ORIZUME - オリズメ

2836.報道比較2016.12.27

2836.報道比較2016.12.27 はコメントを受け付けていません。

クリスマスをもっとも楽しめなかったのは、ドイツ人ではないだろうか。ヨーロッパは、イギリスよりもドイツの方が火種を内包した。今回のテロは、ブレグジットやトランプ大統領より大きな不安の始まりかもしれない。

日本経済新聞・社説
欧州は結束固め危機の連鎖を防げ

欧州が再びテロの惨劇に見舞われた。ドイツの首都ベルリンのクリスマス市にトラックが突入し、10人を超える死者を出した。なぜ犯行後にフランス、イタリアへと簡単に逃走できたか。過激派組織「イスラム国」(IS)の関与はどこまであったか。真相を徹底究明し、欧州連合(EU)と加盟各国による今後のテロ対策に生かさねばならない。次のリスクは「政治危機」だろう。懸念されるのは、テロを受けて欧州各国の極右勢力が勢いづき、難民・移民の排斥を唱える世論が強まりかねないことだ。現時点で極右や大衆迎合主義の政党の躍進が予想されている。反EUや反難民・移民を唱えるこうした政治勢力は、グローバル化、市場経済、開かれた社会、さらなる欧州統合を拒もうとしている。しかし、欧州の主要国が二度と戦火を交えないため重ねてきた欧州統合を後退させては、欧州や世界の安定を損なう。経済や雇用にも悪影響を与えるのは確実だ。そうした点を各国の主要政党は粘り強く訴える必要がある。欧州が大きな正念場を迎える来年、EUや各国の指導者は結束を固めて行動し、危機の連鎖を防がねばならない、としている。

クリスマス前、もっとも世界の危うさを感じたのは、このドイツの事件だ。メルケル氏は、これで思考を変えるかもしれない。それは、日経が書いている以上の事態だ。極端と見られていたポピュリズムの勢力ではなく、王道の与党が、排斥や禁止とは言わないまでも、難民・移民の入国に厳格さを示すのだから。ドイツ全体に、寛容なだけでいられない空気が生まれている。このまま進めば、ヨーロッパは難民対策をさらに厳格化する。中東やアフリカとの対立は、ますます強まる。繰り返すが、ポピュリズムや一過性の感情ではなく、受け入れ、忍耐を経た上で、中道の与党が拒絶感を見せる。これは大きな変化だ。本質的に中東やアフリカへの戦略を変えなければ、ヨーロッパはEUの境界に強固な障壁をつくることになる。結束や危機の連鎖どころか、ヨーロッパが条件付きの孤立化に傾く可能性を秘めている。アメリカが感情で選んだような変化を、ドイツのリーダーが論理的に考えた上で提案し、国民が支持したら…ヨーロッパはロジカルに、今いる国民の安全保障のために、別の地で生まれた不幸な人たちの受け入れへの大らかさを捨てようとしている。
この逆流が、これからの本流になるなら、日本は相当に気をつけなければならない。アメリカやヨーロッパは、暴走を慎重に止めながら自由を擬製にしない範囲で制限を課すだろうが、日本は確実に暴走する。保護のための規制が大好きな国だ。この内向的な流れは、憂慮すべき危険な兆候だ。歴史で世界の誰もが習ったとおりの1930年代をなぞっている。興味があれば、Wikipediaだけでも読んだ方がいい。

世界恐慌 by Wikipedia

朝日新聞・社説
南スーダン 流血回避の努力こそ

南スーダンに武器禁輸などの制裁を科す、国連安全保障理事会の決議案が廃案になった。決議案を主導した米国は、根深い民族対立が大量虐殺に発展することへの危機感から、武器流入の阻止を模索してきた。これに対し、日本やロシア、中国など8カ国が棄権したことで廃案となった。日本政府はなぜ、米国とたもとを分かってまで棄権に回ったのか。政府は先月、派遣部隊に「駆けつけ警護」の新任務を付与した。派遣部隊に協力してくれる現地政府に制裁を科せば、反発を買い、危険度がいっそう高まりかねないとの判断がある。日本政府は今回の棄権によって、陸自部隊の活動継続と安全確保を優先し、武器禁輸に後ろ向きであるかのようなメッセージを国内外に発信してしまった。極めて残念だ。内戦状態が大規模な流血の惨事に発展するのを避ける外交努力こそ、日本を含む国際社会の責任である、としている。

