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2841.報道比較2016.12.31

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大晦日の社説は、日本の新聞にも分裂のような変化を感じる状態に。昔ながらに1年を振り返る新聞と、流れを無視する新聞。考えて動いているなら、いずれ何かが生まれる。惰性なら…やがて誰もいなくなる。

朝日新聞・社説
ニッポン2016年 このまま流されますか

2016年が終わる。世界中で「分断」「亀裂」があらわになった。国会はさながら「安倍1強」劇場だった。安倍晋三首相は夏の参院選に勝ち、自民党総裁の任期延長に異論も出ない。「結党以来、強行採決をしようと考えたことはない」「こんな議論を何時間やっても同じですよ」首相の答弁は、ぞんざいさを増し、与党は「数の力」で採決を強行していった。国連平和維持活動(PKO)に派遣する自衛隊に「駆けつけ警護」の新任務を与えた。強引に憲法解釈を変えた安全保障関連法の初めての具体化だが、首相の言葉は軽かった。「もちろん南スーダンは、例えば我々が今いるこの永田町と比べればはるかに危険な場所」南スーダンでは武器で人が殺されている。それを稲田朋美防衛相はこう説明した。「それは法的な意味における戦闘行為ではなく衝突である」
衝撃的な事件があった。相模原市の障害者施設で19人を殺害した男は言った。「障害者は生きていても無駄だ」この異常な偏見に対する確固たる反論を、だれもが心に堅持し続けねばならない。それぞれの「言葉」が、ニッポンのありのままの姿を映している。だから聞き流すまい。立ち止まって受け止めよう。このまま来年も流されてしまわぬように、としている。

産経新聞・社説
回顧2016 協調と和解の失速止めよ 「予想外」にたじろがぬ結束を

「予想外」「番狂わせ」の文字がメディアに躍った。英国や米国などで、協調や統合路線、寛容な政策にノーを突きつける民意が示された。いわゆる反既存政治、反グローバリズムの旋風が吹き荒れた一年だった。11月の米大統領選では、公職歴のない実業家、ドナルド・トランプ氏が勝利した。イタリアでは憲法改正を国民投票で問うたレンツィ首相が敗れ、辞任した。事前予想の「ズレ」と併せ、為政者と有権者の乖離が民主主義の制度の下で突きつけられた。
「和解の力」を内外に示す歴史的行事も日米間であった。オバマ米大統領は5月27日、原爆を投下した米国の現職大統領として初めて広島の平和記念公園を訪問、原爆慰霊碑に献花した。今週、安倍首相はハワイの真珠湾を訪問し、戦没者を悼んだ。戦火を交えたかつての敵がもっとも緊密な同盟国となった。和解の力を世界に示す意義は大きい、としている。

毎日新聞・社説
5年目の安倍政権 アベノミクス 的は外れツケが増えた

安倍政権が最も強調したのは「デフレからの脱却」と「経済の好循環」だ。2%の物価上昇率、3%以上の名目経済成長率を達成する、と公約に明記した。その実現のため登場したのが、金融政策、財政政策、成長戦略の「三本の矢」からなるアベノミクスだった。第一の矢、つまり日銀による異次元緩和が的を外したのは明白だ。物価上昇率は9カ月連続でマイナスで、「2年程度で物価上昇率2%」はかすりもしなかった。第二の矢、財政政策はどうか。毎年のように何兆円という経済対策が打ち出されたが、効果は持続していない。法律に盛り込まれた消費増税を、経済状況を理由に2度も延期しなければならなかった事実は、好循環が起きていない証しに他ならない。アベノミクス最大の罪は、重要な課題を先送りし、将来世代に回すツケを一段と膨らませたことだ。異次元緩和に出口は見えない。2017年度末の国と地方を合わせた長期債務は1094兆円となる見込みで、12年度末から約160兆円増える。政策のコストは誰が負うのか、国民のチェックが求められている、としている。

