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2403.報道比較2015.10.28

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南シナ海の緊張に、世界は冷静に反応している。それが、この緊張のリスクは低いという意味ならいいのだが。

Wall Street Journal
南シナ海、重大局面迎えた米中の覇権争い (2015.10.27)

中国による挑戦的な領有権の主張に反論してきた米国の言葉は、いよいよ軍事行為に変わった。中国が南シナ海で造成中の人工島から12カイリ(約22キロ)以内に駆逐艦を航行させることで、米政府はこの重要な海域の将来をかけた「戦い」が公然と始まったことを示すシグナルを送った。世界の海上貿易の半分余りはこの海域を介して行われており、中東の産油国と強い経済力を持った西太平洋諸国もこの海域を通過する航路で結ばれている。加えて、米国の挑戦は向こう数十年にわたって続くであろう、はるかに広範な戦いになることを物語っている。中国の国営新華社通信は強い論調で、米国は南シナ海を「騒然とした海域」に変貌させたと非難。「中国国民は困難を恐れてはいない」と続けた。中国外務省は米国の行動に対し、「強い不満と断固たる反対」を表明した。不確定要素はナショナリズムだ。国民に人気ある習氏が米国の動きに何も反応してみせないのは考えにくい。仮に世論に火が付けば、行動を求める大きな圧力にさらされることになるだろう。次は習氏が動く番だ。抗日戦争勝利70年を記念する軍事パレードを成功させたばかりの習氏が弱気のシグナルを出すわけがない、としている。

朝日新聞・社説
南シナ海 各国共通の利益を守れ

米海軍のイージス駆逐艦が、南シナ海スプラトリー(南沙)諸島のスビ礁と呼ばれる岩礁の近くの海を航行した。スビ礁は中国が実効支配し、大規模な埋め立てで滑走路を備えた人工島を建設している。そこから12カイリ(約22キロ)以内、中国が領海だと主張する海をあえて通ったのは「航行の自由を示すため」と、米国防総省は説明している。領海内であっても、軍艦の通航が、いわゆる「無害通航」なら、認めるのが国際ルールだ。事態をエスカレートさせず、説明通りの目的に沿うものなら、米国の主張は支持できる。中国外務省は「中国の主権と安全を脅かす」「地域の平和と安定を損なう」と米軍の行動に強く反発している。しかし、中国の主張には無理がある。そもそも中国がこれまで南シナ海で続けてきた行動にこそ、問題があったからだ。南シナ海は世界の貿易船舶にとって重要な航路だ。その自由と安全は、米中はもとより東南アジア諸国、日本を含む各国共通の利益である、としている。

産経新聞・社説
航行の自由作戦 平和の海へ日米連携せよ

南シナ海で中国が「領海」と主張する人工島の周辺12カイリ内の海域を、米イージス駆逐艦が航行した。米哨戒機も上空を飛んだとみられる。この作戦は国際法にもかなうものだ。何よりも中国の南シナ海支配を防ぐために欠かせない。アジアの平和と秩序を守る意思を、米国が行動で示した意義は大きい。今後も人工島周辺での航行や飛行は随時、行うという。公海は人類共通の財産である。「航行の自由」が保障された「開かれた自由で平和な海」こそ交易を促し、日本人の暮らしを含む世界の繁栄をもたらす。「航行の自由作戦」だけでは、中国は人工島から退去しないだろう。日本はオーストラリアなど危機感を共有する国々に呼びかけ、結束して米国を後押しすべきだ。多国間によるパトロールへの参加やフィリピン、ベトナムの海軍、沿岸警備隊の能力向上支援など、日本にとっての課題は多い。近くソウルである中国首脳との会談でも、安倍首相は自由を妨げる行為にくぎを刺すべきだ、としている。