毎日新聞・社説
国連の軍縮協議 「核なき世界」の推進を

核軍縮と核軍拡の大きな流れが衝突している。オバマ米大統領が唱えた「核なき世界」の理想が、同大統領の退任(来年1月)後も継承されるか楽観を許さない状況だ。核兵器を持たない国(非核兵器国)が主導した決議案には113カ国が賛成、反対は核兵器国の米英仏露を含む35カ国で、中国など13カ国が棄権した。注目されたのは唯一の被爆国・日本が反対に回ったことだ。一方、採択の前日(22日)、プーチン・ロシア大統領は、米国のミサイル防衛(MD)に対抗して核戦力を強化する方針を表明、トランプ米次期大統領も同日、「世界が核で思慮分別をわきまえるまで」米国は核能力を大幅に強化すると主張した。日本政府が米国の「核の傘」に配慮するのも分からないではない。だが、日本が核兵器国と非核兵器国の橋渡し役として力強く発言しないと、トランプ政権の発足後は核軍縮がさらに難しくなると覚悟すべきだ。「核なき世界」構想を継承し推進する以外に世界を核の脅威から救う方法はない。そのことをトランプ氏もプーチン氏も肝に銘じてほしい、としている。

いつものことだが、朝日・毎日の主張が感情的過ぎる。実効性に疑問がある点を幾人もの人が関わって危険で決断した事実を「だとしても」と簡単に覆せるだけの論理は、朝日の社説の中にまるでない。どれも精神論、感情論で済ませている。これなら、南スーダンに自衛隊を送る人命優先を考えれば適切な判断をしたと考えるのが適切だろう。南スーダンに派遣する際にも感情的に政府の決定を批判していたが、朝日には信念も一貫性もまるでない。
毎日も同様だ。オバマ氏でさえ理想論と言われた核軍縮を、日本が反対に回ったのは残念だとしても、発言するだけなら空論になるだけだ。理想は誰にでも語れる。オバマ氏というアメリカの大統領が語ったことで、世界は可能性を感じたが、中国やロシアと信頼関係を築けなければ実現にはほど遠かった。あれだけの素晴らしい人物が最高権力を握っても、世界は平和にはならなかったし、核兵器が減ることもなかった。ドライに言えば、トランプ氏のような性格なら、むしろ理想を語って核兵器を減らすと言い出す方が恐ろしい。約束が守られなくなれば、すぐに発射スイッチを押しそうだ。
メディアも含めて、凡人が理想を語る時は、最低でも論理的な根拠と整合性がいる。妥当性を示すだけのデータがあればさらに望ましい。メディアにはそれをできる能力が今まではあったが、最近はまるで力不足だ。ネットであらゆる情報が得られる時代に、その努力さえしていない。社内の編集記事との整合性さえ確認しているように見えない。平和を語るためには、安全保障が崩れないことが大前提だ。その根拠も考えずに感情的な主張をつづけるのは、無能を晒しているに過ぎない。

産経新聞・社説
「遼寧」が太平洋に 傍観せず空母導入考えよ

中国初の空母「遼寧」がミサイル駆逐艦など5隻と艦隊を組み、西太平洋へ初めて進出した。この行動は、海空戦力の強化が新しい段階に入ったことにほかならない。日本が平和を保とうとするのであれば、傍観は許されない。国の守りとは、脅威となる国の軍事力を見ながら着実に整えるものだからだ。南西防衛には、日米同盟の抑止力を高めていく努力がもちろん必要である。米政府は、尖閣諸島が日本の施政下にあり、日本防衛を定めた日米安保条約第5条の適用範囲だと表明している。ただし、尖閣はじめ日本の領域を守るには、自衛隊が正面に立つことが想定されている。軍拡中国が侵略の誘惑にかられないようにするためにも、安倍晋三政権は、垂直離着陸戦闘機F35Bを搭載する空母の導入や、南西方面の航空基地の増加、航空隊の拡充をはかる検討に急ぎ着手してほしい、としている。

