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2798.報道比較2016.11.20

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食うためには、人ができないこと、嫌がることのいずれかをやる。それだけだ。世界中、いつの時代でもそれを「仕事」と呼ぶ。

日本経済新聞・社説
トランプ氏はFRBの独立性を尊重せよ

トランプ米次期大統領は選挙戦で、米国の中央銀行である米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長への批判を繰り返した。大統領になれば発言は収まるかもしれないが、米国の金融政策は米国のみならず世界経済にも影響する。FRBの独立性を尊重する姿勢を明確にすべきだ。トランプ氏や共和党議員が「イエレン議長は民主党政権を利する低金利政策を取っている」と批判しているのに反論した形だ。政策決定は政治の影響を受けていないし、今後も政治の介入には断固反対するとの意思表示だろう。トランプ氏は大型の財政刺激策を打ち出そうとしているが、実行されれば長期金利やドルが上昇する可能性が大きい。その際にFRBの利上げをけん制するのではないか、との懸念もある。中央銀行と政権が信頼関係を築くのは大事だ。金融政策の決定理由や議論について透明性を高めることも求められる。だが政策決定が少しでも政治の影響を受けていると思われれば、経済や市場の安定を損ないかねない。そのことをトランプ氏は肝に銘じるべきだ、としている。

今日の日経の担当者は、昨日とは別物だろう。この方、マーケットを見ているのだろうか?もう、マーケットはトランプ・ラリーははじまっている。むしろ、乗り遅れたことを後悔している投資家がいる中、トランプ氏の勝利を予測したファンドのプロは「「もう遅い、株はやめとけ」というペースだ。選挙前の発言を取り出して、いまさら批判するのは、もうやめてほしい。あれは選挙戦略だった。これからは国策だ。経済紙が書くべき社説なら、不安を煽るのではなく、せめて不安を払拭する内容を書いて欲しい。

毎日新聞・社説
激震トランプ パリ協定 合意ほごは認められぬ

トランプ氏は大統領選で、パリ協定からの離脱に加え、途上国の温暖化対策を支援する国連のプログラムへの資金拠出を停止すると訴えていた。オバマ大統領が進めた火力発電所のCO2排出規制策「クリーンパワー計画」も廃止するという。石炭産業などを保護するためだ。パリ協定は、CO2の2大排出国である米中が今年9月に批准したことで、採択から1年足らずで発効にこぎ着けた。協定の規定に従えば、発効後4年間は離脱できない。COP22では2018年までにパリ協定の詳細なルールを決めるための工程表が採択された。交渉を着実に前進させることで、世界全体でパリ協定を守るという意志を示し、トランプ氏に翻意を促すべきだ。パリ協定の批准が遅れた日本は、国内の温室効果ガス排出削減対策を強化するとともに、トランプ氏に対して協定への参加を働きかけ続けることで、存在感を高めていく必要がある、としている。

読売新聞・社説
COP22閉幕 「全員参加」がパリ協定の核だ

モロッコで開かれていた国連の気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)が閉幕した。2020年からの協定実施に向け、詳細なルール作りを18年までに完了することなどで合意した。しかし、米大統領選で共和党のトランプ氏が勝利すると、様相が一変した。トランプ氏は「地球温暖化はでっち上げだ」とネット上で発言したことがある。選挙戦でも「パリ協定を離脱し、温暖化対策の資金も止める」と持論を展開した。地球温暖化は、人為的活動により引き起こされている可能性が極めて高い。それが、世界規模で積み重ねられてきた科学研究の結論であり、国際的な共通認識だ。協定は、発効から4年が経過しないと離脱できない仕組みになっている。日本など各国は、米国が応分の責任を果たすよう働きかけていく必要がある、としている。

