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2492.報道比較2016.1.20

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マーケットの悲観は相変わらず止まらない。政治は無関心をつづけている。おねだりするマーケットも、知らぬフリの政治も危うい。半年後の街には、この悲観が現実になっているかもしれない。

Wall Street Journal
世界成長に脱線のおそれ (2016.1.19)

中国の習近平国家主席の政治顧問らは、昨年暮れにもたれた2016年の経済計画に関する会合に先駆け、かつて故レーガン米大統領や故サッチャー英首相が挑戦した経済改革の研究に重心を移した。需要を喚起するために低利融資に頼る中国政府の従来の姿勢が限界に達し、政治顧問らは支出と投資を促すために、税率や事業手数料の削減など中国経済を活性化する新たな方法を模索した。国家首脳に近い政府高官は「ケインズ派経済学の古いモデルはもはや中国には機能しない」と語った。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)当局者らは10月の政策会合で、自らの行動計画を立てた。労働市場が改善する中、利上げ着手に備えていたが、ある懸念が頭をよぎった。新たな衝撃が米経済を再びリセッション(景気後退)に陥れ、すぐに金利をゼロに戻してしまう可能性だ。中国政府はかつての米英政権がとった「サプライサイド」の経済政策に倣い、需要促進に焦点を当てるだけでなく、供給面も立て直そうとしている。中国政府にとって、過剰設備の廃止はかねての政策目標だと多くのアナリストが指摘している。だが、失業率の上昇と成長率の低下を懸念する地方官僚からの強い抵抗を受けてきた。他の国々と同様に中国も同じジレンマを抱えている。金融緩和は行けるところまで経済を押し上げた。いまは新たな解決策をとるときなのだ、としている。

長文だが、全体に濃密だ。世界経済の変調を解説するには、これくらいの文字数はいる。昨日の中国のGDPに世界は何とも微妙な反応を示したが、ポジティブに受け止められる要素は一切なかった。世界が中国にどれだけ依存していたか、そして、世界中の先進国の政治が無策に量的緩和をつづけたことがどれだけ罪作りだったかを、いまマーケットが噛みしめている。量的緩和バブル、麻薬漬け…言葉はどうあれ、クスリがなければ立てない状況から目を覚まそうとアメリカは挑んだが、他の国はそんな話ができる状況ではまったくない。ヨーロッパと日本はまだ眠ったまま。中国も、ドーピングのように公共投資だけで経済が膨らんだ後始末をしなければならない。
株式市場が実体経済の6か月先を表しているという表現が、ある程度事実なら、いまの不安感が、夏には現実として生活の中に暗さを漂わせることになる。意識しておいた方がいいだろう。その時期に、本格的な下落、悲観が待っている。

朝日新聞・社説
中国経済 投資偏重からの転換を

中国の昨年の経済成長率は6・9%だった。25年ぶりの低い伸び率とはいえ、7%前後という政府目標にはほぼ達した。重要なのは数字の大小ではなく、どう安定的に成長を続けるのか、そのかじ取りにある。わけても過剰投資に陥りがちだった経済構造を変革していくことがカギを握る。中国のこれまでの経済成長は投資頼みだった。設備投資やインフラ投資が国内総生産(GDP)に占める割合は50%に近く、中所得国の平均的な水準のほぼ2倍だ。共産党と中央・地方政府の指示のもとで国有銀行、国有企業が動員されてきた結果であり、市場経済化が進んだ今もその体質は残る。重厚長大型産業が低迷する中で、都市部の消費が比較的堅調なのは明るい材料だ。今後は国有企業を守るよりも、消費動向に敏感な民間企業が育つ環境づくりが、新たな雇用を生むためにも重要だ。民間の力を主に、政府の調節を従にすることが長い目でみて成長に資する。そうした改革を世界各国が求めている。中国抜きに世界経済の安定は語れないからだ、としている。

