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2724.報道比較2016.9.7

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西側と呼ばれる国々のパワーのなさを露呈したG20。中国の暴走を止めるだけのパワーもアイディアも出てこない。今のままでは、会談するたびに経済のパワーで押し切られる。杭州に、嫌な既成事実を残してしまった。

人民網日本語版
中国の痕跡を深く刻んだG20 (2016.9.6)

G20杭州サミットが5日、首尾良く閉幕した。将来、世界各国の歴史教科書は「中国の痕跡を深く刻んだ」として今回のサミットを記述するかも知れない。歴史は後世の人に、世界で最も人口が多く、悠久の歴史を持ち、最も美しく発展するこの台頭する大国が、世界に中国の思想を捧げ、中国の特色を示し、中国の風格を示した物語を語るだろう。過去10回のG20サミットは、通常近い時期の難題及び来年の対応策を議論するだけだったが、杭州サミットのガバナンス期間は2030年にまでいたる。さらに重要なことに、この「中国の風格」は途上国と先進国の最大公約数を見出し、中国をグローバル・ガバナンスの高い位置に立たせた。「革新、活力、連動、包摂」。杭州サミットはこの4つの言葉の経済学と国際政治学における生命力を渙発し、知識と思想における人々の研究の境界を広げ、中国の特殊な貢献を世界に記憶させた。これは杭州サミットが世界の歴史に刻む中国の痕跡の1つでもある、としている。

朝日新聞・社説
日中首脳会談 プラスを増やす関係に

中国・杭州を訪れていた安倍首相が、習近平国家主席と会談した。両氏の会談は昨年4月以来、1年5カ月ぶりである。首相は、中国が南シナ海で進める軍事拠点化について「国際法のルールを守り、周辺国の不安解消に努めてほしい」と求めたが、すれ違いに終わった。一方で両首脳は、東シナ海などでの防衛当局間の「海空連絡メカニズム」の早期運用に向けた協議を加速させることや、東シナ海のガス田共同開発の交渉を再開することで一致した。日中は経済でも、文化でも、人の交流でも、切っても切れない隣国である。世界2位と3位の経済大国同士が真にプラスの関係を築ければ、日中のみならず、アジアの平和と安定に大きく資するに違いない。例えば環境対策や金融の分野で、日本が協力できることは多いだろう。そして、そうした積み重ねを「プラスを増やす」日中関係に広げてほしい、としている。

産経新聞・社説
日中首脳会談 改善の道筋が見られない

安倍晋三首相と中国の習近平国家主席との会談で、両国間に立ちふさがる重大な問題について、実質的な解決の道筋はつけられなかった。南シナ海、東シナ海における中国の力ずくの海洋進出についてである。安倍首相が国際法に基づいて行動するよう促したのに対し、習氏は拡張主義的な行動を改めるつもりがない姿勢を示した。緊張緩和にはほど遠い状況を厳しく受け止めなければならない。日本は米国など国際社会と連携して中国に翻意を促し続け、併せて抑止力の強化に努めることが急務である。南シナ海問題でも、首相は国際法の順守を強く求めた。ただ、中国が嫌う仲裁裁判所の裁定には直接、言及しなかった。中国を刺激しまいと、事務当局の事前の交渉で打ち合わせたのだろうか。その結果は、「日本は当事国ではない」「日本は言動に注意すべきだ」という習氏の居丈高な発言の繰り返しだった。国際社会の懸念を直接伝えられる機会を十分、生かせなかったのは残念だ、としている。

日本経済新聞・社説
G20後の日中関係の道筋こそ重要に

20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれた中国・杭州で5日夜、安倍晋三首相と中国の習近平国家主席が会談した。両首脳の対話は1年4カ月ぶり。摩擦が絶えないだけに、会談が実現したこと自体にも意義はある。とはいえ問題はやはり中身だ。日中間には懸案が多い。沖縄県の尖閣諸島の領海と接続水域には中国海警局の公船や漁船が押し寄せ、中国海軍の艦船も接続水域に初めて現れた。危険な状態だ。偶発的な軍事衝突を防ぐための「海空連絡メカニズム」を両首脳が取り上げたことには大きな意味がある。今後、交渉を加速し、早期に運用を始める必要がある。年内には日本で日中韓3カ国の首脳会談の開催を予定している。中国からは李克強首相が就任以来はじめて来日する。来年は1972年の日中国交正常化から45周年に当たる。一連の機会も利用して、日中の摩擦をコントロールしなければならない。G20の終了後に各国との摩擦が再び激化するようだと、習主席が日本を含めた多くの首脳らと杭州で会談した意味は薄れよう。危うさを秘める日中関係は、G20後の道筋をきちんと付けることが最も重要である、としている。

