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2842.報道比較2017.1.1

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今まで、見たことがない正月の社説の数々。新聞がなぜ最近、感情をむき出しにするのかが判ってきた。彼らは、脅え切っている。現実を解釈できず、自分の思いとずれはじめた価値観で進む社会を測りかねている。

朝日新聞・社説
憲法70年の年明けに 「立憲」の理念をより深く

世界は、日本は、どこへ向かうのか。トランプ氏の米国をはじめ、幾多の波乱が予感され、大いなる心もとなさとともに年が明けた。不穏な世界にあって、日本は今年5月、憲法施行70年を迎える。憲法もまた、政治の失調に対する防波堤として、大切な役割を担ってきた。その貢献の重みを改めて銘記したい。「立憲主義」という言葉の数年来の広がりぶりはめざましい。政治の世界で憲法が論じられる際の最大のキーワードだ。立憲主義は、時に民主主義ともぶつかる。民主主義は人類の生んだ知恵だが、危うさもある。独裁者が民主的に選ばれた例は、歴史上数多い。立憲主義は、その疑い深さによって民主主義の暴走への歯止めとなる。個人、とりわけ少数者の権利を守るために、立憲主義を使いこなす。それは今、主要国共通の課題といっていい。環境は厳しい。反移民感情や排外主義が各地で吹き荒れ、本音むき出しの言説がまかり通る。建前が冷笑されがちな空気の中で、人権や自由といった普遍的な理念が揺らぐことはないか、懸念が募る。立憲主義の理念を、揺らぎのままに沈めてしまうようなことがあってはならない。世界という巨大な船が今後も、水平を保って浮かび続けられるように、としている。

日本経済新聞・社説
揺れる世界と日本(1)自由主義の旗守り、活力取り戻せ

2017年が明けた。米国のトランプ大統領の就任、英国の欧州連合(EU)離脱交渉の開始、仏独の選挙、韓国の大統領弾劾など、不確実性という言葉がこれほど似合う年はない。混迷する世界で日本はどんな役割を果たせばいいのだろうか。足元の円安・株高は日本企業に収益の改善をもたらしている。昨年前半の急激な円高環境と打って変わり、このままの相場水準が続けば、3月期決算の企業は増益基調を維持できるだろう。日本政府や企業はそれに甘えてはいけない。昨年末までの相場は米新政権の政策のいいとこ取りを反映したもので、日本自身の努力とはほぼ無関係だ。企業は好機を生かし、積極的に事業拡大の布石を打つべき時だろう。一方トランプ氏が掲げる政策には、自由主義経済を損ねる要素も数多く含まれている。開放経済と民主主義のとりでであったEUも、相次ぐテロや移民問題などで揺らいでいる。中国やロシアのような強権主義が幅をきかせ、世界中が内向きになる時代だ。環太平洋経済連携協定(TPP)の発効も見通せない。だからこそ、日本は自由主義の旗を掲げ続ける責務を負っている。戦後、資源のない小国が豊かになれた理由を忘れてはならないし、未来を貿易に託す新興国をサポートする役割もある。日本はこの150年、明治維新と敗戦という2つの断崖を乗り越えてきた。どちらも若い世代が活躍し、新しい日本をつくりあげた。それをいまこそ思い出そう、としている。

毎日新聞・社説
歴史の転機 日本の針路は 世界とつながってこそ

私たちは歴史の曲がり角に立っている。明日の世界は、昨日までとは異なっているかもしれない。そんな思いにとらわれる新年だ。理念よりも損得というトランプ氏がいよいよ米大統領に就任する。トランプ氏の勝利と、それに先立つ英国の欧州連合(EU)離脱決定は、ヒトやカネの自由な行き来に対する大衆の逆襲だ。グローバルな資本の論理と、民主主義の衝突と言い換えることもできるだろう。軍事力、経済力ともに抜きんでた米国がこうした潮流をけん引する影響は計り知れない。国際秩序は流動化し、国際経済は収縮に向かう。日本はこの転換期にどう立ち向かえばいいのだろうか。グローバル化がもたらす負の課題は、グローバルな取り組みでしか解決し得なくなっているのだ。日本は率先してその認識を広めたい。ただし、戦略的に国際協調の路線を歩むには、足元の安定が欠かせない。日本の弱点がここにある。日本がグローバリズムと共存していくには、国民の中間的な所得層をこれ以上細らせないことが最低限の条件になる。民主主義の質に深くかかわるからだ。民主主義は社会の意思を決めるためにある。多様な意見を持つ個々人が多数決の結論を受け入れるには、社会の構成員として何らかの一体感を持っていなければならない。持続が可能な国内システムの再構築に努めながら、臆することなく、世界とのつながりを求めよう。何かが見えてくるのはそれからだ、としている。

