ORIZUME - オリズメ

2697.報道比較2016.8.11

2697.報道比較2016.8.11 はコメントを受け付けていません。

日本は夏の散漫な時期に入った。世界中がバケーション・モード。こういう時期に奇妙な事件がいつも起きる。平静を願う。

朝日新聞・社説
大阪再審無罪 誤判の究明がなお必要

大阪市東住吉区で95年、小学6年生の女児が焼死した火災で、殺人罪などで無期懲役が確定後、再審公判に臨んでいた母親の青木恵子さん(52)と、同居していた朴龍晧(たつひろ)さん(50)に、大阪地裁はきのう、無罪を言い渡した。注目すべきなのは、有罪の根拠とされた2人の自白を証拠から排除したことだ。2人は保険金目的で自宅に放火したとされた。しかし裁判のやり直しの過程で、車のガソリン漏れによる自然発火の可能性が高いことが、弁護側の再現実験で明らかになっていた。2人とも公判では無実を訴え続けた。しかし一審・大阪地裁は「不合理な弁解を繰り返している」と判断した。以後も有罪は覆らず、2人が自由を奪われた月日は約20年に及ぶ。検察側の直接証拠は自白以外になく、より慎重な吟味が必要だったのではないか。自白偏重を改めるため、今春、取り調べの録音・録画(可視化)を義務付ける法改正がなされた。だが、対象は限定されている。このままで十分か、さらに検討が必要だ、としている。

毎日新聞・社説
焼死再審無罪 自白偏重を繰り返すな

大阪市東住吉区で1995年に小学6年女児が焼死した火災の再審で大阪地裁は、殺人罪などで無期懲役が確定した母親と内縁の夫だった男性に無罪判決を出した。検察は上訴権を放棄し無罪が即日確定した。密室の取り調べ内容が公判で明らかになったのは、再審請求の段階で大阪府警の取り調べ日誌が証拠開示されたからだ。通常の刑事裁判は裁判員制度導入に伴い、公判前整理手続きでの証拠開示が進む。しかし再審では「新たな証拠」が必要なのに法制化は見送られ、裁判長の判断に任されている。真相究明のため制度の拡大を検討すべきではないか。公判で2人が無罪主張したのに対し、自白は具体的で信用できると認めた1、2審判決が最高裁で確定した。再審開始を認めた昨年10月の大阪高裁決定で釈放されるまで2人は約20年間自由を奪われた。裁判所も自白偏重を繰り返してはならない、としている。

有罪と言った組織が、20年後に無罪と言い直す。被疑者は検察や裁判所に、失われた20年の社会的損失への民事訴訟を起こすだろうか?自ら検察や裁判所は補償をするだろうか?社会的批判を浴びても、そこまでの清算を被疑者は訴えるべきではないだろうか。そうでもしなければ、責任を個人に与えず、営利を追求しないでも機能する組織ではシステムが変わらない。守られていると誤解している公務員に変革を求めるには、そこまでの労力が必要だ。社会がそれを促す応援をした方がいい。その最初の役割を持つのは、メディアだ。

読売新聞・社説
相模原殺傷事件 措置入院解除後にも目配りを

神奈川県相模原市の知的障害者福祉施設で発生した入所者殺傷事件を受け、厚生労働省の有識者検討会が初会合を開いた。19人もが殺害された事件を検証し、秋をメドに対策をまとめる。7月末の関係閣僚会議で、安倍首相は、精神障害者の措置入院後の追跡調査の在り方を、見直しも含めて早急に検討するよう指示した。この点が、再発防止策を講じる上でのポイントとなろう。過激な言動や、入院直前に衆院議長公邸に持参した犯行予告とも取れる手紙から、男の犯罪性向は明らかだった。警察との連携により、事件を防ぐ手立てが得られた可能性もあったはずだ。昨年、措置入院を経験した男が5人を刺殺する事件が起きた兵庫県は、保健所が退院後の患者をフォローするチームを設置した。警察や病院と情報を共有し、対処する。参考になる取り組みだ。事件を受け、知的障害者や家族らで作る団体は「障害のある人一人ひとりの命の重さに思いをはせてほしい」との声明を出した。疑問なのは、神奈川県警が、障害者施設の入所者であることや遺族感情などを理由に、死傷した被害者の実名を伏せていることだ。健常者と異なる対応が、逆に障害者への偏見を招かないか、としている。