毎日新聞・社説
南シナ海と米国 法の支配へ関与続けよ

開かれた海と法の支配を実現する一歩と考えたい。米国は南シナ海の南沙諸島にイージス駆逐艦を派遣し、中国が岩礁を埋め立てて建設した人工島から12カイリ(約22キロ)の範囲内へ進入させた。いわゆる「航行の自由」作戦である。今回、米艦が接近した人工島は満潮時には水没する岩礁を埋め立てて建設された。米艦は、その島が12カイリの領海の起点にならないことを示すために接近したわけだ。軍用艦を投入した作戦行動を手放しでは歓迎できない。だが、南シナ海問題は先月の米中首脳会談でも進展がなかった。情勢悪化を座視せずに、法の支配と国際正義を掲げて米艦をあえて派遣したオバマ政権の意図は理解できる。この際、大切なのは緊張激化を避けることだ。米軍は今後も同種の作戦を続けるという。中国共産党の第18期中央委員会第5回総会(5中全会)の開幕に合わせたような作戦とあって中国は反発を強めているが、報復措置などは控えるべきだ。偶発的な衝突も含めて一触即発の危機が続くのは、中国も含めてどの国の利益にもならないはずだ。南シナ海に法の支配を及ぼし「開かれた海」にするのは軍事行動ではなく外交だ。その意味で米国の継続的な関与と建設的な米中対話が不可欠である、としている。

予定どおりの行動は、何の混乱ももたらさなかった。マーケットは世界中で無反応。中全会にむけてのメッセージだが、FOMCより前の経済が凪いでいる時にやりたい。そんな意識が見える。日中韓の首脳会談のブッキングが混乱したのは、この影響を待っていたのかもしれないが、公には平静がつづいている。中国は「受け流す」のが対応策の一環だったようだ。人民網には、コメントはまだ一切ない。警告を発したが、何に対しての警告かは明示していない。中国が気にしているのは民意だ。明使がアメリカへの対抗心を見せれば、習氏は動くかもしれない。いま、冷静に事が進んでいるから、この緊張のリスクは低いと見るべきではないだろう。
どちらも揉めたくはない。それは明らかだが、アメリカも中国も、リーダーは民意に揺れている。相手の国の民意をどうコントロールできるか。アメリカにはこの能力があるだろうが、中国はまだこの能力は見えない。次に動くべきは習氏だが、このメッセージを送れるなら、相当秀逸なリーダーだ。
真打ち登場のように湧く日本を含めたアジア各国は、このタイミングで中国との友好関係を自ら作れるように結束すべきだろう。アメリカの力を借りなければ何もできないと見えれば、中国は策を巡らせる。アメリカに頼れば、高額な請求書が後でやってくる。シナ海の主導権を握れるのは誰だろうか?

人民網日本語版
対中関係の発展、日本はドイツと英国に学ぶ必要がある (2015.10.27)

中日関係は過去数年間、国交正常化以来最も厳しい局面を迎えている。中日関係と、英独の対中関係を比べると、その差は歴然だ。このような対比を行うのは、日本と英独両国が重要な部分で似通った面を持つためだ。対中関係において、英独にできることが、なぜ日本には出来ないのだろう−−?歴史問題に関しては、ドイツと日本を比較することが出来る。日本とドイツはかつて、侵略・大虐殺の罪を犯し、人類に大きな災いをもたらした。ドイツは戦後、歴史を正視し、誠実かつ真摯に反省を続けた。誤った歴史観を持つ日本は、よからぬ道に進もうとしている。歴史問題は中日関係発展を妨げる大きな問題の1つとなった。歴史問題をいかに捉えるかという問題において、ドイツは日本に良き手本を示したと言える。対中関係の発展において、日本はドイツと英国に学ぶ必要がある。現在日本に最も不足しているものは何か?傅瑩・全人代外事委員会主任委員(元外務次官、駐英大使)は、ここ数年間、日本の政府高官や学者と接触した感想として「彼らは耳を持たないかのようだ。人の話に耳を傾けようという気が感じられない」と語った。実際、日本には「耳」だけでなく、戦略的な「目」も不足している。そして、中国と協力・ウィンウィンを実現しようという「心」はもっと欠けている、としている。

この記事を書いたのは中国人だろうか?私の意見は、ほぼこの意見に一致する。この意見を、中国のメディアから聞けたことがうれしい。冷静な日本人の感覚は、誰もこの意見に近いのではないだろうか。
ヒステリックに憲法を守りたいと言う人たち、中国や韓国というだけで対抗心をもつ人たち、アメリカに依存する人たち、アメリカから極端に離れたいと思う人たち…それぞれのこの意見への反論を聞いてみたい。