読売新聞・社説
反グローバリズムの拡大防げ

「反グローバリズム」の波が世界でうねりを増し、排他的な主張で大衆を扇動するポピュリズムが広がっている。国際社会は、結束を強め、分断の危機を乗り越えなければならない。保護主義を唱え、「米国第一」を掲げるドナルド・トランプ氏が20日に米大統領に就任する。力による独善的な行動を強めるロシアや中国に、トランプ氏はどう対応するのか。既存の国際秩序の維持よりも、自国の利益を追求する「取引」に重きをおくのであれば、心配だ。日本は、尖閣諸島周辺などで中国の膨張圧力に直面している。ロシアとの間では北方領土交渉を抱える。トランプ外交の行方にとりわけ目を凝らさざるを得ない。保護主義を強めれば、雇用や生産が復活し、自国民の生活が楽になると考えるのは、短絡的だ。自国市場を高関税で守れば、消費者は割高な商品の購入を強いられる。他国が対抗策をとれば、輸出産業も打撃を受ける。経済資源を、国境を越えて効率的に活用するのが自由貿易だ。多国間での取り組みをさらに進め、新興国の活力や技術革新の成果を世界に広げることで、成長の復活を目指すしかない。それが国際政治の安定の基盤ともなろう、としている。

今まで、見たことがない品質の正月の社説の数々。これが正月の社説?と思えるほど、意気地無しで、新年の覇気がない。1年を振り返り、次の1年を考える時に、ここまでざわついていたのは、私の記憶では湾岸戦争の1990年末ぐらいだ。トランプ恐怖症とも言えるほど、まだ彼の大統領就任という結果を消化できず、現実を見ていない。トランプは人を食う鬼、何でもやらかす暴君とでも言いそうな猜疑と不安で埋め尽くされている。恐怖を克服しなければ、征服どころか制御もできない。それは、テクノロジーでも、マネーゲームでも、自分自身の心理もいっしょだ。新聞がなぜ最近、感情をむき出しにするのかが判ってきた。彼らは、理解できないことに脅えている。現実を解釈できず、自分の思いとずれはじめた価値観で進む社会を測りかねている。そんな中で言葉を発さなければならない義務のために、必死で恐さを隠して大声を上げている。だが、その声は脅えて震えている。こんな老兵は、早めに消えた方が、少なくとも戦況を冷静に見られる気がする。
これが、日本の政治や社会全体、またはメディアに通じる減少でないことを祈る。そうでなければ、日本は確実にトランプ氏にやられる。主張されれば脅え、優しくされれば陶酔する。どちらにしても従順で無力なイヌになる。これなら、対抗と警戒に満ちた中国の方が、まだまともな結果に行き着く。殴り合うような言い争いで、理性を失わず、武力行使に至らなければ、お互いに傷ついても痛み分けになる。半分は守れるのだから。
恐怖を捨てられるまで、徹底的に調べるべきだ。今のような、噂や、過去の彼の動向ではなく、データや、アメリカが抱える問題、専門家が考える解決策、政策や議会の方針など、本質的な情報だ。それを、就任1か月を切ったいま、準備できていない日本の報道は、目に余る怠慢さだ。私自身の経験ではないが、こういう不安な環境が生まれたのが戦前だろう。相手を理解する努力よりも、身構え、頑なになり、最後は追いつめられた。
忘れないで欲しい。恐怖すべきはトランプ氏ではない。トランプ氏を選んだアメリカ国民だ。小難しい言葉を並べているだけで食える時代を、彼らは票で抹殺した。彼らが求める国をトランプ氏がつくれることを、本気で期待している。期待が現実ではなく、失望に変わった時、彼を選んだ人たちは、どんな行動をするのだろう?