私は、読売の感覚とは異なる。精神障害の措置入院のシステム運用で改善するのは一部だと思う。この事件で、社会的弱者への攻撃を「正論」と感じている層が確実に明らかになった。弱者が増え、どんどん弱者を共助するシステムが弱まっている。計画的に起きていることと、衝動的に起きていることの差は、私はわずかだと思う。弱者の増加がもっとも顕著になるのは、今後は高齢者だろう。すでに高齢者への攻撃的行動は施設で起きている。そして、経済的衰退が、一般でいた人たちを弱者に押しやる状態も生まれている。攻撃性の強い事件は、今回より大きいものは増えないことを祈るが、小さな攻撃は、いま以上に増えてしまう気がする。その防止は、福祉にかかわる人たちの待遇の改善と、弱者の正当性の認知ではないだろうか。

産経新聞・社説
社会保障改革 「機能する制度」へ工夫を

平成26年度の社会保障給付費は112兆円を上回り、過去最高を更新した。高齢化や技術の高度化で、医療費や介護費はさらなる増加が見込まれる。消費税増税の再延期で当面、財源のやり繰りも続く。真に必要とする人まで利用できなくなったのでは本末転倒である。削減や抑制ありきの改革に陥ってはならない。財源の制約の中で「機能する制度」としてどう成り立たせていくか。工夫を凝らすことが求められる。介護保険の自己負担を「原則2割」とし、医療保険では70歳以上の高額療養費を引き上げる案なども検討されている。現役世代の保険料アップも焦点だ。年齢ではなく、負担能力に着目した見直しをもっと徹底すべきだろう。負担増に対してどれだけ国民の納得感を得られるか。きめ細かな制度への目配りが欠かせない、としている。

日本経済新聞・社説
アジア経済連携は質重視の原則を貫け

日中韓やインド、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国など計16カ国による経済連携協定(EPA)の交渉が難航している。2016年中の合意という目標の達成が危ぶまれている。大事なのは、合意の時期ではなく、関税撤廃の度合いの高い質を伴う内容で合意することだ。9月のASEAN関連首脳会議に出席する安倍晋三首相は、この原則を貫いてほしい。環太平洋経済連携協定(TPP)に参加する日豪やニュージーランド、シンガポール、ベトナムなどは、高水準の関税撤廃やサービスの自由化を求めている。これに対し、中国やインド、経済発展の遅れているカンボジアやラオスなどは急速な自由化に慎重姿勢を崩さなかったとされる。TPPを起点に、アジア太平洋地域で野心的な貿易・投資ルールを広げていく。RCEPの交渉でもこうした基本的立場を日本政府は忘れてはならない。仮に交渉の年内合意を優先すれば、低い水準の内容で妥協せざるを得なくなる。質を犠牲にした拙速は避けねばならない、としている。

まとめてしまって申し訳ないが、休日用の散漫な主張にしか見えない。社会保障の再考と、増税、財政再建の話が混同している。ここまでの話では、一期の国会でさえ議論が尽くせる話ではない。日経の言うアジアの経済連携も、要点は中国になる。先送りできない緊急の危機が起きなければ、リスクを高める紛争への抵抗心の方が強まる。いまの日本社会でも、中国国内でもその感覚は強いだろう。その環境で経済連携を訴えるには無理がある。

人民網日本語版
英メディア、中国と西側諸国が科学技術で「相互参照」の段階に突入 (2016.8.10)

