ORIZUME - オリズメ

2088.報道比較2015.2.1

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2月。日曜の朝のニュースは最悪の結末を知らせるものだった。失望と不安。大事な時期に、最悪だ。

Wall Street Journal
「イスラム国」、後藤健二さん殺害したとする動画を公表 (2015.2.1)

イスラム過激派「イスラム国」に拉致されていた後藤健二氏が殺害されたとみられる映像がインターネットに日本時間1日朝投稿された。日本政府は映像の真偽の確認を急いでいる。これを受けて、安倍晋三首相は午前6時半過ぎに会見し、「湯川遥菜さんに続いて後藤健二さんを殺害したとみられる動画が公開された」とし、「政府として全力で対応してきたが痛恨の極みだ。非道で卑劣極まりないテロが行われたことに強い怒りを覚える」と述べた。イスラム国は28日朝、後藤さんとみられる画像と音声をネット上に投稿。その音声は、24時間以内にヨルダンで収監中のサジダ・リシャウィ死刑囚を釈放しなければ自分とヨルダン軍パイロットが殺害されると述べていた、としている。

失望させられるニュースだ。戦争とはこんなものだ。努力など身を結ばない。痛みとなって返ってくる。失望以外、何者でもない。
日本人の心に、憎しみが宿るのが不安だ。政治も、国民も、この痛みをずっと知らされずに来た反動は大きいだろう。変な方向に暴走しないか注視していく必要がある。秘密法の存在、憲法解釈の変更、なし崩しで進める準備がこの国にはできている。この痛みにレバレッジをかけて行き先を示した時、絶対に止めるべきだ。熱くなってはならない。冷徹に、冷徹に。それだけだ。明日の朝の社説も想像がつくだろう。その流れに乗ってはダメだ。

Financial Times
日本経済、低金利政策では停滞から抜け出せない (2015.1.28)

欧州中央銀行(ECB)が巨額の資産買い入れに踏み切ったことは金融市場で喝采を博したが、日本で採用されているこの非伝統的な金融政策の有効性についてはますます大きな疑問符がつくようになっており、その資産価格への影響と実体経済への影響のギャップもますます際立ってきている。日本では現在、資本コストは事実上ゼロだ。しかし、低金利と笑ってしまうほど低い資本コストが日本国内での投資や支出に影響を及ぼしているという証拠はいつになく乏しい。日本では企業も家計も、この金融緩和状況を活用したいと思っているようには見えない。日本ではもう、輸出主導型成長モデルは機能しなくなっている。中国の台頭を受けて、競争優位性がほとんどなくなっているのだ。中国は、規模の経済による利益を日本よりも享受できるうえに、付加価値の高い財を生産する能力を急速に高めており、為替レートが比較的高いにもかかわらず輸出を増やしている。日本の人口動態を考えると、停滞を避けるのは難しくなったとはいえ、不可避ではない。だが、日銀の政策はこの停滞を覆す役に立たない。さらに、政府が物価の下支え対策に資金を割り当てていることを理由に株式を買うことは、素晴らしい考えではない。投資する理由としては、ファンダメンタルな議論の方が、政府機関による一時的、人為的な支援策よりも良い。結局のところ、政府機関の資金は潤沢だが、無限ではないからだ、としている。

内容は薄い。アベノミクスがはじまる前に見られたような論理だ。おそらくこのコラムニストと同じ意見の人は日本国内にも多々いるが、アベノミクスはその意見を捨てることに決めた。2014年末の解散総選挙でその信任が得られたと言われれば、誰も文句は言えない。もう戻れない選択を日本はしてしまった。
唯一、海外にも知れ渡っているのだと気付いた指摘がある。「高齢化している日本の労働者にはデジタルの世界でも必要なスキルがなく、グローバル化された世界で必要なスキルもない」という点だ。年功序列を崩さなければいけないのは報酬の問題ではない。価値観の問題だ。いまの世代には、デジタルの価値観も、グローバルの感覚もない。上層部が消えて新しい発想の経営ができる頃、日本のカイシャの内部留保は尽きている。そんな運命だろうか。沈む船から降りて、ボートでもいいので自分で漕いだ方が、まだ後悔しない。改めてそう思う。

