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2834.報道比較2016.12.25

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日本経済に決定的に賭けている部分が、2020年度の学習指導要領の話題で明らかになった気がする。理想は探せるが、実現の仕方が判らない。未だに実現は現場任せと精神論なら、特攻と一緒。玉砕は見えている。過労死が止まらない理由も原因は近い。

朝日新聞・社説
新指導要領 現場の不安にこたえよ

中央教育審議会が、2020年度から始まる次の学習指導要領について答申を出した。この指導要領がカバーする2030年ごろの社会の姿を考えてまとめたものだ。自ら問題を見つけ、新たな価値をつくり出す力を育てる▽「何を学ぶか」だけでなく、「何ができるようになるか」を重視する▽大学入試改革とも連動して、小学校から大学までの教育を一体として見直す――。
こうした目標をかかげた答申だ。理念先行の感があり、学校現場からは「こなしきれるだろうか」との声が上がる。員が自らの役割を理解し、授業の組み立てを考えるには、入念な準備と研修が不可欠だ。書類仕事を減らすとともに、必要以上に精力を割かれている部活動の指導の負担を軽くしなければ、そうした余裕は生まれないだろう。教委のサポートを求めたい。学校そして教員は、目の前の子どもたちに向きあい、それを踏まえた教育を行ってほしい、としている。

毎日新聞・社説
新学習指導要領 質、量の負担増が心配だ

2020年度の小学校から中学、高校と順次全面実施される次期学習指導要領の内容について、中央教育審議会が文部科学相に答申した。「何を教えるか」だけではなく、子供たちが「どう学び、どんな力を主体的に身につけるか」に力点を置く。能動的に課題を探究し、他者とも協働して解決に取り組むような「アクティブ・ラーニング」を全教科に通じる理念とする。グローバル化、情報化の社会変化への対応も柱だ。小学校の「外国語(英語)活動」を現行の5、6年生から3、4年生に早め、5、6年生の英語は正式な教科とする。コンピューターになじむプログラミング教育も導入される。知識の量ではなく、思考力と探究の姿勢などに重きを置く。人工知能(AI)に象徴される急激な知的環境の変化に対し、試行錯誤しながら他者とも力を合わせ、目的を持って感性豊かに未来を創造する人間の力を育てたいという。いわば、量も質も、という転換である。子供が主体だが、学校や教員も主体的に取り組み、対話し、工夫を重ねる必要がある、としている。

昨日の日経にひきつづき、朝日と毎日が2020年度の学習指導要領の話題を取り上げた。昨日より、さらに不安は強まった。
まず、理想像を語る文部科学省のコンセプトは、非の打ち所がない。
(リンク先は、すべて文部科学省より)

1.2030年の社会と子供たちの未来
2.新しい学習指導要領等が目指す姿

これができるならいいよね、と誰もが思うような理想。この理想をどうやって実現するのか、に話が進むと、徐々に溜め息が混じりはじめる。

3.学習評価の在り方について

評価については、常識的。現場の負荷は増えそうだ、という感覚を朝日が抱いたのはこのあたりだろう。

4.学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策

そして、この4あたりで、負荷はさらに高まる。やたらと連携を推奨し「全体と通じて」が強調される。ということは、すべての教員の負荷を増大させることになる。こどもの人口が減っても、これだけ業務を増大させるのは、教員を増やさないつもりなら破綻するだろう。

