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2698.報道比較2016.8.12

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静かな夏。落ち着いた夏の日々。こんな日がずっとつづけばいいのだが。

日本経済新聞・社説
AI・ロボットと共生し価値創出を 産業革命4.0が拓く未来

人工知能(AI)やロボットに代表される次世代の技術が、社会を大きく変えようとしている。この潮流を戦略的に生かし、活力のある日本の未来を拓いていきたい。蒸気機関、電力、コンピューターの台頭。そうした過去3度の革新に続くいまの動きは、「第4次産業革命」「インダストリー4.0」と呼ばれる。IT(情報技術)が飛躍的に進歩し、産業や就業の構造を塗り替える。変革を担うのは企業だ。長崎県佐世保市のテーマパーク会社ハウステンボスは、ロボットが受付業務や清掃などをするホテルを1年前に開業した。客室は144と当初に比べ倍増したが、従業員は30人から10人に減った。82台から182台に増えたロボットが主な戦力だ。AIを接客に使う実験も進める。技術をうまく使って人手不足を補うだけでなく、事業モデルを刷新して新たな価値を創出する。そういう姿勢が企業を強くする。創造的な仕事ができるよう、従業員のスキル(技能)向上を支援するのも経営者の役目だ。技術に振り回されるのを防ぐITの素養や、視野を広げるコミュニケーション力を磨くことが大切になる。AIもロボットも、組織や業務プロセスの見直しにまで踏みこんでこそ導入効果が高まる。競争力を左右する中核の技術と位置づけ、企業は大胆に取り入れる戦略を練り、実行する必要がある、としている。

私が理解していた産業革命4.0は、もっと壮大な話だったが、日経の今回の社説も非常に参考になった。社会が変化するなら、仕事は変わる。当然のことだ。なくなる仕事もあれば、新たに仕事が生まれる。どちらの報酬が高いかは自明だ。「誰にでもできる仕事の対価は、コスト競争に陥る」ならば、仕事は時代とともに変化しなければならない。以前はその時間や成長のチャンスを企業がくれていた。いまは、その余裕を企業に求めるのは無理だ。企業自体が、新しい分野への進出を躊躇している。新しい仕事は、会社からは生まれない。労働力としては、もっとも使える能力で貢献した後は、仕事がなくなればお役御免になる。勉強は、得た報酬から支出しなければならない時代だ。
ロボットやAIに目を奪われない方がいい。インターネットはさらに生活に浸透するし、Eコマースがさらに常識になれば、商取引はさらにシンプルになっていく。流通がサプライ側から、デマンド側にニーズを移すだろうし、BtoBtoCというビジネスは衰退が進むだろう。ITは、より仕事や生活を効率化させていく。ITが進めば、この仕事が失われると思うなら、その仕事をITにする部分を手伝う側に回った方がいい。同じことは、世界で、次の分野でも確実に進む。

毎日新聞・社説
個人情報と社会 過剰反応が起きぬよう

現行法が2005年に全面施行されて以後、社会のさまざまな分野で、個人情報の保護を理由とした匿名化が進んだ。その中には、いわゆる過剰反応といわれるものもある。今回の改正法では、「要配慮個人情報」を新たに定義づけた。本人の同意なく集めたり、使ったりすることを禁じる情報である。公表された政令案では広く解釈できる余地があるため、さらなる過剰反応を招く恐れがあると指摘する専門家がいる。不当な差別や偏見を防ぐために配慮が必要な「要配慮個人情報」は、具体的には、人種▽信条▽社会的身分▽犯罪被害歴▽病歴▽犯罪の前科・前歴などが当たるという。政令案は、この中に、心身の障害、健康診断結果、医師の診療や投薬情報、逮捕や捜索などの刑事手続きが含まれるとした。もともとこの法律は、個人情報の保護と活用のバランスを図ることを目的として掲げている。改正法施行を前に、その原点を改めて確認したい、としている。

私の知るIT業界では、個人情報保護は法施行で、サービスやコストは数倍アップしたと思う。それでも必要な措置だった。当時のまま無法状態で進んでいたら、集める側が無遠慮に扱った個人情報は、不愉快なコンタクトや犯罪にさらに悩まされていただろう。迷惑メールと呼ばれるような違法なメールや大量の個人情報漏洩事件は減ったようには見えないが、2005年のあの時期、スマートフォンやSNSが生活の一部に浸透する前のタイミングは、適切だったと思う。
今回の改正がフォーカスしている情報がある場所は、どれも行政だ。銀行口座、納税履歴、年金番号のような、財産や所得に関する情報がないのが不思議だ。何のために?少し不安が残る。改正案が守りたい情報は、企業や商取引には出てこない。過剰反応を気にする前に、この改正が望むものが、公務員の仕事を増やす目的でないかの検証が欲しい。