この3紙は古典的な1年の振り返り。後述の日経も株価に話題を集約しているが、半分は同様の路線。振り返り、反省し、前に向かって進む学びを得るのは、人としての伝統的な学習スタイルで、理想的なはず。だが、今年の出来事はあまりにインパクトが大き過ぎたのか、何か大きなシフトのはじまりなのか、どこも消化不良で、読む側を納得させるだけの考察を見たことはない。先日のFinancial Timesも、支離滅裂とは言わないが、民主主義に話を絞ったにしては、結論に至ることもできず、迷っている現状を示すに留まった。
日本の新聞も同様だ。朝日は安倍政権の政治を相変わらず批判するのだが、大きな流れに抗うだけの決定的な批判の軸を見出せない。節々のミスや失言をまとめて「彼らはおかしい」と言っても、決定力に欠ける。従軍慰安婦は間違いだった。そこまで否定された新聞なのだから、起死回生の取材によるスクープが求められるが、「聞き流すまい」と言うほど、腰を据えた報道があるようには見えない。その場の感情で反論を試みている朝日のやり方こそ、大きな波に流されている。長い時間軸を意識すべきなのは、朝日自身だ。
産経の回顧は、年間の出来事をなぞっているが、添えられている感想は違和感のあるものばかり。この変わらないマイナーさが産経の不動の価値観ならば、そろそろ変わって欲しい。中国が世界ナンバーワンになるのは時間の問題だが、いつまで対抗心だけで進むのだろう?いずれにしても、無意味な対決姿勢を感情、政治的思惑から排除して考えられるようにならなければ、この違和感が消えることはないだろう。
毎日は、2016年ではなく、アベノミクスに集中。これが、4年前から一貫した毎日の姿勢だったなら、もっとも評価に値する。だが、残念ながら毎日の感覚は2016年も不安定だった。少なくとも、先んじることはない。ユニークさを見せることもない。極めて凡庸で、奇妙に時間を要し、釈然としない。最後まで、そんな社説で終わった。

日本経済新聞・社説
株価に映った不確実性への備えを

大納会の30日、日経平均株価の終値は1万9114円37銭と15年末に比べ80円66銭高い水準だった。暦年での日経平均の上昇は12年から5年連続で、バブル崩壊後では最長となった。米株式市場ではダウ工業株30種平均が終盤にかけて上昇の勢いを増し、一時は初の2万ドル台に近づいた。欧州の株価もおおむね堅調に推移した。主要国の株価上昇が鮮明になったのは、11月の米大統領選でトランプ氏が勝利してからだ。日本は主要国の中で政権の安定度が相対的に高い。安倍晋三首相は高支持率を生かし構造改革を進めるべきだ。アベノミクスは「第1の矢」の金融緩和によりデフレ心理を払拭しつつあるが、社会保障制度や労働市場の改革など踏み込み不足の分野は多い。アベノミクスへの外国人投資家の期待はかなり下がっている。今年の株式市場で外国人が売り手に回る場面が多かったことが、それを物語る。安倍首相は経済を成長軌道に乗せる姿勢を、いま一度内外に示す必要がある。日銀の黒田東彦総裁は、日本経済新聞のインタビューで世界経済について「良い方向に向かっている」との認識を示した。しかし、市場に映る未来には不確実性も多く残る。政府も企業も過度の楽観を戒め、改革の歩みを進めていきたい、としている。

