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2807.報道比較2016.11.28

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日本の政治がようやく経済を中心にしているからか、社説に国内経済の話が多い。どれも待遇や制度の話。企業が投資に動きたくなるような話も、来年には出てくるだろうか?安保最優先の昨年までより環境は良い。支持率は上がるだろう。

朝日新聞・社説
春闘 まだまだ賃上げできる

労働組合の全国組織「連合」が先週、来年の春闘の方針を決めた。2%程度のベースアップ、定期昇給を含めて4%の賃上げを求めている。2015年度の企業の経常利益は12年度と比べ、4割近く増えている。大企業の伸びはさらに大きい。今年度は減益に転じても、水準としてはなお高い。一方で、賃金も3年連続で上がり、雇用も改善してきた。だが、企業が生み出した付加価値と比べた労働者の取り分の割合(労働分配率)は低下が続く。設備などの投資におカネがかかるので賃金に回す余裕がない、というわけでもなさそうだ。企業が手元に持つ現預金は着実に増えている。「経済の好循環」のカギが賃上げだというメッセージは分かる。だが、時の政権が、交渉の具体的な内容にまで踏み込んで介入したり、「官製春闘」とみられるような状況が常態化したりしては本末転倒だ。毎年、賃上げ要請が必要な状況があるとすれば、それは労使の力の差が広がっているからではないか。その場その場の口出しより、根本的な原因に目を向け、状況そのものの改善を考えるべきだろう、としている。

日本経済新聞・社説
同一労働同一賃金を生産性高めるテコに

働き方改革の目玉の一つとして、仕事が同じなら賃金も同じにするという「同一労働同一賃金」の議論が厚生労働省の有識者会合などで進んでいる。企業は制度導入に向けた対応を急ぐべきだ。企業に求められるのはまず、待遇に差をつける場合は理由の説明責任が伴うことの自覚だ。たとえば同じ仕事に就いている正社員とパートで賃金に差を設けていれば、パート社員に対し、権限・責任や身につけた技能の違いといった理由を明確に説明する必要がある。新たに雇用契約を結ぶ際も、待遇の差の理由をきちんと説明することが重要になる。正社員の処遇制度も見直す機会になる。同一労働同一賃金は、賃金は職務の対価という考え方を前提にしている。日本企業は正社員の処遇制度に年功色をなお残しているが、これを改め、仕事の中身や難易度で賃金を決める職務給を積極的に取り入れるべきだ。求められるのは同一労働同一賃金の議論を機に、社員の生産性向上を促す処遇制度改革を進めることである。パートなど非正規社員についても技能の向上に伴って昇給する仕組みを充実させたい、としている。

読売新聞・社説
配偶者控除 今の見直し代案では不十分だ

政府・与党は、所得税の配偶者控除について、見直しの方向性を固めた。妻の年収が103万円以下であれば、夫の所得税を軽減する現行制度を150万円以下に対象を広げる。減税の拡大分を補うため、高所得の世帯は対象外とする。そんな内容を軸に検討している。政府・与党は当初、103万円の壁をなくすことや、配偶者控除の恩恵を受ける専業主婦世帯と、受けにくい共働き世帯との不公平解消のため、制度の廃止を含めて検討する方向だった。安倍政権は、配偶者控除見直しを「働き方改革」の一環に位置付ける。本格改正は無理。かといって現状維持もできない。そうした安易な考えが政府・与党内にあるとしたら本末転倒である。女性の就労促進と課税の公平という本来の趣旨に立ち返り、議論を重ねる必要がある。夫婦控除のほか、所得税の各種控除を高所得者に有利な所得控除から、所得にかかわらず一律の金額を軽減する税額控除に変更することなどが検討課題となろう、としている。

