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2844.報道比較2017.1.3

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雇用のミスマッチではなく、技能のミスマッチ。Financial Timesの記事が、気づきを与えてくれた。必要なのは、補償ではない。モチベーションを得られるチャンス、適切に支えるコーチ、信頼できるチーム。

読売新聞・社説
日本経済再生 企業の「稼ぐ力」を取り戻そう

経済再生の歩みをより確かなものとし、社会の活力回復へ足がかりをつかめるか。2017年は正念場を迎えよう。デフレ脱却を目指すアベノミクスは5年目に入った。金融緩和と財政出動の効果で、企業収益こそ改善したものの、消費、投資の拡大で経済の好循環を生むには至っていない。第3の矢である成長戦略が思うように進んでいないためだ。蒸気機関、電力、コンピューターに続く「第4次産業革命」と呼ばれる新たな潮流を、積極的にとらえることが重要だ。生産性を上げ、付加価値を高められる産業分野は少なくない。人口減や高齢化も見方を変えれば、新ビジネスを生む「宝の山」となり得る。介護、保育、教育、農業などは潜在的な成長市場だ。政府は、もっと大胆に規制緩和や補助金、税制の制度改革を進め、企業の新規投資や起業を後押しすべきである。民間の要望をきめ細かく反映させたい。20年度までに基礎的財政収支を黒字化する政府目標も実現は難しい。消費増税延期を踏まえ、社会保障と税の一体改革実現への道筋を抜本的に見直す必要がある。日銀は新手法の効果を見極めながら、今後も粘り強く金融面からの経済下支えに努めるべきだ、としている。

読売の社説は、まるで箇条書き。それでも感情がない分だけ、他の4紙よりはいい。感じた点を、箇条書きでまとてみる。

  • アベノミクスはデフレから脱却したのではなかっただろうか?まだ目指しているのか?いずれにしても、もう5年も最初の3本目の矢が進まないのは、失敗、または検証が必須だろう。
  • 20年前の成長率に届かず、20年前のGDPに合致する現状は、成長を求める方が困難ではないだろうか?人口減というマーケットの収縮をどう見ているのか?
  • 攻めの経営?世界戦略?読売自身が取り組んでいることでもいいので教えて欲しい。

ここに挙がっているひとつでもいいので、取材による情報が欲しかった。取材もコスト削減の時代とでも?ひょっとすると、この原稿もAIが自動につくったのだろうか?その雰囲気が臭うほど、無機質だ。もしそうならすばらしいが、これが人間の仕事なら…価値はいかほどだろう?

朝日新聞・社説
資本主義の未来 不信をぬぐうためには

米国の次期大統領にトランプ氏が当選して以来、減税やインフラ投資で景気が刺激されるとの期待が高まる。だがそれで、昨年の世界を揺るがせた経済システムへの人々の不信が消えるとは考えにくい。米国や英国で噴き出た「自国中心主義」は、経済のグローバル化への反発に深く根ざしているからだ。冷戦終結後、あくなき利潤の追求を推進力に、ヒト・モノ・カネの国境を越える往来を広げてきた資本主義。問われているのは、その未来の姿である。貿易の拡大や技術の進歩に伴って生じる格差は、再分配による修正を徹底すべきだ。それは税制の活用など、一義的には国ごとに課された仕事である。将来を見渡せば、人工知能の発展など「第4次産業革命」とも呼ばれる動きがある。進み方次第では、新しい成長や豊かさをもたらすかもしれない。だがその際、資本主義の「影」も、繰り返し表れるはずだ。大企業による独占など「市場の失敗」への対処、バブルに翻弄される景気の安定化、成功者への富の集中の抑制――。政府の役割は引き続き重要だ。より良いシステムを探る地道な努力が、今こそ必要だ、としている。

