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2810.報道比較2016.12.1

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危機感が、人や技術を育てる。その意味で、日本がずっと失ってきたもののひとつが危機感だ。

Wall Street Journal
OPEC減産合意、ロシアなど非加盟国も減産見通し

石油輸出国機構(OPEC)代表団は30日、数カ月にわたる駆け引きの末に減産で合意に達した。低迷する原油価格を押し上げ、米国やロシアなどOPEC非加盟国がシェアを拡大しつつある市場で影響力を取り戻す狙いだ。イランのザンギャネ石油相によると、OPECは生産量を日量120万バレル減らし3250万バレルとすることで合意した。OPEC加盟国の関係者らは1バレル=55~60ドル程度までの相場押し上げを目指すと言明している。サウジアラビアは生産を日量48万6000バレル削減する。一方、市場シェアを犠牲にすることに消極的だったイラクの削減量は21万バレル。関係者によると、イラクは推計値の日量455万バレルを基準とすることを受け入れた。OPECはさらに、非加盟国が合計で日量60万バレルの生産削減に踏み切る見込みだとした。ロシアは30万バレルの減産で合意したという、としている

NHKのトップニュースが、このOPEC減産合意だった。だが、国内紙で社説で取り上げた新聞はゼロ。日本の新聞の経済とは、あくまで政策、行政によって行われるもののようだ。日経まで無視したのは残念だ。うわさようなトピックを私が最初に見たのは昨晩20:00頃。その後、22:00頃から情報は増え、マーケットも反応した。新聞なら十分に対応できる時間だが、社説担当者はスルー。この感覚が、今の日本を示している。
OPEC、特にサウジアラビアは必死だ。同様の危機感が、日本には感じられないのはなぜだろう?安くなったとしても、湧き出るマネーのようなオイルが潤沢にあり、サウジアラムコが上場すれば、過去に例のない規模のマネーが国家予算に組み込める。たしかに産業は少ない。血の気の多い国民性も、利害衝突しやすい国際関係もある。それでも、日本の財政や、もんじゅにさらに投資する感覚、オリンピックの準備で平然と起きている予算の乖離、遅々として進まない改革を見ていると、これは国民性という一言で片付けていい問題ではない気がする。心配性で、ネガティブで、慎重?いや。悩んでいるようで、考えていないし、行動は想定さえしていない。中東が本気になったら、日本の技術など、すぐに抜かれる。その危機感さえ持っていない。日本には、そろそろ危機が必要だと思えるほど、弛緩している。

朝日新聞・社説
もんじゅ後継 無責任さにあきれる

政府はきのう、非公開の会議で、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の後継となる高速実証炉の開発を国内で進める方針を示した。1兆円超を投じたもんじゅは、1994年の初臨界からの20年余で、わずか220日ほどしか動いていない。扱いの難しい冷却用ナトリウムを漏らすなど、事故を起こしたからだ。政府が目指す高速炉は、もんじゅのように炉内で燃料のプルトニウムを増やしていく増殖機能はないが、原理は同じだ。原型炉さえ満足に動かせなかったのに、安上がりで安全な実証炉を造れるのか。国際協力を踏まえるというが、頼りにする仏「ASTRID(アストリッド)」計画は、仏政府が建設の是非を数年後に決めるという段階だ。原子力行政については、一度決めた政策に固執する硬直性への批判が根強い。それでも福島第一原発事故後は、利害や経緯にとらわれない議論の大切さが広く認識されるようになった。政府はいま、過去の教訓に目をつぶり、お手盛りの会議で、疑問だらけの高速炉開発に税金をつぎ込もうとしている。こんな愚行は許されない、としている。

民間だったら、ゆるい日本の経営でも、上場していたら許されない。アメリカなら3年程度で撤退。それくらい無駄に見え、継続に論理性が見えない。抱えてしまった人材のことや、福井という地域への配慮…そういう政治的な配慮があるなら、素直にそう言えばいい。さらに言えば、そういうことはカネで解決可能な問題だ。技術負債を捨て去る、撤退を決断する。これらは、経営者にとってもっとも苦しいが、必須の能力。人口が減り、経済も縮小していく日本は、これから撤退への決断は必須の能力になる。残念だが、政治や公務員に、これらの能力を持った人は皆無のようだ。この話題もまた、新聞の社説は朝日以外は避けている。メディアが目を反らしているようでは、また国家玉砕もあり得る。

人民網日本語版
露メディア「中国、トップクラスの革新型国家の道を進む」 (2016.11.30)

