺激を受けることを望んでいる。日本の安倍晋三首相は、国の再興を目指して精力的なキャンペーンを主導している。日本をアジアの強国に押し上げた明治維新に触発されたのだという。懐古趣味ナショナリズムは過去にも流行したことがあるが、それらの時代は、振り返ると元気になるという類いのものではなかった。例えば、1930年代にはムッソリーニのイタリアが古代ローマの栄光を強調し、ナチスが自分たちを中世欧州のドイツ騎士団の継承者と位置づけていた。国家の復興を願う人々にとって、歴史は1つの刺激になり得る。米国でも、どこでもそうだ。だが、歴史は警告としても受け止めるべきだ、としている。

最近のFinancial Timesが得意とする国家主義批判。歴史を振り返って、いまのおかしな政治の扇動には乗るな、という部分には大いに賛同する。いつも気をつけていよう、冷静でいたいと思う。
一方で、危機だけを煽っていると、ヒラリー・クリントンのようになる運命を危惧している。私は、あらゆる国家主義が、経済はもちろん、平和で、安定した地球規模のゆたかさのために主張しているなら、いつでも賛同する。もし、グローバリゼーションが生き過ぎたことで不都合が生じているなら、改めるべきだと思う。だが、いま国家主義を語る人たちの意見は、そうは見えない。この場所は私の場所と言い出して占領し、自分の国のために他の国から産業を引き上げるという。これは、トラブルの原因が増えているだけというのが、歴史の教訓だ。
国内の格差は大いなる問題の原因だし、国家間の格差、民族間の格差もまた衝突の原因だ。この解決のために、ルールが緩過ぎたようなので締めようという議論は正しい。おまえだけが得をしていると言い出すのはおかしい。飢えているから困っているなら助けるが、快適さと豊かさを求めるなら、利害が一致した人だけを受け入れる。これは、ある程度の道理が判れば、この地球のすべての人に判ってもらえるルールのはずだ。
このルールを、リーダーが平然とやめると訴える部分には、大いに異議を唱えつづけて欲しい。だが、この問題をどう解決するかを同時に考えなければ、いつまでも恐いリーダーの登場に脅えることになる。相手を批判するだけのヒラリー・クリントンの戦い方ではポピュリズムには勝てなかった。ポピュリズムに抗うには、いまある不公平を解決するシステムを考えるのが、もっともシンプルで早い。政治には期待できない。やれるのは、誰だ?

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