日本経済新聞・社説
揺れる世界と日本(2)アジアの安全保障に新しい息吹を

トランプ氏による同盟批判は、知識の乏しさや事実の誤認にもとづくものが少なくない。たとえば、日本が十分に駐留経費を負担していないという指摘だ。日本は米軍に基地を提供しているだけでなく、本来なら米側が負担すべき人件費や光熱費などの駐留経費も、「思いやり予算」として払っている。同盟国は米国に対し、これからも「安全保障の傘」を提供するよう求める一方で、防衛のための自助努力も増やしていかざるを得ない。財政事情が厳しい日本も例外ではない。GDP比でみた防衛予算は、友好国に囲まれたデンマーク(1.2%)より低い水準だ。カギを握るのは軍事だけではない。日本は政府開発援助(ODA)を使い、インドネシアやフィリピンに巡視船を供与してきた。海洋の安定を維持するうえで、意味ある支援だ。そのうえで重要なのは、中国と安定した関係を築く努力だ。互いに恩恵を得やすい経済や環境の協力を積み重ね、領土や歴史問題があっても揺るがない関係をつくりたい。こうした地道な取り組みを続けたからといって、米国第1主義のトランプ氏の発想が変わる保証はない。それでも、同盟改革を進めることが、長い目でみれば、世界の秩序を保つための近道である、としている。

毎日新聞・社説
歴史の転機 トランプ政権と世界 米国の力 平和に生かせ

トランプ氏は既成の権威を思い切り批判し罵倒して、米国民の理性というより眠っていた情動に火をつけた。それは主として破壊だった。だが、世界を見渡せば北朝鮮は核実験を繰り返し、シリア国境地帯では戦火を逃れる人々が長い列を作る。流入する避難民に欧州諸国は悲鳴を上げ、和解と寛容に基づく国際秩序は排斥と分断に傾いている。そんな世界をいかに安定させるか。問われているのは建設の知恵だ。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に加え「核兵器のない世界」構想も頓挫するかもしれない。トランプ氏の親イスラエル路線によりパレスチナとの「2国家共存」構想は白紙に戻り、アラブ・イスラエルの対立が再燃する恐れもある。「再び米国を偉大に」を掲げるトランプ氏は米国自身の失敗に学び、歴史の前に謙虚であるべきだ。強国の力は平和のために生かしてこそ意味がある。国際協調を忘れて単独行動に走れば他の国々に愛されず、歴史にも報復されよう。愛されない国は決して偉大ではいられない、としている。

この3紙は、元日のままトランプ恐怖症を引きずる社説。内容も進歩ない。ということは、事前にまとめてあった原稿だろう。大きなテーマに見えるが、話は破綻しているものが多い。3紙の結論は「トランプ氏を、とにかく批判したい」に尽きる。これは、大統領選挙を報じていたアメリカのメディアの姿勢に似ている。いま、彼らは信頼を失い、視聴者からは嘲笑され、トランプ氏からは会見さえ開いてもらえない。重要なトピックはYouTubeとTwitterから、本人が告げるものが注目されるようになった。メディア自身が、トランプ氏のTwitterを見て語る。その流れを、さらに後ろの傍観席から伝える日本のメディアという状況だ。
朝日は資本主義の欠点を国家に補えと言っている。これはトランプ氏の意見に合致している。だが、保護主義は否定。この矛盾を「地道な努力が必要だ」と一言で片付けるのは、トランプ氏の論理より短絡的に感じる。
毎日も破滅的だ。アメリカの政治や経済に、ユダヤは中華より深く根ざしている以上、イスラエルとの関係は台湾と中国の関係よりさらに気を遣う。アメリカ国内で、国連のイスラエルへの対応で棄権に回った最後のオバマ氏の判断は、相当物議を醸している。Twitterで批判を繰り広げたトランプ氏の姿勢にも非難が集まっている。だが、2国家共存を白紙に戻そうとしているのは、トランプ氏と思っている人は、おそらくゼロ。その決断をしたのはオバマ氏、またはケリー氏というのがアメリカの感覚だ。

安保理、イスラエル入植非難決議案を採択 米拒否権行使せず
オバマ氏、イスラエルへ最後の一撃
イスラエルに対するケリー米国務長官の怒り
(すべてWall Street Journal)