5.各学校段階、各教科等における改訂の具体的な方向性

最後の方向性で、朝日や毎日の驚愕が当然のように感じられる。学習自体の負荷も減らさず、むしろ増やすと言っている。こどもも先生もパンクするのではないだろうか?
理想を具現化する。目的を達成するために、課題を見出し、解決策を思考し、PDCAによって達成する。これこそ、理想の教育が期待する成果だろうが、文科省自身がその見本を示せていない。理想と現実は乖離が甚だしく、工数分析、負荷算出という大事なステップを現時点で現場が不安になるほど無視している。これでは現場に不安が蔓延し、協力の体制が確立できない。コミュニケーションとしては最低の結果になる。先生が不安になれば、その不安はこどもに確実に伝わる。本来、試行錯誤や、アクティブな学習とは、この状態で「実は、先生もはじめてだからわからない」と素直に言える環境を創出することだが、それを文科省はどう捉えるだろうか?師は人の上に立つものと定義している旧型の思考は捨てずに、生徒にだけ不確実の中の思考を促し、先生には確実な結果を期待するのでは、明らかに失敗する。これは、仕事でも、組織でも、政治でも同様だ。リスク許容度が低過ぎる。なぜリスクを許容できないか?ウォッチ・システムが機能する自身がないからだ。セーフティ・ネットがないからだ。リカバリー・プランが準備できていないからだ。つまりPDCAの準備は、文科省自身に確立されていない。この要綱がうまくいくかをどのようにウォッチし、うまくいかない時にどのようばリカバリーを想定していて、そこで脱落しても対処できるプランがあれば、リスクは許容範囲に収まる。
この学習を現場に体験してもらうには、文科省がまず変わらなければならない。そして、社会も変わらなければならない。1年や2年の留年など許容し、学校をいつまでに卒業しなければ社会から脱落するという感覚を捨てる時期だ。6年の中ですべてができればいい。飛び級もあれば留年もある。テストでダメなら、もう一度やれるチャンスがある。そして本当にできないと悟ったら、他のことが得意なら学校を卒業できる。それが社会だ。いまだに文科省は、〆切までに達成できた人材だけを評価し、不確実の中に答えを出せる人間を優秀と評価したいようだ。文科省自身は、2020年までに、確実なステップをつくれるつもりだろうか?この不確実な時代の中で?自らの理想に対して成果物はまるで答えになっていない。これはアクティブではなく、極めて詰め込み型だ。そしてリスク・レベルは極めて高く、PDCAのプランはない。今のところ、ここに子どもたちを預けたい気がしない。

読売新聞・社説
北部訓練場返還 沖縄負担減を現実的に進めよ

合意から20年、沖縄県で本土復帰後最大級の米軍用地返還が実現した。基地負担の軽減を加速させる契機としたい。返還された森林地は、隣接する「やんばる国立公園」に編入される見通しだ。政府は、不発弾、汚染物質などを処理し、地権者への早期引き渡しに努めてほしい。地元の国頭村、東村には、地域振興への期待が大きい。菅官房長官は返還式典で、両村長や地元住民、ケネディ米駐日大使らを前に「必要な支援を行う。財政措置も確実に実施する」と強調した。疑問なのは、翁長雄志知事が式典を欠席し、反対派の集会に出席したことだ。北部訓練場の存続区域に移設された6か所のヘリコプター着陸帯を、輸送機オスプレイも利用するのが理由という。基地負担軽減は、米軍の抑止力維持も考慮しつつ、現実的に一歩ずつ進めることこそが王道だ、としている。

沖縄と政府の信頼関係は、完全に崩壊している。メディアもそれを助長している。喜ばれるはずの軍用地返還、歓迎モードはどこにもない。これを沖縄のわがままと見る風潮を新聞が社説に書く。日本の中に分断が起きはじめている。この分断は想像以上に大きいインパクトを秘めている。

産経新聞・社説
同一賃金の指針案 待遇改善と同時に育成を

政府の「働き方改革実現会議」が、正社員と非正規社員の待遇格差を是正する同一労働同一賃金の指針案をまとめた。正社員と同じ仕事をするパートなど非正規社員に対しても、業績への貢献度を勘案して賞与を支払うことを求めた。法的な強制力はないが、雇用形態による不合理な待遇格差の解消を促す妥当な内容といえる。日本企業は、仕事の成果を評価する基準が不明確な場合が多いといわれる。成果の評価次第で昇給や賞与に違いが出る場合、非正規社員が納得できるような評価基準も求められよう。国内では都市部中心に人手不足が深刻化している。これに伴ってパートやアルバイトの時給は上昇傾向にある。優秀な人材を確保するためにも賃上げは不可欠だ。正社員との不合理な待遇格差を解消することが肝要だ。それには、雇用形態を問わず従業員の技能などを高める職業訓練の充実も必要となろう。生産性の向上につながる設備投資にも積極的に取り組んでもらいたい、としている。