日経は株価に絞った社説。年末に翌年の株価を予測する記事は全世界に登場するが、経済紙でも社説が株価だけで語るのは珍しい。日経がなぜ株価を選んだのかが知りたい。
日経平均株価は、年初と夏の暴落を思えば、年末に昨年の終値を超えられたのは奇跡的だった。だが、それは半分は日経の言うとおり外国人の買いが、そして残りの半分は日銀の量的緩和というバブルの延命がまだつづいているからだ。外国人はロジカルに日本株を買っている。その資金はアメリカ株、原油の上げと、中国株からの逃避。裏付けは安倍政権の安定、日銀の量的緩和の存在、そして日米金利差の存在。どれかが揺らげば、バランスが変わる。今のところ、そのアンバランスは日本国外から訪れそうだ。
就任前のトランプ・ラリーは、もう終わった。New York DOWは20,000ドルを超えられなかったし、日経平均も20,000円に到達しなかった。疑念があるうちは、マーケットは上がると言われるが、高所恐怖症と言えるレベルまで、期待だけで一気に上ってしまった。今の価格の妥当性を見出せるまでは、リスク・マネーよりキャッシュがいい人も増えたということだ。裏付けができれば、また陶酔するだろうが、それよりは暴言ツィートの方が目立っているのが、今のトランプ氏だ。どうしてもリスク・テイクするには、保険をかけたいリーダーに見える。
日経はマーケットを予測するわけでもなく、企業に改革を求めて社説を締めている。この結末のために株価が起点になるのは、私は少し違和感がある。株価が経済の先行きを映す鏡というなら、2017の予測を日経なりに示してもいいと思うし、改革を論じたいなら、政治ならTPP、日銀政策、消費増税の延期が無視され、企業でも東芝、電通と年末でさえ世間を騒がせた話題が株価より優先されるのはおかしい。この中途半端さが、日経に不甲斐なさを感じる部分だ。切れ味がいい日も少しずつ出ているのには、期待したい。

読売新聞・社説
給付型奨学金 学ぶ意欲ある若者への支援に

進学する意欲があるのに、経済的事情で断念せざるを得ない生徒を後押しする制度だ。有効に機能させたい。本格実施は2018年度からだ。大学や短大、専門学校への進学者に対し、自宅か下宿か、私立か国公立か、などに応じて、月2万~4万円が給付される。対象となる住民税非課税世帯の進学希望者は、全国で1学年約6万人とされる。そのうち、給付を受けられるのは約2万人だ。全国の高校から、学業や課外活動のほか、本人の意欲や家庭の事情も踏まえて推薦してもらう。国の奨学金は現在、無利子と有利子の貸与型しかない。独立行政法人・日本学生支援機構を通じて132万人が利用している。学生は大学卒業時に平均310万円の借金を抱える。非正規雇用で返済に苦しむ人も多く、3か月以上の滞納者は17万人に上る。無利子の貸与型奨学金には、卒業後の所得に連動した返済制度が来年度から導入される。返済期間の一層の延長などの工夫も必要だろう。大学にも、授業料減免の拡充といった努力が求められる。熱意ある若者を、重層的に支援する態勢を整えたい、としている。

日経は、年末という事象を完全に無視した。今回のトピックが、そこまでのインパクトを持っているとは思えない。意図的な年末無視だ。これが何を意味するのか、これから明らかになるだろうか?反省とレビューができなければ、次のアクションは効果的な指針を見出せない。PDCAというスキームを知っていれば、Checkの重要さは言うまでもない。年末に必ず回顧すべきとは思わないが、読売の逸脱の意味を、日経同様に知りたい。
話題自体は、とても期待できるものだ。アメリカでは、学費が高騰し過ぎて、MBAや留学さえ制度疲労の感が出てきた。MBAを得ても、それに見合う報酬が生涯所得で得られない。留学の学費が、帰国して得られるインセンティブを上回らない。このロジックが合わなくなったアメリカへの留学生は、徐々に偏りが出て形骸化している。中国人留学生、ITやスポーツの特待生、世界の資産家のこどもたち…これで富裕層のエリートが暴行事件を起こしたり、銃乱射の被害に遭ったりしている。こうなると変化は激しいだろう。
日本の大学の問題は、少子化と過当化だ。大学の名に値する品質を維持できている大学がどれくらいあるだろう?少子化でも経営基盤に自信を持って、これから挑戦できる大学は?それほどは多くないだろう。おそらく、この給付奨学金の目的は、低所得者の保護とともに、大学希望者数を底上げし、大学の経営を救済するための対策だろう。形骸化した給付金になれば、統廃合されるべき大学を不要に延命するだけになる。そこまでの深慮を、読売はあえて避けている気がする。読売の社説は、私のような素人でも推測できる懸念を平然と無視し、表層にある良い部分だけで突破しようとする姿勢がさらに強まっている。これは政府の姿勢に一致する。もっとも政府と意見が一致し、推進論を展開する読売が、こうして年末のレビューを無視して進む姿は、良い兆候ではなさそうだ。

