ORIZUME - オリズメ

2091.報道比較2015.2.2

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新聞が売れない時代、社説が読まれない時代で本当に良かった。この質の社説の思考レベルでは、新聞は怒りに任せた行動を是認する。どれだけ冷静さと報道の意識を失ったのか。政治と一般国民の方がよほど冷静だ。

Wall Street Journal
終末に向かう中国共産党、社会に広がる「恐怖」 (2015.1.30)

最も中国通の米国人学者の一人がワシントンでの非公式夕食会で、小さなテーブルに集まった外国の外交官らに対し、「倒れる日がいつかは明言できないが、中国共産党は終末に向かっている」と話した。中国政府とのつながりが深い人物の悲観的な見方は注目に値する。中国の政治的大変動に不意をつかれたくなければ、米政府は用心し始める必要がある。もう一人の中国専門家が、「少なくとも(1989年の)天安門事件以降、中国国民がこれほど恐れているのは見たことがない」と口を挟んだ。具体的な例を求められると、彼は監視の強化や取り調べを受ける不安、逮捕の増加を挙げた。共産党亡き後の中国を想像することは不可能ではないにしても難しい。中国では民主派やリベラル派の意見が何十年間も抑えつけられてきたうえ、共産党の大義に対する国民の共感度合いも突き詰めれば測りがたい。共産党の権力が弱まれば、混乱の拡大や内部分裂を招くことはほぼ間違いない。中国の終焉はまだ何年も先になるかもしれない。だが、どれほど厄介だとしても、歴史の正しい側にいることが賢明だ、としている。

ゾクリ。端的に言えば、その印象だ。意図せずに、投資を記録している記事でも、このトピックを注視した。政治から見ても、経済から見ても、中国のクラッシュは「時期と規模の問題だけ。いつか必ずやってくる。」その時期が、中国本土の印象では近づいているように見える。世界がアメリカの単独エンジンで飛んでいる中、中国のクラッシュはアメリカのエンジンさえ止めてしまう。注視しつづけたい。
残念なのは、日本はこの点で対立のバイアスがかかってしまうこと、中国側も日本には意図が絡みやすいことだ。どちらも判断を鈍らせ、プラスよりはマイナスに働く要因が高まる。冷静な情報を得られる準備が必要だ。

Financial Times
サウジ新国王の挑戦:改革と安定のバランス模索 (2015.1.30)

79歳の新国王は国民への最初の声明の中で、この国は「サウジアラビアが建国以来従ってきた正しい政策を引き続き忠実に守る」と謎めいた言い方をした。外部の人間からするとサウジアラビアの変化の速度は遅々としているように見えるが、サウジアラビア政府の当局者たちは、ゆっくりした段階的なアプローチは、対立する国内のリベラル派と保守派の間を切り抜けていく唯一の道だと主張する。2003年、アブドラ国王が事実上の支配者だった時、国王は一般に広まっていた抑圧的な雰囲気に切り込み、女性、リベラル派、シーア派団体の少数意見を取り込む国民的対話に乗り出して、自らの統治により寛容的な雰囲気を作り出した。アブドラ国王は任命制の諮問評議会に女性を参加させた。また、今年中には女性が(あまり権限のない)市議会選挙に立候補したり投票したりできるようになる。変化をもたらす可能性のある1つの分野は、法制度の改革だ。最も物議を醸す計画の1つが、様々な犯罪に対して幅広い罰則を設けているイスラム法「シャリア」の成文化だ。現在の未修正の刑法には判例がなく、裁判官に幅広い解釈の余地を与えている。これが同じ犯罪に対する多様な判決につながっている。アブドラ国王が昨年末に入院する前の最後の勅令の1つは、この複雑な作業を完了させるのに6カ月の時間を委員会に与えることだった。新政権はこの改革を押し進めると見られている、としている。

運命的なタイミングで国王が逝った。ここでサウジアラビアのバランスがどうなるのか、本当に注意が必要だ。原油安に世界が揺れ、ECBが金融緩和を決め、イスラム国が台頭している時。今のところ平静は保たれている。中東で自由主義の国と、もっとも冷静に議論してくれる国。イスラムの聖地を抱える国。そして、中東でもっとも安定した政治を運営している国。その政治的安定が、少しだけ危機を迎えた。本当に世界中で平静が崩れている。

朝日新聞・社説
「イスラム国」の非道―この国際犯罪を許さない

過激派組織「イスラム国」が拘束していたジャーナリスト後藤健二さんを殺害したとする映像を公開した。湯川遥菜さんに続く無情の殺害宣告だ。1月20日に明るみに出た人質事件は、安倍首相の中東訪問をとらえた脅しだった。「イスラム国」のために住む場所を失った難民への人道支援を表明した日本政府を責めたて、身代金や人質交換に応じなければ殺害するという主張は、独りよがりでおよそ道理が立たない。残虐きわまりない犯人と組織を強く非難する。この上ない人権侵害であり、国際犯罪である。このような行為を続ける組織との対話や交渉の困難さは想像にあまりある。国際社会は国連などを中心に国単位での問題解決を基本としてきた。「イスラム国」のように国家を名乗りながら、近代国家の常識からかけ離れ、暴力的に支配地域を広げようとする組織とどう対峙していくか。そのことが改めて問われる、としている。