日本経済新聞・社説
中国は市場との対話重視でリスク回避を

世界第2位の経済規模を持つ中国のGDPは、3位の日本の2倍をゆうに超す。巨象の景気減速は国際通貨への道を半歩だけ踏み出した人民元の動きも絡み、各国市場の乱高下につながっている。中国国内では設備投資の減少と生産調整でモノの動きが滞っている。中国の15年の貿易総額は前年比で8%減った。中国への輸出依存度が高い各国への影響は大きく、歴史的な原油安など国際商品市況を下押しした。経済政策のブレも問題だ。中国政府は、株式市場の相場急変時に売買を停止する「サーキットブレーカー」制度を導入からわずか4日で撤回した。昨夏の株価急落の際は、警察組織まで動員する強引な“介入”に踏み切った。これでは当局と市場の間の健全な対話は成り立たず、いたずらに不信を広げてしまう。中国政府はまず市場原理に沿った透明なルールを確立すべきだ。市場参加者との対話重視こそリスク回避の早道である。これは世界のマーケットへのメッセージにもなる。構造改革を断行しつつ、景気の腰折れを防ぎ軟着陸させる。これは習指導部が自ら掲げた目標であり、世界第2位の経済大国の責任でもある。遅滞は許されない、としている。

日本の新聞が中国経済を語る時、感情が悪さをしているとしか思えない。対抗心を持つはずのアメリカの経済紙は、こんなコンテンツを載せている。

中国の15年GDP、知っておくべき5つのこと by Wall Street Journal

中国の2015年GDP、成長減速を再確認 by Wall Street Journal

アメリカは冷静であり、経済は経済だ。アメリカがロシアを語る時のような、必要以上の対抗心が、日本の中国への主張にはある。同時に発表された訪日外国人数は、また過去最高を超えた。その中心は中国、韓国、台湾だ。お客様であり、重要な利害関係にある。ライバルとして意識するなら判るが、数年前は自国が2位で、その位置に占める責任もプレッシャーも耐え切れなかった国が「失敗は許されない」「責任感がない」と突き上げるのは好ましいものではない。今では支援できるだけの体力も持ち合わせていないだろうが、せめて自国への影響、ハードランディングへの対策を語るべきではないだろうか。

毎日新聞・社説
国内テロ対策 省庁のたて割り解消を

5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を控え、国内のテロ対策は、政府の最重要課題の一つだ。2020年には東京五輪・パラリンピックが開かれる。テロリストにつけ入るすきを与えぬよう関係省庁は密接に連携し、守りを固めたい。これまで政府内のインテリジェンス活動の中心は、首相直属の内閣情報調査室だった。さらに、外務省、防衛省、警察庁、公安調査庁などがそれぞれ情報収集活動をしているが、機密度の高い情報ほど各省庁で抱え込み、たて割り体制の中で情報の正確な評価ができないのが課題だと言われてきた。各省庁のさまざまなレベルの幹部や担当者が情報交換する仕組みが従来より整ったとされる。だが、各省庁・機関が培ってきた情報力と専門性がしっかり結びつけられるかは未知数だ。政治レベルで情報の評価ができる体制にしなければならない。「ソフトターゲット」と呼ばれる商業施設などでの警備・警戒や、国内に流通する爆発物の原料の把握には、民間事業者や市民の協力も必要だ。警察は、丁寧に説明し、理解を得る努力をしたい、としている。

読売新聞・社説
ジャカルタテロ 「イスラム国」の脅威アジアに

世界最大のイスラム人口を抱えるインドネシアの首都ジャカルタの中心部で、男らが爆弾を爆発させ、警官隊と銃撃戦を繰り広げた。犯行グループ4人を含む8人が死亡し、20人以上が負傷した。当局は、過激派組織「イスラム国」に加わったシリア滞在中のインドネシア人戦闘員が主導したテロと見て、捜査している。「イスラム国」も犯行声明を出した。「イスラム国」の扇動によって国内のテロ組織が息を吹き返し、両者の「共闘」が活発化する事態を警戒せねばならない。「イスラム国」は、日本も標的だと明言している。東南アジアまで迫ったテロは対岸の火事ではない。政府は昨年12月、海外のテロ情報を集約する「国際テロ情報収集ユニット」を新設した。岸田外相は「ユニットなども活用しつつ、海外の邦人の安全対策に万全を期したい」と強調している。ASEANとテロリスト情報の共有を進めることが大切だ、としている。

無関心では、あまりに危険過ぎるとは意識しておきたい。パンデミックや災害に近い。危機を少しでも考えたことがあれば、わずかでも知恵を得ていれば、恐怖さえ抑止できる。テロに関して、日本人はまったく白紙ではないだろうか。私は省庁の問題ではないと思う。各自に危機感を共有するのがもっとも近道ではないだろうか。そういう意味では、仕事をしていないのは省庁ではなく、メディアだ。

人民網日本語版
「習式外交」の「中東の時」 (2016.1.18)

