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2508.報道比較2016.2.5

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CC Attribution, Photo by epSos .de via flickr

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中国企業の買収に、Financial TimesとWall Street Journalが同時に注目した。買った企業の技術を、中国がどう使うか。中国から流れ出るマネーの早さか。各紙が気にしているのは、どちらだろう?

Financial Times
中国化工、遺伝子組み換え食品に食指 (2016.2.4)

中国の国有化学企業、中国化工集団(ケムチャイナ)がスイスの農薬大手シンジェンタに提示した430億ドルの買収金額について最も注目されるのは、中国企業による海外企業買収計画で過去最大であることだ。中国農業省は昨年12月、2020年までに肥料と農薬の消費の伸びを止めたいと発表した。「中国化工はアグリビジネスのポートフォリオを多角化する方法を探している」。中国化工に欠けているのは種子で、その意味ではシンジェンタは申し分ない買収先だ。シンジェンタは遺伝子組み換え(GM)作物の4大生産業者の1つで、7000種類近い種子を持つ。ただし、1つだけ問題がある。米国がGM作物を受け入れているのに対し、中国では禁止されているのだ。中国化工の任建新会長は3日、スイス・バーゼルで開いた説明会で、文書は「中国におけるGM技術の慎重な投入」を提唱していたと指摘し、中国政府は「この点に関して前向きな立場」を取っていると付け加えた。中国が実際にGM作物の生産を認めた時には、トウモロコシから始まるとアナリストらは見ている。トウモロコシは、用心深い国民に売り込むのが難しいコメと異なり、主に動物の飼料として使われるからだ、としている。

Wall Street Journal
中国勢、過去最高の海外企業買収ペース 年初来で総額680億ドル (2016.2.4)

今年に入り、中国が過去最大規模の外国企業買収劇を展開している。中国の景気鈍化や通貨安を背景に、中国企業は国外市場への進出を模索する。中国の化学メーカー、中国化工集団(ケムチャイナ)は3日、スイスの農薬・種子メーカー、シンジェンタを430億ドル(約5兆0730億円)で買収することで合意したと明らかにした。シンジェンタの株主および規制当局に承認されれば、中国企業による外国企業買収としてこれまでで最大の案件となる。相次ぐM&A案件により、世界第2の経済大国、中国に注目が集まっている。ただ、同国は25年ぶりの弱い経済成長となっているだけでなく、変動の激しい株式相場のために世界の投資家がパニックに陥る結果となっている。法律事務所キャドワレーダーの北京・香港を本拠とするパートナーのロッキー・リー氏は、人民元安ならびに、今後も一段安の展開となる見通しのために、外国資産価格が上昇する前に、中国企業が現時点で企業買収を模索するだろうとの見方を示した。リー氏は、政府はテクノロジーやエネルギー、インフラといった分野で外国資産を購入しようとする国有企業に対し資金面で支援し続ける公算が大きいと述べた、としている。

Financial TimesとWall Street Journalが似通った話題を語るのは珍しい。しかも、世界の経済状況ではなく、中国企業のM&Aのニュースで。それほど、この買収には深慮があるのだろう。
あらゆる意味で、中国経済は収縮している。リスクから逃げている。その逃げ足はどんどん早まっている。良いニュースもあれば、悪いニュースもある。それを決めるのがマーケットではなく、中国政府というのが、問題をさらに厄介にしている。蓄えた経済力を不測の事態に使おうとしても、使えない。その不安が、さらに出口へ人を向かわせる。その足を早めてしまう。
買われた企業に不安なのは、しっかり活かしてくれるのか?だ。自動販売機のようなビジネスも、たしかにあるが、それでも商品を補充しなければすぐに行き詰まる。電気が来なくなっても、地代が変わっても、事業は変わる。ならば、技術が大切なビジネスはどうなるのか?買っただけで持て余すなら、未来は決して明るくない。

人民網日本語版
アフリカは依然中国の発展の受益者 (2016.2.3)