エコノミスト誌は「中国の技術先駆者」と題したトップ記事で、次のように指摘した。多くの人は、中国の科学技術業界は「閉鎖的な市場」と考えている。中国の科学技術企業は剽窃と模倣しかできず、他者の発明と創造を自分のものにするというのだ。しかし実際には詳細に観察することで、中国の科学技術業界全体が、より前向きで創造力あふれる別の一面を持つことが容易にわかる。中国で広く使用されているモバイルインスタントメッセージングソフトウエア「微信」を例としよう。英国ではごくありふれた、ほぼすべての人に使用されているWhatsAppは、中国の微信に大差をつけられている。中国人ユーザーにとって、西側のモバイルアプリは「時代遅れ」であり、微信のようにシンプルで便利で、多様な機能を持たない。微信は多機能集約により、世界でも唯一無二の地位を占めている。科学技術業界の発展において、中国と西側諸国は「相互参照」の段階に足を踏み入れている。中国企業の成功経験は、西側消費者のモバイルインターネットの体験を再構築しようとしている。英フィナンシャル・タイムズ紙も先ほど、「投資家は米国の潜在力よりも中国の技術に期待している」と強調し、次のように論じた。米国はこれまで、科学技術分野の「世界のリーダー」を標榜してきた。しかし中国は無人機、電気自動車、データ発掘など数多くの分野で、米国との差を縮め続けているようだ、としている。

そのとおりだ。中国の技術は、すでに世界レベルに十分に到達しているし、一部では世界をリードしている。モバイルのライフスタイルを、もっともシンプルに実現しているのが中国だということも、特に主張しなくてもIT業界なら知られている。
ならば、国際金融がチャットでできるか、というと、すでに各社が挑戦はしているが、難題は増える。税、マネー・ロンダリング対策、盗難や詐欺、手数料の競争力…これらのすべてを担保して進む社会と、利便性を運用でフォローする社会との差もある。微信のようなチャット型送金は、技術では障壁は低い。問題になるのは、そので行われる商取引への法や運用の対応だ。詐欺や盗難を許容してでも利便を優先する中国社会の価値観、犯罪や違法取引が存在してでも、個人送金が平然と許容される社会が成り立たなければ、いまのモバイル送金は、どうしても既存金融機関との連携が必要になる。金融機関に、そのリスクを急いで許容する必然は、いまのところ起きていない。
無人機や、シェアリング・エコノミーも同様だ。中国が秀でる部分は、法的に挑戦が必要な領域に、テクノロジーで突破を試みる勢いを感じる。テスラが自動運転でやっていることに近い。このリスクへの挑戦は賞賛に値する。ここからの拡張には、相当な障害があるだろう。少なくとも、ひとつだけ確実なのは、挑戦しなければ得られない果実を、育てようとする意志が中国には十分にあることだ。世界で成長を切望しているはずの人たちが、いつもリスクに脅えている中で。このリスクを取れる理由が、システムにあるのか、価値観にあるのか、ただの無神経なのか。その分析が必要だ。

Wall Street Journal
中国の景気低迷、民間企業への逆風強く (2016.8.11)

中国では民間投資がしぼみかけている。企業は資本を危険にさらすのを避けるばかりか、世界経済のさえない見通し、4年におよぶ中国経済の成長鈍化、断続的なデフレ、矛盾する政策メッセージに落胆している。こうした状況は中国政府の経済政策を後退させるリスクをはらむ。政府はローテク製造業中心の経済から、ダイナミックな民間企業が生み出すハイテク産業・サービス中心の経済への移行を狙っている。民間企業はノンバンク、友人、親類から非公式な融資を受けるのも困難になってきたという。不良債権が増加し、貸し手が警戒感を強めているからだ。中国の指導部は国営企業に投資を増やすよう圧力をかけてきた。これに企業が応じ、上半期には国営部門の投資が23%増加して経済成長のてこ入れに寄与した。ただ、この戦略は中国経済の6割、労働力の8割を占める民間企業を脇に追いやってしまった。市内の金融機関によると、大半の企業が投資のためではなく、借金を返すために融資を受けているという。同市の民間投資は2016年1-5月に1.9%減少。前年の同期には15.4%の増加を示していた、としている。

前述の人民網も事実、このWall Street Journalの中国もまた事実。さらに言えば、こうした強弱が、世界のどこででも見られる。中国だから、シリコンバレーだから、ITだから…業界や国籍で人生や業績が有利に働く幸運は、もはやどこにもない。人に喜ばれるものを、適正な価格で提供した人が、短い時間で伝わり、収益を独占しやすい。これが現在の構図だ。価値観の多様化は、一部にはあるが、ニーズがシンプルになるほど、ソリューションもシンプルになる。

Comments are closed.