日本経済新聞・社説
無理がある大学の立地規制

政府は2014年末にまとめた総合戦略で、東京に埼玉、千葉、神奈川を加えた東京圏への転入超過数を20年にゼロにする目標を掲げた。東京圏への人口移動の大半は若年層だ。特に大学入学時と就職時に増える。そこで打ち出したのが地方大学などへの支援策だ。まず、地方大学に通い、地元の企業に就職する学生を対象とする奨学金の減免制度を普及させる。地方大学を核とする産学官の連携も後押しする。気になるのは「東京における大学の新増設の抑制」を来年夏までの検討課題に盛り込んだ点だ。大学や学部の東京23区内での新増設を抑えるように求める全国知事会の要望を反映した。地方への学部設置を後押しするなら構わないが、東京での立地を規制するのは行き過ぎではないか。少子化で競争がさらに激しくなっている大学の経営の自由度を損ないかねないからだ。東京はともかく、東京圏に転入する動きは変わらないだろう。大学の立地規制はやはり無理がある、としている。

トピックは別だが、生じている問題は似ている。あと少し日本経済に明るい環境がつづけば、人材不足が常態化する。ただし、不足するのは産経の言うとおり都市部から。さらに言えば若年層、即戦力。少子高齢化の社会で、労働力のニーズの合致は都市の方が満たしやすくなる。だから仕事は都市に集まり、さらに人が都市に集まる。高度な技術者が都市部でしか仕事を見つけられなければ、能力のある人は都市に集中する。逆もしかり。能力のある人が都市にいるなら、技能を求めれば企業は都市に進出することになる。これが世界規模で起きている。地球規模で、国単位で、都市は技能、雇用、マネーを吸収していく。この流れを止めたいなら、産業単位で都市に移動を促さなければ難しい。不満があっても思い切りはいる。話は少し逸脱するが、福井や東海村に原子力関連を集中するのも間違ってはいないし、そこに雇用創出の意味でもんじゅの後継技術を延命するために補助金を落とすのは、都市計画や雇用創出の意味では理解できる。産業に国家として投資するなら、その産業の将来に国がコミットするのだから、撤退のラインも事前に決めておいた方がいいのだが。
その意味で、過疎や都市集中の意味で国が策を求めているなら、産業創出と都市計画の位置づけで地方に投資する思い切りが求められる。過去に学園都市をつくって悲惨な体験をしている行政としては、言い出しにくいかもしれないが、それは反省して問題点を理解していないだけ。シリコンバレーも、ハリウッドも、ミラノ、パリ、シュトゥットガルト、香港、深圳…すべてこの道程ででき上がった街だ。
たとえば沖縄に航空技術やアメリカとのかけ橋の産業を。観光でないところがポイントだ。観光は産業として地域に根付くが、技能として沖縄に集めるには理解が得られない。カジノも置くなら、現在の都市ではなく、地方だ。その近隣で、あるべきカジノのサービスを研究開発し、産業として育成するつもりなら興味深い。言い訳のように観光と抱き合わせたり、地方の復興というから未来が見えなくなる。トヨタと豊田地区で国家プロジェクトを人材育成をしないのはなぜだろう?北海道や新潟で農業を研究するエリアがあればノウハウは集約できるかもしれない。
補助金を個別に地域にバラまいて、理想の未来像だけを並べて放置する。競争と言いながら、無数の企業を温存し、消耗戦を誘発する。目の前の問題だけを手っ取り早く忘れさせるために、賃上げ、女性活用、育児介護休暇…と手を打っているつもりだろうが、30年、日本から目立ったイノベーションはなく、技術さえ衰退を感じる状況だ。私たちはもう国の思うとおりのプランに乗ろうとさえしない。技術のトレンドは世界に求め、ビジネスも世界に求めている。日本全体が中抜き状態だ。

人民網日本語版
来年の対外投資に変化なし 引き続き増加傾向 商務部 (2016.12.24)