ビジネスを源流にした人でなくても、交渉を確実にする方法は、有益な技術、せめて計画を見せることだ。京都議定書が破綻したことをパリ協定が理解していれば、足枷や制約だけでなく、イノベーションや研究開発に投資を集約する仕組みを準備する。今のところ、そういう話は聞かない。ということは、パリ協定の未来は、アメリカの意思決定だけでなく、今後の未来もそれほど期待できないものになってしまう。アメリカと中国が前向きになったのだから、そこから技術や研究を促進する活動を推進すべきだし、それを狙っているのでは?と思う。そうなったら、トランプ氏は反対はしないだろう。アメリカの技術がどれだけ有利になり、その後にアメリカに利権が得られる仕組みを考えるはずだ。
毎日や読売のような是非論は、ひとりのリーダーの意思決定ですべて崩れる。どれだけ主張しても、「国民の意志で当選した」の一言で、破綻する。オブザーバーの日本が言える立場でもないのに、ずいぶんと高飛車でもある。なにかひとつでも、技術的な提案、低コストではじめられる取り組みを提案したらどうだろう?その方がずっと建設的だ。

朝日新聞・社説
原発事故賠償 事業者の責任はどこへ

原子力損害賠償法は、原発事故を起こした事業者が原則すべての損害に賠償責任を負うと定める。ただ東京電力福島第一原発の事故を受けて、国が設立した機構がひとまず賠償費を立て替え、後で長期間かけて東電を含む大手電力各社に負担金を払ってもらう制度ができた。負担の対象をさらに広げ、電力自由化で参入した原発を持たない「新電力」も含める。具体的には、新電力が大手の送電線を使う時に支払う託送料金に上乗せする方法を想定している。ほぼすべての国民に負担が及ぶことになる。「原発事故の賠償費は本来、日本で原発が動き始めた60年代から確保しておくべきだった。だから、過去にこのコストが含まれない安い電気を使った人に負担を求めるのが適当だ」経産省は、福島第一の廃炉費や、事故を起こしていない原発の廃炉費でも、一部を託送料金に混ぜ込む負担案を示している。「託送頼み」は賠償費で三つ目だ。原発事故の被害者への賠償をしっかり行うのは当然だ。だが、原発に関するコストは、原発を持つ事業者が担うべきである。理屈の通らないつけ回しは許されない、としている。

なるほど。フクシマの賠償を東京電力だけに負わせたいという論理の根拠は、現行法にあるのか。「原則」という言葉の引っ掛かりはあるが、経済産業省や与党が論理武装しなければならない理由は判った。「事故が起きた時のことを考えてなかった」などという浅い意見で突破できるものではない。もし、法改正が難しいなら、カネのことは手はいくつでもある。債券を作ったり、特別な法を作ればいいだけ。未曾有の事故だったのだから、不可能ではない。
これがなぜできないか、を考えれば、国会議員も行政も判るはずだ。この5年、ずっと放置してきた議論を解決しなければ、なし崩しは無理だ。どちらに進もうとしても、ごまかしや、数の論理で押し通す手法では、この問題の解決は困難だ。その手法で、ここまで原発を作ってきてしまったことを反省して、適切な議論をして、エネルギーのあり方を具体化すべきだろう。憲法よりずっと大切な話だ。

産経新聞・社説
JR赤字路線 地方交通の将来像考えよ

経営不振のJR北海道が「自力では維持できない」として10路線13区間の運営見直しを表明した。利用客が極端に少ない札沼線などの3区間は廃止するという。少子高齢化に伴い、地方鉄道網の維持は全国的に難しくなっている。政府は鉄道会社や地元に委ねることなく、地方交通の将来像を示してもらいたい。JR発足時に赤字が見込まれた北海道と四国、九州の3社は、国が設けた基金から支援を受けてきた。最近はマイナス金利の影響で基金収益も減少している。それでも先月上場したJR九州は、観光地を巡る豪華寝台列車「ななつ星」で高い人気を得た。JR北海道も観光客誘致などで道庁と協力体制を築いてほしい。鉄道の維持が困難な地方に対しては、地元振興と組み合わせたバスへの転換を促すなど、国も積極的な支援を講じる必要がある、としている。