たしかにケリー氏は2国家共存の維持を必死で主張しているし、トランプ氏はイスラエルに寄り添い過ぎの姿勢は見えるが、歴史の前に謙虚でなかったのは…どう見てもオバマ氏だ。何でもトランプ氏の判断が間違っていると決めつけるのは暴力的だ。
日経は、自己矛盾を抱えたような社説を展開。トランプ氏は知識が乏しいといいながら、GDP比で示すとトランプ氏の主張が妥当になるので困ると必死に言葉を並べている。同じ話題は、大統領選挙の時から解説されている。カンニングできる資料はいくらでもあるのだが。

トランプ大統領誕生で問われる日米同盟の意義 by Wall Street Journal

まさか、日本の省庁が日経と同じレベルの思考で止まっていないといいが。
トランプ恐怖症の社説は、休む言い訳に使う題材のようなもの?品質の低さはここ数年で、最悪だ。

産経新聞・社説
日本文化 守るべきもの見極めたい 変化を超えて伝統に誇りを

事始め、御身拭い、おけら詣り、除夜の鐘に初詣、七草がゆ、初釜式…といった伝統行事は、いずれも年末年始の京都の風物詩である。同様の風習は各地で行われていただろうが、姿を消したものも多い。近年は国際化が進むなかでも、依然として町に息づく和の文化に、たやすく触れることができる。それは、先の大戦での空襲被害がほとんどなく神社仏閣が残されたこと、町とともに庶民の暮らしも残ってきたことなどが要因だ。風習や生活文化は日々の暮らしの中にこそ存在する。言い換えれば日本人であることの誇り、喜びがまだそこにある。日本人が失いつつある「日本の心」が根強く残っているのだ。清少納言が「枕草子」に「近うて遠きもの」として、こう書いている。
「師走の晦日の日、正月(のついたちの日のほど」
同じ1分1秒でも、年越しの夜はやはり普段とは違う。この感性にこそ、日本文化の核がある、としている。

元日に社説を休むのは英断だと思っていたら、2日遅れで元日の社説が届いたようだ。永遠に休んでいていい…と思う品質に驚く。

Wall Street Journal
2017年の生活を一変するテクノロジー (2017.1.2)

スマホでの動画視聴

好むと好まざるとに関わらず、17年はスマホでもっと動画を視聴するようになるだろう。 フェイスブック 、ツイッター、インスタグラムなど主要なソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)全てが動画のライブ配信機能を加えており、いわばポケットに入るテレビ局になろうとしている。また、彼らは動画の視聴回数が1日100億強に上る「スナップチャット」を追い抜くことも目指している。

メガネ型端末の逆襲

「グーグルグラス」の失敗から4年、メガネ型端末を装着するのはもはやとっぴなことではなくなった。16年秋、カメラが組み込まれたスナップチャットのメガネ型端末「スナップスペクタクルズ」を求めて人々が何時間も列を成した。また、モバイルゲーム「ポケモンGO」の成功は、現実世界の風景にデジテル情報を重ねる複合現実(MR)または拡張現実(AR)技術の可能性を数百万人に教えてくれた。ARが仮想現実(バーチャルリアリティー、VR)よりも大きく勝る点の1つが、利用時の孤立感がはるかに少ないことだ。17年は視界に映像を投影するメガネが登場するだろう。

しゃべるスピーカーは傾聴に値

2016年は音声コントロール技術が大躍進した。アマゾンの「Echo(エコー)」と「Echo Dot(エコードット)」は、音声アシスタント機能「Alexa(アレクサ)」と会話する便利さを数百万のキッチンやホームオフィスにもたらした。17年は音声コントロールの家庭への「侵入」がさらに進むはずだ、としている。

