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2788.報道比較2016.11.10

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今回、社説を見て判る。中国は、完全に準備していた。トランプ氏が大統領に選ばれる可能性を、まるで排除せずにしっかり備えていた。彼らは、もうここからトランプ大統領になるまでに何をするかも決めているだろう。

Wall Street Journal
トランプ氏の急務と試練 (2016.11.10)

今、政界やメディアのエスタブリッシュメント(既成勢力)は混乱している。多くの有権者もそうであることは疑いない。たとえトランプ氏の当選が国民の不安を瞬間的にとらえただけであるとしても、有権者はその選択の意味を理解していたわけであり、彼らの判断は非伝統的かつ苦い選挙の年に起こった単なる偶然の出来事として片づけることはできない。トランプ氏の支持基盤は不満を抱えた民衆の力の証しだ。フロリダ、オハイオ、ウィスコンシンといった、4年前の共和党候補ミット・ロムニー氏が制することのできなかった州の有権者だった。オバマ大統領はまるで彼らのニーズや望みが非論理的であるかのように統治することが多すぎた。有権者に対するこうした軽視が政治的な挑戦を生む土壌を形成した。政治の専門家が学ぶべき教訓は、有権者の心情と、戦わずして景気低迷を受け入れることはない一般国民の拒絶反応にもっと敬意を払うことだ。
問題は当選したトランプ氏が、これから自分が担うことになる膨大な責務を果たすかどうかだ。全国民のために雇用創出と所得増につながる経済成長を最優先にするという約束を守るなら、トランプ氏が成功する可能性はある。有権者は自分たちの暮らしに直結する目に見える成果で大統領を評価する傾向にあり、豊かさは多くの問題を解決する、としている。

人民網日本語版
中米関係の大きな構造が変わることはない (2016.11.10)

米国で8日、共和党のドナルド・トランプ候補が次期大統領に当選した。中米両国が「和すれば共に利し、闘えば共に傷つく」ことは客観的事実だ。中米関係において非衝突・非対立、相互尊重、協力・ウィンウィンの原則を堅持することは、中米両国民の長期的、根本的利益に合致する賢明な選択だ。中米間に溝があることは隠し立てするまでもない。中米関係の発展が順風満帆であったことはなく、今後の新型の大国関係構築も平坦な道ではありえない。だが中米は成熟した大国として、多くの複雑で敏感な問題をうまく処理し、二国間、地域、グローバルレベルの各分野で協力し、建設的方法で溝を管理・コントロールすることができる、としている。

朝日新聞・社説
トランプ氏の勝利 危機に立つ米国の価値観

自由と平等、民主主義、法の支配、開かれた市場経済といった普遍的価値観を、国家として体現してきたのが米国だ。そうした価値観に反する発言を繰り返してきた共和党のドナルド・トランプ氏が、米国の次期大統領に就く。米国の利益優先を公言する大統領の誕生で、米国の国際的な指導力に疑問符がつくことは間違いない。国際社会には将来への不安が広がっている。日本など同盟国は次期政権と緊密な関係づくりを急ぎ、ねばり強く国際協調の重みを説明していく必要がある、としている。

産経新聞・社説
日本は防衛努力を強める覚悟持て 規格外の人物登場「トランプ・リスク」は不可避だ

超大国の次期指導者に、泡沫候補扱いだったトランプ氏が決まった。アメリカ国民の選択に驚きを禁じ得ない。米国が劇的な変化を求めた結果を冷静に受け止めるしかない。予想外の展開、規格外の人物の登場により「トランプ・リスク」が生じるのは避けられまい。これに振り回されないため、政治、経済の両面での備えが必要だ、としている。

日本経済新聞・社説
米社会の亀裂映すトランプ氏選出

超大国アメリカの次の大統領に共和党のドナルド・トランプ候補の就任が決まった。ひとりの指導者の言動ですべてが左右されるほど国際情勢は単純でもない。冷静に新政権の針路を見極めたい。
トランプ現象には様々な要因がある。所得格差が広がり政治の安定の基礎となる中間層が薄くなった。米国民が一体感を失えば社会は機能不全に陥り、国際社会での指導的地位も保てなくなる。トランプ政権が発足後、まず取り組むべきは社会の分断を止めることだ。トランプ氏は製造業が苦境にあるペンシルベニア、オハイオなどの州で勝利した。雇用悪化は北米自由貿易協定(NAFTA)や中国の不公正貿易のせいだと主張したのが共感を集めた。だが、高関税などの保護主義的な政策をとればむしろ庶民の生活を悪化させる。経済政策の柱として大型減税を掲げるが、それだけでは問題を解決できないだろう。
アジアへの目配りが弱くなることを覚悟しなくてはならない。政権移行期の権力の空白を突いて中国が南シナ海や東シナ海で新たな動きに出る可能性もなしとはしない。日本政府はまずはこうした事態に備えねばならない、としている。

毎日新聞・社説
米大統領にトランプ氏 世界の漂流を懸念する

米大統領選で共和党のドナルド・トランプ候補の当選が確定した。予備選の段階では泡沫候補とみられたトランプ氏は圧倒的な強さで同党の候補者指名を獲得し、本選挙でも知名度に勝る民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官を破った。多くの米紙はクリントン氏を支持し、トランプ氏の大統領としての資質を疑問視した。投票前、ほとんどの米メディアはクリントン氏の勝利を予測したが、たたかれるほど強くなるトランプ氏は世論調査でも支持率を正確に測れなかった。トランプ氏に票が流れたのは、給与が頭打ちで移民に職を奪われがちな人々、特に白人の怒りの表明だろう。米国社会で少数派になりつつある白人には「自分たちが米国の中心なのに」という焦りがある。
利益誘導型のトランプ流「米国第一」主義が先行すれば国際関係は流動化する。経済にせよ安全保障にせよ国際的なシステムが激変する可能性を思えば、世界漂流の予感と言っても大げさではなかろう、としている。