産経新聞・社説
後藤さん殺害映像 残虐な犯罪集団を許すな 対テロで国際社会と連携

過激組織「イスラム国」に拘束されていたジャーナリストの後藤健二さんが殺害されたとみられる残忍な映像が、インターネット上に公開された。残虐で卑劣な犯罪行為である。どんな主張があるにせよ、暴力や恐怖によって相手を屈服させようとするテロリズムを許すことはできない。安倍晋三首相は「テロリストたちを決して許さない。その罪を償わせるために国際社会と連携していく」と述べた。また改めて「日本がテロに屈することは決してない」と述べ、中東への人道支援をさらに拡充することを表明した。今後もイスラム諸国を含むテロと戦う国際社会と連携し、日本としての責任を果たさなくてはならない、としている。

日本経済新聞・社説
後藤さんの志を踏みにじる卑劣な犯行

シリアやイラクの一部を実効支配する過激派「イスラム国」とみられるグループが、拘束していたフリージャーナリストの後藤健二さんを殺害したとする動画をインターネット上に公開した。犯行グループがすでに殺したと主張する湯川遥菜さんに続いての蛮行である。心の底から怒りが湧く。罪なき人々に非道な行為を繰り返す暴挙を断じて許すわけにはいかない。拡散するテロが世界を脅かしている。解決には震源地である中東の平和と安定の実現が不可欠だ。安倍晋三首相は「テロに屈することなく、中東への人道支援を拡充していく」と述べた。方向は間違っていない。国際社会と連携してテロに立ち向かい、中東を安定させる取り組みに率先して加わることは重要だ。同時に忘れてはならないのは危機管理の力を高めることだ。日本人がテロに遭う事態は今後も起こりうる。未然に防ぐ情報の収集と、国民が危険を回避するための適切な開示が欠かせない、としている。

毎日新聞・社説
日本人人質事件 この非道さを忘れない

かすかな望みを無慈悲に断ち切る映像だった。ジャーナリストの後藤健二さんを拘束していたイスラム過激派組織「イスラム国」(IS)は後藤さんの殺害を示すとみられる映像をインターネット上で公開し、これは日本にとって悪夢の始まりであり、今後も日本人を殺し続けると宣言した。湯川遥菜さんに続き2人目の日本人人質の殺害が告げられたことに、激しい憤りと悲しみを覚える。仮にもイスラム教徒と名乗る者たちが、なぜこうも簡単に市民の命を奪うのか。私たちは忘れない。これはイスラムを隠れミノとした無法組織の、決して許されない残虐行為だ。この事件には不明な点が多い。政府は情報公開に努め、国会は政府対応も含めて事件の徹底した検証をすべきである。後藤さんの家族には昨年から身代金要求があり、これを政府も承知していた。にもかかわらず安倍首相が中東を歴訪し、ISと戦う国々に経済支援を表明した狙いは何だったのか。政府はヨルダンに頼るほか、救出へどんな方策を試みたのかなど、再発防止に向けた議論を尽くさなければならない、としている。

読売新聞・社説
後藤氏殺害映像 「イスラム国」の蛮行を糾弾する

シリアでの人質事件で、過激派組織「イスラム国」は、拘束していた後藤健二さんを殺害したとするビデオ映像を動画サイトに投稿した。政府は、映像の信ぴょう性は高いと判断している。安倍首相が「テロリストたちを決して許さない。その罪を償わせるために国際社会と連携する」と表明したのは、当然である。オバマ米大統領は「極悪な殺人を非難する」と声明を発表し、英仏首脳も足並みをそろえた。日本が対イスラム国包囲網に参加することは、国際社会の一員として当然の責務である。イスラム国の壊滅までには時間を要しようが、「テロとの戦い」の一翼を担い、その最前線に立つ中東諸国を支援するという現在の方針を変えてはなるまい。今後も、欧米や中東の各国との連携を強め、地域の安定とテロの拡散阻止に努めたい、としている。

報道の役割は、これでいいのだろうか?私が期待しているものとは、かなり距離がある。何ひとつ明らかにしていない。考えているようにも、問いかけているようにも見えない。国民の怒りを誰に向かって代弁しているのだろうか?イスラム国?怒りを醸成してどういう結果が起きるのだろうか?殺伐とした、さらなる混乱と恐怖が増幅されるだけだ。
政治には、誰もが2つの感想を持ったことだろう。なしうる最善の努力を、冷静に貫徹したように見える。3.11のリーダーシップを思い出せば、最悪だった。現政権は不安を醸成したり、感情的な部分を市民に見せて苛立たせることはなかった。誰もが考える最善を尽くした。もうひとつは、それでも助けられなかった国力、能力は何か?日本が持っていなかったものはなんだろう?この問いに、日本はこれから思考し、解を見出さなければならない。その答えが特殊部隊を持つことだろうか?テロとの戦争をはじめることだろうか?イスラムと関わらないこと?どれも違うと、私たちは思うだろう。
普通の国になること。安倍氏が言っていたことが現実になってきた。国民は十分な知性を持っているようにも見える。無関心なだけにも見える。政治はどういう回答と解決策を次に提示してくるだろうか?
もう、日本の新聞にそのインテリジェンスを期待するのは終わりにしよう。彼らの仕事は、こういう時にもうほとんど役に立たない。有事に備えていないのは国民でも政治でもなく、メディアだ。私たちが手にしなければならないのは、情報源であり、発信する能力だ。

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