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2819.報道比較2016.12.10

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トランプ・ラリーで喜んでいる顔ぶれは、銀行、石油、軍事、インフラ。ラスト・ベルトの人たちに関係する領域は?

朝日新聞・社説
原発事故負担 つぎはぎで済むのか

東京電力福島第一原発の事故に伴う損害賠償や廃炉、除染などに21・5兆円かかる――。経済産業省が新たな見通しを公表した。3年前の想定から2倍になり、さらに増える恐れもあるという。今回の試算で、費用が特に膨らんだのが廃炉だ。従来想定の4倍に当たる8兆円になった。しかも、溶け落ちた核燃料の状態はまだ分かっておらず、この額に収まる保証はない。廃炉費に関して、経産省は東電に他社との事業再編を求め、収益力を高めて捻出させる青写真を描く。事故を起こした東電が努力を尽くすのは当然だが、再編の相手先を見つけるのは容易ではなく、「絵に描いた餅」の危うさをはらむ。有識者会議を舞台にした今回の検討は、進め方にも見過ごせない問題がある。経産省は、費用総額の見通しを大詰めまで示さず、負担方法の議論を先行させた。こんな不透明なやり方で、国民への説明責任を果たしたと言えるだろうか。有識者会議だけでなく、並行して検討を進めている与党にも、なお異論が残っている。結論を急いで強引に押し切ることは許されない、としている。

私の興味は、韓国の話題よりは原発事故負担だったが、新聞の価値観とは異なるようだ。経済産業省がどう予想しているかは判らないが、常識から考えれば、このコストが発生している間は、新設はよほどの論理武装がなければ困難だ。再稼働さえ、40年の曖昧なデッドラインの延長さえ難しくなる。いくら過半数を両議院で保持していたとしても、原発問題は未だに意見が二分している。経済産業省が出した時点で、これは東京電力の問題ではなく、行政の案だ。政治との調整はあったのだろうが、この甘い感覚は、今の政治環境なら実現可能という認識だろうか。反対論を唱える野党、メディア、専門家、私も含め、日本の原子力政策に疑問を持っている人も、作戦の再考が必要だ。

産経新聞・社説
TPP承認 成果を無にせぬ方策探れ

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が国会で承認された。保護主義に流れず、自由貿易の拡大を成長の礎にしようとする日本の意思を内外に示せたといえよう。次期米大統領のトランプ氏がTPP離脱の意向を示し、発効は極めて困難になった。だが、参加12カ国の厳しい交渉を経て得た成果を、このまま無にするのはあまりにももったいない。高水準の貿易自由化と公正なルールを掲げるTPPは、通商協定の世界標準たり得る先進性を備えている。法の支配や市場経済が不十分な中国ではなく、日本など自由主義国が構築しようとしたところに大きな意義があった。TPPが頓挫し、各国が対中傾斜を強めれば、域内での中国の影響力は格段に高まろう。それが経済、軍事両面での覇権主義的傾向を強めることにならないか、警戒を怠るわけにはいかない。トランプ氏はTPPの代わりに2国間交渉を進める意向だが、日本はTPPを通じて自由貿易や民主主義の価値観を共有する経済圏を確立し、これを世界に波及させる路線を崩す必要はない。同時に、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉を妥結させるなど、保護主義の否定を行動で示すことが重要である、としている。