同一労働同一賃金の話題が、徐々に具体的になっている。賃金差に説明責任を持たせる点などは明確で判りやすい。これが税にまで関連すれば、国が完全に管理できるのだが、そこまでする気はないのだろうか?それでも、賃上げ要請、控除改革、同一労働同一賃金と、安倍政権がようやく経済に制度から本腰を入れている印象だ。望まれるのは、同時に企業が投資したくなるような未来像なのだが、そちらも徐々に出てくるだろうか?
能力を、適切な対価で、自らのブランドで売る時代。それが、現実になりつつある。これから、確実に認められると思われるものは、副業。受託や裁量による一時雇用などの柔軟な雇用。空いている時間と仕事をマッチングするサービス。セーフティ・ネットとして機能する、雇用や社会保障。「ひとつの会社に、じっくりと腰を据えて仕事する」の言葉の意味が、人生ではなく、プロジェクトのような関わりに変わっていく。より濃く、成果に対して対価が支払われる仕事に。代わりに、最低の生活が維持できるための最低賃金が、今より短い時間で企業と契約したり、雇用を安定させる保険として国が支援する。ひとつの企業が、ひとりの人材を、完全に雇用して、完全に拘束する時代が終わる。そうしなければ企業も持たないし、個人も疲れ果てている。

毎日新聞・社説
外国人実習制度 不正への対応は厳格に

新興国や途上国の労働者が日本で技術を学ぶ「外国人技能実習制度」の適正化法が今国会で成立した。この制度は、人材育成を通じて日本の技術を海外に伝えるという国際貢献が本来の目的だ。導入から20年以上たち、現在は中国やベトナムなどから21万人以上受け入れている。実習生が健全な環境で技術を習得できるよう、政府は新制度を厳格に運用すべきだ。監視を強めなくてはならないほど法令違反などの不正は広がっている。入国管理局が昨年不正を認定した企業などは、前年比約13%増の273機関に上った。年々増加傾向で、業種別では、繊維・衣服関係や農漁業関係が目立つ。政府は、東京五輪・パラリンピックを前に、建設業などで外国人労働者の活用を拡大する方針だ。労働人口が減少し、産業構造も変化する中で、長期的に外国人の単純労働者をどう受け入れるのかという問題がある。実習制度でそうした人材を穴埋めすることは、そもそも筋違いだ。将来を見据えた議論を始めたい、としている。

日本国内のデフレや賃金低下の弊害が、外国人にも及んでいる。前述の経済の疲弊が、放置すれば国際問題に発展してしまう。日本には行かない方がいい、という事例が増えれば、人口減の未来には危機的だ。入国管理局では、対応に人手が足りない気がする。この社説の「企業など」「273機関」という表現が気になり、少し見てみたが、企業単独ではなく、組合を作って入国を取りまとめる組織をつくるのが通例のようだ。

法務省入国管理局 平成27年の「不正行為」について  by 法務省

行われている不正の大半は報酬の不払い。ならば組合に保険制度、保障制度を完備させるのがシンプルではないだろうか?

産経新聞・社説
憲法審査会 議論の阻止が立憲主義か

今国会で、憲法審査会は衆院で2回、参院で1回議論をした。だが、会期が延長されても肝心の改正項目絞り込みに入る情勢にはない。民進党や共産党などが本来の意味を超え、偏った解釈に基づく「立憲主義」を振りかざし、安倍晋三首相や自民党が進めようとする改正論議を阻んでいるからである。自民党の憲法改正草案は、国柄や歴史、文化への言及がある。大震災や有事に備え、国民や憲法秩序を守るために一時的に権力行使の範囲拡大を認める、緊急事態条項を盛り込んでいる。民進、共産両党は、これらが立憲主義に反していると退けようとするが、偏ってはいないか。憲法に明確な緊急事態条項を入れておかないと、想定外の災害が襲ってきたとき国民の生命を守り抜くことに支障を来すかもしれない。両党はその危機感を欠く。独自の改正案も出さず“神学論争”を仕掛け、議会制民主主義の停滞をもたらしている。立憲主義以前の問題ではないか、としている。

そうだろうか?私は自民党の憲法改正草案、前文に文化の理があろうが、第一章の第一条から愕然とする。

日本国憲法改正草案 by 自民党

天皇が日本国の元首?そして節々に、責任を負え、義務を自覚しろ、公益、公の秩序…と息苦しさを強める。公務員の勤労改善や政党の発展には努めろとわざわざ憲法に追加されているあたり、相当ひどい。公務員の給与の話まで憲法に書いてある国があるのだろうか?
対案を出さないことは論外。野党へのその批判は同意する。自民党がこれをつくったのは4年以上前。野党はその間、何の準備もしていないことになる。それにしても、自民党草案は最悪だ。これは憲法ではなく、自民党保身案にしか見えない。産経の想定外の議論への跳躍の方が、議論を阻んでいる。