朝日新聞・社説
参院選挙改革 国会は「合区」を論じよ

参院選に導入された合区を解消してほしい――。全国知事会は7月末、こんな決議を採択した。一票の格差を縮めるために設けられた「鳥取・島根」「徳島・高知」の4県2合区を3年後の参院選ではなくすよう、国会に求めたものだ。一票の格差をめぐっては、長年、衆院と参院の役割分担を踏まえた抜本改革が求められてきた。だが国会は小手先の対応に終始した果てに、合区にたどりついたというのが実情だ。知事会は、戦後一貫して都道府県単位で代表を選んできた参院には「地方の声を国政に届ける役割」があると主張する。現実を踏まえて、「各県1議員」を復活するなら、議員歳費を削って総定数を増やすか、選挙区の定数を増やして、比例区を減らすといった策が考えられるのではないか。昨年成立した改正公職選挙法の付則に、19年の参院選に向けて、選挙制度の抜本的な見直しを検討し、「必ず結論を得る」と書いた責任がある、としている。

8/8にも書いたが、都道府県の構造自体を変更する方が望ましいほど、今の行政の境界は破綻している。選挙区の話だけではないはずだ。都道府県とは何なのか。考え直し、再編した方がいい。文化や伝統の行政単位だというなら、それも構わないが、交付税なしでは機能しない自治体が大半になり、過疎化でさらに人口減で先が見えないものまた、多数を占める。だが発言力だけは求め、表の格差の是正には知恵さえ出さないなら、都道府県の存在意義はあるのだろうか。市町村で起きたような合併統廃合が必然としてはじまる前に、自ら改革をはじめた方が主導権は握れるのだが…目の前の不愉快さに文句を言うだけのようだ。メディアも本質的な議論を促すべきだ。合区を元に戻すだけでは、一票の格差が逆行するだけ。無意味なのは目に見えている。

読売新聞・社説
公務員給与上げ 霞が関の働き方も改革したい

人事院が、今年度の国家公務員給与の改定について国会と内閣に勧告した。今回の特徴は、月1万3000円の配偶者手当の見直しだ。2018年度までに半額に減らし、課長級は20年度に廃止する。一方で、現行6500円の子どもの扶養手当を18年度までに1万円に引き上げるよう求めた。共働き世帯が増える中、妻の就労を後押ししつつ、子育て支援を充実させる狙いは理解できる。人事管理報告では、40、50歳代の国家公務員数が20、30歳代の2倍に達し、年代別の人員構成に偏りが生じていると指摘した。40歳代以上は大量採用された世代で、再就職の規制強化などの影響で在職期間が長期化している。一方で、近年の新規採用抑制や定員削減により、若手職員の比率が下がった。特に、地方の出先機関では若手の不足が顕著である。若年人口の減少、民間志向の高まりから、国家公務員への応募者は減少傾向にある。有為な人材確保に知恵を絞らねばならない。専門的な知識や技術を持つ民間職員の中途採用も着実に進めたい、としている。

議論の中心が給与より年齢になっているのが、世相を示している。公務員も高齢化。やがて定年延長や非正規のようなコストダウンも求められるのだろう。財政破綻が現実になる可能性がある中、個人的には公務員の安定とは幻想だと思う。必要以上に彼らの給与を下げる「叩き」も生産的ではない。生産性と成果。公務員の仕事も、そんな指標で査定して欲しい。

産経新聞・社説
タイ新憲法承認 国民融和への契機とせよ

タイの新憲法草案が国民投票で承認された。公布を経て来年末にも、民政復帰のための総選挙が実施される。新憲法は、最初の5年間の上院議員を軍の任命制とするなど、軍の政治介入を事実上、容認する内容が含まれており、民主的というにはほど遠いものだ。それでも、多くの国民は賛成票を投じた。否決され、将来への展望もなく軍政が継続することは望まなかったからではないか。国民融和を実現しないかぎり、政治的混乱とクーデターが繰り返される危惧は消えない。軍政は言論統制を直ちにやめ、民政復帰とあわせ対話を進めるべきだ。ASEAN主要国であるタイは、本来なら南シナ海問題などで結束を主導する立場にある。日本にとって望ましいのは、民主的で安定した頼りがいのあるパートナーとしてのタイである、としている。