商務部(商務省)の沈丹陽報道官は23日に行われた定例記者会見で、「中国の対外投資の方針、政策、管理の原則は全体として変わりなく、対外投資の大きな流れには今後も変化がなく、来年の対外投資も引き続き増加傾向を示すとみられる」と述べた。中国の対外投資の大きな流れは変わらないとみられる。よって来年の対外投資は増加傾向が続くといえる。なぜこのようにいえるかといえば中国の対外投資の方針、政策、管理の原則は一貫して明確であり、全体として変化がないとみられるからだ。
第1に、企業が国際経済における競争と協力に参加し、グローバル産業チェーンとグローバルバリューチェーンに融合することを奨励するという方針は変わらない。第2に、中国の対外投資における「企業が主体となり、市場が原則となり、国際的な慣例に基づき、政府が誘導する」という原則は変わらない。第3に、対外投資の管理における「行政簡素化と権限委譲、委譲と管理の結合、サービスの最適化」という改革の方向性は変わらない。、としている。

この報道官の言うとおりになるだろう。それを対外投資と呼ぶか、資本流出と見るかの違いだけだ。人民元の価値下落。国内産業の未来への悲観。中国政治の締めつけ強化。海外の中国ニーズの減衰。中国の人材の能力向上。これらが合致すれば、マネーは次のマネーのために、中国から海外の価値に投じられるのは自明だ。中国政府はどうしたいのか?どのあたりをバランスのポイントと位置づけているかを示せばいいだけなのだが。おそらく、その臨界点を理解できていないから、一方で締めつけ、一方で推奨するのだろう。こういう船は、危うい。片方で漕ぎながら、片方でブレーキをかけている。やがてどこかが崩れる。

Wall Street Journal
トランプ氏の脅し、一蹴する中国の技術力 (2016.12.22)

ドナルド・トランプ次期米大統領がアップルなどの米企業に対し、海外ではなく自国の工場で製造するよう圧力をかけている。この動きは世界屈指のハイテク産業集積地となっている中国の深センにとって、脅威となるはずだった。しかし現地企業の幹部の多くが、トランプ氏の発言を気にしていないと一蹴する。貧困にあえいでいた深センには今や、複数の高層ビルが建つ。各工場の製造工程は改善され続け、設計、製造、そして出荷まで効率化された。仮にトランプ氏が中国からの輸入品に関税をかけたとしても、へき地を大都市に変えた経済力はその程度のことに影響を受けないというのが彼らの考え方だ。深センに工場を持つある世界的なメーカーの上級幹部は、「騒音は気になる」としつつも「関税についてのことは心配していない」と話す。「これらの雇用が米国に戻ったとしても、実際に雇われるのは自動化された工場で1000体のロボットを操作できるような人たちだ」と指摘するのは、北京大学で財政学を教えるクリストファー・ボールディング教授だ。「仕事を得ることになるのはトランプ氏に投票した層ではなく、コンピューターに詳しい人たちになる」としている。

雇用のためになら、中国からアメリカへのシフトは起こらない。それだけの雇用創出効果もなければ、アメリカにそのノウハウもない。そういう論理で安心しているなら、トランプ氏が勝利するチャンスはいくらでもある。リソースの偏在の問題は、ビジネスや政治にとって些細な問題だ。水の流れを変えるように、税制や法案をつくるのは、正論があればいくらでも可能。規制をつくったり、攻撃的な制裁を科すよりはたやすい。イノベーションの創出や、新しい産業の育成に比べれば確実で、カネのかかる公共事業よりも受けがいい。もちろん、産業移転のために中国移民を受け入れるつもりはトランプ氏にはない。アメリカ人が使えるロボットにして、アメリカにサプライチェーンを。これが、シェール革命のようにアメリカの将来に明るいトレンドなら、確実に投資はあるだろう。
アメリカでオイルが生産できることは、製造業、物流にとっては相当ポジティブだ。エネルギーを輸入に頼るようになった中国との問題は、技術と人件費。この方程式をアメリカが解ける確率は、かなり高い気がする。

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