読売新聞・社説
遼寧太平洋進出 中国空母の展開に警戒怠れぬ

防衛省は、中国初の空母「遼寧」が沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を通過し、太平洋に向かったと発表した。駆逐艦3隻とフリゲート艦2隻を合わせた計6隻で航行しているという。遼寧が太平洋に進出したことが確認されたのは初めてである。中国国防省は先に、活動の目的が遠洋訓練だと公表していた。習近平政権が空母の運用を急ぐのは、米軍の有事介入を阻む「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略を推進するためである。来年には、初の国産空母が進水するとみられる。2隻目が建造中との情報もある。将来的には、米国型の「空母戦闘群」を複数編成する方針だとされる。17年度の政府予算案には、宮古島と鹿児島・沖永良部島にある空自の固定式警戒管制レーダーの機能強化費や、新型潜水艦の建造費などが新規に計上されている。最新鋭ステルス戦闘機のF35の取得に加え、無人偵察機グローバルホークやP1哨戒機の配備といった施策も、着実に進めていくことが欠かせない、としている。

こちらもまた、朝日・毎日の逆に好戦的に感情が走っている。日本が空母?なんのために?日本と中国の距離を考えるべきだ。西太平洋に空母が向かったことでも判るとおりだ。中国の標的はアメリカだ。安倍氏が真珠湾に行くのに合わせた意図はあるだろうが、日本など今回の計画では微塵も見ていない。この主張を見て、一番喜ぶのはトランプ氏だろう。いくらでも売ってくれるはずだ。アメリカ人にしか使いこなせない、後で儲かる仕組みもセットになった兵器が。
冷静に戦略を探るべきだ。必要なのは武器ではなく、知性だ。私たちは、すっかり軍事知識を欠落させてしまった。国家予算を防衛費として、アメリカに対価を払って得るべきものは教育だ。

人民網日本語版
中国海軍空母艦隊が第一列島線突破 専門家「すでに戦力を形成」 (2016.12.26)

日本防衛省は25日夜、「遼寧」率いる中国空母艦隊が同日沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を通過して西太平洋へ向かったと発表した。中国海軍軍事学術研究所の張軍社研究員は25日、環球時報の取材に「今回の「遼寧」空母艦隊による初めての西太平洋海域進入は、中国海軍の他の水上艦が以前行った遠洋訓練と距離、範囲、航程が似通っており、主としていわゆる第一列島線を通過して西太平洋に進入するものだ。目的は西太平洋の海洋環境、水文気象などを熟知し、空母艦隊の遠距離行動能力、全体的な訓練水準と作戦水準を高めることにある。黄海、東中国海、西太平洋海域での一連の訓練から、「遼寧」と中国空母艦隊がすでに戦力を形成したことが見てとれる」と指摘。「空母の戦力形成に5~6年、さらには10年を要する国もある。参考にできる外国の同様のノウハウがない中、中国海軍が真剣な探求、苦しい訓練を経て、わずか4年で「遼寧」の戦力を形成したことは、外部の予想を大きく上回るものだ」と述べた、としている。

今回は人民網の方が冷静だ。彼らは計画の着実製を最も誇っている。「日本が持つべきは知性、欠けているのは教育」と言いたい理由は、ここにある。NHKや日本の新聞の反応を窺う理由は不明だが、目的の半分は各国への威嚇、そして残りが訓練。どちらの目的も適切に達成されているようだ。
アメリカには、当然のように計画的なアプローチが存在する。どれだけトランプ氏が吠えても、彼の予算が動きはじめるのは2017年10月。それまではオバマ氏の遺産を引き継ぐのであり、ある意味、そこで学習する。さらに軍や省庁には長期のプランがある。中国も同様に10年単位でものを考えている。日本も、いくら政治が短命だったとはいえ、ある程度の長期視点はあるだろう。問題は、それが見えないこと、継続していないこと、そして、その計画が本質的な日本のパワーになっていないことだ。予算を得て、カネを使い、消えていく。ノウハウや教育は消えていかないはずなのだが、日本はどこにカネを使っているのだろう?