ロシア科学アカデミー極東問題研究所中国経済・社会研究センター長は、「中国は革新を国家経済戦略の重要な支柱にしている。中国は科学・教育に積極的に投資し、ロケットから新薬の開発に至るまで、ほぼすべての部・委員会が同分野でトップの地位に立つための発展計画を策定している。革新センターが各地で設立され、革新的な企業が優遇されている。さらに重要なのは、中国が専門家・学者に研究に最適な条件を最大限に提供していることだ。その研究成果もモノとして特許に変わっている。さらに、研究センターが現地の学者を集めるほか、中国が科学技術の進歩に力を注いでいることを鑑み、米国や英国を含む世界各地の学者が中国を訪れている。また、ロシアからは多くの専門家が中国を訪れている」と述べた。同記事によると、中国の革新は驚くべきペースで成長している。10年前は、中国を科学分野のライバルと見る人はいなかったが、人類に火薬と紙をもたらした中国は再び、世界の科学技術強国になろうとしている、としている。

ここ数年、日本が毎年ノーベル賞を受賞できるのは、10年以上前に、先行投資として研究開発に潤沢な資金を投じたかららしい。特許がすべてマネタイズできるわけではないが、数だけでもアメリカを凌駕しているのはすばらしい。ここからマネタイズする能力は、中国は得意だ。むしろ日本の方が不得手な領域のはず。ということは、この先、中国は技術立国になり得る。願わくば、特許大国になることで、知的財産への意識が中国内で認識され、欧米がつくったルールを破壊するのではなく発展させてくれるといい。中国のコピーに笑える時代も、やがて終わる。まもなく恐れ、その先に称賛する時代は近い。

読売新聞・社説
「退位」意見聴取 憲法上の疑義は拭えるのか

天皇の地位について、憲法は「国民の総意に基づく」と定めている。政府の「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」が、憲法学者らへの意見聴取を行った。麗沢大教授の八木秀次氏は「退位を認めると、即位拒否や短期間での退位も容認せねばならず、皇室制の存立を危うくする」と主張した。退位は「国家の制度の問題であり、天皇の意向に左右されるものではない」とも指摘した。5人のうち、4人が退位を容認する見解を示した。憲法には退位に関する明確な規定が存在しないことなどを理由に挙げている。天皇と前天皇が併存すると、象徴の地位が曖昧になり、国民統合の機能が低下しないか。公的行為も象徴の務めになれば、それができない天皇は地位に留まれないという能力主義が持ち込まれる。陛下のご意向だけを念頭に法制化すれば、「天皇は国政に関する権能を有しない」と定める憲法に抵触しよう。幅広い論点について、冷静な議論が必要である、としている。

社説なので、読売自身の意見なのだろう。有識者会議の座長が、非常に多種多様な意見があると言っていたのも頷ける。そして共感したのは「多数決はしない」と言っていたことだ。最近の国会にありがちな、最後は数で採決して決定はしない、という。全体の最適解を探すようだ。適切だろう。総意の意見はおそらくない。多数決で決められる話題でもない。国民の感覚と、天皇陛下の心情と、これからの皇室のあり方、法の整合性、すべての満たすのは不可能なようだ。読売のように、さらに議論を拡散させるのもいいが、優秀な座長の結論を待ちたい。

毎日新聞・社説
年金改革法案 世代間の信頼、再構築を

賃金の下落に合わせて年金支給額を引き下げる新たなルールなどを盛り込んだ年金制度改革関連法案が衆院本会議で可決され、参院に送られた。政府・与党は臨時国会の会期を12月14日まで2週間延長し、今国会での成立を目指す。民進党などの野党は激しく反対している。今回の法案は確かに年金給付額の減額につながる可能性がある。だが、保険料を納める現役世代の賃金や物価が下がるのに、高齢者への年金額が高止まりしては、現役世代が将来受給する年金の財源が減ることになってしまう。すでに年金を受給している人も、長生きすればするほど年金財源が苦しい状況に直面することになる。こうした点を考えれば、年金制度を長期的に持続可能にするため支給水準を賃金に連動させていくことはやむを得ないだろう。若者たちの生活基盤を強めることで年金の財源も安定し、親世代は老後の安心を得ることができる。世代間の信頼に基づく支え合いがあってこそ年金が成り立つことを国民全体で認識できるよう、議論を深めていくべきだ、としている。

個人的には、年金カットと呼ばれる法案には前向きだが、新聞も国会議員も、批判が起きない言い方に終始している。若者たちの世代、これからの世代に報いると言われれば批判はないが、支給時期が後ずれするなら、今の若い世代にも決して楽しい話ではない。年金支給開始がどんどん後退し、額も小さくなっているのを、意識しているだろうか?