日本経済新聞・社説
介護の外国人材受け入れに長期展望を

介護の現場で、外国人が日本人とともに働くことが当たり前の時代が近づく。どこまで、どう外国人を受け入れていくのか。他の受け入れ制度の拡充も含め、より広範で、長期的な視野に立った議論を進める必要がある。実習生を受け入れるのは特別養護老人ホームなどの介護施設で、介護福祉士が指導にあたる。高齢者とじかに接する対人サービスであることから、入国時や実習2年目に移る際には、一定の日本語能力を持つとの要件も設ける。中国などでも高齢者が増え、優秀な介護人材の確保は国際的な競争になっている。今のままで果たして外国人は日本を選ぶだろうか。日本人が介護の職場で働きやすくすることはもちろんだが、外国人労働力の活用を一定の枠内でしっかり考えるときだ。外国人の生活インフラを整えることも含め、長期的な視野に立った戦略的な政策づくりが求められる、としている。

毎日新聞・社説
2015年春闘 中小、非正規が焦点だ

今年の春闘が本格的に始まった。労使ともに賃上げが必要との認識は一致しているが、ベースアップ(ベア)について連合が「全企業2%以上」を求めているのに対し、経団連は「選択肢の一つ」としており、隔たりは大きい。仮に、一部の大企業が大幅なベアを実現したとしても、働く人全体に賃上げが広がっていかなくては意味がない。春闘に先立つ政労使協議では円安に苦しむ中小企業に配慮し、大企業が原材料費の値上がり分の適正な価格転嫁などの支援や協力をすることで合意した。経団連は「取引先企業との取引の適正化に努めていく」としているが、連合は実効性に懐疑的だ。一方、組合側も個々の労使交渉で自らの賃金アップを棚に上げて、取引先の中小企業への支援を経営側にどこまで求められるだろうか。連合はここ数年非正規雇用の待遇改善を春闘の目標に掲げているが、組合員の賃上げ交渉に苦慮しているのが実情で、非正規対策はめぼしい成果を上げられていない。昨年の春闘での主要企業の賃上げ率(厚生労働省集計)は2.19%だったが、物価上昇率はそれを上回る見通しという。手取り収入が減ったのでは消費は冷え込むばかりだ。労使は危機感を共有し、働く人の大多数を占める中小企業と非正規雇用の大幅賃上げを実現すべきだ、としている。

読売新聞・社説
認知症国家戦略 高齢者の視点を重視しよう

政府が認知症対策に関する初の国家戦略を決定した。高齢者の5人に1人が認知症になるとされる2025年までの対策をまとめた。医療・介護分野の支援強化に加え、徘徊に伴う事故や詐欺被害の防止、就労や社会参加の促進、治療法や予防法の研究開発など、幅広い内容を網羅している。認知症の人の生活を支えるためには、多面的な対策や人的資源の投入が欠かせない。政府一丸で着実に実施してもらいたい。認知症対策は世界共通の課題である。安倍首相は「世界のモデルとなる取り組みを進める」と強調する。認知症の人を社会全体で支える仕組みを確立し、世界に発信することが期待される、としている。

労働力と生産のバランスが破綻しはじめた。生産性は以前から低かったが、日本が持っていたノウハウの伝承が間に合いそうもない。STAP細胞の騒ぎ、食品偽装の問題の意味が見えてきた。虚偽を働く理由は、安易なごまかしではない。今まで先輩や会社としてできていたことが、いまの労働では生み出せなくなっている。おそらく利益のためではない。今までできていたのになぜ…?という安易な疑問から、安易な解決策で逃げようとしているのではないだろうか。構造的に、もう詰んでいて、実現不可能な領域に入っているというのに。ここに並べた社説も、その各論を述べているに等しい。
不安を感じるのがオリンピックだ。日本がブラジルのようなことをしてしまうような気がする。間に合わない、なんとかしたいが、なんともならない。世界はそこで言うだろう。「世界最高品質の日本で?」と。だが、そこですぐに気づく。「老いたのだ。彼らには、もうできない」と。そこが日本売りを完全に世界が決める瞬間だ。いまの能力と計画では、私はまったく自信が持てない。誰か、この不安を全否定してほしい。