JRでさえ、この苦しさ。自分自身を含めて、他の企業も明日は我が身だ。人口減。これは過疎化ではない。マーケットが縮小する。今までとはターゲットが変異する。その現実が、ビジネスに変化を促している。九州はそれを経営で乗り越えたすばらしい事例だ。パイが大きい方が有利に見えるが、サービスの多様化や、少子高齢化に合わせた変化への対応は簡単ではないだろう。簡単に国に支援を求めたとは思わないが、支援をはじめれば甘えは起きる。バスや通信、物流も支援を求めるかもしれない。支援とともに変化、つまり構造改革なのだが、この国には新聞も含めてその発想はないようだ。貯めたカネと血税を使っても足りない。借金してでも支援をはじめるのだろう。後で後悔する支援にだけはして欲しくない。

Wall Street Journal
トランプ氏の公約、製造業の米国回帰は非現実的 (2016.11.17)

米国のドナルド・トランプ次期大統領は製造業の雇用を国内に取り戻すと約束している。その行く手を阻む2つの障害がアジアで高度に発達した電子機器類のサプライチェーンと、大量の労働力だ。売上高で世界第3位の米電子機器受託製造(EMS)大手ジェイビルサーキットが数年前に電子部品の製造を急ピッチで拡大する必要に迫られた際、6週間もたたないうちに3万5000人の作業員を中国で増員することができた。フロリダ州セントピーターズバーグに本拠を置く同社でデジタル機器製造担当のバイスプレジデントを務めるジョン・ダルチノス氏は「これほど迅速に規模が拡大できる国はほかにない」とし、「素早い動きにも対応できるうえに、アジアには中国を中心に実に強力なサプライチェーンができあがっている」と話す。アイフォーンはアップルの本社があるカリフォルニア州で設計されるが、メモリーチップは韓国から、部品の中で最も高価なディスプレーは日本から仕入れている。そして台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業や 和碩聯合科技 (ペガトロン)などを使い、中国本土でアイフォーンを組み立てているのだ。ガラスや無線パーツなど、アップルが米国内のサプライヤーに作らせている部品もある。トランプ氏が「大統領在任中に(サプライチェーンの移転)をやり遂げることはできない」。米証券会社サンフォード・C・バーンスタインのアルベルト・モエル氏はそう話す、としている。

グローバリゼーションとは、雇用の輸出だった。そう言う人がいるが、私は懐疑的だ。IT側にいる論理かもしれないが。
いま、世界の雇用が止まったように見えるのは、イノベーションが停滞していること、情報化の生む雇用は、現時点では収益に比べて小さいことが原因だと思う。シリコンバレーの著名な企業ばかりが注目され、彼らが圧倒的な強さを持っているように見える。それは事実だろうが、その他にも、ITにはそれなりに食える仕事は無限にある。コードが世界共通で、その習得には英語がもっとも効率的だ。アメリカやイギリスにも無限にコードで食っている人はいるだろう。タクシーやトラックを運転しているのと同じリスクを感じながら、今のところは仕事は無限に増える。工場を呼び戻すのも悪くないアイディアかもしれないが、せめて地産地消分にした方がいい気がする。中国、日本、インドは、相当大きなマーケットだ。アメリカから作って、送って、売るにはロスが多い。それよりは無限にある仕事の方が良くないだろうか?高齢者にも、若年層にも、コンピュータさえあればできる仕事だ。この領域の技術障壁を下げるのは、IT界に求められる仕事だ。それ以外にも、大量に仕事はある。データをつくる、コンテンツをつくる、テストする、広める…本当にいくらでもある。
どの世界でも同じことは、人ができないこと、嫌がることの対価は高い。それをアメリカが嫌っているなら、雇用は輸出したのではない。流出したのだ。他に進んでやろうという人が、仕事を奪ったのではない。嫌がることを受託したのだ。日本でも同じことが起きている。能力がないなら、育てるプログラムを準備してくれているほどの先進国だ。たしかに食うためのコストが高く、バランスを取るには知恵や努力はいる。それでも最後は、食うためには、人ができないこと、嫌がることのいずれかをやる。それだけだ。世界中、いつの時代でもそれを「仕事」と呼ぶのだから。

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