ORIZUME - オリズメ

1835.報道比較2014.7.20

0


夏は荒れる。殺気立ち、自然の障害が少なく、戦いやすいのだろうか。そんなアノマリーにならう必要はないのに、世界が荒れはじめた。

Wall Street Journal
マレーシア航空17便の墜落、知っておくべき5つのこと (2014.7.18)

乗客283人、乗員15人を乗せたマレーシア航空の旅客機が17日、戦闘の続くウクライナ東部ドネツクで墜落した。

1)乗員乗客

マレーシア航空17便のボーイング777型機が17日に地対空ミサイルで撃墜されたとき、乗客数は283人、乗員数は15人だった。同機はロシア国境に近いウクライナのドネツク上空を飛行していた。

2)ミサイル

地上から約1万メートル上空を飛行していたボーイング777型機は「Buk」と呼ばれる地対空ミサイルで撃墜された可能性がある。Bukミサイルは旧ソビエト連邦が開発したもので、射程距離は高度4万フィート(約1万2000メートル)を上回る。

3)非難合戦

ウクライナ内相の顧問、ゲラシチェンコ氏は親ロシア派の分離主義者が旅客機を撃墜したと非難。一方、ロシアのプーチン大統領は、この地域での戦闘にはウクライナ側が責任を負うと主張、またロシアの関与を否定した。

4)困難な調査

同機が墜落したのはウクライナ政府ではなく、反政府勢力が支配するエリア。ウクライナ側は親ロシア派が航空機のデータやブラックボックスを回収したと主張している。墜落現場の保全に対する懸念もある。ブラックボックスや物的証拠を調べられれば、調査官はどちらの当局に詳しい調査の責任があるかなど調査の第一歩となる決定を下すことができる。マレーシア航空も調査活動に参加する運びだ。

5)マレーシア航空はどうなる?

マレーシア航空は今後、規制当局の調査を受けるほか、メディアの取材攻勢にさらされることになるだろう。同社は政府系企業。今も3月に370便が消息を絶った事件による打撃からの回復途上にある。予約のキャンセル、長引く財務不安、価格競争の激化など、同社の将来には不安が山積みだ、としている。

日本の新聞には、残念ながらこの件について語れる能力はない。全紙の社説が無関心を装っている。秘密法や集団的自衛権の解釈に関わる問題が生じた時、分析できる能力がいまの新聞にあるようには見えない。
世界は東西冷戦の復活を認めたがってはいない。プーチン氏をヒトラーに唱えるようなやり方も不謹慎と嫌われている。だが、ロシアの関与なしに、ロシア系のミサイルがウクライナ領に存在したとは誰も信じないだろう。この件の解決にロシアはかなりの代償を負うことになるだろうが、すぐに認めるはずもない。中国がロシアを擁護しているのも気になる。マレーシアというアジアの国が巻き込まれたことが、世界中を巻き込んだ紛争になる可能性を秘めている。傍観するだけではいられない事件だ。

産経新聞・社説
ガザ地上侵攻 「流血と憎悪」の応酬断て

パレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織、ハマスと戦闘に入っていたイスラエル軍がついに、ガザに地上侵攻した。ハマスのロケット弾発射拠点などを攻撃しているのに対し、ハマスも徹底抗戦の構えを崩していない。8日に始まった戦闘で、ガザでの死者は、すでに300人を超えた。多くは子供を含む民間人だ。一刻も早く、イスラエル軍は地上侵攻を終了し、ハマス側は停戦に応じなければならない。ガザの流血を止めるため、国際社会も全力を挙げてもらいたい。戦闘−侵攻が長期化し事態が泥沼化すれば互いの憎悪が募り、パレスチナ国家が樹立されてイスラエルとともに2国家が共存するという、パレスチナ和平の大目標はますます遠のいてしまう、としている。

社説でこの難題を取り上げた勇気は称賛するが、残念ながら能力が及んでいない。この社説よりは、たとえばこんな事実や写真の方がよほど人の心を打つ。
妊婦たちが、ガザ空爆にさらされている。「赤ちゃんを家に連れて帰れない」
The Huffington Post | 執筆者: Sophia Jones

こういうネットワークの外にしか存在できないマスメディアの限界を、反省して変化を促して欲しい。もう、とっくに見る側は新聞に期待していない。もし主張するなら、この筆者さえ頷くような発想が欲しい。
それでも産経は、見ないふりをする他紙よりはよほど誠実だ。

