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2707.報道比較2016.8.21

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凪いだ週末が終わり、来週はジャクソンホールのイベントが控える。少しずつ、投資家が懸念するシナリオが動きはじめている。新聞は、まるでその危機感を見せていない。

毎日新聞・社説
学術研究と軍事 科学者は転用に警戒を

戦争や軍事を目的とする科学研究は行わない。科学者の代表機関である日本学術会議は、戦後、2度にわたる声明で宣言している。その大原則が揺らごうとしている。学術会議は6月から、「安全保障と学術」の関係について検討を始めた。声明の見直しもテーマになるというが、安易な変更には反対だ。軍事用技術と民生用技術の線引きは難しく、軍事転用できる研究の否定は時代にあわないという考えもあるだろう。しかし、線引きが難しいからこそ、なんらかの基準を採用する必要がある。そして、基本的な基準になるのは研究費の出所以外に考えられないのではないか。研究費の出所によらず、成果の使い道に一定の歯止めをかける方策を考えることも必要かもしれない。独立した監視機関の設置もひとつの手法として考えたい。もちろん、これは科学者だけの問題ではない。一般市民も関心を持ち、発言していくことが大事だ、としている。

どこまでもなし崩しが進む。今まで配慮していたことに翻意しはじめたのは、確実に安倍政権が禁じ手のような手法を平然と使うからだ。私は憲法改正の是非を問うより、とぼけたように平然と過去の積み重ねを壊していく今の社会に危機感を覚える。大人の背中を見て、こどもは育つ。数年後、憲法があっても平気で武力行使を語れる国に変わっているかもしれない。また日本は、世界に叩きのめされて気づくのだろうか。

朝日新聞・社説
戦後71年の夏に 亡き人の声に耳をすます

敗戦から71年の夏。放送で、活字で、体験を踏まえて、反戦と平和を語り続けた人たちの訃報が続く。亡き人たちの声に耳をすませてみる。評論家、秋山ちえ子さんが読む「かわいそうなぞう」が流れた。戦争中、動物園のゾウが殺された実話をもとにした童話だ。秋山さんは40年以上、終戦の日に合わせて、朗読を続けてきた。ご本人は4月に99歳で世を去ったが、思いは引き継がれた。 「11PM」などのテレビ番組を作った大橋巨泉さんも先月、82歳で亡くなった。01年、民主党の参院議員になったが、党が賛成した自衛隊の海外派遣に、政府の説明が不十分だと反対した。「戦争を経験した人間として譲れない一線はある」と主張を曲げず、議員は半年で辞めた。どうしたら亡き人の声が聞こえるだろうか。2月に81歳で旅立った能楽師ワキ方の名手、宝生閑(かん)さんの言葉を思い出す。「僧には好奇心と向学心がある。だから、シテは自らを語るんです。歴史や文学の素養がなくては、彼らの声を聞くことはできない。亡霊だってせっかく現れたのに、『伊勢物語、それなんですか?』なんて言われたら困るでしょう。理解できる相手を選んで現れるはずですよ」受け手に意欲と知恵があってこそ、亡き人の声は届く。それを聞き取る耳を磨きたい。過去に学び、明日を考えるために、としている。

いくつかの事例を集めての表現手法には説得力があるが、今回はまるで響いてこない。反戦を語るなら、天皇陛下の気持ちを書く方がシンプルだと思う。ピックアップされた方々に失礼なほど、核となる朝日の主張が見えない。

Wall Street Journal
中国の権力闘争、火種は金融政策 (2016.8.19)

中国では次の共産党全国代表大会(党大会)を前に後継者争いが繰り広げられている。今回の争点はイデオロギー上のスローガンではなく金融政策だ。その結果は経済成長減速への中国の対応に影響することになる。争いの一方にいるのは、国務院(内閣に相当)を通じて政府機構を支配し、経済運営を担っているとされる李克強首相だ。李氏は経済の健全性とその迅速な成長を維持する必要性を強調している。争いの他方にいるのは、党内で経済政策に対する支配権を李氏から奪っている習近平国家主席だ。5月9日、習氏の筆頭経済顧問である劉鶴氏と思われる「当局者」が、明るい見通しという発言にかみついた。この人物は、経済はL字基調をたどり、1~2年では回復しないとの予想を示した。習氏は今のところ経済改革を推進できておらず、その動機も政治的なものかもしれないが、金融引き締め策は中国経済にプラスの効果をもたらすだろう。資産バブルと過剰債務は解消される必要がある。また、ゾンビ企業の破綻は起業のチャンスが増えることになる。金融政策は今、後継者争いの争点になっている。来年開かれる党大会では、2022~32年まで中国を統治する2人の指導者が選ばれることになる。習氏は金融引き締め策を貫いている。同氏が迅速な政策変更に苦戦していることは、中国の時代遅れの政治がいかに現代経済の運営を阻害しているかを物語っている、としている。