人民網日本語版
RCEP交渉の早期妥結を 商務部 (2016.11.25)

商務部(商務省)の沈丹陽報道官はこのほど行われた定例記者会見で、最近の環太平洋経済連携協定(TPP)と東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の見通しに対する各方面の評価や見方について、「中国はASEANの中核的な位置づけを十分に尊重することを土台として交渉の各方面とともに協力し、できるだけ早く(RCEPの)交渉を妥結させたい考えだ」と述べた。沈報道官は「TPPは途中で挫折したが、RCEPには妥結の見込みがある」と言われていることに対し、「中国は最近の各方面によるTPPとRCEPの見通しに対する評価や見方に注目している。RCEPはASEANが発起し、主導してきた交渉で、加盟国はこれまでに15回の交渉と4回の経済貿易担当相会議を行った。中国はASEANの中核的な位置づけを十分に尊重することを土台として交渉の各方面とともに協力し、できるだけ早く(RCEPの)交渉を妥結させ、アジア太平洋地域の経済一体化の発展に貢献していきたい考えだ」と述べた。世界貿易機関(WTO)の加盟国と引き続き密接に協力し、多国間貿易体制の役割を絶えず強化し、グローバル貿易のためにより自由で便利な環境を創出し、この地域の一体化プロセスとグローバル経済の発展をともに促進するよう貢献していく」という、としている。

アメリカがTPPから離脱すれば、研究が行われているFTAAPという夢物語でアメリカが主導権を握るには、相当な努力が必要になる。FTAAPにはロシアも中国もいる。そこに、自国の都合でTPPを破滅させたアメリカには、自国防衛の提案はもはやできなくなる。中国は、主導するRCEPを何としても実現させたい欲求に駆られているに違いない。実現し、成果が見えれば、FTAAPの主導権は中国のもの。アメリカから中国に貿易のリーダーがシフトするターニングポイントになる可能性が高い。アメリカを見てTPPを温存するのは間違っていないが、RCEPにも積極的に関われば、日本にはチャンスは残る。注視すべき点が、アメリカから中国に移りはじめている。

Wall Street Journal
EU離脱にらむ英財政計画は「薄い紅茶」 (2016.11.25)

英国のテリーザ・メイ政権は23日に新たな財政報告を行ったが、われわれは全ての提案が悪いわけではないと言えることをうれしく思う。しかし、「それほど悪くはない」提案が、欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を乗り切るのに必要な後押しを経済にもたらすかどうかは別の問題だ。まずは良い点について話そう。フィリップ・ハモンド財務相が発表した秋季財政報告の最大の目玉は、法人税率を現在の20%から2020年までに17%に引き下げるという予定を政府が堅持する意向を示したことだ。次に「それほど良くない」項目に移ろう。貯蓄と投資へのインセンティブを高める個人所得税率の削減は依然として検討課題に入っていない。英国の最低賃金は来年に現在の7.20ポンドから7.50ポンドまで引き上げられるが、その一方で経営者はポンド安に伴う輸入コストの上昇に身構え、ブレグジット後の国際貿易の行方に不安を抱いている。移民政策の厳格化など財政以外のメイ首相の公約のほかに、こうした問題があるのだ。これら全ては、英国が以下のような経済を抱えたままブレグジットに向かって進むリスクを生み出すことになる。それは低成長で債務が増大する経済、個人に課される税金が依然として非常に高い経済、ポンド安が輸入物価を押し上げて国内消費を低迷させる経済、密接に絡み合った規制が投資を妨げる経済だ。もし、これが本当にブレグジットに向けてメイ首相が抱く最高の計画であるなら、失敗することになるだろう、としている。

この1か月の主要国通貨レートをUSDと比較すると、こんなグラフ。

currency

リスク・オフには日本円、の流れが定着していたのか、トランプ氏選出後、日本円がどれだけ安くなっているかが判る。マネーがドルに向かっているため、どこの通貨も安くなっている中、ポンドだけはドルよりも上げている。インフレがはじまっている。ブレグジットの本質的な結論を出していかなければ、次は悪いポンド安に陥る。就任当初の評価はメイ氏にはない。ユーロを待たせるだけの案は、まだ英国議会には見えない。

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