産経新聞・社説
五輪会場問題 スポーツ界が意見を持て

2020年東京五輪・パラリンピックの会場整備問題で、水泳とボート・カヌー会場が現行計画通りに建設されるとの結論が出た。「アスリート・ファースト(選手第一)」という招致時の理念を考えれば妥当な判断だろう。議論を通じて、2会場とも建設費が乱高下した経緯が明らかになった。都や大会組織委員会による大会経費の試算が、いかにずさんなものであったかを世に示した意義は大きい。ただし議論がコスト削減一辺倒では、五輪の本質を見失う。新設の競技会場を、五輪後も長く活用する「レガシー(遺産)」として残すためには、必要なコストを惜しむべきではない。会場整備をめぐる混乱は「スポーツの価値」も問いかけている。残念なことに、一連の議論ではスポーツ界の影が薄い。日本水連と日本バレーボール協会は、新設会場の有効活用を提言する文書を作成したが、遅きに失した感は否めない。本来は、会場整備計画の中にスポーツ界の意見が反映されてしかるべきだった、としている。

産経の指摘も判るが、レガシーと呼べるほどのスポーツ振興が、この国のこれからにあるだろうか?前回の東京オリンピックから、どれだけのスポーツが発展し、会場はどれだけ使われたのだろう?その試算を産経が示してみたらどうだろう?私は、会場よりは選手に投資するスキームの方が、業界としては理想的だと思う。サッカーがどれだけの投資をして、いま、どんな状況だろう?それで、どれだけの成果が出ているだろう?世界で活躍している選手が求めるのは、会場や施設ではない。コーチであり、世界のどこでも闘える経験であり、スポンサーシップや、自身の活動を支援してくれるプロデュース能力だ。美談にしているだけで、本当は建物をつくりたいだけ。その意識なら、スポーツ界も協力しないのではないか。

日本経済新聞・社説
農家のための全農に生まれ変わるときだ

政府は全国農業協同組合連合会(JA全農)の組織刷新を柱とする農業改革の方針を決めた。農家の所得向上と農業の活性化に貢献するという本来の目的を踏まえ、全農は改革を急ぐべきだ。全農は農協組織の経済事業を束ねている。肥料、農薬などの資材の農家への販売や農産物の集荷といった事業で、シェアは大きい。だが、資材価格は海外に比べて割高と指摘され、農産物の扱いは手数料を上乗せしているだけとの声が少なくない。この改革方針に法的な強制力はない。だが、どれも全農が進んで打ち出すべき方策といえる。4月に施行された改正農協法は「農協や連合会は農業所得の増大に最大限の配慮をしなければならない」と明記している。その意味を全農はよく考え、改革に取り組んでもらいたい。農家による農家のための組織という原点に農協は立ち戻り、農業支援にこそ注力すべきだ。全農の改革がその試金石になる、としている。

どうやら日経は農業改革には疎いようだ。同様の内容をすでに各紙が論じている。コピペのような社説は不要だ。

Financial Times
ジンバブエ、ハイパーインフレの悪夢再来か

ジンバブエが輸出拡大と深刻な現金不足の緩和を図るために物議をかもす並行通貨を発行し始め、この対策が裏目に出て、8年前にジンバブエ経済に壊滅的な打撃を与えたハイパーインフレが再来するとの懸念が高まっている。ボンドノートは米ドルと1対1の公式交換レートを持つ。米ドルは、ジンバブエが2009年に自国通貨を廃止して以来、同国で使われている複数の外貨の1つだ。だが、ボンドノートの価値を維持するという中央銀行の主張は、ジンバブエの一般市民から広く疑いの目を向けられている。当初は7月に予定されていたボンドノート発行は、何度か延期された。その原因はさまざまで、市中銀行に対する矛盾した指示や、ボンドノートを可能にする法律をめぐる混乱もあった。10月には、ボンドノートを印刷するために接触されたドイツ企業が依頼を拒んだ。ボンドノートが現在どこで印刷されているのかは不明だ、としている。

国家デフォルトで名前が良く出るジンバブエ。他に挙がるのはブラジル、ベネズエラ、韓国。アメリカの利上げとともに、またこれらの国の危機がささやかれる。トランプ・ラリーとともに進むドル高は、アメリカが嫌っている以上に新興国にとって苦痛だ。今年の年明けをもう忘れた人がたくさんいる。昨年12月の利上げが、年明け早々の危機を想起させた。既視感のある光景が、今年も繰り返されている。

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