読売新聞・社説
TPP承認 自由貿易体制の旗を降ろすな

環太平洋経済連携協定(TPP)が国会で承認され、批准に必要な衆参両院での手続きが完了した。参加12か国中、ニュージーランドに続く早期承認を果たした。トランプ次期米大統領はTPP離脱を表明している。米国の批准がなければ協定は発効しない。安倍首相は「たとえ発効が不透明になったとしても、フェアで公正な経済圏をつくる意義を世界に発信する」と述べた。悲観論が強まる中で、協定の必要性を粘り強く訴えるのは妥当な判断だ。米新政権が基本政策を固めていく過程で、TPPの意義を再認識するよう、日本が主導して働きかけを続けることが大切だ。日本の通商戦略にとって喫緊の課題は、TPP、RCEPと並んで重要なEUとの経済連携協定である。年内の大筋合意を目指し、週明けから東京で首席交渉官会合が開かれる。日本は自動車の関税撤廃を求め、EUからは農産物の市場開放を迫られる構図だ。来年まで交渉が長引けば、国政選挙が相次ぐEUから譲歩を引き出しにくいとの見方が強い。早期合意に向け、最大限の努力が求められよう、としている。

TPP早期承認に、目立った戦略はないようだ。このままでは頓挫する。そして、主導権はアメリカに握られたままになる。アメリカが求めているのが、その交渉の主導権。急いで決める理由が、私は最後まで判らなかった。そして次は欧州とのことだが、TPPが進まなければ、ブレグジットも抱える欧州が日本との貿易交渉を推進する理由があるのだろうか?市場の規模から考えれば、明らかに中国を優先すべきだが、両紙とも対抗心ばかり。価格競争力では完全に負ける日本が、この発想では中国との貿易戦争は完全に敗北してしまう。

人民網日本語版
欧米日が懲罰的関税の適用準備か?中国の市場経済国の地位獲得に圧力 (2016.12.9)

世界貿易機関(WTO)加盟から今年12月11日で15周年を迎える中国がこの枠組みの中で「市場経済国の地位」を獲得するのはごく当然のことといえる。だが保護主義の台頭といった要因に影響されて、欧州連合(EU)、米国、日本の公式見解や一部の商業団体は中国がこうした待遇を獲得することに反対するよう呼びかけ、多くの産業で懲罰的関税措置を適用する準備が進められている。米国の次期大統領トランプ氏は市場経済のルールを無視して、選挙期間中、中国からの輸入商品に45%の関税をかけると主張した。アナリストは、このような選挙スローガンが実際に行われるようになるまでには一定の距離があるものの、ここには次期米国政権の対中国貿易における態度が反映されていると指摘している。日本の財務省は先月、現行の特恵関税制度の見直しを打ち出し、中国など5カ国が日本に輸出する製品について、2019年から特恵関税を供与しない方針を打ち出した。またEUの欧州委員会が先月、欧州議会と欧州理事会に反ダンピング法律制度の改定の提案を行ったのは、中国製品に対する関税引き上げがねらいだ、としている。

この人民網の記事の方が、産経や読売の社説より説得力がある。それは、政治のリーダーの発言でも一緒だ。今のところ、トランプ氏と習氏のの発言には大差がない。どちらにもデータや第三者の意見もなければ、ビジョンもロードマップもない。困っている自国民を守るために、相手を叩く。残念だが、産経と読売の主張も一緒だ。保護主義を否定すれば論理が正当化されるわけではない。

日本経済新聞・社説
朴氏弾劾でも韓国の政治不信は消えない

世論の激しい怒りが政界を突き動かしたのだろう。韓国国会がついに、友人の国政介入疑惑で窮地に立たされていた朴槿恵大統領の弾劾訴追案を可決した。野党だけでなく与党の相当数の議員も同調し、可決に必要な3分の2以上が賛成した。朴氏の退陣表明にもかかわらず野党側が弾劾に突き進んだのは、世論の圧力に加え、次期大統領選を優位に進める思惑もある。弾劾で朴氏を追い落とせば、与党により深刻な打撃を与えるからだ。一連の疑惑により、友人の関与する財団に大手財閥企業が多額の資金を拠出したり、友人の娘が有名大学に不正入学したりしていた事実が露呈した。朴氏がどこまで関与したかは不明だが、政財界の癒着、親族や旧友を優遇するコネ文化が政権の中枢でまかり通る実態が改めて浮き彫りになった。世論の怒りは政財界の旧態依然の体質にも向けられたようだ。朴氏の弾劾で国民の政治不信が消えるわけではない。今後、次期大統領選に向けた論戦も本格化するだろうが、与野党とも旧弊を断つ覚悟がこんどこそ必要だろう、としている。