読売新聞・社説
米大統領選 トランプ氏勝利の衝撃広がる

米大統領選で、共和党のドナルド・トランプ氏が、民主党のヒラリー・クリントン前国務長官を接戦の末に破り、当選を確実にした。来年1月20日に就任する。社説でトランプ氏を支持した新聞は皆無に近い。世論調査に基づく予測は覆された。焦点となっていたオハイオ州やペンシルベニア州で、トランプ氏は予想を上回る票を集めた。いずれの州も、工場の海外移転による雇用と人口の減少、地域社会の崩壊に苦しむ地域だ。中傷合戦と醜聞に終始し、「史上最悪」と呼ばれる大統領選は、相手候補に対するレッテル貼りやポピュリズムが目立ち、政策論争は深まらなかった。米国政治の劣化は深刻である。
安倍首相は「日米は普遍的価値で結ばれた揺るぎない同盟だ。絆をさらに強固にしたい」と述べたが、トランプ陣営との間にパイプがないことは気がかりだ。日本は、新政権の方針を慎重に見極めながら、同盟の新たな在り方を検討すべきである。北朝鮮の核・ミサイル開発などで不透明さを増すアジア情勢への対応について、議論を深めねばなるまい、としている。

個人的な感覚では、今回のアメリカ大統領選挙はニュートラルだった。だから、トランプ氏が大統領に決まった時、残念さはあったが驚きはなかった。クリントン氏が選ばれていても、きっと同じ感覚だっただろう。残念さはあるが、感動も驚きもない。不安や期待もない。膨大に余計な摩擦が増えることになる。その徒労感が重く感じる。
だから、こうして全紙が「驚き」と書いたことが、不思議だ。もはやメディアはマス・メディアではなくなった。マスをまるで理解できていない。動かすパワーなど微塵もない。彼らが言うことは、反発を生み、混乱を醸成し、誤解を植え付けるだけだった。この報道比較は2011年から行っているが、この5年。世界からマス・メディアのパワーは大きく衰退した。アメリカのパワーが減退したよりもずっと大きく、メディアはその存在感を喪失している。
なぜ私が冷静でいたか?簡単だ。6月にブレグジットがあったからだ。世界が選挙の軽薄さを思い知ったのは、たった5か月前。ふたりが争う様も、まるで建設的でない感情的な議論も、根拠なく揺れるマーケットも、非常に似通っていた。感情に任せると、人は論理など投げ捨てる。その状態にディベートで持ち込んだのがクリントン氏と見た時、私は彼女に完全に失望した。だが…メディアはまるで意に介さなかった。期待を込めてクリントン氏を推した。日本の政治は?どちらの候補も反対というTPPを大臣の失言や辞任要求のおまけまで付けて成立させる無神経さ。アメリカ人の投票感覚に絶句する前に、5か月前の驚愕から世界は何も学んでいないことが、今の世界の劣化の原因だろう。
今回、社説を見て判る。中国は、完全に準備していた。トランプ氏が大統領に選ばれる可能性を、まるで排除せずにしっかり備えていた。彼らは、もうここからトランプ大統領になるまでに何をするかも決めているだろう。南シナ海で、東シナ海で、台湾や香港で。キューバや太平洋で。トランプ氏の発言はどこまで本気か。私が中国なら、大統領になる前、いまのオバマ氏が大統領の間に動く。そのリスクを感じているアメリカ人は、いるだろうか?
Wall Street Journalは、自らの力のなさを、一晩中嘆いたようだ。トランプ氏のことも、アメリカ国民のことも、まるで判っちゃいない。その喪失感は相当だろう。前向きで誠意を込めた社説は読んでいて清涼感はあるが、敗北感でいっぱいだ。スキャンダルを探すよりは、本質的な仕事で勝負するつもりのようだ。トランプ氏自身も、そう変わってくれることを世界が願っている。
だが…日本は、民主党を選んだ後の記憶を、忘れた人はいないだろう。無能な人物を選ぶと、どれだけ国家が揺れるのか。あの時の決断で、日本は竹島も、尖閣も、今のような状態になった。私は領有権のような主張には興味は薄いし、問題の根源なら爆破した方がいい岩礁だと思っているが、それでも政治が弱まるだけでどれだけ国土が侵されるのかは理解した。同じことが起きた時、アメリカ国民は、トランプ氏は、どう動くだろう?
ひとりの人間で、国家は破滅などしない?たぶんそのとおりだ。だが、数日で危機は訪れる。その危機をうまく潰せなければ、よの翌日、敵はさらに増えている。そうやって、平穏な日々など、どんどんなくなっていくものだ。今、安穏と驚愕を唱え、陶酔や失望でうなだれている人たちは、平和というものが、明日もつづくのが当たり前だと思っているからそうできるのだろう。どれだけ偶然と努力の上に成り立っているかを、6月に思い知ったというのに。アメリカは、少し前はそんな国ではなかった。

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