人民網日本語版
外資系企業の対中投資環境は悪化? 商務部は否定 (2016.12.30)

商務部(商務省)の沈丹陽報道官は29日の定例記者会見で、海外メディアが「一連の外資系企業が中国での境遇や投資チャンスが以前ほどではなくなったと感じている」と伝えたことについて、「こうした見方や報道の多くは一面的な情報で全体をまとめ誤った結論を導き出したもので、中国の投資環境や投資チャンスの真の状況を全面的に反映してはいない。2010年以降、中国の実行ベース外資導入額は毎年1100億ドル(約12兆8436億円)を超え、世界トップクラスだ」と述べた。沈報道官は、「ここ数年、中国の外資導入環境には確かに一連の変化が生じ、特に生産要素のコストが上昇し、市場競争が激しくなり、一部の外資系企業は相対的優位性が徐々に縮小し、低コストや優遇政策に頼ってきた一連の外資系企業は確かに経営の困難や営利水準の低下に直面している。おそらくこうした原因により、少数の外資系企業があれこれと怨嗟の声を上げたり論評を加えたりしているのだと思われる。「来年には、中国は開放を一層拡大し、外資系企業の投資に対する制限措置を削減し、外資をめぐる政策の連続性と安定性を維持し、外資系企業の関心をより重視し、法律に基づいて外資系企業の合法的な権利を守り、より公平で透明性が高く予測可能な投資環境を創出する。中国が引き続き吸引力を備えた外資系企業の人気投資先になることを確信する」と強調した、としている。

中国の統計数値が、2016年に変化することはなかった。中国国内がどう感じているかは不明だが、海外が求めているのは、安定的で良い話ばかりが形式的につづくことではなく、誠実で信頼できるものを求めている。中国人も含めて、中国政府が出すリリースを、そのまま受け止める人はいない。目標に沿うように操作され、場合によっては改竄に近い作業を経て出てくるものと受け止めている。そんな数字をベースに、こういうニュースが流れても、価値は半減する。それは投資期待も半減し、リスクは倍増する。中国に変化して欲しいのは、その根底にある考え方だ。習氏がGDPが目標に届かないのを容認すると事前に公言したのは理想的かもしれない。いまの中国には、形骸化した統計値よりは、現実を直視するためのデータがいる。そう認識しての変化なら、中国は変わりはじめるだろう。

Wall Street Journal
ロシア大統領「米外交官追放せず」 (2016.12.30)

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は30日、自国への制裁を決めた米国に対抗してロシアから米国の外交官を追放することはないと述べ、新年を祝う大統領府での集まりに米外交官の子どもを招待する考えを示した。プーチン大統領は、ロシアによるサイバー攻撃を主張して米国がロシアの外交官追放などを決めたことについて「ロシア・米国関係のさらなる弱体化を狙った」ものだと話した。ロシアには対抗する権利があるとしつつ、米外交官の追放へ動くつもりはないと明らかにした。外交官やその家族が年末年始の休暇にかけて保養施設を利用することも制限せず、子どもたちを大統領府へ招く意向だとも付け加えた。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務相はこれに先立ち、米外交官35人の追放を検討していると発表していた、としている。

オバマ氏の最後の嫌がらせのようなロシア制裁へのプーチン氏の返答は、トランプ氏がもっとも気に入りそうなものになった。きっと、これでトランプ氏は、魅了され、利用され、たらし込まれる。好んでロシアとの関係改善の環境は整った。外交手腕はさすがだ。
アメリカとの関係が改善した時、クリミアをどうするかのシナリオは、おそらくとっくにできあがっているだろう。今のところ、まるで読めないが、侵攻し、元に戻すなら、それ以上の価値を手にして出て行くはず。その時に手にしたいものは、何だろう?プーチン氏のような思考に至るには、何が必要なのか。世界のリーダーが学ぶべき点は多い。トランプ氏のような評価に至るのは危険だが、プーチン氏がいま世界で、もっとも頭脳で結果を出しているのは事実だ。彼は常にいくつもプランを準備している。行動の前には相当な思慮がある。感情を完全にコントロールしている。リーダーには持っていて欲しい資質だが、最近、選ばれる人たちには…

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