Financial Times
新しい歴史教科書で古い戦いに挑む韓国 (2015.10.27)

韓国教育省は今月、中学・高校の歴史教科書を民間の出版社が作成する現在の仕組み――現在は政府の検定に合格した教科書8冊の中から各学校が選択できる――を廃止し、これに代わる国定の教科書を1冊作成すると宣言し、政治的な大論争に火をつけた。朴槿恵大統領は、既存の歴史教科書は左派に偏向していると主張している。この指摘は、北朝鮮に同情的な記述があるとか過去の独裁政権に対する批判が行き過ぎているといった、与党セヌリ党の政治家たちが数カ月前から口にしてきた不満を反映したものだ。韓国の歴史教科書は北朝鮮による国民いじめをもっと明確に描写したり、韓国の目覚ましい経済発展をもっと取り上げたりするべきなのかという点については、議論することができるだろう。しかし、そのような変更は既存の制度の修正を通じて行うこともできる。韓国政府はそうする代わりに、歴史教育を国内政治の駆け引きに使っている。日本による朝鮮占領時代の残虐行為について日本政府と言い争う時、韓国政府は自分たちの方が道徳的に優れていると主張するが、これではその優位性もいくらか損なわれてしまう、としている。

もうすぐ日中韓の首脳会談が行われる。3人は、対抗しているようだが、Financial Timesを見れば判るとおり、3人のリーダーの価値観、性格はそっくりだ。やっていることも、好きなことも、嫌いなことも。本来、それを冷静に言い当てて冷静になるのがメディアなのだが、残念なのは、3国ともメディアが火に油を注ぐような役を買って出ている(またはやらされている。)似たもの同士、仲良くして欲しいのが国民感情だが…

日本経済新聞・社説
温暖化の影響軽減に戦略的取り組みを

政府はこのほど「気候変動の影響への適応計画」案をまとめた。温暖化の悪影響を軽減するため必要な対策を農林水産業や防災、健康など7分野で76項目列挙した初の国家戦略だ。日本国内の平均気温は過去120年間で約1度上昇した。これから21世紀末までの85年間にさらに1~4度の上昇が予測される。気温上昇のペースを抑えるには、国内の努力だけでなく世界全体で温暖化ガスの排出を削減しなければならない。ただ現状の国際的な取り組みは温暖化を止めるのには不十分と言わざるを得ない。適応計画案が示すように、堤防や下水道の整備、高温に強い新品種の開発、熱帯病対策など広範な分野で、温暖化に伴う悪影響への備えを厚くしておくべきだ。防災や公衆衛生では地方自治体が大きな役割を担う。国民や企業がそれぞれ対策の必要性を理解し、立案と実行に積極的に関与することも大切だ。多様な利害関係者の意見調整を円滑に進めるため、適応計画を法制化することも検討すべきだ、としている。

読売新聞・社説
軽減税率 簡明で有効な線引きが重要だ

与党税制協議会が、2017年4月の消費税率10%への引き上げ時に導入する軽減税率に関する議論を、約1か月ぶりに再開した。軽減税率で目減りする税収分の財源の一部に、増税時の低所得者対策に予定していた4000億円を充てることで一致した。ただ、対象品目の範囲などでは、なお与党内に意見の隔たりがある。公明党は「酒類を除く飲食料品全般」を対象とするよう主張している。対象の税率を8%とすると、減収は約1・3兆円になる。自民党は、対象品目を極力絞り込み、減収を最大でも4000億円に抑えたい考えだ。軽減税率の実効性を保つため、社会保障費以外の歳出抑制や、他の税収を財源に活用することを前向きに考えてはどうか。公平な消費税負担は、インボイスの本格導入が前提となる。簡易方式でのスタートはやむを得ないが、せめて本格的な制度の開始時期は明示すべきだろう、としている。

軍事行動から距離を置く姿勢までは理解できるが、選んだトピックに力がなさ過ぎる。主張内容にも力がない。意図して南シナ海の話題を避けたのだろうか?政府のメディア操作がささやかれているが、この不自然さをどう理解すべきだろうか?政府と意見が合う2紙が揃って…という現実に違和感を覚える。

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