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2044.報道比較2014.12.31

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大晦日が税制改革で一色に染まった。前向きな主張は少ない。株価も1年を通して10%も上がらなかったアベノミクス2年目。先行きは大丈夫だろうか?

朝日新聞・社説
税制改革―「再分配」は置き去りか

民間主導の自律的な経済成長は、アベノミクスの恩恵を受けた一部の家庭と企業が消費や投資を増やすだけでは難しい。偏る富を広く行き渡らせ、全体を底上げするために、税制の「再分配」機能を生かす視点が欠かせない。そう考えると、政府・与党が決めた税制改革には疑問符をつけざるをえない。安倍首相の強い意向を受けて、企業の利益に課税する法人税(国税)を中心に実効税率を2.5%強、1兆円規模で減税する。それをある程度穴埋めするため、法人事業税(地方税)の外形標準課税を強化する。外形標準課税は、利益ではなく人件費の総額や資本金など「企業の大きさ」に基づいて負担を求める仕組みだ。現在は全法人の1%、資本金1億円超の企業が対象だ。赤字でも税金を納めることになるため、赤字法人課税と言われる税制である。今回の改革では、対象は広げずに外形課税を強める。法人税の減税と合わせれば、利益を出している企業の負担は軽くなり、稼げていない企業は負担増となる。安倍政権は、減税によって経済を活性化させようとする姿勢が強い。しかし、持てる家庭や企業からしっかり税金をとり、さらには予算編成を通じて、再分配を意識した政策運営を心がけることも大切だ。それが国民の暮らしを支え、経済全体を成長させるのではないか、としている。

産経新聞・社説
法人税減税 次は企業が成果で応えよ

自民、公明両党が平成27年度の与党税制改正大綱をまとめた。成長戦略の柱となる法人税減税は2段階で実施し、実効税率を現行の30%台半ばから20%台に引き下げる方針を明記した。減税の恩恵を受ける企業には、成果を示すことで、これに応えてもらわねばならない。減税分を内部留保に回してしまえば、目的を達することはできない。減税は企業の国際競争力を高め、海外からの投資呼び込みにも有効であり、妥当な判断だ。実効税率の引き下げで税収が減る分は、赤字企業であっても事業規模に応じてかかる外形標準課税の強化などにより、段階的に穴埋めする。中堅企業に対する負担軽減措置も設けるとした。中小企業への適用には、経営の実情に応じた配慮が欠かせない、としている。

日本経済新聞・社説
法人税の改革をさらに前進させよ

自民、公明両党が2015年度の税制改正大綱をまとめた。国税と地方税の合計で差し引き約1200億円の減税(平年度ベース)となる。15年10月に予定していた10%への消費増税は17年4月に延ばす。法人減税など成長戦略に目配りしたものもあるが、全体としては抜本改正とはいえず課題を残した。柱のひとつが法人税の減税だ。日本の法人実効税率は東京都の場合で35%台と、先進国では米国に次いで高い。2015年度はまず税率を2.51%引き下げ、2016年度分を含めた2年間で計3%超の引き下げをめざす方針を示した。減税の財源となるのは、赤字企業にも負担を求める外形標準課税の拡大、企業が黒字を過去の赤字と相殺して納税額を減らせる繰越欠損金控除の縮小、企業が受け取る配当への課税強化などだ。ふたつめの柱は、高齢者から若年層への資産移転を促す税制だ。少子化対策として、20歳以上の子や孫に結婚、出産、子育ての資金を贈与した場合の非課税制度をつくる。子や孫に教育資金を贈与した際の非課税措置も延長する。日本経済の最大の懸案は経済再生と財政再建の両立だ。税制はそのための大きな政策手段となる。消費増税の延期で、抜本改革の機運が遠のくようでは困る。法人税改革の宿題に答えを出すのと同時に、個人向け所得課税の改革に着手するときだ。社会保障分野を中心とする歳出の削減・抑制も、歳入改革と両輪で進めてもらいたい、としている。