Wall Street Journal
世界秩序が流動化した2016年 (2016.12.22)

2016年は政治的な予測が裏切られる年だったと言っても過言ではないだろう。政治的に想像を絶する年だと言ったほうが正確かもしれない。最も想像を絶する出来事は、もちろんドナルド・トランプ氏の当選だ。トランプ氏はアウトサイダーの極致であり、政治や軍の経験をもたずに米大統領に選出された初めての人物である。その勝利は、政界・金融界のエスタブリッシュメント(既存勢力)に対して新たなポピュリズム(大衆迎合主義)の波が勝利したことを意味する。経済のグローバル化やテクノロジーの発展、大量の移民、人口動態の変化によって、社会や経済の中で自分たちが取り残されてきたと考える一般市民の根源的な叫びを、こうした運動が代表している。彼らは政治エスタブリッシュメントが自分たちの不安や怒りに真剣に耳を傾けてくれないと感じるようになり、それならエスタブリッシュメントを転覆させようと考えたのだ。欧州の市場は、ポピュリズムの隆盛に関してそれほど楽観的ではない。株式市場がこの1年で下落したのは、仮にEUとユーロが崩壊すれば未知の領域に一気に突入することになるという不安からである。ただ大西洋の両側の投資家がこの1年で学んだのは、政治指導者と同様に、未知への突入という事態に慣れねばならないということだ、としている。

Wall Street Journalの方が落ち着いてはいるが、それでもワシントン支局長のレベルでも、まだ現実を直視できずにいる。トランプ氏当選は、冷静になれば予測困難な結果ではなかった。メディアが偏った認識を捨てていれば、予想外という結末にはならなかった。なぜなら、支局長自身があげている事例は、なにひとつ突然数日で起きたことではないのだから。現実を見なかった人たち、観たくなかった人たちがメディアを埋め尽くしていた。6月には、大西洋の向こうで注視すべき衝撃があったというのに。
今回の原稿を見る限り、トランプ氏当選以降、メディアがライターや編集の担当者を変更した形跡はない。オバマ氏への辛辣な記事は増えたが、トランプ氏に投票した人たちの核心に迫る言葉は増えてはいない。未だに「想像を絶する」事態のままだ。
世界が身構える中、アメリカ国民でさえ現実に迷いを感じているなら、起きないはずの不幸は、こういう時に起きる。すべてをトランプ氏の責任にして。彼が不幸に思えたことは今まで一度もないが、これからは増えるのではないだろうか。彼を選んだ人たちは、自らも変わろうとするだろうか?彼を認めなかった人たちは、本当にアメリカの名の下に協力するだろうか?今のところ、喜んだのは株を持っていた人たちだけ。また富裕層だ。彼らは、陰りが見えた時、マネーのためなら平然と売り捨てる人たちが大半だ。トランプ氏に期待している人たちは、まだ何も始まりを感じていない。せめて、彼らが可能性を感じる1年になって欲しい。それだけでも、アメリカは十分にさらなる成長をはじめると思う。それは、世界に起きはじめている格差を打破する処方箋になるかもしれない。トランプ氏と、アメリカ国民が本気なら、できるだろう。

人民網日本語版
国防部、米国防権限法案の台湾関連の内容に断固反対 (2016.12.30)

最近、米大統領は米国と台湾地区のハイレベル軍事交流を初めて盛り込んだ「2017年度国防権限法案」に署名した。国防部(国防省)の楊宇軍報道官は29日午後の定例記者会見で「われわれは米国の2017年度国防権限法案の台湾関連の内容に断固反対する。中国側はすでに米側に厳正な申し入れを行った。われわれは米側が同法案に署名したことに強い不満を表明する。米側の同法案は中米間の3つの共同コミュニケの原則に著しく違反し、中国への内政干渉であり。中国は全く受け入れられない」と述べた、としている。

西暦の正月は中国にとってあまり意味をなさないのか、もっとも冷静な中国の姿は、浮き足立った感覚を忘れさせてくれる。中国の台頭は、やはりプラスだ。唯一の価値観で踊らされるより、違う主義主張があれば、別の視点を提供してくれる。
台湾は、すでにトランプ氏は火種を蒔いてしまった。イスラエルへのオバマ氏の捨てぜりふとは違い、トランプ氏自身の意志が騒ぎの発端。中国は退かない姿勢を見せている。この結末、最後はマネーで決着をつけられるという感覚がトランプ氏の読みだろう。対中強硬派で固めた人事から、経済的な圧力案はいくつも出ている。カードをいくつも揃えて、譲歩できる案も持ってディールすればいい、と。
中国が、台湾、香港、南シナ海などを、経済のために行っているつもりなら、本心は見える。だが、違う理由で拡張主義を進めているなら、どれだけ取引を提案しても、中国が退く事はない。そうなった時、トランプ氏は初めて政治の世界を知ることになる。世の中、マネーで動かないものがある。頭では判っているだろうが、背筋が凍る感覚を、まだトランプ氏は味わっていない。中国は、そのカードを、いつものアメリカのように冷静に出している。

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