ORIZUME - オリズメ

2829.報道比較2016.12.20

2829.報道比較2016.12.20 はコメントを受け付けていません。

Wall Street Journalと人民網が同じ軍事リスクで争っている。両者の立場から正否を見出すのは困難だが、今回判ったのは、トランプ氏はこういう危機にもTwitterでつぶやくつもり、という事実。思い付きに振り回されるのは避けたい。

Wall Street Journal
南シナ海で火遊びを続ける中国 (2016.12.19)

中国が15日に米調査船「ボウディッチ」の目の前で米海軍の無人潜水機を奪ったことは、多くのことを物語っている。中国政府は週末になると潜水機を返還することに同意したが、その一方で米国が「過剰な」反応を示したなどとして批判を展開した。しかし中国海軍による今回の行為は明らかな挑発だ。中国は不法に公海を占拠しつつ、米国が公海自由の原則をどこまで維持する気があるのかを試している。人民解放軍(PLA)は過去にも同様の挑発を行ってきた。2001年の4月には、PLAのパイロットが米国の偵察機を妨害しようと国際空域で危険飛行を行い、距離の判断を間違えて衝突、自らの命を失った。米軍機のパイロットも中国に緊急着陸を強いられ、10日間拘束されたのちに機体と共に解放されている。中国は、今回のような事件を起こせば、トランプ政権をオバマ政権同様に萎縮させることができると考えているのかもしれない。しかし、実際は真逆の反応が返ってくることになるだろう。トランプ氏は経済と安全保障を別物として捉えていない。中国はその状況で火遊びをしている、としている。

人民網日本語版
米国の接近偵察は中米の戦略的相互信頼強化の障害 (2016.12.19)

このほど、中国海軍は南中国海で「不明な装置」を発見した。米国の無人潜水機の背後の巧妙な計略も表面化した。このニュースは直ちに国際世論の注目の焦点となった。事件の主役が中米両大国の軍事力であること、事件の場所が近年穏やかでない南中国海であること、また事件発生後、トランプ米次期大統領がツイッターで参加してきたことが注目の焦点となった大きな要因だ。ここ数年米国は南中国海を足がかりに、戦略的に中国を牽制しようとしている。米側は艦艇や航空機を繰り返し中国の南沙(英語名スプラトリー)諸島の島や礁の周辺海域・空域に派遣し、さらには軍艦を中国の西沙(英語名パラセル)諸島領海に勝手に進入させ、「航行の自由」を旗印に、中国に対して計画的に挑発し、混乱を望んでいる。今回の南中国海潜水機事件で、米側は「罪がない」ことを装い、「国際法に基づく」ものだと公言し、「国際海域」で「軍事・海洋学データ」を収集すると同時に、無人潜水機を「不法に捕獲した」として中国側を非難した。これは逆ねじを食わすものだ。現時点で明らかになった情報によると、中国海軍の人命救助船は中国の南中国海管轄海域で「不明な装置」を発見し、「同装置が往来する船舶の航行の安全及び人員の安全を損なわないよう」、責任をもって識別と確認を行った。今回の事件における中国側の処理は理にかない、節度あるものだというべきだ。長年、米軍は中国側の反対を顧みず、中国周辺海域に艦艇や航空機を派遣して偵察、軍事測量を行っている。これは米国が中国に対して依然疑念や懸念、さらには敵意を抱いていることの表れだ。米軍の対中接近偵察及びいわゆる「航行の自由作戦」は、海空での不測の事態を起こしやすいだけでなく、中米の戦略的相互信頼強化の障害ともなる、としている。

Wall Street Journalと人民網が同じ話題で言い争うのは、軍事リスクの話ばかりになってきた。両者の立場から正否を見出すのは困難だが、今回判ったのは、トランプ氏はこういうリスクにさえTwitterでつぶやくつもり、という現実だ。彼のアカウントからのツイートが、バズの震源として大きなインパクトを持つことは理解しているが、そこにセンスを感じたことも、フォローに値する情報と感じたこともない。彼の今までの暴言同様、粗雑で、影響を顧みない、心のままのノイズ。これを国政にアメリカ大統領が使うという現実が、この先、どんな事故を誘発するか、ちょっと想像できない。就任後も、彼は平然とつぶやくだろうか?少なくとも、発想とコメントは変わることはないだろう。思い付きに振り回されるのは避けたい。持つべきは、余裕だ。

Financial Times
習近平主席の改革が成功し得ない理由 (2016.12.14)

