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2790.報道比較2016.11.12

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変化に気づいて対応する人と、変化を拒絶する強弁を述べる人。いずれにしても変化は起きる。ならば…

Wall Street Journal
トランプ流ポピュリズム、米IT業界と衝突へ (2016.11.11)

米国の有権者が自らの不安を大統領選で体現したことは、新たな種類のポピュリズム到来を告げた。シリコンバレーにとってそれは、全く相いれない考えが力を増しているしるしでもあった。トランプ氏が乗じたポピュリストの波は、技術の成果やそれを構築した人々と衝突する方向にあるように見える。多くの米企業が国外工場に生産を移転しているが、その移転先の工場でも急速に自動化が進んでいる。格安の労働力が残されている地域が不足しているためだ。「外国の安い労働力を使う時代は終わるだろう。世界中で生活水準が上昇しているからだ」。企業の生産ライン活用を支援するサイト・マシーン社の共同創業者で最高経営責任者(CEO)のジョン・ソーベル氏はこう述べた。ソーベル氏は顧客企業名を明らかにすることはできないが、顧客には米自動車大手や著名アパレル企業が名を連ねており、いずれも国外工場の自動化についてサイト・マシーンの支援を求めているという。ワシントンのシンクタンク、情報技術革新財団(ITIF)の代表ロバート・アトキンソン氏は「オバマ氏とIT業界の間には密接な関係があった。トランプ氏との関係はそうならないだろう」と話している、としている。

日本経済新聞・社説
株高でも警戒解けぬ「内向きの米国」

米国の次期大統領に共和党ドナルド・トランプ氏の就任が決まったことを受け、金融市場の動きが激しくなっている。トランプ氏勝利が判明した直後はリスクを避ける動きが強まり、安全資産とされる円が急伸した。一転して翌日からはドル高・円安が進み日米の株価は上昇基調となった。投資家はトランプ氏の経済政策が米国の景気を刺激すると見ている。しかし「米第一主義」を掲げる同氏が貿易などの保護主義に走るのではないかとの懸念は強い。「内向きの米国」への警戒を解くわけにはいかない。トランプ氏は法人税率を引き下げるほかインフラ投資の拡大も掲げているが、財源をどのように確保するか、債務の拡大をどこまで許容するかといった問題は不明確だ。日本の政官民のいずれもトランプ氏との有力なパイプを持っていない。同氏の周辺には金融業の専門家もいる。政府だけでなく民間レベルでも関係の構築を急ぎ、政策の真意などを探る必要がある。それが米経済にまつわる不透明感をぬぐい、市場を長期的に安定させることにつながる、としている。

トランプ氏が選ばれて、私が気にしはじめたのは、このトピックだ。アメリカ株がトランプ氏の政策に期待して大幅に上げている。だが、上げているのはすべてではない。ITを中心としたテック系は下げている。Dowは上がり、Nasdaqは下げる。トランプ氏の政策の特色が鮮明に現れている。ITを中心にしてきた私にとって、これは大きな変化だ。シリコンバレーの中さえ、これから起きる変化への適応を意識しはじめている。
この変化が起きた時点でのイメージを、記録の意味で残しておこう。西海岸は混乱している。この先、変化は確実に求められる。もっとも期待されるのは、アメリカ国内に雇用か、収益が生まれるビジネス構造をつくれるかだ。グローバルでやっている会社は、キャッシュを海外に起き、雇用も安い場所で、能力主義で移民を受け入れてきたが、この構造への変化が起きる。アメリカ国内にITの教育ができるか、知識が少なくてもサイバー・ワールドのシステム構築に参加できる仕組みがつくれれば、ITはさらに進歩を加速できる。ただ、この仕組みをつくるのは、相当高度な技術者だ。ここに挑戦できるか…思考している。
ベンチャー・キャピタルの目がどこに向かうかは判らない。スタートアップに安い雇用という意味での外国人をこれからも使えるか、どれだけスタートアップにアメリカ国内の雇用を求められるのか、このあたりのハードルがどれくらいに設定されるかは、2017年の夏には議論がはじまるだろうか?いずれにしても、ITのパワーを、より身近に、知識や技術をなるべく少なく、AIのようなマシンではなく、なるべく人に。そして、できればアメリカ国民に。これがトランプのアメリカの求めるニーズだろう。
うまくいかなければ分断はさらに進む。が、おそらくアメリカは最初は挑戦するだろう。本当にうまくいかないと両者が思った時しか、分裂はない。ただ、建設的な分裂は挑戦の後に選択肢に上がる。その可能性は、もうシリコンバレーは想定しはじめている。

産経新聞・社説
トランプ氏と環境 パリ協定に背を向けるな

米大統領選での共和党のドナルド・トランプ氏の勝利である。同氏は選挙期間を通して、人類の産業活動による地球温暖化という認識を否定する言辞を重ねてきた。トランプ氏は「地球温暖化対策費は無駄遣いだ。その費用を社会資本に回すことで雇用を回復させる」と有権者に訴えてきたが、それは視野の狭い政策だ。健全な地球環境は、世界平和の基礎であり、人類の存続に不可欠な条件だ。この環境秩序の上に国々の発展を築くべきであり、温室効果ガスの大量排出国である米国は、その歩みを主導する一員であるべきだ。米国のパリ協定離脱は何としても防ぎたい。協定の最重要要素は初の米中参加である。両国だけで世界の排出量の約4割を占める。米中は、低炭素社会の実現を目指す取り組みにおいて、良くも悪くも、駆動車の両輪なのだ。米国が後退すれば、中国の削減にもマイナス影響が及ぶ、としている。