個人的な体験を。タイはクーデター後、疎遠になった。それまで、国際展示イベントでタイ企業を常に見かけたし、オフショアと呼ばれる開発先としてフィリピンやベトナムと同位置にあった。通信系に強い印象があった。FXでもタイ・バーツは良く聞いたし、旅行先にも良く上がってきた。いまでは、このすべてで「タイ」という国の名を聞かなくなった。ミャンマーより聞かないかもしれない。当時と同じ勢いを得るのは困難だろう。
同じことが、日本にも言える。政治や国際関係という不可抗力で仕事を失いたくはない。だが、相手は国という単位での印象も判断材料になる。日本の印象は、もう技術立国ではない。おもてなしの国の感覚も失われつつある。そのリスクを認識しておきたい。

人民網日本語版
THAAD反対の声に耳を傾けてみてはどうか (2016.8.11)

韓国国内ではTHAAD反対の声が絶えない。システムのカバー範囲に韓国の首都が含まれないことから、配備は韓国の安全にとって極めて重要と再三強調する政府の「論拠」は大きく揺らいでいる。韓国政府の「PR」も効果を見せていない。米軍は以前、アンダーセン空軍基地に配備したTHAADシステムを韓国メディアに公開し、韓国軍が同基地のレーダー電磁波を測定することも認めた。だが韓国の庶民はこれを評価せず、1回だけの測定では説得力がなく、第三者の専門家の参加を欠いてはなおさらに不正の可能性があると考えている。圧力を前に、韓国政府は再び妥協せざるを得ず、配備地点を変更できるとした。だが厄介なことに、これによって民衆の不平を解消することはできず、反対にTHAAD配備の必要性を疑問視する声が高まった。韓国国内の複数の勢力が政府に説明を求めており、異論は野党から生じたものではない。中国は厄介事に巻き込まれることは望んでいない。THAADに対して、中国側は一貫して強い反対の立場を堅持し、システムの配備が中国の戦略的利益を損なうことを強く警戒し、よく考えるよう韓国側に繰り返し忠告してきた。中国は韓国の野党を含む各方面の意向に対して、態度と事実を明らかにしてきた。公道は自ずと人心に在り。中国が買収して支持を得る必要はない。したがって、韓国の議員が中国の意見を聞きに来ようとすることに、中国がノーと言うことはないし、韓国の与党が喜ばないからといってノーと言うことはなおさらにない、としている。

Wall Street Journal
南シナ海、中国の動き「懸念」米太平洋艦隊司令官 (2016.8.10)

米太平洋艦隊のスウィフト司令官は9日、国際仲裁裁判所が南シナ海での中国の主権を認めない判決を下して以降、中国が同海域で空中パトロールを展開したり、ロシアと合同軍事演習を実施すると発表したりして、状況を不安定化させる行動を幾つも取っていることに懸念を表明した。同司令官はまた、中国の漁船が東シナ海での操業を活発化させていることや、中国が南シナ海に造成した人工島に軍用機が利用できる格納庫を建設したとの報道にも言及した。一方中国空軍は6日、戦闘機スホイ30や爆撃機H6Kなど数機が南シナ海をパトロールしていると明らかにした。米国のシンクタンクは8日、南シナ海・南沙(英語名・スプラトリー)諸島の人工島3カ所に軍用機が利用できる格納庫を建造したことを示す航空写真を公表した。スウィフト司令官は、「中国が人工島の軍事化を継続しているとの各種報道は、緊張を緩和するものではない」とし、「透明性が欠如している中で、こうしたことが疑心暗鬼を呼び、全体として状況を不安定化させている」と指摘。さらに中国が7月に南シナ海で9月にロシアと合同軍事演習を行うと発表したことにも懸念を示した。また、中国漁船の最近の操業活発化については緊張のエスカレートなのか、漁期を迎えた動きなのかは、まだ断定できないとも述べた、としている。

中国がフィリピンにどんな手を使っているかは判らないが、韓国には明らかに工作を進めているようだ。野党を呼んで交渉するとは、支持率の落ちている韓国では大きな既成事実になるだろう。アメリカは十分にこの程度は想定している。アメリカもよく使う手法だ。韓国の脇が甘いに過ぎない。日本もこのあたりの免疫が弱い。議員も、メディアも、国民も、このあたりの免疫をつけておくべきだ。そういう手法をフェアかどうかも含めて、否定する能力は国民に委ねられている。
中国も必死だ。外交の劣勢が目立つ。引き寄せていた韓国をアメリカに引き戻されたのは、南シナ海での判決と同様に衝撃だったはず。どんな手を使ってもひっくり返そうとしてくるだろう。事が裏に回れば、アメリカが懸念する「透明性の欠如」が進む。見えない敵に一番脅えているのは、誰だろうか?

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