産経新聞・社説
与那国の住民投票 国の守りは委ねられない

日本最西端の島、沖縄県与那国町で、陸上自衛隊の「沿岸監視隊」配備の是非を問うための住民投票が今月22日に行われようとしている。しかも投票資格は永住外国人を含む中学生以上の住民に与えるという。南西防衛の強化は、中国の軍事拡張から領土・主権を守る上で緊急課題となっているのに、その取り組みが阻害されかねない。この住民投票は極めて不適切だ。現町長は反対多数の結果が出ても町は配備に反対しないが、非協力に転じざるを得ない立場だという。配備が遅れれば、南西地域を守る日本政府の覚悟は強くないと中国側がみなし、挑発を強めることも懸念される。過去にも基地や原発をめぐる住民投票が実施され、混乱を招いた例がある。国も適切な住民投票制度のあり方を考えるときだ、としている。

与那国町側に感じる違和感はひとつだけ。あえて外国人や中学生以上までに投票権を与えた理由は何かをアピールした方がいい。民意は、20歳以上でも十分に反対票を取れたのではないだろうか。通常は投票できない人の意見をなぜ重視したのか、その意図を明示しなければ、反対多数にしたいがための操作との誤解を生む。やり方を変える必要はないが、伝えた方がいいと思う。
産経と中央政府への違和感は多数だが、もっとも嗤えるのは1300人さえまとめることも、納得してもらえる政治もできていないという事実だ。本当に国防の要なら1300人の生活をすべて賄ってでも保護すればいい。その覚悟も持たず、一方で基地縮小や地方重視といい顔をつづけるから、呆れて匙を投げられたにすぎない。正論も結果が出なければ詭弁だ。こんなことでは中国が割譲提案を出したら、民意が賛成するだろう。

朝日新聞・社説
フリースクール支援―どうつくる多様な社会

学校を30日以上休んだ小中学生は2013年度、病気や経済的な問題を除いても約12万人に上っている。その数は20年近く10万人を超え続けてきた。不登校の子どもらの受け皿の一つがフリースクールである。学校教育の枠にとらわれず子どもの学びたいことを大切にし、講座や体験活動に取り組む。そんな学校外の学びの場を正式に認め、支援に踏み出すことを安倍政権が検討している。学校は、教育全体の中で、これからも中心的な役割を果たすべきだ。だが、教育の目的が人間としての成長を促し、社会で生きていく力を伸ばすことだとするなら、学びの場は学校だけとは限らない。別の選択肢も認めてよいのではないか。公教育は、これまで国が教科書やカリキュラムなど教育内容やプロセスを定め、入り口で質を保とうとしてきた。それを人々が教育内容を決め、選び、学んだ結果を出口で評価する方向に、どこまで変えるのか。教育のあり方は、これからの社会のあり方に直結する。検討会議の議論に注目したい、としている。

朝日の考えを全面的に支持する。安倍政権が検討しているのなら、はじめて全面的に支持する政策だ。すばらしい。これこそが、日本の教育の根底から変える取り組みになるだろう。学校が壊れている。教員は疲れ果てている。学びを経た人たちが社会に出て活躍できない。その仕組みさえ疑問視されている中で、仕組みに合致できなかった人たちを社会が受け入れる環境さえないのは、女性活用よりも優先度が高いように思える。
フリースクール。Wikipediaを見て欲しい。日本だけが、極めて後ろ向きな解釈の教育しかできていない事実を。フリースクールはもっとパワーを持っていい。注目していきたい。

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