中国の指導部の「核心」という称号を手にした習近平国家主席は、2つの任務を負っている。1つは、中国共産党から腐敗を一掃すること。もう1つは、経済の改革だ。裴敏欣教授は中国当局が公表した資料を用いて、なれ合いの汚職がはびこっていることを明らかにしている。こうした腐敗は経済をゆがめ、当局を堕落させ、中国共産党から社会的正統性をはぎ取ってしまっている。確かに、腐敗はガンだ。とはいえ、何かの偶然でできたわけではない。中国の腐敗に見られる特徴のうち特異なのは、富の急増と同時に発生したことだ。腐敗が富の急増を妨げることはなかった。それどころか、経済成長と腐敗は足並みをそろえて伸びてきた。しばらくの間お互いを補完していた可能性もある。腐敗が経済成長に燃料を供給し、実現した経済成長が汚職の原資を作り出すといった具合だ。経済がさらに複雑化した今、中央集権的な支配はますます機能しなくなっている。実際、中央が全政府職員の行動を管理することなどできはしない。さりとて、全政府職員に国民への説明責任を負わせるわけにもいかない。そんなことをしたら、共産党による権力の独占が崩れ去ってしまうだろう。レーニン主義の一党制国家である中国は、ガバナンス(統治)の問題に解決策を提示することができない。とはいえ、経済問題に解決策を示すこともできない。市場経済と、腐敗がないと見なせる政府を共存させるのであれば、経済主体には、独立した司法機関に守られた法的権利が必要になる。だが、これこそ、レーニン主義の一党制国家には提供できないものにほかならない。定義上、この国家は法を超越するからだ、としている。

筆者がどれだけの情報を持って書いているのか判らないが、中国通ということもなさそうだ。憶測で不安を描くような内容はないが、誰もが知っている内容で、新しい情報も考察もない。以前から、それこそ習氏が就任した時から言われているリスクを繰り返しているに過ぎない。
もう、習氏が権力を握った中国が半分の時間を使った。腐敗は消えただろうか?いや。まだ締め上げる気らしい。その間、海外には拡張主義の衝突が相次いでいる。アメリカとも一触即発の事態は増えるだろう。経済はリスクを警告され、何度も危機がかすめたが、破滅には至っていない。だが、成長もしていない。世界は中国が大きくなるのを手放しで喜ばなくなったし、むしろ許さなくなっている。その経済リスクに、習氏が何か策を講じたことは…私は、あまり見た記憶がない。ここが、過去のリーダーに比べてとても劣っている。今のままでは、習氏はオバマ氏同様、期待されながら実績を残せなかったリーダーになるだろう。残された時間は、あと半分。前半よりもチャンスは確実に減っている。おそらく味方も減っただろう。孤立も進んでいる。ということは…失敗の確立は、確実に高まっている。

朝日新聞・社説
オスプレイ再開 県民より米軍なのか

沖縄県名護市沿岸で、米軍輸送機オスプレイが大破した事故から1週間足らず。同種機の飛行を米軍が全面再開した。先週末、民放テレビに出演した安倍首相は「徹底的な原因究明」を強調。「今まで米側はなかなか運航を止めてこなかった。しかしカーター国防長官が日本においては一時的に止めてくれた」と語っていた。だがそのわずか3日後、米軍は飛行を再開した。「空中給油の際の給油ホースとオスプレイのプロペラの接触が原因であり、機体そのものが原因ではない」という米軍の説明を、政府はそのまま容認した。「もうこういう政府は相手にできない。法治国家ではない」翁長雄志知事の言葉は、県民の不安を顧みない米軍への怒りとともに、米軍にもの言えぬ政府への失望の表れだろう。オスプレイはすでに本土各地を飛んでおり、配備計画も進んでいる。オスプレイによる不測の事故も、そして国民不在の事後の対応も、沖縄だけの問題ではない、としている。

毎日新聞・社説
オスプレイ再開 政府はなぜ認めたのか

詳細な事故原因を明らかにしないまま、在日米軍が沖縄県・米軍普天間飛行場に所属する新型輸送機オスプレイの飛行を再開した。空中給油訓練中に名護市沖に落ち、機体が大破した重大事故から1週間もたたないうちの飛行再開だ。翁長雄志沖縄県知事が「言語道断」と批判したのは当然だ。飛行再開を決めた米軍の判断は納得できない。それ以上に、簡単に再開を受け入れた日本政府の対応に問題がある。防衛省は、事故機を実際に見ておらず、米側から説明を聞いただけで合理性があると判断したという。これが住民の安全に責任を持つ政府の態度だろうか。日米地位協定が壁になり、日本側が事故を捜査できない問題も積み残されたままだ。第11管区海上保安本部(那覇市)は、航空危険行為処罰法違反容疑での捜査を受け入れるよう米軍に求めているが、米側からは回答がないままだという。事故は沖縄や配備計画のある地域の人々を不安にさせたが、事故後の日米当局の対応はその不安をいっそう増幅させかねない、としている。

沖縄には、いつも運命的なタイミングで悪い事件が起きている。今回もまた、最高裁が沖縄県敗訴の判決を出す前の事故。そして、これを事故として安易に片付ける対応。この判断が、あとで大きな事故に至らないといいが。このリスクは、沖縄に限定されたものではない。日本全国に及ぶ危険だ。日本政府とアメリカ軍が、それだけの危機感を認識して再開したのなら懸念で終わるが、少なくとも説明は足りていない。これはアメリカ軍の仕事というよりは、日本政府の仕事だ。不信を払拭するコミュニケーションはまるで成立していない。