毎日新聞・社説
法人減税 国民の理解が不可欠だ

与党の2015年度税制改正大綱がまとまった。焦点の法人税は今の実効税率(東京都は35.64%)を2015年度に2.51%引き下げ、2016年度に下げ幅を3.29%に拡大する。赤字法人などへの課税を複数年で段階的に強化して穴埋めするが、2015、2016年度は全体で各年度2000億円程度の実質減税となる。2014年度改正でも復興特別法人税が廃止された。増大する社会保障費に対応するためだとして消費税は4月に8%に増税されたのに、なぜ企業ばかり優遇するのかという疑問が広がっても不思議ではない。増税や食料品などの相次ぐ値上げで影響を受けている消費者に対し、十分に納得のいく説明が不可欠だ。減税で恩恵を受ける企業の経営者は賃上げや投資に積極的に動くことが求められる。また、政府は企業の前向きな行動に対する下支えを今まで以上に行わなければならない。安倍政権は「経済再生と財政再建の両立」を旗印としているが、歳出と歳入両面で財政再建への目配りがおろそかになっていないか改めて問いたい、としている。

読売新聞・社説
与党税制大綱 経済再生へ着実に改革進めよ

自民、公明両党が2015年度与党税制改正大綱を策定した。内容は政府がまとめる来年度予算案と税制改正関連法案に反映される。最大の焦点だった法人税の実効税率は、現在の34.62%(標準値)から、2015年度に2.51%、2016年度に0.78%以上引き下げることで決着した。大綱が、欧州やアジア諸国並みの20%台への引き下げに一定の道筋を示したことは評価できる。高齢者が、子や孫に結婚や出産、育児といった費用を援助する場合は、一定額まで贈与税を非課税とする制度も新設する。高齢世代から若い世代への資産移転を促し、消費拡大などに役立てるという狙いは妥当だろう。2015年度の実効税率引き下げには1兆円強の財源が必要になる。与党は、赤字企業でも事業規模に応じて納税する外形標準課税の拡大などで財源の一部を捻出したが、全額は賄えなかった。当面の財源不足を景気回復に伴う税収の上振れ分で補うのはやむを得ないが、厳しい日本の財政事情を考えると、財源不足の状態はいつまでも放置できない。20%台への引き下げの実現に向け、租税特別措置などの大胆な改革に踏み込むべきである。食料品など必需品の消費税を低く抑える軽減税率の導入時期を巡る議論も、決着は見送られた。消費税率を2017年4月に10%へ引き上げるのと同時導入を唱える公明党と、それに慎重な自民党との意見対立は解消できなかった。与党は導入時期の合意を急ぎ、対象品目の選定作業などを加速していかねばならない、としている。

大晦日に法人税減税の税制大綱で社説はまとまった。法人税を下げて日本への進出企業がどれくらい増えるのか、目標とする進出をどれくらいで考えているのかが知りたい。アメリカに次いでの高さは、GDPの序列から考えれば常識はずれではない。高齢化で市場としての魅力は薄れている。アジアへの進出拠点と考えるなら、他のアジア地域へのハブとなる機能はまだ弱い。国内の産業が弱る中、雇用創出のための外資参入を期待しているなら判る。だが、それなら特区でいい。または外資優遇でも良かったはずだ。
国内企業を優遇する意味なら、この先の賃上げ要請は相当なプレッシャーになるだろう。国民の不公平感は相当なものだ。内部留保よりは賃上げ、投資を促すつもりだろう。正しい。そこのカネが動きはじめれば、もう少し経済は動く。
赤字企業へも課税するのは間違っていない。節税や資産管理のための会社が成り立つ余裕は、いまの国家にはない。だがその仕組みを崩す名目なら、対象が資本金1億円以上とはおかしい。全法人対象でいいはずだ。政治家が似たような手法の法人を持っているからだろうか?切り込みが甘い。宗教法人課税を考えるべきだが、そこも甘い。
未だに軽減税率の同時導入が見送られるのも自民党の意図が見えない。格差是正、弱者保護の意識が低すぎる。