改革開放以来、中国経済は高度成長を続け、自らに利益をもたらすと同時に世界経済の発展を後押しし、遥か遠く離れたアフリカ大陸にまで恩恵をもたらした。中国とアフリカの貿易額は2000年の108億ドルから2014年には2218億8千万ドルにまで増加し、2009年にアフリカ最大の貿易パートナーとなった。中国の対アフリカ投資額は2000年には累計10億ドル足らずだったが、2015年には1000億ドルを超え、わずか10数年で100倍以上になった。現在のアフリカ経済の成長減速は、様々な要因によるものだ。国外的には、世界金融危機の余波がまだあり、世界経済は全体として低迷している。このために資源類一次産品の価格は下落し、アフリカは大きな損失をこうむっている。アフリカ大陸全体にとって、この一次産品の主要な輸出対象が中国ではないことを指摘しておかなければならない。中国・アフリカ協力フォーラムヨハネスブルグサミットで、習近平国家主席はアフリカに対する10大協力計画を発表した。これはアフリカの工業化加速を支援し、インフラ整備を強化し、自己発展能力の強化を加速して、アフリカが外部要因による妨害や影響から早急に脱し、経済の単一性と脆弱性の問題を根本的に解決し、長期安定的な発展を真に実現するためだ。中国とアフリカの協力は、常に互恵・ウィンウィンを堅持している。アフリカの発展は、最終的にアフリカの人々に恩恵をもたらす、としている。

西側と呼ばれる側に日本も入っているのだろう。そちら側からの一般人としては、中国の言い分が正しいことを素直に願いたい。アメリカは判らないが、ヨーロッパには複雑な思いがあるだろう。良くも悪くもアフリカとヨーロッパの関係は深い。うまくやれても、失敗しても、何か言いたい気持ちになるに違いない。アフリカにとっても、ヨーロッパへの愛憎とともに、新たな中国との関係にも悲喜こもごものはず。互いが競争して、より良いアフリカにむけて手を取ってくれるのが一番いい。中国が、まだ自身も発展途上と思える部分は、発信するメッセージだろうか。「長い歴史を考えれば、ヨーロッパのアフリカへの貢献は尊敬に値する。中国がしっかり引き継ぎたい」とでも言えば、紳士的に感じられるのだが、少し押し売りらしく、恩着せがましく、厚かましい。そのコミュニケーションを見ていると、中国にもやはり余裕がなくなってきているのかな、と感じてしまう。

産経新聞・社説
TPP署名 発展の礎へ早期の発効を

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加する日米など12カ国が協定文に署名した。各国は今後、発効に向けて国内手続きなどを進める。TPPは、日本が発展するための礎となる。発効時にその恩恵が最大限得られるよう、安倍晋三政権は、農業改革を含む経済の構造転換に万全を期さなくてはならない。政府は今後、国会にTPPの承認案と関連法案を提出し、与野党の論戦が本格化する。注目したいのは、TPPをどう成長につなげるかという前向きな視点だ。TPP発効のカギを握る米国の動向も注視したい。もともと米議会にはTPP反対論が多く、大統領選で内向きの議論が先行していることが気がかりである。折しも、中国経済の変調で、過度の対中依存のもたらすリスクが顕在化している。だからこそ、日米を軸とする巨大貿易圏を確立することには大きな意味がある。この地域でTPPが広がりをみせれば、その影響は経済にとどまらず、中国の覇権主義的な動きへの牽制に資することも忘れてはならない、としている。

日本経済新聞・社説
日米はTPP発効急ぎ拡大を主導せよ

日米など12カ国の政府が環太平洋経済連携協定(TPP)に署名した。日米両国政府は速やかに国内手続きを進め、協定の早期発効に向け指導力を発揮すべきだ。12カ国の中で経済規模の大きな日米両国がいずれも国内手続きを終えることが、協定発効の事実上の条件となっている。気になるのは米国の動向だ。11月の大統領選を控え、TPPの関連法案を米議会で早期に審議しようという機運が乏しい。TPP賛成を明言している大統領候補も少ない。難しい交渉を経て成立した合意の見直しは非現実的だ。12カ国政府のすべてが合意内容について、再交渉しないとの立場で一致している。米政府はTPPに慎重な議員の説得に全力を挙げるときだ。世界最大の自由貿易圏をつくる歴史的合意を次の段階に進めるうえで、日米の責任は重い、としている。