毎日新聞・社説
中国と国際社会 協調路線で責任果たせ

中国・杭州で開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議は、議長役の習近平国家主席にとって内外に指導力を示す政治的な舞台だった。南シナ海問題など政治課題を封じ込める一方、経済底上げに向けた国際協調をうたう首脳宣言をまとめ、中国メディアは成功を強調している。中国が指導力を発揮しようとすることは自然なことだが、政治課題を避けるようでは大国としての器量が問われる。会議後には再び強硬姿勢に戻るのではと懸念する声も根強い。外交、安全保障政策でも協調路線を進めることが信頼を得る道だ。6日からはラオスで東南アジア諸国連合(ASEAN)と日米中などの会議が始まった。習主席は杭州のG20会議を「再出発の新たな起点」と総括したが、中国にとっても国際社会との関係を見直す新たな起点にしてもらいたい、としている。

読売新聞・社説
日中首脳会談 関係改善には緊張緩和が要る

安倍首相は中国・杭州で、習近平国家主席と会談し、関係改善に努力することで一致した。両氏の会談は2015年4月以来で、3回目だ。東シナ海での自衛隊と中国軍の偶発的な衝突を防ぐ「海空連絡メカニズム」の早期運用へ協議を加速させることでも合意した。防衛当局間のホットラインの設置や、艦艇・航空機が接近した際の直接通信などが柱である。習氏は「対話と協議を通じて適切に対応すべきだ」と語ったが、中国がまず行動を自制するのが筋だ。日中関係を本格的に修復するには、緊張緩和が欠かせない。中国外交は、南シナ海での自国の主権を全面否定する仲裁裁判所の判決が出たり、対韓関係の悪化を招いたり、失点が続く。会議終了後には、中国が東・南シナ海で強硬姿勢を一段と打ち出すとの見方もある。近隣国との摩擦を強めるのでなく、アジアの安定に貢献することこそが自国の利益にもなるのではないか、としている。

昨日につづき、サミットを成功と位置づける人民網。世界各国の歴史教科書が「中国の痕跡を深く刻んだ」として今回のサミットを記述するかも知れない…とまで書かれると、この暴走を許していいのか?と言いたくなる。アメリカの大統領交代の時期を突いた、既成事実構築のためのサミットに利用された気がする。あとで「G20は、中国の南シナ海の行動を問題視しなかった」とまで言われたら、どうするのだろう?
首脳会談の話題でシナ海の話題を出している各紙だが、ならば残りの国々を束ねられるか?というと、それだけの国力、リーダーシップを日本は持っていない。正論だけで進まなくなった外交を前に進めるには、何かしらのパワーと、アイディアがいる。この役割を担える人材が、西側と呼ばれる国々には欠落している。中国は経済というパワーをもっとも伸ばした。抗う策さえ出せない西側は、今のままでは、法の支配という正論の「法」を、やがて中国に書き換えられるだろう。

Wall Street Journal
シリア内戦、唯一の解決策 (2016.9.6)

シリアの停戦合意に向けてロシアのプーチン大統領と協力を模索するオバマ米大統領の取り組みは5日、再び暗礁に乗り上げた。オバマ氏はプーチン氏との間で「信頼に溝」があると述べた。手詰まり状態の米政権には、失敗に終わった停戦交渉をまたすぐに再開する以外に打つ手がないのか。勝利か死かという二者択一の論理はどうしたら乗り越えられるのか。最善の選択肢は国の分割だ。こうした考え方は新しいものではなく、分割はうまくいかないことが多いという指摘もある。境界の線引きは厄介で、境界を決めても内紛が解決されるとは限らない(悪化する可能性さえある)。そのうえトルコをはじめとする外部の当事者がさまざまな根拠に基づいて、さまざまな手段で反対する可能性があるからだ。分割はシリアの全ての問題を解決するわけではない。だが、問題を管理可能な規模に縮小することは可能だ。将来的にシリアの地中海沿いにアラウィー派の国家を作ることはアサド王朝の政治的存続を確実にするかもしれない。しかし、安全な民族国家が誕生し、シリアの他地域を残忍な手段で制圧することはなくなる可能性がある、としている。

WSJにしては、かなり底が浅いオピニオンだ。アイディアはシンプルだ。問題点も筆者自身が理解している。だが、分割は議論される確率さえ低く、その後の悪夢を考えれば、選択されにくいことは筆者自身にも見えている。この選択肢が提示される理由は、あまりに犠牲者が多く、歯止めが効いていないことだ。死人を出さないために、とりあえず線を引こう。それくらい、シリアは複雑さを増した。ここまでの絶望を、人類は久しぶりに見ている。ということは、広がる難民や食糧危機のような副次的な災難と、永遠につづくように思える修復は、さらに想像を超える。ヨーロッパはすでに悲鳴を上げているが、この困難は、やがて地球規模の問題になる。
それでも策が見えない。オバマ氏の決断は、相当なミステイクだったが、アメリカにこの責任を担わせるのも無理がある。中東の平和に貢献すると豪語していた中国は、まるで行動力が見えない。ロシアの参入は今のところ話を前に進めたが、この先、どうだろう?利害の話になった時のプーチン氏は強欲だ。
世界は、紛争が起きた時に、未だに止める術を多く持っていない。「主権」と言われれば、躊躇する。利害によって無関心になる。宗教も、法も、武力も、外交も…あらゆる教えも知性も、まだ無力だ。

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