Financial Times
ギリシャ総選挙とユーロ危機の再来 (2014.12.30)

ユーロ危機が再燃している。ギリシャで来月実施されることになった総選挙と、恐らくそこで見られる極左政党の急進左派連合(SYRIZA)の勝利に、政治家と投資家は怯えることになるだろう。ユーロを救うためには「何でもやる」という欧州中央銀行(ECB)の有名な約束によりユーロ崩壊のリスクは取り除かれたとの見方が市場には広まっており、それを反映して欧州の債務国の借り入れコストは急低下していた。ギリシャの情勢が今まさに物語っているように、この見方は甘かった。この見方の最も弱い環は、欧州の政治だった。具体的に言うなら、有権者が経済の緊縮政策に反発し、ユーロを維持する方法についての欧州の合意を拒絶する「反システム」政党に1票を投じるリスクもそうだった。ドイツがSYRIZAへの譲歩を非常に警戒していることについては、対外的な理由もある。ドイツには、ギリシャへの融資を帳消しにする余力はあるかもしれないが、これをいったん認めてしまうと、イタリアやポルトガル、アイルランド、スペイン、さらにはフランスにまで、同様な要求をする機会を与えてしまうことになるのだ。ユーロ圏で大惨事が起きる可能性があることは、非常に容易に理解できる。では、何がどうなればそれを回避できる可能性が出てくるのだろうか。仮にSYRIZAが政権を取っても、債務デフォルトの深淵を一度のぞき込めば、要求を弱める可能性がある。空っぽの国庫ほど、人の目を覚ましてくれるものはない。またドイツも、ギリシャのユーロ離脱が大混乱を引き起こす可能性を考慮して、さらに譲歩するかもしれない、としている。

Wall Street Journal
ギリシャ問題、他国の政策への影響にも注目を (2014.12.30)

29日行われた3回目の投票でもサマラス首相の推すディマス元欧州委員は大統領選出に必要な票数を獲得できず、来年1月25日に総選挙が実施されることとなった。ユーロ圏内でギリシャ以外に投資している向きは、不安定性が高まることを覚悟した方がいい。ただ、深刻な混乱が起きる可能性は低い。世論調査では、ギリシャ支援策に伴う経済改革と緊縮策への反対を掲げる急進左派連合(SYRIZA)が優勢を維持しているが、連立与党の中道右派・新民主主義党(ND)が追い上げている。焦点となるのはSYRIZAが求める政府債務の再編問題だが、同党のツィプラス党首は、ギリシャが市場で行う借り入れと国際通貨基金(IMF)からの融資を重視する意向を明らかにしている。今後のギリシャの動向は注目に値するが、その理由は、(ギリシャ自身がというよりも)他国での政策議論に対する影響という側面の方が大きい。来年は英国、スペイン、ポルトガル、フィンランドでも選挙が予定されている。新たな顔ぶれが名乗りを上げる中、市場を一喜一憂させるのはギリシャの政治劇だけではない、としている。

年の最後に、ユーロはまた波乱。問題分子はロシアではなく、忘れかけていたギリシャだった。問題の根本解決を避けたことが原因だろう。ユーロは分裂の危機を迎えている気がする。ドイツが頑ななこと、ロシアへの対抗にアメリカの意思決定がなければ無力だと悟ったこと、相変わらずイギリスの合流を見込めないどころか、イギリスはEU離脱までエスカレートしていること…どれも理想として見込んでいた結果から程遠い。格差は開くばかりだ。南欧に「豊かになりたければドイツのようになれ」と言うのは間違っている。イタリアのリラは、インフレのおかげで笑ってしまうような桁だったが、それでも当時のイタリアと今のイタリアなら、当時の方が豊かではないだろうか。戻りたい、脱退したい気持ちが生まれるのはわかる。
もし、まだ理想と崇めるユーロを、その先にある統一ヨーロッパを目指すなら、今のままでは危うい。これは理想を叶えるために越えなければならないいくつかの難関ではない。何か道を踏み外している未来へ、軌道修正を促す予兆だ。

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