朝日新聞・社説
BRICS銀―国際金融再考の契機に

BRICS5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の首脳が、途上国のインフラ整備などに融資する銀行「新開発銀行」の設立を決めた。金融危機の際に外貨を融通するための基金も設立する。途上国の開発を後押ししてきた世界銀行と、国際的な経済・通貨危機の火消し役である国際通貨基金(IMF)という既存の機関に相当する組織を、BRICS主導で新設するものだ。明確なのは、自分たちの経済発展に応じた影響力を、国際金融の舞台で発揮できないことへのいらだちだ。第2次大戦後に設立されて以来、世銀のトップは米国、IMFのトップは欧州が占めてきた。BRICS5カ国の経済規模の合計は世界の2割を占めるのに、IMFでの投票権は計1割に過ぎない。21世紀になって、グローバリゼーションは深化した。世銀とIMFの設立を決めたブレトンウッズ会議から70年。世界経済を支える仕組みも制度疲労が否めない。それを補正する機会として、BRICSの異議申し立てをとらえるべきだ、としている。

反欧米。その発想でしか結束していない、経済成長だけをきっかけに集まった5か国だというなら、この体制に賛同する国は少ないだろう。世界が欲しいのは豊かさだけではない。欧米が評価されている理由はカネではない。自由と平和という理念とセットになっている。その仕組みが理解できない限り、共産主義がたどった過去と現在のロシアや中国のやり方を見る限り、ロシアがウクライナの制裁でカネに困って作った組織のようにしか見えない。私は、少しインドに失望した。

読売新聞・社説
南シナ海情勢 掘削を中止させた対中包囲網

中国が、南シナ海・パラセル(西沙)諸島付近での石油掘削作業を終了した。作業は当初、8月中旬までとされていた。中国は「作業が順調に終わった」と説明するが、実際は、対中包囲網が作業短縮の要因だったのは間違いあるまい。ベトナムは中国の不当性を国際社会に訴え、大規模な反中デモも続発した。中国は、経済面で対中依存を強めるベトナムの抵抗が、これほど激しいとは予測していなかったのではないか。更に大きな誤算は、日米両国や東南アジア諸国連合(ASEAN)などによる対中連携が一気に強まったことだろう。中国には、こうした場で対中批判が集中する事態を避けたい思惑があろう。当面は、抑制的な行動を取るとの見方も出ている。日米両国は、中国の覇権的な行動は長期化すると覚悟すべきだ。今回、国際的な連携の積み重ねが一定の成果を上げた。この経験を踏まえつつ、新たなアジア秩序作りに、中国を建設的な形で参加させていくことが求められよう、としている。

中国で何が起きているのか、信じられる情報を提供できているメディアはない。私は、こんな安直な読みや、国内の統制が取れていないから暴走しているという説には期待しない。
攻める側は意図を持って攻める。退く時の事を考えてから攻める。怒りに満ちた攻めが失敗する理由はここにある。退くことを考えずに攻めるから、引き際を考えずに進む。想定外の自体でうろたえる。
守る側も同じだ。やられると思って備えている場所は堅い。攻めに対して潰す方法を心得ている。そうでない場合、退かせることを目的にしていれば、退いただけで目的は達成される。
今回の中国を、意図なく攻めたと見る人が不思議だ。中国が今回、各方面に仕掛けている手法はすべていっしょだ。覇権。パワーで押し切る。どれもがこの手法だ。通常、パートナーや共同の方が明らかに時間も少なく、コストも半分で済む。得られた場所でノウハウも共有できる。いまの中国が、この非効率な手法を採る理由が分からない。その理由を解き明かしてくれた人もメディアも、私は見たことがない。

Financial Times
社会の格差:問題は「最上位1%」ではなく都市計画法だ (2014.7.16)

純資産を構成する住宅資産の中に、都市計画法制やゾーニング(土地の用途区分)の規制によって本来の価値よりも押し上げられた部分が含まれていることにある。これは住宅を借りている人や住宅を最近購入した人が、成長が人為的に抑制されている住宅ストックを利用するにあたって既存の住宅所有者に支払わねばならない身代金にほかならない。上記の規制があまりに厳しいために、身代金の額が兆の単位に跳ね上がってしまっているのだ。最近では所得階層の最上位1%の罪を問う声があるが、この種の富はそれよりもはるかに破壊的だ。それは、我々の生活水準を引き上げるのではなく引き下げることによって創り出された富だから。つまり、ロンドンやサンフランシスコに住宅を建てすぎたことではなく、建てなすぎたことによって創り出された富だからだ。広々とした空間を、慣れ親しんだ低密度な都市を維持したいと思うのはごく自然なことだ。しかし、それによって巨額のコストが発生していることにもう気づくべきだろう。都市計画法制は人畜無害な官僚制に見えるかもしれないが、実態はそうではない。これらの規制は住宅価格を何十億ドルもかさ上げしてきた。そのせいで、住宅を持っていない人は、すでに持っている人に多額のお金を払わなければならなくなっている。もしこの社会をもっと公正かつ平等なものにしたいのであれば、この都市計画の規制を緩和して住宅をもっと建設できるようにすべきだ、としている。

すばらしい発想だ。この指摘に合わせて法を運用したらどうなるだろう?何か別の方法で都市の過密を解決できれば、不動産バブルの発生は抑えられるのではないか?都市にあらゆるものが集中していく原理も止められるのではないか?とても興味深い。

So, what do you think ?