毎日新聞・社説
朴氏の弾劾案可決 正常化へ早期の辞任を

韓国の国会がきのう、朴槿恵大統領の弾劾訴追案を可決した。憲法裁判所が弾劾に相当すると認めれば、大統領は罷免される。可決には在籍議員3分の2以上の賛成が必要だったが、実際には8割近い議員が賛成した。与党からも60人以上が賛成に回った模様だ。国民の代表である国会が大統領に値しないと突き付けたことになる。極めて重大な事態である。弾劾訴追案の可決を受けて、朴大統領は職務停止となった。国のトップが不在では、米国のトランプ次期政権との関係構築はおぼつかない。北朝鮮が挑発的行動を取った場合の対応にも不安がある。慰安婦問題を巡る昨年末の合意を機に改善基調にある日韓関係の先行きも見通せない。国政を正常化させる責任は大統領だけでなく、与野党の双方にあることを忘れないでほしい。韓国の与野党には、公正な選挙を速やかに実現させるために協力していくことを期待したい、としている。

弾劾可決と言うイベントに流されたようだが、内容は浅い。直近の日本には北朝鮮問題と12月の首脳会談程度しか関連はない。社説のトピックにするなら、別の話題にした方が良かった気がする。

Wall Street Journal
規制緩和に向かうトランプ次期政権―企業は歓声 (2016.12.9)

米国の産業界リーダーらは、残業手当から発電所の排ガス関連規則に至るまで、大規模な規制緩和が実施されると予想している。ドナルド・トランプ次期米大統領が、政府高官を筋金入りの規制反対派で固めようとしているからだ。トランプ氏は8日、ファストフードチェーンを展開するアンドリュー・パズダー氏を労働長官に指名した。これには、オバマ政権の賃金政策に対する露骨な批判が込められている。また、環境保護局(EPA)長官にオクラホマ州のスコット・プリュット司法長官を指名したのは、オバマ大統領の環境規制に対する法的な異議申し立てに向けた最初の布石だ。プリュット氏がEPA長官に指名されたことで、エネルギー企業と自動車メーカーは歓声を上げている。オバマ政権は、車の燃費効率を2025年までにガソリン1ガロン当たり54.5マイル(約88キロメートル)に引き上げることを義務付ける規制を自動車メーカーに課しており、メーカー側は規制緩和を望んでいる。企業は新しい規則の適用中止を歓迎するとみられるが、銀行などの一部大企業は新規則を完全に廃止するのではなく、簡略化して、コストを下げるよう米政府に働き掛けている。シティグループのジョン・ガースパック最高財務責任者(CFO)は「私がまず要求するのは目新しいことではない。新しい規則を設けないことだ」としたうえで、「現行規則がどのように機能しているか理解していないのなら、新しいものを追加すべきではない」と語った、としている。

個人的な妄想めいた予想を言えば、トランプ氏の行動は、どれもオイル価格を上げたい人たちに有利な話題ばかりだ。それも、シェールで生まれた新しいプレーヤーではなく、中東、ロシアを含めた産油国、アメリカの古い石油産業の人たちに利益が誘導されている。トランプ氏の当選時の支持母体とはずれている。共和党の思惑だろうか。規制を破壊させるには、トランプ氏は格好のリーダーだ。ルールは作るより破る方が好きなはずだ。その結果、今まで我慢を強いられていた低所得層に恩恵が回るなら、文句はないだろう。だが、どうも最近、喜んでいる顔ぶれを見ると疑問ばかりだ。銀行、石油、軍事、インフラ。ラスト・ベルトの人たちに関係する領域は、どこだろう?

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