人民網日本語版
李克強総理がアウンサンスーチー氏と会談 (2016.8.19)

李克強総理は18日午後、公式訪問中のミャンマーのアウンサンスーチー国家顧問と会談した。李総理は「中国とミャンマーの実務協力は補完性が強く、両国民の幸福、互恵・ウィンウィンの実現が着眼点だ。中国側はミャンマー側と発展戦略の連結を強化し、重点分野の協力をより良く計画することを望んでいる。中国とミャンマーの石油・天然ガスパイプライン、Myitsone水力発電所など大型プロジェクト協力を適切に推進し、インフラ整備とコネクティビティを強化したい。経済・貿易、農林業などの協力を促進したい。文化、教育、衛生交流を拡大し、両国民の心の懸け橋を築きたい」と強調した。また「ミャンマーを含むASEAN各国とチャンスを捉え、協力水準を全面的に高め、より緊密な中国・ASEAN運命共同体を構築したい」と表明した。双方はミャンマー北部の問題についても意見交換した、としている。

アメリカと中国のニュースの写真を、李克強氏が飾るのは珍しい。しかも、異なる話題で。習氏は李氏をスケープゴートに使おうとしているのか、火種のある場所の前面に李氏を置いている。ナンバー2は、ここでうまくやれば、トップを食える。習氏は手柄だけは自らのものにしようとすれば、転ぶだろう。
人が大きな失敗をする時は、雑念に心を乱された時だ。利害がなければ、最適解は誰にとってもいっしょだ。リーダーに必要なのは勇気だけになる。そこに邪念が入ると、意味のない決断をするようになる。全人代のふたりの隙間にある空気を、世界が見ていた。このふたりなら、やりかねない。大いなる失敗を。

日本経済新聞・社説
快適なIT生活を産業に育てよう(産業革命4.0が拓く未来)

これからIT(情報技術)やロボットが広く活躍する舞台となるのが、家や店など消費者にとって身近な場だ。私たちのふだんの行動がデータ化されたり、生活用品がネットにつながったりすることで、便利さ、快適さは一段と進化する。世界が挑む競争に、日本企業も後れをとるべきではない。生活に必要な品を発注しなくても届けてくれる――。そんな通販を今年、米アマゾン・ドット・コムが始めた。プリンターのインクや洗濯用洗剤の残量を検知・推定し、ネットを通じて情報を吸い上げ、残り少なくなると自動的に届けてくれる仕組みだ。消費者は品切れで困ったり買い置き品で場所を取られたりせずに済む。買い物の時間や労力も不要になる。まだ米国だけの試みだが、将来、日本でも始まれば流通業には脅威かもしれない。家庭、暮らし、買い物、余暇がIT、AI、ロボットの活用で一段と楽しく快適、便利になろうとしている。コンビニエンスストアやニュータウン、公共交通、宅配便など、快適な生活サービスの提供は日本企業の得意技だ。センサーなど精密機械の技術力もある。始まったばかりのこの競争に、企業はどんどん参加してほしい。ただし懸念もある。携帯電話で米アップルはボタンが少なく直観的に操作できるiPhoneで世界を席巻した。操作法が複雑でマニュアルも分厚い日本メーカーの製品は衰退していった。生活の場でのITの肝は、さりげなさ、自然さ、簡便さ、使いやすさ、楽しさにある。取り組む企業は消費者、若い世代、ベンチャーなどの声を十分に生かしたい、としている。

残念なほど、ITをパワーとして活かす発想に疎い日本の経営層、企業文化、ライフスタイルと、ビジネスというセンスの欠如。このふたつの両方のハンディキャップを克服した先に、はじめて日本は産業革命4.0と呼ばれる次の時代への切符売り場に並ぶことができる。
ITを駆使すると言うと、まだITに振り回される姿が先行する。システムに合わせる業務。システムに過度に依存するビジネス。システムに必要以上に期待する人。ITに良いバランス感覚を持った人は、そう多くない。拒絶感、依存症、過剰期待、アレルギー、恐怖心…ただの道具だ。ラクするために使うツール、儲かる程度のバランスで使えばいいのだが、そんな教育時代は、90年代、せめて2000年代で終わっている。この周回遅れの感覚を克服したら「儲かるか?」に徹底的にこだわりたい。
内部留保は、恥にしかならない。投じて、増やせる能力がなければ、経営ではない。
そう考えると、ソフトバンクの孫氏は、常軌を逸しているが、他の日本の経営よりは格段に先を行っている。誰もが、ああなるべきだ。使うカネ、吹くホラではなく、キャッシュフローと、投資と、世界の潮流に挑戦する信念。日本にも十分に学べる人がいる。

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