読売新聞・社説
北陸新幹線延伸 熟慮を欠く決定に疑問が残る

巨額の投資に見合う効果を上げられるのか。採算性や必要性について十分な議論を尽くしたとは言い難い決着である。与党の作業部会が、北陸新幹線で未着工の福井県・敦賀から大阪への延伸ルートを決めた。福井県・小浜と京都を経由する「小浜―京都案」だ。作業部会では、滋賀県・米原で東海道新幹線に接続する「米原案」、京都府舞鶴市を通る「舞鶴案」と併せて3案を検討した。与党は今回の決定理由について、運賃が最も安く、時間短縮効果も大きいことなどを挙げている。投入する資金に対して利用者らがどれほどの恩恵を受けるかを示す数値は、効果が費用をわずかに上回る程度だ。沿線自治体は新幹線効果を地域活性化の起爆剤にしたいのだろうが、誘致活動の過程で繰り返されたのは、相も変わらぬ政治頼みの「我田引鉄」の主張だった。整備新幹線の着工計画は、全国的な交通戦略、住民の利便性、財源問題など、総合的な見地から慎重に判断すべきである、としている。

昨日の朝日につづいて、自民党に肩入れする立場の読売からも批判。公明党が慎重になってもカジノは通り、自民党には数で押し切れる慢心がさらに高まっているようだ。これは、すでに失敗の芽は埋められている印象だ。緩んだ政治が生む浪費を許せる財政状況ではない。小さな破綻で自民党が後悔する可能性は高まっている。自重してほしい。

産経新聞・社説
日欧EPA 機を逃さず大枠合意せよ

日本と欧州連合(EU)による大詰めの経済連携協定(EPA)交渉で、目標だった年内の大枠合意が見送られた。来年1月にも交渉を再開して妥結を目指す。米国内での内向き志向の強まりで、TPPの発効は極めて困難になった。自由貿易の推進を成長につなげる、日本の意思を具体的に示すためにも、欧州との合意を確実に果たす必要がある。先週の日・EU間の首席交渉官会合では、焦点である農産品関税などの溝が埋まらず、大枠合意を図るための閣僚会合は、年内に開催できなくなった。日本はEUに自動車などの関税撤廃を求めている。対するEUは、チーズや豚肉などでTPPを上回る水準の自由化を要求している。企業と進出先政府の紛争解決手続きなども論点だ。EU内では来春以降、域内各国で重要な選挙が相次ぐため、その前に早期妥結を図ろうとする機運がある。この動きを逃さず、確実に成果を挙げてもらいたい、としている。

機を読めという主張かもしれないが、それでトランプ氏に覆されるなら、それ以前のTPPへの注力はすべて無駄になった。同じ失敗がヨーロッパでも起きるかもしれないのに、何を急ぐのだろう?保護主義はヨーロッパの方が進んでいるにも関わらず。協定を結べば経済が好転するわけではない。他の領域に確実に勝てる貿易が進むわけでもない。経済が衰退するのを食い止める方が先の時代に入っている可能性が十分ある中、交渉を優先する理由はまだあるのだろうか?

日本経済新聞・社説
中国の構造改革遅らせる不動産バブル

中国共産党は来年の経済運営を固める「中央経済工作会議」で深刻な不動産バブルの抑制と、需要不足を補う積極財政の継続を決めた。特に実需を反映しない住宅価格の高騰は深刻で、抜本的な対策が必要だ。住宅バブルは1年前に、同会議で住宅在庫の解消を掲げた副作用でもある。中国の金融機関はこぞって不動産向け融資を拡大した。多くの公有企業は、不振の本業で設備投資せず、短期的利益が見込める不動産に資金を回す投機に走った。「住宅は住むためのもので(投機対象として)弄ぶものではない」。中央経済工作会議が当たり前の事実を指摘せざるを得なかったのは、バブルの深刻さを示す。11月の新築住宅価格指数も、70都市のうち55都市で前月に比べて上昇している。中国の経済統計はやや持ち直している。堅調な個人消費や一部工業生産の底打ちが寄与した。だが、これだけで中長期的な成長の確保は難しい。持続可能な成長を目指すには、理念に基づく構造改革を着実に進めるしかない、としている。

昨日の人民網で日本が着目するのは不動産市場と金融リスクくらい。日経が不動産リスクを懸念するのは判るが、それ以上に構造改革は難解だが、ずいぶんと掲載されている。むしろ不動産にだけ着目して中国は構造改革していないと見るなら、日本の政治の方が確実にスピードは遅く、成果も出ていない。日本は残念だが批判できる立場ではない。
国家経済に関して言えば、中国にしても、日本にしても、気にすべきは金利だ。アメリカもイギリスも金利が上がっている中、金利が上がらない前提で組んだ政策が破綻しそうなのが、中国、日本、ヨーロッパだ。このリスクがもっとも大きいのが、中国では不動産、日本は財政だろう。両国の政治、どちらが経済運営は上手だろうか?

Comments are closed.