毎日新聞・社説
激震トランプ 保護主義へ傾斜 世界経済の足元揺らぐ

世界首位の経済大国が保護主義に傾斜すると、貿易が停滞する。各国の景気が冷え込んで、世界経済は足元から揺らぎかねない。それは米国の利益にもならないはずだ。トランプ氏は、米国がカナダ、メキシコと結んでいる北米自由貿易協定からの離脱もちらつかせた。中国に対しては、人民元を安値に誘導する為替操作国と認定し、45%の関税を課すと主張した。グローバル化から取り残された人たちへの配慮は不可欠だ。だが、保護主義は問題の解決にならない。高率の関税で守っても、生産性の低い産業をさらに弱体化させるだけだ。貿易相手国が報復関税を課せば、通商紛争になりかねない。いずれも米国にマイナスだ。トランプ氏の目指す「最強の経済」と矛盾する。日本ではTPP承認案が衆院を通過し、参院で審議入りした。安倍晋三首相は「早期発効に向けた機運を高める」と強調した。17日のトランプ氏との会談では、自由貿易の重要性を説き、米国もTPPを承認するよう働きかけるべきだ、としている。

読売新聞・社説
トランプ外交 日米同盟の不安定化は避けよ

トランプ次期米大統領は、オバマ大統領と会談するなど、政権移行の準備を進めている。関係国首脳とも相次いで電話会談した。安倍首相が日米同盟の意義を強調すると、トランプ氏も「並外れた関係だ」と評価し、友好ムードを演出した。17日にニューヨークで会談することでも一致した。大統領選のわずか9日後のトップ会談は異例である。トランプ氏は、「米国第一」主義を掲げて、在日・在韓米軍の撤退をちらつかせ、駐留経費負担の大幅増額を求めてきた。日米貿易摩擦が激しかった時代から30年来の持論であり、本音だろう。日米同盟が「公共財」としてアジアの平和と安定に寄与することは、米国自身の安全や外交面の発言力の確保、貿易・投資を通じた経済的利益につながっている。トランプ氏が「偉大な米国の復活」を目指すなら、日米同盟の重要性を見過ごすべきではない。日本政府が様々なルートを通じて、トランプ陣営の外交・安保担当スタッフと対話を重ね、信頼関係を深める努力も欠かせない、としている。

この3紙は、今回のアメリカの結果から何も学んでいるように見えない。これを海外から言うことが、さらに滑稽で無意味だ。毎日は、オバマ氏が現政権でTPPに取り組むことを断念した現実を見るべきだ。トランプ氏が承認に動く可能性を探っても意味がない。もし、TPPを求めたら、読売の言う日米同盟を抵当に入れることになる。
一番反省しなければならないのは、マス・メディアと、施政者。これがアメリカ国民全体が感じていることだ。狭義な各論で正論を述べる前に、困窮している人がどうすれば助かるかを考える。格差や分断の解決策を考える。その短絡的な案を、トランプ氏はもっとも注目が集まる形で表現してきた。それを現実論で否定するのではなく、変化のための案をいっしょに考えろ、そのチームに参加しろ。これは、オバマ氏が言ってきたことと一緒だ。オバマ氏はこれをカネ持ちの側を優遇して進めてきたが、トランプ氏はカネ持ちをいじめてでもやり遂げようとしている。
その意味では、日本が求められる事も、すでに見えている。協力して欲しいのは、雇用創出。なるべく多く、とりあえず知識や特殊技能が必要ないもの。もちろん、なるべく高い報酬で。この中に安全保障がトランプ氏の発想には含まれているということだ。カネが出せないなら、どう協力するんだ?その策がいる。パリ協定も、TPPも、日米同盟も、そのおかげで職が生まれるなら賛成だ。カネがかかり、今より仕事が減るなら、降りる。そのシンプルな課題を解けばいい。今までのマスメディアや施政者のしてきたことは、正論に見えて、無益だった。いま求められているのは、ポピュリズムを壊せるだけの有益な案だけだ。それを出せなければ、ポピュリズムに流れる。それくらい、苛立っている人の数は増えている。

朝日新聞・社説
日印原発協定 被爆国の立場忘れたか

政府がインドと原子力協定を結んだ。インドは核不拡散条約(NPT)に加盟しないまま核兵器を開発、保有している。そうした国との協定締結が誤りであるのに加え、その中身も疑問と懸念が尽きない。核実験をしない保証が不十分なまま原子力技術を供与する内容だからだ。インドは現在、核実験を「自主的に凍結」している。再開した場合の対応が焦点だったが、実験をしたら日本側が協定を破棄・停止できるとの肝心の内容は、協定本文ではなく関連文書への記載にとどまった。成長著しいインド市場での、目先の利益に目を奪われた譲歩と言うしかない。被爆国が、核不拡散の国際規範を崩してはならない。国会での徹底審議を与野党に求める、としている。

朝日の理念や感覚は理解する。個人的な感情は朝日の主張に似ている。一方で、何を日本政府が焦っているのかという感覚は、 共有した方がいいと思う。もうカネがないのだ。今のままでは、10年後に食える自信がないのだ。中国の経済の先行きが見えず、日本の技術にはさらに未来が感じられない今、売れるものは売りたい、カネ持ちになりそうな人とは仲良くしたい、それくらい追いつめられた感覚は、意識した方がいい。それでも捨てられない理念に、原子力や平和は入ると思う。その議論を日本はまだしていない。ならばどうやって生きていくのかも、まるで考えていない。カネに困っている人の行動ではない。

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