この記事にあるトピックで、心が踊るものがひとつでもあっただろうか?ITにどっぷり漬かった仕事の私が、少しだけ取り組んでもいいかな?と思ったのはAI。だが、このトピックの旬は2015年後半。今では話題にさえなりそうもない。ギークと呼ばれるようなIT好きでさえ、退屈になるほど、ITは新しいトレンドを生み出せずにいる。
トランプ氏の共和党時代は、きっとITとの親和性は低い。抵抗に気を取られると、衰退に向かいそうだ。久しぶりに、ITに未来が見えない。
私自身は、基本に返りながら、世界のどこでも通じるような仕事のインフラをつくりたいと思っている。それくらい、新しいことがない。だからこそ、刈り取る収益は増やしやすいかもしれないと信じて。

Financial Times
ロボットが雇用を奪う時、労働者に補償を与えよ (2016.12.28)

かつて船頭たちの仕事が消えていったように、現代ではグローバル化と技術の大変革という2大潮流によって、先進国に昔からある仕事の多くが時代遅れなものになりつつあるのだ。どちらの潮流も、全体的には大きな利益を生み出しているが、局所的には痛みをもたらしている。政治家の中には、この痛みこそが英国の欧州連合(EU)離脱やドナルド・トランプ氏の米大統領選挙勝利につながった有権者動乱の原因だと主張する向きもある。米国のホワイトハウスが先日公表した技術変化に関する報告書は、安価に、そして理論的にはもっと容易に実行できそうな代替策の一覧表を提示している。「人工知能と自動化と経済について(Artificial Intelligence, Automation, and the Economy)」と題したこの報告書によれば、最低賃金の引き上げ、労働組合の交渉力の強化、労働者が転居しやすくするための安価な住宅の供給、労働への課税に対する資本への課税の比率引き上げ、そして職業訓練と再教育への拠出金の大幅増などが推奨されるという。新政権の戦略は、大幅な減税と大幅な財政支出増加を行い、後はそれによる恩恵を取れる者が取るにまかせるというものに見える。だが、それがどのような結果になろうとも、次の結論を避けることは難しい。社会の安定を保つためには、仕事を失った船頭たちに補償を行うもっと賢明なやり方をいずれ編み出さなければならない、としている。

表題と、コンテンツの結論は、日本人の私には乖離を感じる。アメリカの大統領経済諮問委員会の提言は、適切な提案をしているし、英国首相の方針にも一致しているなら、なぜ補償を求めるのだろう?経済紙なら「雇用のミスマッチではなく、技能のミスマッチだ」という問題提起への前向きな提案が欲しい。
最初に取り上げた読売の箇条書きへの回答も、アメリカの大統領経済諮問委員会の提案が、半分程度は応えているように思える。日本で起きている経済の問題の半分は、雇用や報酬のミスマッチではなく、社会や企業が求めている技能のミスマッチにあると思う。消費者が求めているものは、日本企業が提供する品質とマッチしていない。過剰と物足りなさのいずれかに寄ってしまっていて、ピントがずれている事例が多い。その隙間を、外資の高収益企業が埋めている。彼らはブランドだけで勝負などしていない。経営、サービス、人材、ブランド…一貫性がストーリーのように完成されている。その一貫性は、日本人が心酔しやすいフィロソフィーに満ちている。この一貫性をつくるには、技能がいる。この技能を習得した日本人が少ないからか、残念なほど日本企業がこれを実現している例に巡り合えない。特殊といえば
特殊かもしれないが、学習と経験、そして考えつづける能力があれば、日本人なら確実に習得できる技能だと思う。
もし、社会が求める技能を、習得できる学習のためのシステムがあれば、格差は是正され、雇用のミスマッチも低減し、経済は成長する。これは、魔法のように聞こえるが、事実だし、取り組むべきテーマだ。おそらく、企業再生に長けた経営者、無名の選手を輝く一流に仕上げる監督、不登校や落ちこぼれといわれる人たちにやる気を起こさせた教育者のような人たちが、このミスマッチを是正し、再生するツボを知っていると思う。政治がこれに気づけば、システムをつくれるかもしれない。必要なのは、補償ではない。モチベーションを得られるチャンス、適切に支えるコーチ、信頼できるチーム。これは、世界共通だ。

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