中国の習近平国家主席は19~23日、サウジアラビア、エジプト、イランを公式訪問する。これにより「習式外交」は「中東の時」に入る。中東地域の混乱は大きな分裂と調整をもたらしている。サウジアラビアとイランの摩擦の激化は元々穏やかでなかった地域環境に新しい複雑な要因をもたらした。サウジアラビア、エジプト、イランは共に地域の大国であり、大国の野心を抱いており、地域の平和・安定・発展に決定的な役割と影響を及ぼす。経済面で中東は中国にとって海外最大のエネルギー供給地であり、「一帯一路(1ベルト、1ロード)」の重要な場でもある。安全保障面では、「3つの勢力(分離独立派・宗教過激派・テロリスト)」に打撃を与えるには中東諸国との協力が不可欠だ。今年は中国とアラブ諸国との外国関係樹立60周年であり、中国と3カ国との関係もギアチェンジと高度化の新たな段階に入る。各大国は中東問題を無視できない。中東は中国の「大周辺」を構成する重要な一部であり、地政学的戦略の重要な拠り所でもある。この3つの対中友好国は中国の地域戦略にとって重要な支点であり、中国外交の全体的な布陣にとって独特の意義を持つ。「中東の時」に入った「習式外交」は内容豊かで、期待に値する、としている。

この時期に中東へ?サウジアラビアとイランを訪問するのなら、既定の予定だと思うが、タイミングがかなり微妙だ。中国がこの時期、中東でどんな努力を見せてくれるだろう?自国の経済を優先させる時期が来るのではないだろうか?それでは少し前の日本そっくりだ。以外な活躍を見れるだろうか?

Financial Times
デビッド・ボウイが教えてくれた政治の虚しさ (2016.1.19)

デビッド・ボウイの訃報に接し、遠い昔にしばらく思いをはせた後、楽観的な気持ちになった。戦争、テロ、相場の暴落といったニュースで新聞が埋め尽くされているこの時期にボウイの曲を聴き、日々の見出しを読んでやたらに慌てる必要はないと思い直した。政治や経済のニュースがどこかに消えてしまった後も、音楽や芸術はずっと残り続けるからだ。英国の政治家たちは労使関係、国際収支、英国は落ち目だという大方の見方などへの心配で頭がいっぱいだったが、ボウイの音楽は、普通の人々の生活を本当の意味で変えつつあった社会的・技術的な潮流を反映していた。「チェンジス」などの楽曲は、政治・経済の沈んだ雰囲気ではなく、個人的なチャンスを手にしたという感覚や解放感をテーマにしていた。今週、スイスのダボスで開かれる世界経済フォーラム(ダボス会議)に足を運ぶ。強大な権力を持つ人々が数多く集まるだろうが、その雰囲気は中東、中国、ウォール街、アイオワ州などで起きた出来事の影響で暗いものになるだろう。ひょっとしたら、政治や経済の話には耳をふさぎ、代わりに音楽を聴いていた方が有益かもしれない。悪い知らせが消えてしまった後も優れた芸術は生き残るということを、とにかく忘れないようにするために、としている。

英国紙が、自国のヒーローの死にセンチメンタルになるのは判る。日本が高倉健の時に感じた感傷といっしょだろうか。私も彼の唄を今でもいくつでも覚えている。彼がしたエンターテインメントにした功績も理解している。ただ、自分が音楽を過去にしていた人間として知っているのは、音楽でひとりの人生に影響を与えることはできても、音楽で世界を変えることは、どうやってもできない。芸術とはそのために存在するものではないし、そのために志すものでもない。だからデビッド・ボウイの作品は人の心を打ち、あらゆる人の感情をかき立てたのだ。メッセージのためだけにつくられた音楽は、人を動かすことはない。それをするなら、議員に立候補するのが正当だ。
エンターテインメントに本気で生きる人は、その境界を知っている。影響力をどれだけ持ったとしても、そのパワーを世界を動かすために行使すべきではないことを。それは、ビジネスの世界でも、おそらく政治の世界でもそうだ。カリスマと呼ばれる経営者は、政治とは距離を置く。政治家も引退すれば、余計なことは言わない。
インターネットが人をメディアにし、注目を集めることが容易になったように誤解されている。人を集めることと、人に役立つ才能があること、そして、それで何を為すのかは、すべて別物だ。ボウイのような人は、そのバランスが極めて美しかった。紳士だったと思う。彼がもっともこだわったのはそこではないだろうか?決して、先駆者やヒーローになりたいと思ったことはないのではないだろうか?

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