読売新聞・社説
TPP署名 成長拡大へ早期発効が重要だ

日米など12か国が環太平洋経済連携協定(TPP)に署名した。各国の閣僚らが署名式に出席し、6年近くに及ぶ交渉が正式合意した。安倍首相は、「TPPは国家百年の計だ。国民の豊かさにつなげていきたい」と語った。気がかりなのは、11月に大統領選を控える米国の動向である。民主、共和両党の主な候補者は国内の雇用が奪われるとして、批准に反対や慎重な姿勢を示している。米議会の審議は、大統領選後まで先送りされる恐れがある。TPPの発効には米国の批准が不可欠だ。発効が遅れると、成長を底上げする効果は実現せず、アジアが世界経済を牽引する構想にも陰りが生じかねない。オバマ政権は、TPPの戦略的重要性を議会に説明し、理解を広げる努力を尽くしてほしい、としている。

アメリカがどう動くのか、考えている間に日本が先行する。そういう発想はないのだろうか?かなり悪い例えだが、北朝鮮が核実験を今年にやっているのは、同様の見立てがベースになっている。今年から来年の春くらいまで、アメリカは動けない。判り切っているイベントなら、利用するのがあるべき姿のはず。今から戦略を考えるような産経の発想だ。成長するために署名したのであって、署名してから成長につなげることを考えるなどあり得ない。議会が動かなくても、アメリカの経済界は動きはじめている。そういうアグレッシブな姿勢が、せめて経済界には必要だ。

毎日新聞・社説
原発の免震棟 九電の姿勢は信義違反

九電は、再稼働した川内原発1、2号機(鹿児島県)で事故時の前線基地となる「緊急時対策所」について、安全審査の際に約束していた免震構造での新設計画を撤回した。既存の耐震施設などで対応することを決め、原子力規制委員会に昨年末、変更を申請した。規制委は変更に不快感を示した上で、「主張は根拠に欠ける」として九電に申請の再提出を求めている。確かに新規制基準では、緊急時対策所を免震構造にすることを義務づけてはいない。耐震構造でも地震発生時に機能を維持できればいい。だが、基準に合格すればよしとせず、常に安全性の向上に取り組むことは原発を持つ電力会社の責務である。「実績がないからできない」というのでは通らない。安全よりもコストや工事のしやすさを優先しているのではないか。九電はそうした疑問に丁寧に答え、計画変更で安全性が向上することを具体的に示す必要がある。それができなければ計画変更を撤回すべきだ、としている。

すでに朝日が1.31に掲載している。朝日でさえ、実は1か月以上も前の話題だ。報道比較では、東京新聞が先駆けてピックアップした記事を昨年の12.26にはリンクしている。1か月以上経って言うには、主張が浅い。

朝日新聞・社説
政治とカネ 疑惑の根を断つ責任は

甘利明氏が金銭授受疑惑で経済再生相を辞任後も、新たな疑惑が浮かんでいる。問題となった建設会社の総務担当者は、外国人への労働ビザ発給の口利き依頼で40万円、道路工事の補償交渉をめぐる国土交通省局長あての商品券代で30万円を、甘利氏の元秘書に渡したと朝日新聞に証言した。ほかに衆院選の応援資金などもあるといい、事実なら甘利氏が認めた600万円以外に、900万円を超えるカネが甘利氏側に渡っていたことになる。東京地検は関係者の事情聴取を始めた。だが、捜査当局による解明とは別に、甘利氏は「引き続き調査し公表する」という約束を速やかに果たすべきだ。安倍首相の責任も重い。国会で「任命責任は私にある。閣僚が交代する事態を招いたことは大変申し訳なく感じている」と繰り返している。「政治とカネ」の問題の根っこには、賄賂性をぬぐえない企業・団体献金の性格がある。疑惑の根を断つ政治の責任を、今こそ果たすべき時である、としている。

TPPどころか、甘利氏の議員生命、安倍政権の信任に危険信号が点灯しはじめた。安倍氏は、潔く任命責任を認めているつもりだろうが、いまのままでは面目だけではなく、自らの責任を本当に考えなければならなくなる。あとひとつ。すでにリーチだと認識すべきだろう。抵抗勢力は、そのひとつを必死で探しはじめている。夏まで持つだろうか?

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