Wall Street Journal
インドのとっぴな現金撲滅作戦 (2016.12.26)

インドのアルン・ジャイトリー財務相は「インドはキャッシュレス社会に向かわないといけない」と言う。キャッシュレス社会? インドが? 11月に発表された高額紙幣廃止を受けた経済の大混乱は続いているが、効率化と透明性拡大につながる電子決済システムを促すため長期的には報われるとしてこの措置を擁護する声も出てきた。だが現金に対して恣意的に権限を行使している当局者が、全取引を監視するようなシステムに干渉しないなどと国民が信じるべき根拠があるだろうか。インドには既に強力すぎるお役所があり、免許付与、労働、税金、その他について厳しい規制を課し、起業やイノベーションを抑え込んできた。主にこうした理由から、インドでは全ての取引の推定95%に現金が使われ、経済全体の約45%が記録のない「非公式」経済となっている。全ての規制を守るのにとてつもないコストがかかるとなれば、それ以外の面では合法な企業が地下に潜る。広範な規制緩和がなければ、デジタル化とキャッシュレス化で役人は力を強め、一段と押しつけがましく煩わしい存在になるだろう。インド国民は電子金融へのアクセスから恩恵を受けるだろう。手癖の悪い役人を介さなくなるため、取引コストが下がり、融資金利がより手頃になり、国の援助が直接市民に流れる可能性があるためだ。政府は、金融規制の緩和と通信インフラの改善で後押しできる。だが、少なくともいくらかの現金を手元に残したい市民も尊重すべきだ。「キャッシュレス社会」の押し付けは、経済的自由の対極にある、としている。

この話題を読みながら、私の頭の中にあるのは、インド政府ではなく日本政府だった。モディ氏の大胆さが手に負えない失敗に変わりそうな予感もするが、支持率は下がっても辞めるまでには至らないだろう。インドとのビジネスの関係は、今のところほとんどない。
それよりは、電子化を模索する日本政府の動きがきな臭い。遅々として進まないように見えるマイナンバーも、徐々に金融機関に提出義務を強制しはじめた。1年遅れの猶予はあっても、カネの流れを包囲する準備は着々と進んでいる。
これで財務省は税収の確実性と不正撲滅を見込んでいると思うが、私の感覚では、民主党時代の「財政の埋蔵金」と同じ空騒ぎで終わると思う。しっかり取れれば、あるはずの税収。探してみたら…法を変える方が早かった。すべきは規制緩和だった。描いていた副業も、蓄財も、幽霊会社の内部留保も、見えたところで喜ぶほどの税収アップはないだろう。それよりは、銀行に預けたマイナンバーが盗まれて平謝りする醜態の方が早いのは確実だ。
そこまで無能になった行政に、日本円をデジタル化、キャッシュレス化する提案はできるだろうか?

Financial Times
トランプ政権を牛耳る通商タカ派 (2016.12.26)

「中国政府は米国の工場や雇用に持続的かつ壊滅的な攻撃を加えるために、こうした雇用破壊兵器を使ってきた」。ハリウッドで俳優・アニメ声優として活躍するマーティン・シーンの抑揚をつけたナレーションが流れる。これは2013年制作のドキュメンタリー映画「Death by China(中国がもたらす死)」の一場面だ。監督はピーター・ナバロ氏。作家であり、経済学者であり、近々通商担当の米大統領補佐官に就任する人物だ。自己主張の強い経済ナショナリストによる極端な見方にすぎない、と以前は見なされていたこの映像が、にわかに注目を集めている。ドナルド・トランプ氏と次期政権は世界貿易のルールをどのように書き換えようとしているのか、中国にどのように立ち向かい、世界で最も重要な二国間経済関係をどのように変えていくのかを見通す手がかりを探るためだ。誰が主導権を握ることになっても、トランプ氏は中国との交易条件を変えることに前任者たちよりも熱心になるだろう。「少なくとも最初の段階では、中国へのいら立ちをさらに募らせることだろう」。ピーターソン国際経済研究所のゲーリー・ハフバウアー氏はこう言い切る。「この(トランプ氏の)政権で中国事案が静かになることはない」、としている。

トランプ氏が選挙で勝利して以降、中国株、人民元ともに下げ基調。この人選決定後、さらに下げた。中国自身の問題もあるが、中国は資本流出防止と外貨準備、そしてアメリカに牽制する意味でアメリカ国債を手放しはじめた。米国債保有率で日本を抜いたと騒いでいたのはリーマンショック後。それから6年半。オバマ氏の就任期間だけ、中国はアメリカの感情を無視して絶頂を味わう時間を享受したようだ。
日本の80年代から90年代へのシフトを思い出す。同じ悪夢を中国も味わうことになる。日本は同盟国という立場で、経済のみで叩きのめされたが、中国は軍事、経済、政治、文化思想…あらゆる面で対立している。トランプ氏は、遠慮なく中国を叩く準備を整えつつある。中国がアメリカにコミットして理解を得るには、相当なバリューがいる。

Comments are closed.